業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

① 財政状態及び経営成績の状況

 当事業年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が依然として大きく、持ち直しの動きは見られるものの、個人消費などが厳しい状況を脱しきれないまま推移しました。

 この間、当社におきましては、当社施設を通じた新型コロナウイルス感染拡大を防止するため、細心の注意を払いながら集客に努め、収入の確保を目指しましたが、政府の3度目の緊急事態宣言を受けて、4月25日から5月31日まで「あべのアポロシネマ」を臨時休館するに至り、6月1日の営業再開後も3週にわたり土曜日、日曜日を休館したほか、間隔を空けての座席販売及び営業時間短縮を実施しました。その後、土・日営業と全席販売を再開しましたが、4度目の緊急事態宣言が発出され、8月2日から9月30日まで再び間隔を空けての座席販売及び営業時間短縮を余儀なくされました。10月以降は通常営業に戻りましたが、長期間に亘り営業の制約を受けたため、本格的な収入回復には至りませんでした。これらの結果、売上高は3,001,191千円(前期比5.0%増)となり、諸経費全般に亘って鋭意節減に努めました結果、営業利益は135,179千円(前期比44.3%増)、経常利益は159,058千円(前期比25.6%増)、当期純利益は108,018千円(前期比96.3%増)となりました。

 各セグメントの状況は次のとおりであります。

a.シネマ・アミューズメント事業

シネマ・アミューズメント事業部門におきましては、劇場事業では、“劇場版 呪術廻戦 0”“シン・エヴァンゲリオン劇場版”“東京リベンジャーズ”“名探偵コナン 緋色の弾丸”“花束みたいな恋をした”“竜とそばかすの姫”“マスカレード・ナイト”“僕のヒーローアカデミアTHE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション”“スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム”“るろうに剣心 最終章 The Final”などを上映して観客誘致に努めました。また、新型コロナウイルス感染症が拡大する中、安全・安心に映画をご覧いただけることを第一に考え、従業員の健康管理を徹底するとともに、お客様にマスクの着用、消毒液の使用及び体温の測定をお願いし、抗ウイルス・抗菌加工済みの館内の消毒を継続、サーモグラフィーカメラを増設するなどあらゆる感染予防対策を徹底しました。その上で、「スクリーン8」の座席リニューアル、空調機自動制御機器の更新など、より快適な鑑賞環境づくりに力を注ぐとともに、自動券売機を増設して省人化を進めました。この結果、劇場事業と同様に、臨時休業や営業時間短縮を余儀なくされた娯楽場事業を含めた部門全体の収入合計は、収益認識会計基準等の適用による影響額を含め996,921千円(前期比8.5%減)となり、営業原価控除後では30,374千円の営業損失(前期は102,404千円の営業損失)となりました。

同事業の収入等は次のとおりであります。

区分

単位

当事業年度

(令和3年2月1日から
令和4年1月31日まで)

前年同期比(%)

劇場入場人員

千人

658

13.7

劇場稼働率

劇場収入

千円

906,456

12.5

娯楽場収入

千円

90,465

△68.1

合計

千円

996,921

△8.5

 

  (注)当社の劇場稼働率は以下の算式で計算しておりますが、当事業年度は「映画館における新型コロ

     ナウイルス感染拡大予防ガイドライン」を遵守した営業を続けたことにより、「一日の収容能力」

     が一定せず、評価指標としての有効性に欠けると判断したため、算出しておりません。

稼働率=

入場人員

一日の収容能力(定員×興行回数)×興行日数

 

 

 

b.不動産事業

不動産事業部門におきましては、新型コロナウイルス感染拡大を防止するため、アポロ・ルシアス両ビルにおける抗ウイルス・抗菌加工済みの共用部の消毒を継続するとともに、テナントへの情報提供に努めてまいりました。また、アポロビルにおいて、非常用放送設備、防犯カメラ及び空調機の更新、階段照明器具LED化、テナント誘致に伴う区画整備等の諸工事を実施し、ビルの機能強化を図りました。ルシアスビルにおいても、給排気ファン、空調制御設備及び蓄電池設備の更新、防火シャッター改修等に計画的に取り組むなど、より安全で快適なビルづくりを推進しました。また、賃貸収入の確保に向けて、空室部分への後継テナント誘致に注力し、ビル入居率の維持に努めましたが、新型コロナウイルス感染拡大に伴い来館者数が低調に推移し、空室発生や賃料減額により、駐車場等ビル付帯事業並びにその他の事業を含めた部門全体の収入合計は、収益認識会計基準等の適用による影響額を含め2,004,269千円(前期比13.3%増)となり、営業原価控除後では454,416千円(前期比7.5%減)の営業利益となりました。

