当連結会計年度における経営者の視点による当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」)の状況に関する認識および分析・検討内容は次の通りです。文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
a.事業全体およびセグメント情報に記載された区分ごとの状況
(a) 事業全体の状況
ⅰ.経営環境と当社グループの取り組み
当社グループを取り巻く事業環境は、デジタル技術の進展と2020年から続く新型コロナウイルス感染症拡大により、かつてない大きな変革期を迎えています。世界および日本経済の景況感は、インフレ懸念の拡大と緊迫した国際情勢も加わり、非常に不透明かつ不安定な状況が継続していますが、その一方で、テレワーク、オンラインショッピング、非接触型の決済方法など新しい生活様式への移行が半ば強制的に進み、社会を支えるための広範なデジタル技術の活用が急務となっています。加えて、気候変動リスクやサイバーセキュリティリスクなどの重大な脅威が改めて注目され、企業はそのサステナビリティを高めるために、先んじて様々な対応策を講じることが必要となっています。このような環境下において、5G(第5世代移動通信システム)の本格的な普及とAI(注1)などのデジタル技術の発展は、あらゆるモノがインターネットにつながることを可能とし、それによって得られる膨大なデータとその分析を通じリスクを予防し、日常生活や企業活動を最適化することで様々な社会課題を解決するものと期待されています。
当社グループは、「情報革命で人々を幸せに」という経営理念の下、世界の人々が最も必要とするサービスやテクノロジーを提供する企業グループを目指し、通信事業を基盤に、情報・テクノロジー領域において様々な事業に取り組み、企業価値の最大化を図ってきました。また、5Gなどの社会インフラを提供する当社グループは、本業を通じて様々な社会課題の解決に貢献すべく、「すべてのモノ、情報、心がつながる世の中を」というコンセプトのもと、国連の定める「SDGs(持続可能な開発目標)」の実現のために当社グループが取り組むべき6つのマテリアリティ(重要課題)を特定しています。SDGsとマテリアリティ(重要課題)の詳細については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 重要課題(マテリアリティ)」をご参照ください。
これらの課題解決に取り組むため、当社は2021年5月に、国際社会がSDGsの達成を目指す2030年までに、事業活動で使用する電力など(注2)による温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル2030宣言」を発表しました。同年6月には、同宣言で掲げた目標が、国際的気候変動イニシアチブのSBTi(Science Based Targets initiative)(注3)によって科学的根拠に基づいた「SBT(Science Based Targets)」に認定されました。また、同年11月には、世界の代表的なESG投資の株価指数である「Dow Jones Sustainability Index」のアジア・太平洋地域の企業で構成される「Dow Jones Sustainability Asia Pacific Index」の構成銘柄に初めて選定されました。
また、当社は2022年2月に、独立社外取締役のみで構成される特別委員会を設置しました。取締役会の任意の諮問機関として、支配株主と少数株主との利益が相反する重要な取引について審議・検討することが、当社のコーポレート・ガバナンスのさらなる向上に資すると判断したことが背景です。今後も持続的な成長と企業価値の向上のために継続的なコーポレート・ガバナンスの向上に努めます。
当社グループは、2017年度より、持続的な成長を達成するために「Beyond Carrier」戦略を推進しています。「Beyond Carrier」戦略は、通信事業をさらに成長させることに加えて、従来の通信キャリアという枠組みを超え、ヤフー・LINEおよび新領域を加えた3つの領域を伸ばしていくことで収益基盤を強化していくものです。この戦略を推進することで、当社は、スマートフォンユーザー基盤に加え、日本最大級のポータルサイト「Yahoo! JAPAN」やコミュニケーションサービス「LINE」、キャッシュレス決済サービス「PayPay」など日本最大級のユーザー基盤を有する通信・IT企業グループとなりました。
「Beyond Carrier」戦略は、2021年度より第2フェーズに移行し、これまで培った顧客接点を強みに、当社のもつ強力なプラットフォーム群を先端テクノロジーによりつなぎ合わせ、新たな価値を創造していきます。当社グループは、「Beyond Carrier」成長戦略と弛まぬ構造改革を同時に実行していくことにより、2022年度に営業利益1兆円を達成することを目指します。
<通信>
国内の通信業界においては、競争促進政策の強化や異業種からの新規参入などによって経営環境が大きく変化し、消費者にはより低廉で多様な料金やサービスを求める動きが高まっています。当社グループは、異なる特長をもつ複数のブランドにより、多様化するお客さまのニーズに対応するマルチブランド戦略を推進しています。最新のスマートフォン・携帯端末や大容量データプランを求めるお客さまに高付加価値サービス等を提供する「SoftBank」ブランド、月々の通信料を抑えることを重視するお客さまにスマートフォン向けサービス等を提供する「Y!mobile」ブランド、生活シーンの変化などによりオンラインで完結するサービスへのニーズが高まったことに対応したオンライン専用の「LINEMO」ブランドなどを提供しています。
当期においては、新料金プランを巡る競合他社との競争が激化する中、特に「Y!mobile」ブランドや「SoftBank」ブランドの「スマホデビュープラン」(注4)が好調に推移し、当期末のスマートフォン契約数は、前期末比で165万件増加しました。ブロードバンドサービスにおいても家庭向け高速インターネット接続サービスである「SoftBank 光」の契約数が順調に伸びており、この「SoftBank 光」契約数は前期末比で39万件増加しました。
サービス面においては、2021年10月から、「SoftBank」ブランドの機種をお得に購入できるプログラムをリニューアルした「トクするサポート+(2021年9月24日以降加入者向け)」(注5)の提供を開始しました。従前のプログラムでは当社指定の機種へ買い替える必要がありましたが、その条件を撤廃し、機種を買い替えなくても同特典を利用可能としました。また、同月には「SoftBank」ブランド、「Y!mobile」ブランドで過去に提供していた契約期間が残る料金プランにおいて、契約更新月以外の解約時に生じる契約解除料を免除することを発表し、2022年2月から適用しています。さらに、2021年11月からは、LINE MUSIC㈱とともに、「SoftBank」ブランド、「Y!mobile」ブランド、「LINEMO」ブランドをご利用のお客さまに「LINE MUSIC」(注6)を6カ月間無料で提供しています。同時に「ソフトバンクプレミアム」の特典に新たな「LINEサービス特典」を加え、「LINE MUSIC」の6カ月無料の期間が終了した7カ月目以降は、月額料金(税抜)の20%相当のPayPayボーナスを付与します。当社は、今後もLINEグループとのシナジーを推進するために「LINEサービス特典」を拡充していきます。
