当社グループの事業は、出版事業及び出版付帯事業の単一のセグメントであるため、事業別に記載しております。
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症に対応した各種規制が緩和され、経済活動の正常化への兆しがみられました。しかし、長期化するウクライナ情勢、急激な円安進行、原油や原材料価格の高騰等による景気減速への懸念が強まり、先行きは依然として不透明な状況が続いております。
当社グループの事業領域であります出版業界は、コロナ禍による巣ごもり需要が一巡し、全国の書店数が減少を続けるなど中長期的な縮小傾向に歯止めがかかっていません。出版科学研究所によりますと、出版物の推定販売金額は、当連結会計年度では書籍および雑誌がともに前年を下回り、合計で前期比マイナス6.7%となりました。
このような状況の中、当社グループは、前期の経験に基づく実務書の積極的な開発や大学教材の適切な供給に注力いたしました。
なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)等を当連結会計年度の期首から適用しております。この結果、前連結会計年度と収益の認識方法が異なることから、以下の経営成績に関する説明において前年同期比較は基準の異なる算定方法に基づいた数値を使用しております。
以上により、当連結会計年度の業績は、売上高3,169,931千円(前年同期比0.4%増)、営業利益146,264千円(前年同期比10.1%減)、経常利益169,474千円(前年同期比7.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益172,344千円(前年同期比16.9%増)となりました。
事業別の概況は次のとおりであります。
(出版事業)
会計分野では、任意適用企業が増加してきたIFRSに関して、わが国唯一の公式翻訳書『IFRS基準〈注釈付き〉2022』をはじめ関連書の開発を行ってきました。また、岸田政権のブレーンの手による『「新しい資本主義」のアカウンティング』が話題となったほか、いまだ跡を絶たない会計不正への処方箋を示した『実践 不正リスク対応ハンドブック』、不祥事が発覚した際の会計・監査上の課題にどう対応したかを実際の現場担当者が綴った『経営危機時の会計処理』が、それぞれ好評を博しました。その他、良質な研究書として『戦略的コストマネジメント』『実務に活かす 管理会計のエビデンス』『新版 財務会計の理論と実証』、スタンダードな大学のテキストとして『ビギナーズ会計学』『プラクティカル原価計算』なども刊行いたしました。
経営・経済分野では、教授が自らの経験をもとにアカデミックな視点をまじえて解説した『婚活戦略』がSNSや雑誌・新聞など多くのメディアで話題となり、増刷を重ねました。また、『幸福の測定』もテーマや内容への評価が高く、売れ行きも好調でした。新しい大学テキストとして全国の大学で定番テキストとして採用されている「ベーシック+(プラス)」シリーズでは、『金融論〈第3版〉』『公共経済学〈第2版〉』でアップデートを行い、さらなる採用の拡大を目指しました。環境の変化や読者の要望に対応した『データ分析で読み解く 日本のコーポレート・ガバナンス史』などの新しい教材を開発するとともに、企画テーマを幅広くとらえ、『カゴメの人事改革』などの経営書も開発し、話題となりました。
税務分野では、令和4年1月1日より施行の改正電子帳簿保存法を元東京国税局の情報技術官等を歴任した著者による『改正電子帳簿保存法のすべて』をタイムリーに刊行し、制度全体を網羅した丁寧な解説が評価されて版を重ねました。また、令和3年10月1日から登録申請が開始された消費税のインボイス制度を国税庁のQ&Aの内容に沿って解説した『逐条放談 消費税のインボイスQ&A』は、数多ある類書の中でもその独自性が好評を博し、すでに第2版が好調に推移しています。さらに、期末ギリギリに刊行した『NFT・暗号資産の税務』は予約時点からネット上で注目され、これからの税務分野の新たな話題作りの一翼を担うものと期待されています。
法律分野では、改正個人情報保護法に対応した『プライバシーポリシー作成のポイント』『個人情報保護・管理の基本と書式〈第2版〉』、法務の中心業務である契約実務を解説する『契約解消の法律実務』、新時代の実務をいち早くとらえた『XR・メタバースの知財法務』を刊行し、部数を伸ばしました。また、『スタートアップ法務』『インターネットにおける誹謗中傷法的対策マニュアル〈第4版〉』がレイアウトの工夫や改正内容の大幅な加筆により売れ行き好調でした。さらに、『申請事例からみる交通事故後遺障害の等級認定』『消費生活相談員のための消費者3法の基礎知識』といった、市民生活と密接にかかわる書籍を刊行いたしました。
企業実務分野では、資本コスト経営を理論と実践から解き明かした『事業ポートフォリオマネジメント入門』、さらにESG関連の書籍として『ESG情報開示の実践ガイドブック』を刊行し、版を重ねました。また、改訂コーポレートガバナンス・コードで明記され注目を集めたTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言を解説した『TCFD開示の実務ガイドブック』は順調に部数を伸ばしています。
資格試験分野では、各種資格試験対策本として『司法試験・予備試験 社会人合格者のリアル』『宅建士 出るとこ集中プログラム〈2022年版〉』が部数を伸ばしました。さらに、『社労士の仕事カタログ』『会計士・税理士のための伝わるプレゼン術』が好評でした。
高水準の研究成果の書籍として、『日本企業の利益マネジメント』が日経・経済図書文化賞、日本会計研究学会太田黒澤賞、日本管理会計学会文献賞を、『保守主義会計』が日本会計研究学会太田・黒澤賞を、『中小企業会計とその保証』が日本監査研究学会岩田・渡邊賞を、『原子力発電の会計学』が会計理論学会学会賞を、『課税所得計算の形成と展開』が日本会計教育学会学会賞を、『資源蓄積のジレンマ』が多国籍企業学会「学会研究奨励賞」を受賞するなど、多くの書籍が表彰されました。
生活実用分野では、コンパクトに要点を解説したコンビニエンスストアのプライベートブランド商品『図解 介護のお金とサービス〈2021-2022〉』を刊行いたしました。また、毎年好評を博している愛犬家、愛猫家からの投稿を集めた日めくりカレンダー『犬めくり』『猫めくり』や『花ことばと誕生花の週めくりカレンダー』などの人気商品を継続刊行いたしました。