同事業の収入等は次のとおりであります。

区分

単位

当事業年度

(令和3年2月1日から
令和4年1月31日まで)

前年同期比(%)

不動産賃貸収入

千円

1,789,996

14.8

不動産付帯収入

千円

187,483

△3.2

その他事業収入

千円

26,789

66.9

合計

千円

2,004,269

13.3

不動産賃貸
稼働率

アポロビル

96.21

あべのルシアス

97.32

合計

96.95

 

(注) 不動産賃貸稼働率=

賃貸面積

賃貸可能面積

 

 

 当事業年度末における資産は、前事業年度末に比較して11,793千円増加し、5,770,694千円となりました。これは短期貸付金の増加210,162千円等によるものであります。また、負債は前事業年度末に比較して69,858千円減少し、3,549,178千円となりました。これは設備関係未払金の減少76,759千円等によるものであります。純資産につきましては、当期純利益の計上額が支払配当額を上回ったため、前事業年度末に比較して81,651千円増加し、2,221,515千円となりました。

 ② キャッシュ・フローの状況

当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、営業活動による収入が投資活動及び財務活動による支出を下回ったため、前事業年度末に比較して16,313千円減少し、当事業年度末は84,524千円となりました。

また、当期中における各キャッシュ・フローは次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
 当事業年度において営業活動で得られた資金は、税引前当期純利益の計上及び減価償却費等により550,825千円となりました。前事業年度と比較しますと、資産・負債勘定の増減により運転資本が増加したため、485,695千円収入額が増加しております。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
 当事業年度において投資活動で使用した資金は、固定資産の取得等により464,253千円となりました。前事業年度と比較しますと、短期貸付金の増加等により291,168千円支出額が増加しております。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
 当事業年度において財務活動で使用した資金は、長期借入金の返済等により102,885千円となりました。なお、前事業年度は運転資金として短期借入金を調達したこと等により115,440千円の収入超過であったため、財務活動で使用した資金は前事業年度と比較して増加しております。

 ③ 生産、受注及び販売の実績

当社は、受注生産形態をとる事業を行っていないため、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額及び数量で示す記載をしておりません。

このため、販売の実績については、「①財政状態及び経営成績の状況」における各セグメントの業績に関連付けて記載しております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

  経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

  なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 ① 重要な会計上の見積り及び見積りに用いた仮定

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この作成にあたり、過去の実績や現在の状況等に応じた合理的な判断に基づき仮定及び見積りを行っております。これらのうち主なものは以下のとおりでありますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果と異なる場合があります。

なお、会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響に関する仮定については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載のとおりであります。

 a.固定資産の減損

当社は、固定資産を劇場事業、不動産賃貸事業、その他の事業にグルーピングした上で、その回収可能価額について将来キャッシュ・フロー、正味売却価額等の前提条件に基づき見積っております。従って、当初見込んでいた収益が得られなかった場合や、将来キャッシュ・フローなどの前提条件に変更があった場合、固定資産の減損損失が発生する可能性があります。

 b.繰延税金資産の回収可能性

当社は、繰延税金資産の回収可能性を判断するに際して、将来の課税所得を合理的に見積り、将来減算一時差異のうち将来課税所得を減算できる可能性が高いものについて繰延税金資産を計上しております。従って、今後、経営環境の変化等により将来の課税所得の見積額が大きく変動した場合等には繰延税金資産の計上額が変動する可能性があります。

 ② 当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

(経営環境の変化)

当社の事業拠点であるあべの・天王寺エリアでは、「あべのハルカス」や「あべのキューズモール」等の大型施設の開業により街の魅力が高まるとともに来訪者が増加し、当社におきましても、これらに合わせて営業強化に取組んでまいりました。

