当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況(以下、「経営成績等」という。)の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等に関する認識及び分析、検討内容は以下のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(以下、「連結財務諸表規則」という。)第93条の規則によりIFRSに準拠して作成しています。連結財務諸表の作成にあたり、経営者の判断に基づく会計方針の選択と適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りが必要となりますが、その判断及び見積りに関しては連結財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき合理的に判断しています。しかしながら、実際の結果は、見積り特有の不確実性を伴うことから、これら見積りと異なる可能性があります。
なお、再生可能エネルギー事業は多額の初期投資を必要とする事業であり、減価償却費等の償却費の費用に占める割合が大きくなる傾向にあります。一過性の償却負担に過度に左右されることなく、企業価値の増大を目指し、もって株式価値の向上に努めるべく、当社グループでは業績指標として金利・税金・償却前利益であるEBITDAを重視しています。
当社グループの連結財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針、会計上の見積り及び判断は、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 3 重要な会計方針」、「2 作成の基礎 (5) 見積り及び判断の利用」に記載しています。
(2) 経営成績の分析
①事業全体及びセグメント情報に記載された区分ごとの状況
a.事業全体の状況
世界のエネルギー市場は、2015年末のCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会合)における、2020年以降の温暖化対策の国際枠組みについての合意を契機とし、各国政府や金融業界の脱炭素化に向けたグローバルでの取り組みが加速し、化石燃料から再生可能エネルギーへのエネルギーシフトが進展しています。2021年2月には、米国のバイデン政権が地球温暖化対策の国際枠組みである「パリ協定」に正式に復帰し、同4月には気候変動サミット、同10月には国連気候変動枠組条約第26回締約国会合(COP26)が開催される等、世界的な温室効果ガス排出量削減に向けた取り組みの実効性が一層高まりました。更に、ベトナムやフィリピン等、東南アジア各国においても、今後の再生可能エネルギーの供給割合として掲げていた目標をさらに引き上げる等、脱炭素化に向けた動きが活発化しています。
このような状況の中、国内再生可能エネルギー市場においては、固定価格買取制度(FIT制度)(*1)下の買取実績は引き続き増加しています。2020年6月には「強靱かつ持続可能な電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律(エネルギー供給強靭化法)」が成立し、再生可能エネルギーの主力電源化や、災害時の迅速な電力供給の復旧等、強靱かつ持続可能な電気の供給体制の確立に向けた取り組みが推進されています。また、経済産業省が「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を公表し、再生可能エネルギー電源の比率を50~60%に高めることを参考値として示しました。その上で、2021年10月に閣議決定された第6次エネルギー基本計画における2030年度の電源構成は、第5次エネルギー基本計画では22~24%であった再生可能エネルギー電源の比率が、野心的な目標として36~38%程度に大幅に引き上げられました。このように、再生可能エネルギー導入に対する政府の支援姿勢は継続しており、今後も、国内再生可能エネルギー市場は、より一層拡大していく見通しです。
(*1)固定価格買取制度(FIT制度):
「再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法」(再エネ特措法)に基づき、買取義務者が再生可能エネルギーで発電された電力を固定価格で一定期間買い取る制度です。太陽光、バイオマス、風力、地熱及び水力等により発電された電力が当該制度に基づいて電気事業者に販売され、その買取価格及び買取期間等は経済産業省・資源エネルギー庁の調達価格等算定委員会や関係省庁の意見に基づき経済産業大臣が決定します。