法人向けビジネスにおいては、企業や産業はテクノロジーやビジネス環境の激しい変化に対応するためにデジタル化を推進しており、コロナ禍においてこの動きはむしろ加速しています。
このような環境下において、2022年2月に、当社とキンドリルジャパン㈱(以下「キンドリル」)は、日本の企業・団体におけるデジタルトランスフォーメーション(以下「DX」)(注7)の推進に向けて、クラウドや5G、IoTなどの分野で戦略的協業を開始しました。当社が「マルチクラウド戦略」の下で提供するソリューションと、キンドリルが持つシステム運用に関するコンサルティングや構築・運用の高度な技術力、「安心・安全・安定」のシステムを実現する豊富な実績やスキルを生かして連携することで、製造業や金融業をはじめ、クラウドへの移行やITインフラの刷新を検討している企業・団体のDXをワンストップで支援します。また、5GやIoT、AIなどの最先端テクノロジーを活用した、製造業における運用業務の可視化ソリューションなど、デジタル化のニーズが高い業界に向けた特化型のソリューションの開発についても共同で取り組んでいきます。
5G
当社は、2022年2月にMEC(注8)やネットワークスライシング(注9)など5Gの特長を、低コストかつ容易に実現する技術である「Segment Routing IPv6 Mobile User Plane(以下「SRv6 MUP」)」の開発に成功しました。従来のモバイルネットワークでMECやネットワークスライシングを実現するためには、IP伝送路に大量の高価なUPF(User Plane Function)(注10)を導入する必要があり、導入コストと運用コストの課題がありましたが、SRv6 MUPの導入によって低コストでかつ容易に5Gの特長を実現できるようになりました。
また、2022年3月末時点で当社の5Gのネットワークの人口カバー率(注11)が90%を超えました。今後さらに増加するトラフィックに対応し、ストレスフリーなネットワークの実現に向けて、5Gのさらなる高度化とエリア拡大を推進していきます。
<ヤフー・LINEの成長>
当社は、上記のマルチブランド戦略および新たなインフラである5Gの取り組みを通じ通信事業を成長させながら、通信事業者として保有する顧客基盤などの資産を活用したOTT(注12)の領域への事業展開を推進しています。当社の子会社であるZホールディングス㈱は、2021年3月のLINE㈱との経営統合により、日本最大規模のインターネットサービス企業グループとなり、当社グループの収益源の多様化に寄与しています。今後もZホールディングス㈱との協働を深め、LINE㈱も含めたシナジーの最大化を図ります。
2022年1月より、ヤフー㈱、アスクル㈱および㈱出前館は、食料品や日用品のクイックコマース(即配サービス)「Yahoo!マート by ASKUL(以下、Yahoo!マート)」の展開を、実証実験を経て開始しました。「Yahoo!マート」は、ユーザーが「出前館」サービス上で、アスクル㈱が販売する食料品や日用品を中心とした約1,500種(注13)の幅広い商品の中から選択し注文・決済すると、最短15分(注14)で商品を受け取ることができるサービスです。Zホールディングスグループは、ヤフー㈱のブランド力、アスクル㈱の商品調達力、㈱出前館のユーザー基盤と配達品質を生かしたグループシナジーを通じてユーザーのニーズに応えていきます。
また、LINE㈱では、2021年12月にグローバルNFT(注15)エコシステムを本格的に構築するため、LINE NEXT Corporationを韓国に、LINE NEXT Inc.を米国に設立しました。LINE NEXT Corporationは、グローバルNFTプラットフォーム事業の戦略企画を行い、LINE NEXT Inc.は、グローバルNFTプラットフォーム事業を運営します。2022年3月には、LINE NEXT Inc.が、グローバルNFTエコシステムの実現に向けさまざまなパートナー企業26社とパートナーシップを締結し協力していくことを発表しました。各社の有名なIPコンテンツを基盤にNFTを開発し、ユーザーが簡単な決済方法でNFTの取引ができる環境を提供予定です。
<非通信の拡大>
非通信の拡大の取り組みとしては、ソフトバンクグループの投資先をはじめとする先端技術を保有する企業や、ソリューションの提供を行う企業との連携に取り組んでいます。具体的には、パートナーである各企業と合弁会社を設立し、非通信の拡大を推進しています。なお、これらの合弁会社の多くは持分法適用会社であるため、当社の業績には持分法による投資損益として寄与します。
PayPay㈱
2022年3月末での「PayPay」の累計登録者数(注16)は、「超PayPay祭」などのキャンペーン効果もあり4,679万人となり、加盟店数は366万カ所を超えました。当期における決済回数は前期比約1.8倍となる36億回を超え、決済取扱高は前期比約1.7倍となる5.4兆円となり、いずれも順調に増加しました。また、当社の持分法適用会社であるPayPay㈱の当期における年間売上高は、決済取扱高の順調な拡大と加盟店(年商10億円以下)向けの決済システム利用料の有料化に伴い、前期比約1.9倍となる574億円となり、大幅に増加しました。
PayPay㈱は、加盟店(年商10億円以下)における決済システム利用料を、サービス開始当初から2021年9月末まで無料で提供していましたが、2021年10月1日以降、ユーザーが「PayPay」を利用して決済を行った取引金額に対する料率を1.60%(税別)からとし、引き続き加盟店が低コストで「PayPay」をご利用いただけるようキャッシュレス決済業界最安水準(注17)に設定しました。なお、この決済システム利用料は、「PayPayクーポン」の発行など販売活動のデジタル化などをサポートする加盟店向けのサービス「PayPayマイストア ライトプラン」への契約状況に応じて変動します(注18)。
2022年2月より、PayPay㈱とPayPayカード㈱は、「PayPay」アプリ上で、当月利用した金額を翌月まとめて支払える「PayPayあと払い」の提供を開始しました。「PayPayあと払い」は、事前にPayPay残高へチャージすることなく「PayPay」での支払いに利用できます。PayPay加盟店の実店舗のみでなく、ヤフー㈱が運営する「Yahoo!ショッピング」や「PayPayモール」などのオンラインサービスでも利用可能です。
また、2022年3月より、PayPay㈱は、ユーザーの利便性と加盟店の売り上げの拡大を図るため、「PayPayマイストア ライトプラン」に加入している中小規模の加盟店向けに、加盟店独自のスタンプカードが簡単に発行できる「PayPayスタンプカード」機能の提供を開始しました。街のお店が「PayPayスタンプカード」を発行することで、ユーザーは、スタンプカードを複数枚持ち歩くことが不要になり、かつ決済に連動して自動でスタンプが付与されるため、より便利にお買い物ができます。また、加盟店は「PayPay」ユーザーを対象に販促活動を行うことができ、顧客の再来店が期待できます。さらに、スタンプカードの発行にかかる紙代や印刷代などのコストを削減できるほか、スタンプカード発行後に詳細な分析などができるため、効率的かつ有効な施策の実施につなげられます。