シネマ・アミューズメント事業部門では、あべの・天王寺エリア唯一の映画館である「あべのアポロシネマ」への一層の集客を目指し、「あべのハルカス」「あべのキューズモール」「天王寺ミオ」などの周辺施設と共同イベントを実施しております。同時に、映画会員制度「アポロシネマメンバーズ」会員の獲得に努め、会員向けのメールマガジンを通じて顧客とのコミュニケーションを深めるとともに、事前のクレジットカード決済が不要なチケット予約システムの利便性を訴えること等により、誘客に努めてまいりました。

また、不動産事業部門では、安全で快適なビル環境を目指して耐震補強工事を完成させるなど計画的に設備更新・改良工事を進めております。

当社といたしましては、今後ともお客様の視点に立った質の高いサービスの提供、安全・快適な環境の整備を推進するとともに、シネマ・アミューズメント事業と不動産事業との有機的な連携による販売活動を展開してまいります。また、地域間競争に生き残るためにも、あべの・天王寺エリアの魅力を更に高める周辺施設とのタイアップを引き続き推進し、これらの相乗効果により経営成績の向上を目指してまいります。

(経営成績に重要な影響を与える要因)

当社の経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「2 事業等のリスク」に記載しております。

このうち、当事業年度において特に留意すべき要因についての分析としては、大規模感染症による映画興行成績及び賃貸ビル稼働状況への影響が挙げられます。

(経営成績等の分析・検討)

経営成績に重要な影響を与える要因を踏まえた当事業年度の経営成績の状況に関する分析は次のとおりであります。

 a.売上高及び営業利益

事業年度は、新型コロナウイルス感染症の影響が依然として大きい中、各事業において当社施設を通じた感染拡大を防止するために細心の注意を払いながら、集客に努め、収入の確保を目指しました。

シネマ・アミューズメント事業では、安全・安心に映画をご覧いただけることを第一に考えてあらゆる対策に注力いたしましたが、「あべのアポロシネマ」の臨時休館や、間隔を空けた座席販売、営業時間の短縮など長期間に亘り営業の制約を受けたため、本格的な収入の回復には至りませんでした。

動産事業では、感染拡大防止に向けた諸施策をはじめ安全・快適なビルづくりを推進しました。また、賃貸収入の確保に向けて空室部分への後継テナント誘致に注力し、ビル入居率の維持に努めましたが、来館者数は低調に推移いたしました。

れらの結果、売上高は前期に比較して5.0%増の3,001,191千円となり、諸経費全般に亘って鋭意節減に努めました結果、営業利益は前期に比較して44.3%増の135,179千円となりました。

 b.経常利益

常利益は、営業外収益で新型コロナウイルス感染拡大に伴う雇用調整助成金等の受給もあり、前期に比較して25.6%増の159,058千円となりました。

 c.当期純利益

当期純利益は、新型コロナウイルス感染拡大防止に向けた大阪府からの休業等の要請に応じたことによる協力金を特別利益に計上したほか、政府の「緊急事態宣言」及びこれを受けた大阪府の「緊急事態措置」に基づく「あべのアポロシネマ」ほか該当施設の臨時休館中の固定費等を特別損失に計上したこともあり、前期に比較して96.3%増の108,018千円となりました。

(経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標)

事業年度のROA(総資産経常利益率)は2.8%(前事業年度は2.2%)、営業利益率は4.5%(前事業年度は3.3%)であります。当事業年度において、ROA及び営業利益率が前事業年度に比べていずれも改善したのは、依然、新型コロナウイルス感染拡大が経営成績に大きな影響をもたらす中、前期に比べて利益が増加したためであります。今後、感染拡大の収束とともに事業環境の変容に対応しながら、さらなる改善に努めてまいります。

 ③ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社の資金需要の主なものは、映画フィルム料、商品仕入れ、「あべのルシアス」に係る大阪市との「保留床一括賃貸借契約」に基づく不動産賃借料等の各事業運転資金及び一般管理費のほか、維持更新投資等に関する設備資金であります。

これらの資金需要に対応するため、短期資金については各事業が生み出す営業キャッシュ・フローに加え、当座貸越による金融機関からの借入れにより流動性を確保しております。長期資金については金融機関から固定金利で調達することにより金利上昇リスクに対応するとともに年度別返済額の平準化を図っております。

また、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、金融機関の当座貸越枠を確保し、資金の流動性の確保に万全を期しております。

なお、余剰資金は、親会社である近鉄グループホールディングス株式会社のキャッシュマネジメントシステムに預入を行っております。

 

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