2015年1月に、太陽光発電所や風力発電所等の自然変動電源による発電量が大幅に増加した場合でも電力需給バランスを保ち、電力供給の安定化を図ることを目的とし、出力抑制ルールを拡充する制度改定が行われています。出力抑制ルールに基づき、一般送配電事業者は、一定条件のもとで再生可能エネルギーを電源とする発電所による系統への送電電力の数量や質に制限を加えることができます。
当連結会計年度における当社グループの「再生可能エネルギー発電事業」においては、運転開始済みの大規模太陽光発電所、バイオマス発電所及び陸上風力発電所(合計設備容量約593.1MW)の発電量は順調に推移しました。2021年6月に苅田バイオマスエナジー株式会社が運転を開始、2021年10月に軽米尊坊ソーラー匿名組合事業が運転を開始しました。なお、2021年7月に持分法適用会社である苅田バイオマスエナジー株式会社(設備容量75.0MW)の株式を追加取得し(10%分)連結子会社としました。また、2021年10月には連結子会社である軽米尊坊ソーラー匿名組合事業(設備容量40.8MW)の出資持分を追加取得(9%分)しました。結果、いずれも連結子会社として当社グループの業績に寄与しています。更に、2021年10月に持分法適用会社のベトナム社会主義共和国クアンチ省における複数の陸上風力発電事業(合計設備容量144.0MW)が営業運転を開始しました。
また、当連結会計年度において、九州電力管内において出力制御(出力抑制)が行われました。これにより、当社グループの九重ソーラー匿名組合事業が23日(計61.5時間)、大津ソーラー匿名組合事業が23日(計67時間)稼働を停止しました。また、苅田バイオマスエナジー株式会社が、68日(計292.5時間)の出力抑制(送電端において定格出力の80%に抑制)に対応しましたが、これに伴う当社グループの逸失発電量は、当社の計画における想定の範囲内でした。
「再生可能エネルギー開発・運営事業」においては、引き続き、国内外の新たな発電所の建設及び開発が進捗しています。
2021年6月に熊本県で開発を進めている株式会社南阿蘇湯の谷地熱(持分法適用会社)、8月にはフィリピン共和国イフガオ州にて建設を進めている水力発電事業のKIANGAN MINI HYDRO CORPORATION(持分法適用会社)及び合同会社唐津バイオマスエナジー(持分法適用会社)を通じて開発を主導する大型バイオマス発電事業について、それぞれ金融機関との間で融資関連契約を締結しました。この結果、当社グループの運転中及び建設中の事業の設備容量は合計で約1GWとなり、業容は順調に拡大しています。この他、建設着工済み又は運転開始済みの発電所SPC(*2)からの定常的な運営管理報酬(*3)及び配当・匿名組合分配益(*4)を享受しています。
開発中事業については、秋田由利本荘洋上風力事業に関して、当社の持分法適用会社である秋田由利本荘洋上風力合同会社が、「秋田県由利本荘市沖(北側・南側)海洋再生可能エネルギー発電設備整備促進区域」における事業者の公募に応募しましたが、事業者に選定されませんでした。これに伴い、秋田由利本荘洋上風力合同会社に対する当社の出資持分に対する損失の計上及び関連する費用処理等を計上致しました。
なお、ロシアによるウクライナ侵攻に伴い資源価格・電力市場価格は高騰していますが、当社グループへの当連結会計年度に対する影響は軽微であります。また、提出日現在において、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う、電力市場の急激な悪化、当社グループの発電所の運転、建設及び開示済み事業の開発が困難となる事象は発生していません。
(*2)SPC:
特別目的会社(Special Purpose Company)のことを指しています。当社グループでは基本的に発電所毎に共同事業者が異なること、また、プロジェクトファイナンスを行う上でリスク分散を図ることを理由として、発電所を立ち上げる毎にSPCを設立し、当該SPCに発電所を所有させています。なお、当社グループにおいてはSPCを株式会社として設立して株式による出資を行う場合、合同会社(GK)として設立して持分による出資を行う場合に加え、SPCを会社法上の合同会社(GK)として設立して商法上の匿名組合(TK)として営業者に出資を行う場合(TK-GKスキーム)があります。TK-GKスキームの主な特徴としては匿名組合員が有限責任であること及び営業者であるSPCの段階で法人税課税が発生せず、匿名組合員に直接課税されることが挙げられます。
(*3)運営管理報酬:
発電所建設の工程管理、決算及び金融機関へのレポーティング等の業務に代表され、発電所の建設期間及び売電期間に亘り支払われる報酬です。なお子会社や関連会社に対する当社の持分に相当する運営管理報酬については、連結決算上は連結グループ内取引として連結消去されています。
(*4)配当・匿名組合分配益:
「再生可能エネルギー発電事業」に属するSPCが株式会社ないし合同会社として運営されている場合は、当該SPCから当社へ支払われた配当金については当社単体の営業外収益に計上され、また、これはセグメント間取引として「再生可能エネルギー開発・運営事業」のセグメント利益に反映されます。
また、「再生可能エネルギー発電事業」に属するSPCが匿名組合として運営されている場合は、当該SPCで計上された利益のうちの当社出資割合分相当額についてその発生年度に匿名組合分配益として当社単体の売上高に計上し、一方損失が発生した場合は、その損失のうちの当社出資割合分相当額を匿名組合分配損として当社単体の販売費及び一般管理費へ計上しています。これらもセグメント間取引として「再生可能エネルギー開発・運営事業」のセグメント利益に反映されます。
これらの結果を受けた、当連結会計年度における経営成績は次のとおりです。
(注)1.EBITDA=売上収益-燃料費-外注費-人件費+持分法による投資損益(由利本荘洋上風力除く)+その他の収益・費用
2.EBITDAマージン=EBITDA/売上収益
3. EBITDAはNon-GAAP指標です。
4. EBITDAの算定式に、秋田由利本荘洋上風力合同会社に関する持分法による投資損益と開発事業関連損失は含めていません。
5. 第1四半期連結会計期間より、徳島津田バイオマス発電所合同会社の損益を連結子会社として当社グループの連結決算に取り込んでいます。
6. 第2四半期連結会計期間より、苅田バイオマスエナジー株式会社の損益を連結子会社として当社グループの連結決算に取り込んでいます。
セグメント別の業績は以下のとおりとなりました。各セグメントの業績数値につきましては、セグメント間の内部取引高等を含めて表示しています。また、セグメント利益は、EBITDAにて表示しています。再生可能エネルギー事業は多額の初期投資を必要とする事業であり、全体の費用に占める減価償却費等の償却費の割合が大きい傾向にあります。当社グループでは、一過性の償却費負担に過度に左右されることなく、企業価値の増大を目指すべく、株式価値の向上に努めています。そのため、業績指標として金利・税金・償却前利益であるEBITDAを重視しています。
(報告セグメントごとの売上収益)
(単位:百万円)
(注)1.連結損益計算書の売上収益の10%以上を占める相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりです。なお、下記の主な相手先の販売実績はいずれも12ヶ月分の販売実績となります。
(報告セグメントごとの利益又は損失)
(単位:百万円)
(注)セグメント利益は、売上収益から燃料費、外注費、人件費を差し引き、持分法による投資損益(由利本荘洋上風力除く)、並びにその他の収益・費用を加算したEBITDA(Non-GAAP指標)にて表示しています。
なおEBITDAの算定式に、秋田由利本荘洋上風力合同会社に関する持分法による投資損益と開発事業関連損失は含めていません。
(3) 財政状態の分析
当社グループでは、資本効率を向上させながら大型の再生可能エネルギー発電所の開発投資を行うために、金融機関からの長期の借入れを活用しています。また、財務健全性を適切にモニタリングする観点から、保有する資産の実態的な価値を把握するほか、資本比率や親会社所有者帰属持分比率、純有利子負債とEBITDAの倍率(純有利子負債/EBITDA倍率)等の指標を重視しています。
当連結会計年度における親会社の所有者に帰属する当期利益の計上による利益剰余金の増加及び当社子会社及び関連会社が保有する為替予約の公正価値変動によるその他の資本の構成要素の増加等により、当連結会計年度末の資本比率は17.7%(前連結会計年度末は11.3%)、親会社所有者帰属持分比率は10.8%(前連結会計年度末は6.9%)となりました。また、純有利子負債/EBITDA倍率(純有利子負債と直近の12ヶ月間に計上したEBITDAの倍率。なお、純有利子負債は、借入金及び社債、リース負債、並びにその他の金融負債に含まれる金融負債の合計から、現金及び現金同等物並びに引出制限付預金を差し引いた金額と定義)は、苅田バイオマスエナジー株式会社の連結化による純有利子負債の増加等により当連結会計年度末において12.5倍(前連結会計年度末は11.5倍)となりました。
(資産の部)