AI需要予測サービス「サキミル」
当社と一般財団法人日本気象協会(以下「日本気象協会」)は、小売り・飲食業界向けに、人流や気象のデータを活用したAIによる需要予測サービス「サキミル」を共同開発し、2022年1月より当社が提供を開始しました。「サキミル」は、当社の携帯電話基地局から得られる端末の位置情報データを基にした人流統計データ(注19)や、日本気象協会が保有する気象データ、導入企業が保有する店舗ごとの売り上げや来店客数などの各種データを、両社が共同で開発したAIアルゴリズムで分析し、高精度な需要予測を行うサービス(注20)です。
「サキミル」は、予測された来店客数に応じた商品の発注数や勤務シフトの調整などにより、フードロスの削減や人員配置の最適化に貢献するとともに、キャンペーンやイベントの企画、クーポンの配信など、売り上げ向上のための施策の検討時に活用することができます。当社と日本気象協会は、「サキミル」を通して、データやAIなどのテクノロジーの活用により、業務効率化や販促などさまざまな側面から小売り・飲食業界を支援してDXを推進します。
(注1) AIとは、Artificial Intelligenceの略称で、人工知能のことです。
(注2) 電力の他、事業で使用する重油やガスなどの使用に伴う排出を含みます。
(注3) SBTi(Science Based Targets initiative)は、国連グローバル・コンパクト、CDP(旧カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)、WRI(世界資源研究所)およびWWF(世界自然保護基金)が共同で設立した国際的な気候変動イニシアチブで、世界の各企業・団体の排出削減目標が、パリ協定における「世界の気温上昇を産業革命前より2度を十分に下回る水準に抑え、また1.5度に抑える努力を追求すること」という目標に準拠しているかどうかを審査し、認定する機関です。
(注4) 「スマホデビュープラン」は、これまで従来型携帯電話を利用していたユーザーや初めてスマートフォンを利用する5歳から15歳(キャンペーン適用で22歳まで拡大)のユーザーが「SoftBank」ブランドのスマートフォンを契約した場合に、1回5分以内の国内通話と3GBのデータ量(キャンペーン適用で1年間5GBまで利用可能)を契約翌月から12カ月間は基本料900円(税抜)、14カ月目以降は基本料1,980円(税抜)で利用できます。
(注5) 「トクするサポート+(2021年9月24日以降加入者向け)」は、「SoftBank」の回線契約の有無にかかわらず、対象機種を48回払いで購入された方が利用料無料で利用できるプログラムで、2021年11月17日から「新トクするサポート」に名称を変更しています。購入から25カ月目以降に特典の利用を申し込み、翌月末までに当社指定の条件に基づく対象機種の回収・査定が完了した場合、対象機種の残りの分割支払金または賦払金の支払い(最大24回分)が不要となります。ただし、回収した機種が当社指定の査定条件を満たさない場合、機種の回収に加えて最大2万2,000円(不課税)の支払いが必要となります。
(注6) 「LINE MUSIC」は、LINE MUSIC㈱が提供する音楽ストリーミングサービスです。
(注7) デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、企業が、データとデジタル技術を活用して、組織、プロセス、業務等を変革していくことです。
(注8) MEC(メック)とは、マルチアクセスエッジコンピューティング(Multi-access Edge Computing)の略称で、端末から近い位置にデータ処理機能を配備することで、通信の最適化や高速化を可能とする技術です。
(注9) ネットワークスライシングとは、単一のネットワークインフラを仮想的に分割(スライシング)し、多様なニーズや用途に応じたサービスを提供できるよう複数の論理ネットワークとして提供・運用する技術です。
(注10) ユーザーデータを処理するモバイル専用交換機の1つです。
(注11) 人口カバー率は、国勢調査に用いられる約500m区画において、50%以上の場所で通信可能なエリアを基に算定しています。
(注12) OTTとは、Over The Topの略称で、インターネットにおいて、音声、動画コンテンツなどを提供するサービスや通信事業者以外の企業のことです。
(注13) 店舗により品揃えや商品数は異なります。
(注14) 配達時間は目安です。
(注15) NFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)は、ブロックチェーン上で発行された唯一無二で代替不可能なデジタルトークンで、デジタルアイテムやコンテンツの固有性や保有していることを証明できる仕組みのことです。
(注16) アカウント登録を行ったユーザーの数です。
(注17) クレジットカード会社の手数料は、一般社団法人キャッシュレス推進協議会にて公表された主要31事業者の標準手数料率(2020年7月1日現在)を参考にして比較しています。スマートフォン決済会社の手数料は、各社ホームページ(2021年8月2日現在)を参考にして比較しています。(いずれもPayPay㈱調べ)
(注18) 決済システム利用料は、「PayPayマイストア ライトプラン」に加入の場合は1.60%(税別)、未加入の場合は1.98%(税別)になります。なお、「PayPayマイストア ライトプラン」の月額利用料は、1店舗当たり1,980円(税別)です。
(注19) 人流統計データは、個人が特定できないように匿名化し、統計的に処理されたものです。
(注20) 統計的に処理されたデータを活用して提供するサービスであり、個人が特定できるデータは利用しません。
ⅱ.連結経営成績の概況
(注) 調整後EBITDAの算定方法は、「(4) <財務指標に関する説明>IFRSに基づかない指標」をご参照ください。
当期より、調整後EBITDAの定義を見直し、株式報酬費用を加味することにしました。これに伴い、前期の数値を修正再表示しています。
当期の連結経営成績の概況は、以下の通りです。
(ⅰ) 売上高
当期の売上高は、前期比4,851億円(9.3%)増の56,906億円となりました。ヤフー・LINE事業はLINE㈱の子会社化に伴う増加などにより3,616億円、コンシューマ事業は通信料の値下げによる平均単価の減少が影響したものの、でんきや物販等売上の増加などにより1,123億円、法人事業はデジタル化に伴うソリューション需要の増加などにより241億円、それぞれ増収となりました。一方で、流通事業は、サブスクリプションサービスが堅調に増加しているものの、前期における行政の大型プロジェクト向けの売上高が剥落したことにより307億円の減収となりました。
(ⅱ) 営業利益