雑誌については、次のとおりであります。
「企業会計」は会計研究と実務の両面から、最新の論点のみならず伝統的・普遍的な論点も交え、読者の知的好奇心を満たす企画づくりを行っています。「税務弘報」は国税庁から公表される多くの情報を独自の視点で理解、分析した企画や読者に多い税理士事務所に寄り添うテーマなど、オリジナリティに富む誌面づくりを心掛けています。「旬刊経理情報」は旬刊誌としての適時なキャッチアップや、類誌にない分野横断的な切り口で実務情報を提供する一方、来年迎える創刊50周年に向け、より一層読者ニーズに応えるべく活動しております。「ビジネス法務」は法改正や重要判例をいち早く取り上げるとともに、企業のガバナンスやコンプライアンスにおける実用的な記事を提供し、定期購読者数を伸ばしております。
その結果、当社グループの出版事業では売上高3,075,997千円(前年同期比0.9%増)、営業利益136,354千円(前年同期比10.8%減)となりました。
(出版付帯事業)
当社グループの専門雑誌を中心とする広告宣伝の請負代理が主である出版付帯事業は、広告媒体が多様化し紙媒体への広告が大幅に減少する中で、いくつかの新規顧客を開拓いたしました。
その結果、売上高93,934千円(前年同期比12.9%減)、営業利益22,890千円(前年同期比8.5%減)となりました。
(2) 財政状態の状況
(資産)
流動資産につきましては、現金及び預金の増加401,250千円、収益認識会計基準等の適用による返品資産の増加96,330千円並びに商品及び製品の増加19,453千円があったものの、金銭の信託の減少299,982千円、売上債権の減少163,874千円及び有価証券の減少148,022千円などにより前連結会計年度末に比べ96,579千円減少して、3,633,494千円となりました。
固定資産につきましては、建設仮勘定の増加523,081千円及び繰延税金資産の増加14,341千円などにより前連結会計年度末に比べ537,831千円増加して、2,089,700千円となりました。
以上の結果、当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ441,252千円増加して、5,723,195千円となりました。
(負債)
流動負債につきましては、仕入債務の減少36,304千円及び収益認識会計基準等の適用による返品調整引当金の減少65,908千円があったものの、収益認識会計基準等の適用による返金負債の増加150,964千円があったことなどにより前連結会計年度末に比べ54,786千円増加して、851,627千円となりました。
固定負債につきましては、長期借入金の増加276,701千円などにより前連結会計年度末に比べ277,165千円増加して、667,966千円となりました。
以上の結果、当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ331,952千円増加して、1,519,593千円となりました。
(純資産)
純資産につきましては、その他有価証券評価差額金の減少25,738千円があったものの、利益剰余金の増加135,038千円があったことなどにより前連結会計年度末に比べ109,300千円増加して、4,203,601千円となりました。
(3) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の期末残高は1,949,276千円となり、前連結会計年度末に比べて111,150千円の増加となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況と要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は203,347千円(前年同期比151,100千円増)となりました。これは主に、返品資産の増加96,330千円、有価証券売却益75,621千円、法人税等の支払額73,128千円、返品調整引当金の減少65,908千円、仕入債務の減少36,304千円があったものの、税金等調整前当期純利益245,096千円、売上債権の減少163,874千円、返金負債の増加150,964千円などがあったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は349,694千円(前年同期比297,488千円増)となりました。これは主に、有価証券の売却による収入182,616千円があったものの、有形固定資産の取得による支出529,541千円などがあったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は252,491千円(前年同期は29,724千円の使用)となりました。これは、配当金の支払額37,508千円があったものの、長期借入れによる収入290,000千円があったことによるものです。
キャッシュ・フロー関連指標の推移
(注)1 各指標の算出は、以下の算式を使用しております。
自己資本比率 :自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率 :株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率 :有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ :営業キャッシュ・フロー/利払い
2 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。
3 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式総数(自己株式控除後)により算出しております。
4 有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っているすべての負債を対象としております。
5 キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息支払額を使用しております。
当社グループの事業は、出版事業及び出版付帯事業の単一セグメントであるため、事業別に記載しております。
当連結会計年度における生産実績は、次のとおりであります。
(注) 1 事業間取引については、相殺消去しております。