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ75,677百万円増加し、296,223百万円となりました。主な増減要因は、苅田バイオマスエナジー株式会社の連結化を要因として引出制限付預金の増加(+6,819百万円)、営業債権及びその他の債権の増加(+2,411百万円)、有形固定資産の増加(+43,332百万円)、無形資産の増加(+17,709百万円)、及び主に連結子会社保有の為替予約の公正価値変動によるその他の金融資産(非流動)の増加(+9,333百万円)、並びに(4)キャッシュ・フローの状況に記載の要因による現金及び現金同等物の減少(△2,892百万円)、及び関連会社である秋田由利本荘洋上風力合同会社に対する当社の出資持分について持分法による投資損失を計上したこと等による、持分法で会計処理されている投資の減少(△2,865百万円)です。
合同会社唐津バイオマスエナジー(当社の持分法適用関連会社)は2021年8月31日に金融機関との間で融資関連契約を締結し、佐賀県唐津市における木質バイオマス専焼発電所の建設、運転へ向けてのプロジェクトファイナンスを組成しました。同社に対する当社持分は出資比率、配当比率ともに35.0%です。なお、当社は唐津バイオマス発電所の完成日以降に、共同出資会社の一部が保有する同社への出資持分(16.0%)を買い増す権利(コール・オプション)を有しています。当該権利を全て行使した場合には、当社の出資比率、配当比率ともに51.0%となります。
(負債の部)
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ48,100百万円増加し、243,782百万円となりました。
主な増減要因は、苅田バイオマスエナジー株式会社の連結化及び長期借入れの実行による借入金の増加 (+61,928 百万円 ) 、約定に従った長期借入金の返済による借入金の減少 (△14,655百万円) 、関連会社であるバイオマス発電事業SPCが保有する為替予約の公正価値変動を主要因として計上される持分法適用負債(その他の非流動負債の一部)の減少 (△6,815百万円) 、連結子会社が保有する金利スワップの公正価値変動等によるその他の金融負債(非流動)の減少( △3,134百万円 )です。
(資本の部)
当連結会計年度末の資本合計は、前連結会計年度末に比べ27,577百万円増加し、52,441百万円となりました。
主な増減要因は、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上等による利益剰余金の 増加(+1,581百万円) 、苅田バイオマスエナジー株式会社の連結化等による非支配持分の 増加(+10,943百万円) 、連結子会社及び関連会社が保有する為替予約の公正価値変動を主要因とするその他の資本の構成要素の 増加(+15,030百万円) です。
(4)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末と比較して2,892百万円減少し、16,514百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの増減要因は、次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、12,154百万円の収入(前年同期は12,469百万円の収入)となりました。主なキャッシュ・イン・フローは、「再生可能エネルギー発電事業」における売電先からの売電収入及び「再生可能エネルギー開発・運営事業」における再生可能エネルギー発電事業SPCからの事業開発報酬収入です。主なキャッシュ・アウト・フローは、「再生可能エネルギー発電事業」における発電設備の維持管理費用、事業用地の賃借料、各種税金、バイオマス燃料の仕入及び「再生可能エネルギー開発・運営事業」における開発支出(人件費等を含む)です。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、18,524百万円の支出(前年同期は13,483百万円の支出)となりました。主なキャッシュ・アウト・フローは、持分法で会計処理されている投資の取得による支出2,930百万円、主に建設中のバイオマス発電所における有形固定資産の取得による支出15,440百万円です。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は、3,366百万円の収入(前年同期は9,778百万円の収入)となりました。主なキャッシュ・イン・フローは、長期借入れによる収入20,704百万円です。主なキャッシュ・アウト・フローは、長期借入金の返済による支出14,655百万円です。
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