当期の営業利益は、前期比150億円(1.5%)増の9,857億円となりました。ヤフー・LINE事業ではLINE㈱の子会社化や広告事業の伸びにより274億円、法人事業ではデジタル化に伴うソリューション需要の増加などにより207億円、流通事業ではサブスクリプションサービスの堅調な増加により6億円の増益となりました。一方、コンシューマ事業では「SoftBank」ブランドから「Y!mobile」ブランド・「LINEMO」ブランドへの移行や新料金プラン導入の影響などにより192億円の減益となりました。上記以外の「その他」の営業利益は、主として、当社子会社において市場シェア獲得のため積極的に投資を行ったことなどにより前期比107億円減少しています。
(ⅲ) 純利益
当期の純利益は、前期比362億円(6.6%)増の5,840億円となりました。これは、主として㈱出前館やLINE㈱の海外持分法適用会社の影響により、持分法による投資損失が146億円増加した一方で、営業利益が増加したことや、保有する投資有価証券の評価益の計上などにより金融収益が337億円増加したことによるものです。
(ⅳ) 親会社の所有者に帰属する純利益
当期の親会社の所有者に帰属する純利益は、前期比262億円(5.3%)増の5,175億円となりました。なお、当期の非支配持分に帰属する純利益は、主としてZホールディングス㈱とLINE㈱との経営統合に伴う当社のZホールディングス㈱議決権所有割合の低下の影響により、前期比100億円(17.7%)増の664億円となりました。
(ⅴ) 調整後EBITDA
当期の調整後EBITDAは、前期比254億円(1.5%)増の17,402億円となりました。これは主として、営業利益の増加に加え、Zホールディングス㈱とLINE㈱との経営統合に関連してZホールディングス㈱が発行したストック・オプションに関する株式報酬費用の増加、および同統合に伴い減価償却費及び償却費が増加したことによるものです。当社グループは、非現金取引の影響を除いた調整後EBITDAを、当社グループの業績を評価するために有用かつ必要な指標であると考えています。
ⅲ.主要事業データ
モバイルサービス
コンシューマ事業と法人事業において営んでいるモバイル契約の合計です。モバイルサービスの各事業データには、「SoftBank」ブランド、「Y!mobile」ブランド、「LINEモバイル」ブランド、「LINEMO」ブランドが含まれます。
(単位:千件)
(単位:千件)
(注) 主要回線の契約数に、2017年7月よりサービス開始した「おうちのでんわ」の契約数を含めて開示しています。
ARPUおよび解約率は、同サービスを除いて算出・開示しています。
ブロードバンドサービス
コンシューマ事業において提供している、家庭向けの高速インターネット接続サービスです。
(単位:千件)
<主要事業データの定義および算出方法>
モバイルサービス
主要回線:スマートフォン、従来型携帯電話、タブレット、モバイルデータ通信端末、「おうちのでん
わ」など
* 「LINEモバイル」は、2021年3月31日をもって、新規受付を終了しました。
* 「スマホファミリー割」適用のスマートフォンおよび「データカードにねん得割」適用のモ
バイルデータ通信端末は「通信モジュール等」に含まれます。
通信モジュール等:通信モジュール、みまもりケータイ、プリペイド式携帯電話など
* PHS回線を利用した通信モジュールは、「PHS」に含まれます。
解約率:月間平均解約率(小数点第3位を四捨五入して開示)
(算出方法)
解約率=解約数÷稼働契約数
* 解約数:当該期間における解約総数。携帯電話番号ポータビリティー(MNP)制度を利用して
「SoftBank」、「Y!mobile」、「LINEモバイル」、「LINEMO」の間で乗り換えが行われ
る際の解約は含まれません。
* 解約率(スマートフォン):主要回線のうち、スマートフォンの解約率です。
ARPU(Average Revenue Per User):1契約当たりの月間平均収入(10円未満を四捨五入して開示)
(算出方法)
総合ARPU=(データ関連収入 + 基本料・音声関連収入 + 端末保証サービス収入、コンテンツ関連
収入、広告収入など)÷ 稼働契約数
* データ関連収入:パケット通信料・定額料、インターネット接続基本料など
* 基本料・音声関連収入:基本使用料、通話料、着信料収入など
* 稼働契約数:当該期間の各月稼働契約数 ((月初累計契約数 + 月末累計契約数) ÷ 2)の合計値
割引ARPU=月月割ARPU+固定セット割ARPU(「おうち割 光セット」、「光おトク割」など)
* ポイント等や「半額サポート」に係る通信サービス売上控除額は、ARPUの算定には含まれません。
* 「半額サポート」とは、対象スマートフォンを48カ月の分割払い(48回割賦)で購入し、25カ月目以降に利用端末と引き換えに指定の端末に機種変更すると、その時点で残っている分割支払金の支払いが不要となるプログラムです。なお、「半額サポート」は2019年9月12日をもって、新規受付を終了しました。
ブロードバンドサービス
「SoftBank 光」:東日本電信電話㈱(以下「NTT東日本」)および西日本電信電話㈱(以下「NTT西日本」)の
光アクセス回線の卸売りを利用した光回線サービスとISP(Internet Service Provider)
サービスを統合したサービス
(累計契約数) NTT東日本およびNTT西日本の局舎において光回線の接続工事が完了してい
る回線数です。「SoftBank Air」契約数を含みます。
「Yahoo! BB 光 with フレッツ」:NTT東日本およびNTT西日本の光アクセス回線「フレッツ光シリーズ」
とセットで提供するISPサービス
(累計契約数) NTT東日本およびNTT西日本の局舎において光回線の接続工事が完了し、サ
ービスを提供しているユーザー数です。
「Yahoo! BB ADSL」:ADSL回線サービスとISPサービスを統合したサービス
(累計契約数) NTT東日本およびNTT西日本の局舎において、ADSL回線の接続工事が完了し
ている回線数です。
なお、「ⅲ.主要事業データ」の「増減」の算定に際し、四捨五入前の数値をもとに算定しているた
め、「ⅲ.主要事業データ」記載の四捨五入後の数値の増減とは一致しないことがあります。
(b) セグメント情報に記載された区分ごとの状況
ⅰ.コンシューマ事業
<事業概要>
コンシューマ事業では、主として国内の個人のお客さまに対し、モバイルサービス、ブロードバンドサービスおよび「おうちでんき」などの電力サービスを提供しています。また、携帯端末メーカーから携帯端末を仕入れ、ソフトバンクショップ等を運営する代理店または個人のお客さまに対して販売しています。
<業績全般>
売上高の内訳
コンシューマ事業の売上高は、前期比1,123億円(4.1%)増の28,827億円となりました。そのうち、サービス売上は、前期比438億円(2.0%)増加し22,518億円となり、物販等売上は、前期比685億円(12.2%)増加し6,309億円となりました。
サービス売上のうち、モバイルは前期比694億円(4.1%)減少しました。スマートフォン契約数が「Y!mobile」ブランドを中心に伸びたことに加え、「SoftBank」ブランドで提供する「おトク割」(注)による割引額が改善した一方で、通信料の値下げによる平均単価の減少や、前期における一過性の増収要因として半額サポートに係る契約負債の取り崩し110億円があったことなどによるものです。通信料の値下げによる平均単価の減少は、主に「SoftBank」ブランドから「Y!mobile」ブランド・「LINEMO」ブランドへの移行が増加したこと、および「SoftBank」ブランド・「Y!mobile」ブランドにおける新料金プラン導入の影響によるものです。