2 金額は、販売価格によっております。
当社グループは見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
当連結会計年度における販売実績は、次のとおりであります。
(注) 1 事業間取引については、相殺消去しております。
2 総販売実績に対する割合が、100分の10以上の相手先別の販売実績及びその割合は、次のとおりであります。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2022年9月30日)現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成にあたっては、過去の実績や取引状況等を勘案し、会計基準の範囲内かつ合理的と考えられる見積り及び判断を行っている部分があり、その結果を資産・負債及び収益・費用の数値に反映しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
(2) 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度は、
2020
年初頭から発生した新型コロナウイルス感染症の蔓延による影響を引き続き受けたものの、前年の経験をもとにできる限りの市場対応を果たすことに努めました。
このような状況の中、当社グループの中核事業である出版事業では、前連結会計年度の状況に大きな変化がないことを前提に、実務書については在宅勤務対応として郊外型書店へのアプローチやウェブ販売への対応、大学教材については製作時期・数量、販売ルートを精査して適量送本の徹底を図りました。結果として返品数が減少したことにより売上高が横ばいとなりましたが、営業利益、経常利益とも前年度より減少いたしました。
これにより、経営成績は以下のとおりとなりました。
(売上高)
当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度に比べ 14,000 千円増加し、 3,169,931 千円( 0.4 %増)となりました。これは主に、注文書籍売上の増加と注文書籍返品の減少によるものです。
(売上原価・販売費及び一般管理費)
売上原価は、前連結会計年度より増加し
2,109,651
千円(1.5%増)となりました。その結果、売上総利益は
25,780
千円減少し、
1,060,280
千円(1.6%減)となりました。
販売費及び一般管理費は、支払手数料、租税公課、荷造運搬費などが増加したものの、給与及び手当、退職給付費用などが減少したことなどにより、前連結会計年度とほぼ同額の914,015千円(1.0%減)となりました。
(営業利益)
営業利益は、上記により前連結会計年度に比べ 16,357 千円減少し、 146,264 千円( 10.1 %減)となりました。
(営業外損益・特別損益)
経常利益は、営業外収益 23,272 千円、営業外費用 61 千円を計上したものの、前連結会計年度に比べ 14,046 千円減少し、 169,474 千円( 7.7 %減)となりました。また、特別利益として有価証券売却益 75,621 千円を計上したことにより、税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度に比べ 61,575 千円増加し、 245,096 千円( 33.6 %増)となりました。
(法人税、住民税及び事業税)
親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ 24,940 千円増加し、 172,344 千円( 16.9 %増)となりました。これは、法人税、住民税及び事業税 76,084 千円、法人税等調整額 3,332 千円計上したことによるものです。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。
当社グループの事業運営上必要な運転資金は、原則として自己資金で賄うこととしております。今後も、所要資金は「営業活動によるキャッシュ・フロー」を源泉とした自己資金調達を原則とする方針であります。また、多額の資金が必要となった場合は、必要資金の性格に応じて金融機関からの借入、資本市場からの直接調達も検討する方針であります。
なお、当連結会計年度において新社屋の建設費に充当するため、金融機関より長期借入金として290,000千円の借入を行いました。また、2023年3月にも210,000千円の借入を行う予定であります。
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおり、様々なリスク要因が当社グループの経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。
そのため、当社グループは、外部環境の変化に留意しつつ、人材の確保・育成、リスク分散、社内の統制を維持・向上させることなどにより、経営成績に重要な影響を与える可能性のあるリスクを分散、回避し、リスクの発生を抑え、適切に対応していく所存であります。
経営戦略の現状と見通しについては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
当社グループの経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、次のとおりであります。
当社グループは、安定した経営基盤を維持・構築し、もって良質な出版を継続し、かつ、安定した株主還元を行うことを目標としており、そのため1株当たり純資産額を重視し、その増大を意識しながら経営を行っております。
当連結会計年度の1株当たり純資産額は1,126.79円となり、前連結会計年度に比べ2.7ポイント増加いたしました。また、第80期を基準として5会計年度を比較すると、微増傾向で推移しているものと認識しております。
(注) 東京証券取引所スタンダード市場のデータ算出にあたっては、同取引所の資料によっております。なお、2022年4月の東京証券取引所の市場区分の変更により、2021年9月までは旧東証第二部市場の1株当たり純資産額を採用し、2022年9月以降は東証スタンダード市場の1株当たり純資産額を採用しております。
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