ブロードバンドは、前期比50億円(1.3%)増加しました。これは、光回線サービス「SoftBank 光」契約数の増加によるものです。
また、でんきは、前期比1,082億円(82.6%)増加しました。これは、「おうちでんき」契約数の増加に加え、市場での取引量および価格の変動などによるものです。
物販等売上の増加は、主として、高価格端末の構成比が上昇したことに伴い端末の販売単価が増加したことによるものです。
営業費用(売上原価と販売費及び一般管理費)およびその他の営業損益(その他の営業収益とその他の営業費用)の合計は22,432億円となり、前期比で1,314億円(6.2%)増加しました。これは主として、「おうちでんき」サービスに係る仕入原価が増加したこと、上述の高価格端末の構成比上昇による単価の増加に伴い商品原価が増加したこと、および「SoftBank 光」の契約数増加による通信設備使用料の増加などによるものです。
上記の結果、セグメント利益は、前期比192億円(2.9%)減の6,395億円となりました。
(注) 「おトク割」には、「1年おトク割」「1年おトク割+」「半年おトク割」を含みます。
ⅱ.法人事業
<事業概要>
法人事業では、法人のお客さまに対し、モバイル回線提供や携帯端末レンタルなどのモバイルサービス、固定電話やデータ通信などの固定通信サービス、データセンター、クラウド、セキュリティ、グローバル、AI、IoT、デジタルマーケティング等のソリューション等サービスなど、多様な法人向けソリューションを提供しています。
<業績全般>
売上高の内訳
法人事業の売上高は、前期比241億円(3.5%)増の7,157億円となりました。そのうち、モバイルは前期比78億円(2.6%)増の3,132億円、固定は前期比21億円(1.1%)減の1,868億円、ソリューション等は前期比184億円(9.3%)増の2,157億円となりました。
モバイル売上の増加は、主として、テレワークなどによる需要の高まりに伴いスマートフォン契約数が増加したことによるものです。
固定売上の減少は、主として、電話サービスの契約数の減少によるものです。
ソリューション等売上の増加は、新型コロナウイルス感染症拡大を契機とした企業のデジタル化需要をとらえ、クラウドサービス、デジタルマーケティングの広告サービス、セキュリティソリューションの売上が増加したことなどによるものです。
営業費用(売上原価と販売費及び一般管理費)およびその他の営業損益(その他の営業収益とその他の営業費用)の合計は5,873億円となり、前期比で34億円(0.6%)増加しました。主として、上記ソリューション等の売上の増加に伴い原価が増加したことによるものです。
上記の結果、セグメント利益は、前期比207億円(19.2%)増の1,285億円となりました。
ⅲ.流通事業
<事業概要>
流通事業は、変化する市場環境を迅速にとらえた最先端のプロダクトやサービスを提供しています。法人のお客さま向けには、クラウドサービス、AIを含めた先進テクノロジーを活用した商材を提供しています。個人のお客さま向けには、メーカーあるいはディストリビューターとして、ソフトウエアやモバイルアクセサリー、IoTプロダクト等、多岐にわたる商品の企画・提供を行っています。
<業績全般>
流通事業の売上高は、前期比307億円(5.8%)減の5,006億円となりました。これは主として、注力しているクラウド、SaaSなどのサブスクリプションサービスが堅調に伸びた一方で、前期における行政の大型プロジェクト向けの売上高が剥落したことによるものです。
営業費用(売上原価と販売費及び一般管理費)およびその他の営業損益(その他の営業収益とその他の営業費用)の合計は4,777億円となり、前期比で314億円(6.2%)減少しました。これは主として、上記売上高の減少に伴い商品原価が減少したことによるものです。
上記の結果、セグメント利益は、前期比6億円(2.7%)増の229億円となりました。
ⅳ.ヤフー・LINE事業
<事業概要>
ヤフー・LINE事業は、メディア、コマース、決済金融を中心としたサービスを展開し、オンラインからオフラインまで一気通貫でサービスを提供しています。メディア領域においては、インターネット上や「LINE」での広告関連サービス、コマース領域においては「Yahoo!ショッピング」「PayPayモール」「ZOZOTOWN」などのeコマースサービスや「ヤフオク!」などのリユースサービス、戦略領域においては、メディア・コマースに次ぐ新たな収益の柱となるよう取り組んでいるFinTech(注)を中心とした決済、金融サービス等の提供を行っています。
なお、2021年3月にZホールディングス㈱とLINE㈱の経営統合が完了し、LINE㈱を子会社化したことに伴い、2021年6月30日に終了した3カ月間より報告セグメントの名称を「ヤフー」から「ヤフー・LINE」に変更しています。
(注) FinTechとは、金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせた造語で、金融サービスと情報通信技術を結び付けた様々な革新的なサービスのことを意味します。
<業績全般>
売上高の内訳
(注) Zホールディングス㈱は、2021年3月のLINE㈱との経営統合に伴い、当期において事業の管理区分を変更しました。これに伴い、売上高の内訳に「戦略」を追加するとともに、一部のサービスおよび子会社について内訳を変更しています。また、これに合わせて、前期の売上高の内訳を修正再表示しています。
ヤフー・LINE事業の売上高は、前期比3,616億円(30.0%)増の15,674億円となりました。そのうち、メディアは前期比2,677億円(73.3%)増の6,328億円、コマースは前期比644億円(8.6%)増の8,091億円、戦略は前期比248億円(29.0%)増の1,104億円、その他は前期比47億円(44.9%)増の151億円となりました。
メディア売上の増加は、主として、LINE㈱を子会社化したことに加え、広告の需要回復、プロダクト改善施策等によるものです。
コマース売上の増加は、主として、LINE㈱を子会社化したことに加え、ZOZOグループ(㈱ZOZOおよび子会社)やアスクルグループ(アスクル㈱および子会社)の売上が増加したことによるものです。
戦略売上の増加は、主として、LINE㈱を子会社化したことに加え、FinTech領域の売上が増加したことによるものです。
営業費用(売上原価と販売費及び一般管理費)およびその他の営業損益(その他の営業収益とその他の営業費用)の合計は13,779億円となり、前期比で3,342億円(32.0%)増加しました。これは主として、LINE㈱の子会社化に伴う費用の増加や、ヤフー㈱における販売促進費の増加によるものです。
上記の結果、セグメント利益は、前期比274億円(16.9%)増の1,895億円となりました。
当社グループは、コンシューマ、法人、流通、ヤフー・LINEの4つのセグメントと、それ以外の事業から構成されています。いずれも、受注生産形態をとらない事業であるため、セグメントごとに生産の規模および受注の規模を金額あるいは数量で示すことはしていません。なお、当連結会計年度における販売の状況については以下の通りです。
(注) 1 金額は、外部顧客に対する売上高とセグメント間の内部売上高または振替高の合計です。
2 主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合については、その割合が100分の10以上に該当する相手先がないため、記載を省略しています。
提出会社の第36期における基礎的電気通信役務損益明細表は以下の通りです。
基礎的電気通信役務損益明細表
(注)基礎的電気通信役務損益明細表は、電気通信事業会計規則第5条及び同附則第2項、第3項に基づき記載するものとなります。
(注) 上表の2021年3月31日時点の数値は、企業結合に係る暫定的な会計処理の確定に伴い遡及修正しています。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 6.企業結合 LINE㈱の取得およびLINEグループとZホールディングス㈱の経営統合」をご参照ください。
(資産)
当期末の総資産は、前期末から5,002億円(4.1%)増加し、127,079億円となりました。これは主として、ヤフー㈱の商標権取得などに伴う無形資産の増加1,577億円、銀行事業の住宅ローン残高の増加などを主因とするその他の金融資産の増加1,555億円、投資有価証券の増加1,479億円があったことによるものです。
(負債)
当期末の負債は、前期末から3,490億円(3.7%)増加し、98,196億円となりました。これは主として、有利子負債の増加3,069億円、銀行事業の預金の増加2,406億円があった一方で、営業債務及びその他の債務の減少1,614億円があったことによるものです。有利子負債は、長期借入金の約定弁済が進んだ一方で、当社が2,100億円、Zホールディングス㈱が1,000億円の無担保社債をそれぞれ発行したことや、当社において事業資金を目的とした借入金2,000億円を調達したことなどにより増加しました。営業債務及びその他の債務の減少は、主として、LINE㈱(現Aホールディングス㈱)(注)株式の併合による単元未満株式買い取りに係る未払金の支払いによるものです。
(資本)
当期末の資本は、前期末から1,512億円(5.5%)増加し、28,883億円となりました。これは主として、当期の純利益の計上による増加5,840億円があった一方、剰余金の配当による減少4,679億円などがあったことによるものです。
(注) 汐留Zホールディングス合同会社との吸収合併における存続会社であるLINE㈱を指します。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 6.企業結合 LINE㈱の取得およびLINEグループとZホールディングス㈱の経営統合」をご参照ください。
(注1) フリー・キャッシュ・フロー、割賦債権の流動化による影響、調整後フリー・キャッシュ・フローの算定方法は、「(4) <財務指標に関する説明>IFRSに基づかない指標」をご参照ください。
(注2) Aホールディングス㈱およびZホールディングスグループのフリー・キャッシュ・フロー、LINE㈱との経営統合に伴う子会社の支配獲得による収支、および役員への貸付などを除き、Aホールディングス㈱およびZホールディングス㈱からの受取配当を含みます。
(注3) 設備投資(検収ベース、Zホールディングスグループ除く)には、Zホールディングスグループの設備投資、レンタル端末への投資額、他事業者との共用設備投資(他事業者負担額)およびIFRS第16号適用による影響は除きます。
a.営業活動によるキャッシュ・フロー
当期の営業活動によるキャッシュ・フローは、12,159億円の収入となりました。前期比では1,230億円収入が減少しており、これは主として、前期におけるZホールディングスグループ会社間の配当に係る法人所得税の還付額が当期においてはなかったこと、営業債務及びその他の債務の増加に伴う収入が減少したこと、および銀行事業の預金に係る収入が減少したものの同事業の貸付に係る支出は減少したことなどによるものです。
b.投資活動によるキャッシュ・フロー
当期の投資活動によるキャッシュ・フローは、9,577億円の支出となり、前期比では4,464億円支出が増加しました。これは主として、前期には、株式交換によりLINE㈱を子会社化した際の現金及び現金同等物残高の受け入れに伴う収入3,128億円とLINE㈱株式等の共同公開買付けに伴う収支として1,753億円の支出があり、当期にはヤフー㈱がライセンス契約に伴い商標権などを1,785億円で取得したことによる有形固定資産及び無形資産の取得による支出や、LINE㈱(現Aホールディングス㈱)株式の併合による単元未満株式買い取り1,152億円などの投資の取得による支出があったことによるものです。
c.財務活動によるキャッシュ・フロー
当期の財務活動によるキャッシュ・フローは、3,051億円の支出となりました。これは、当社が2,100億円およびZホールディングス㈱が1,000億円発行した無担保社債、当社における事業資金を目的とした借入金2,000億円の調達や子会社でのコマーシャル・ペーパーの発行などを含む収入合計が20,853億円あった一方で、長期借入金の約定弁済や配当金支払などの支出合計が23,904億円あったことによるものです。
d.現金及び現金同等物の期末残高
a.~c.の結果、当期における現金及び現金同等物の残高は、前期比381億円減の15,468億円となりました。
e.調整後フリー・キャッシュ・フロー
当期の調整後フリー・キャッシュ・フローは、3,520億円の収入となりました。前期比4,788億円減少しましたが、これは上記の通り、営業活動によるキャッシュ・フローの収入の減少、投資活動によるキャッシュ・フローの支出の増加、および割賦債権の流動化の影響によるものです。
f.設備投資
当期の設備投資(検収ベース、Zホールディングスグループ含む)は、前期比330億円減の6,473億円となりました。これは主として、当社の5G設備への投資やZホールディングスグループの設備投資が増加した一方で、前期における竹芝新本社の新規賃貸借契約に伴う使用権資産増加の影響が無くなったことによるものです。
当社の財務戦略については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)経営方針 c.財務戦略」をご参照ください。
(キャッシュ・フロー関連指標の推移)
<各指標の計算方法>
親会社所有者帰属持分比率:親会社の所有者に帰属する持分合計/資産合計
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債(※1)/キャッシュ・フロー(※2)
インタレスト・カバレッジ・レシオ:調整後EBITDA(※3)/支払利息(※4)
(※1) 有利子負債は連結財政状態計算書の流動負債と非流動負債の中の有利子負債の合計値を使用しています。
(※2) キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しています。
(※3) 算出方法は、「(4)<財務指標に関する説明>IFRSに基づかない指標 a.調整後EBITDA」をご参照ください。
(※4) 支払利息は、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しています。
(注1) 上表の2021年3月31日時点の数値は、企業結合に係る暫定的な会計処理の確定に伴い遡及修正しています。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 6.企業結合 LINE㈱の取得およびLINEグループとZホールディングス㈱の経営統合」をご参照ください。
(注2) 当期より、調整後EBITDAの定義を見直し、株式報酬費用を加味することにしました。これに伴い、2021年3月31日に終了した1年間の数値を修正再表示しています。
当社グループは、IFRSで定義されていないか、IFRSに基づき認識されない財務指標を使用しています。経営者は、当社グループの業績に対する理解を高め、現在の業績を評価する上での重要な指標として用いることを目的として、当該指標を使用しています。当該指標はIFRSでは定義されていないため、他社において当社グループとは異なる計算方法または異なる目的で用いられる可能性があります。そのため、比較可能性を担保する観点から、その有用性を制限しています。
a.調整後EBITDA
調整後EBITDAは、営業利益に「減価償却費及び償却費(固定資産除却損を含む)」、「株式報酬費用」および通常の事業活動では発生しない費用・収益である「その他の調整項目」を加減算したものです。「株式報酬費用」については、金額的重要性が増したため、当期より調整後EBITDAの定義を見直し加算することにしました。「その他の調整項目」には、連結損益計算書に記載されている「その他の営業収益」および「その他の営業費用」が含まれています。
当社グループは、非現金取引の影響を除いた業績評価のための指標として調整後EBITDAを使用しています。調整後EBITDAは、当社グループの業績をより適切に評価するために有用かつ必要な指標であると考えています。
営業利益と調整後EBITDAの調整は、以下の通りです。
(単位:億円)
(注1) 上表の「減価償却費及び償却費」には、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 d. 連結キャッシュ・フロー計算書」に記載されている減価償却費及び償却費(2021年3月31日に終了した1年間6,963億円 2022年3月31日に終了した1年間7,234億円)に加えて、同計算書に記載されている固定資産除却損(2021年3月31日に終了した1年間334億円 2022年3月31日に終了した1年間192億円)が含まれています。
(注2) 当期より、調整後EBITDAの定義を見直し、株式報酬費用を加味することにしました。これに伴い、前期の数値を修正再表示しています。
b.営業利益マージンおよび調整後EBITDAマージン
営業利益マージンは営業利益を売上高で除して計算しています。調整後EBITDAマージンは上記a.調整後EBITDAを売上高で除して計算しています。
当社グループは、以下の業績指標を使用しています。
(a) 営業利益マージン
当社グループは、営業利益に対する影響を管理する指標として営業利益マージンを使用しています。
(b) 調整後EBITDAマージン
調整後EBITDAは上記の営業利益から減価償却費及び償却費(固定資産除却損を含む)、株式報酬費用および「その他の調整項目」を加減算して算出されており、調整後EBITDAマージンは本業の経常的な収益性を理解するのに適した指標であると考えます。
当社グループは、上記指標が、当社グループの業績評価をより適切に行うために有用かつ必要な指標であると考えています。
営業利益マージンおよび調整後EBITDAマージンの算定は以下の通りです。
(単位:億円)
(注) 当期より、調整後EBITDAの定義を見直し、株式報酬費用を加味することにしました。これに伴い、前期の数値を修正再表示しています。
c.フリー・キャッシュ・フローおよび調整後フリー・キャッシュ・フロー
フリー・キャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローに投資活動によるキャッシュ・フローを加算して計算される指標です。
調整後フリー・キャッシュ・フローは、フリー・キャッシュ・フローから端末の割賦債権流動化による資金調達額を加算し、当該返済額を減算して計算される指標です。当社グループは、調整後フリー・キャッシュ・フローが、当社グループの実質的な資金創出能力を示し、債務返済能力や事業への追加投資能力の評価を行うために有用な指標であると考えています。
財務活動によるキャッシュ・フローには、割賦債権の流動化による資金調達額および返済額が含まれています。当社グループでは、割賦債権は営業活動の中で発生するものであることから、当該債権の流動化によるキャッシュ・フローを、営業活動によるキャッシュ・フローに加減算したものが、当社グループの経常的な資金創出能力をより適切に表すと考えています。したがって、割賦債権流動化の資金調達額および返済額をフリー・キャッシュ・フローの調整項目として加減算することにより、調整後フリー・キャッシュ・フローを計算しています。
フリー・キャッシュ・フローと調整後フリー・キャッシュ・フローの調整項目および調整額は以下の通りです。
(単位:億円)
(注1) 投資活動によるキャッシュ・フロー(設備支出)に関連するキャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書に含まれる投資活動によるキャッシュ・フローの「有形固定資産及び無形資産の取得による支出」および「有形固定資産及び無形資産の売却による収入」の純額です。
(注2) 投資活動によるキャッシュ・フロー(設備支出以外)に関連するキャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書に含まれる投資活動によるキャッシュ・フローの「投資の取得による支出」、「投資の売却または償還による収入」、「銀行事業の有価証券の取得による支出」、「銀行事業の有価証券の売却または償還による収入」、「子会社の支配獲得による収支(△は支出)」および「その他」の純額です。
(注3) 割賦債権流動化取引:調達額および割賦債権流動化取引:返済額に関連するキャッシュ・フローは、主として連結キャッシュ・フロー計算書に含まれる財務活動によるキャッシュ・フローの「短期有利子負債の純増減額(△は減少額)」、「有利子負債の収入」および「有利子負債の支出」に含まれています。なお、割賦債権流動化取引のうち、短期間で調達および返済を行う取引については純額表示しています。
IFRSに準拠した連結財務諸表の作成において、経営者は、当社グループにとって最適な会計方針を採用し、一定の前提条件に基づく見積りを行う必要があります。連結財政状態計算書上の資産および負債、連結損益計算書上の収益および費用、または開示対象となる偶発負債および偶発資産などに重要な影響を与える可能性がある項目に関して、経営者は、過去の経験や決算日時点の状況として妥当と考えられる様々な要素に基づき見積りを行っています。
また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響については、影響の及ぶ期間とその程度を合理的に推定することはできませんが、感染拡大の収束が遅れた場合には、当社グループの将来収益およびキャッシュ・フローに影響を及ぼしその見積りに一定の不確実性が存在します。このような状況において、連結財務諸表作成時点で利用可能な情報・事実に基づき、新型コロナウイルス感染症の感染拡大期間とその影響のリスクや不確実性を考慮の上、合理的な金額の見積りを行っています。ただし、前提条件や事業環境などに変化が見られた場合には、見積りと将来の実績が異なる場合があります。
以下の各項目は、その認識および測定にあたり、経営者の重要な判断および会計上の見積りを必要とするものです。
a.企業結合により取得した無形資産およびのれんの公正価値測定ならびに減損に係る見積り
企業結合により取得した無形資産およびのれんは、支配獲得日における公正価値で認識しています。企業結合時の取得対価の配分に際しては、経営者の判断および見積りが、連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。企業結合により識別した無形資産(顧客基盤や商標権など)およびのれんは、見積将来キャッシュ・フローや割引率、既存顧客の逓減率、対象商標権から生み出される将来売上予想やロイヤルティレート等の仮定に基づいて測定しています。企業結合により取得した無形資産およびのれんの取得価額は、当連結会計年度は49億円(前連結会計年度は10,381億円)です。
また、無形資産およびのれんの減損を判断する際に、資金生成単位の回収可能価額の見積りが必要となりますが、減損テストで用いる回収可能価額は、資産の耐用年数、資金生成単位により生じることが予想される見積将来キャッシュ・フロー、市場成長率見込、市場占有率見込および割引率等の仮定に基づいて測定しています。
これらの仮定は、経営者の最善の見積りによって決定されますが、将来の不確実な経済条件の変動により影響を受ける可能性があり、仮定の見直しが必要となった場合には連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。
企業結合により取得した無形資産およびのれんの公正価値に関連する内容については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針 (2) 企業結合」および「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 6.企業結合」をご参照ください。無形資産およびのれんの減損に関連する内容については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針 (11) 有形固定資産、使用権資産、無形資産およびのれんの減損」および「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 14.のれんおよび無形資産」をご参照ください。
b.有形固定資産および無形資産の残存価額・耐用年数の見積り
有形固定資産および無形資産は、当社グループの総資産に対する重要な構成要素です。見積りおよび仮定は、資産の帳簿価額および減価償却費または償却費に重要な影響を及ぼす可能性があります。
資産の減価償却費は、耐用年数の見積りおよび残存価額(有形固定資産の場合)を用いて算出されます。資産の耐用年数および残存価額は、資産を取得または創出した時点で見積りを行い、その後、各連結会計年度末に見直しを行います。資産の耐用年数および残存価額の変更は、連結財務諸表に対して重要な調整を必要とする可能性があります。経営者は、資産を取得または創出した時点ならびに見直し時に、同種資産に対する経験に基づき、予想される技術上の変化、除却時の見積費用、当該資産の利用可能見込期間、既存顧客の逓減率、当該資産から得られると見込まれる生産高またはこれに類似する単位数および資産の耐用年数に制約を与える契約上の取決めなどの関連する要素を勘案して、当該資産の耐用年数および残存価額を決定しています。有形固定資産の減価償却費は、当連結会計年度は2,474億円(前連結会計年度は1,979億円)であり、無形資産の償却費は、当連結会計年度は2,197億円(前連結会計年度は1,963億円)です。
有形固定資産および無形資産の帳簿価額・減価償却費または償却費に関連する内容については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 13.有形固定資産」および「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 14.のれんおよび無形資産」をご参照ください。有形固定資産および無形資産の残存価額・耐用年数の見積りに関連する内容については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針 (7) 有形固定資産、(9) 無形資産」をご参照ください。
c.金融商品の公正価値の測定方法
当社グループは、特定の金融商品の公正価値を評価する際に、市場で観察可能ではないインプットを利用する評価技法を用いています。観察可能ではないインプットは、将来の不確実な経済条件の変動の結果によって影響を受ける可能性があり、見直しが必要となった場合、連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。市場で観察可能ではないインプットを用いた金融資産の公正価値は、当連結会計年度末は5,517億円(前連結会計年度末は4,285億円)です。
金融商品の公正価値に関連する内容については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 29.金融商品の公正価値 (1) 公正価値ヒエラルキーのレベル別分類、(2) レベル3に分類した金融商品の公正価値測定」をご参照ください。
d.契約獲得コストの償却期間の見積り
当社グループは、契約獲得コストについて、契約獲得コストに直接関連する財またはサービスが提供されると予想される期間(すなわち、契約獲得コストの償却期間)にわたって、定額法により償却しています。契約獲得コストの償却期間は、契約条件および過去の実績データなどに基づいた解約率や機種変更までの予想期間などの関連する要素を勘案して決定しています。契約獲得コストの償却期間の変更は、連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。契約獲得コストに係る償却費は、当連結会計年度は2,010億円(前連結会計年度は1,681億円)です。
契約獲得コストに関連する内容については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針 (15) 収益 b.契約コスト」および「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 15.契約コスト」をご参照ください。
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