研究開発活動

5 【研究開発活動】

当社グループ(当社および連結子会社)は、当社、雪印種苗㈱および雪印ビーンスターク㈱を中心に、コーポレートスローガン「未来は、ミルクの中にある。」に基づき、事業戦略上急務となっている研究開発課題や、中長期的成長の基盤となる基礎研究を幅広く実施しております。

原材料価格の高騰による調達コストの上昇、また国内外の乳・乳製品需給が変動する中、環境変化を先取りして消費者に受け入れられる商品を継続的に提案するために、乳(ミルク)の価値を中軸に「市場対応型商品」と「付加価値型商品」を両輪とした商品開発を行っております。また、商品開発を支える研究開発として、乳(ミルク)の機能を中心とした「おいしさ」と「健康機能」の追求と、「環境配慮」を主軸とした基礎研究と技術開発に取り組んでおります。

 

当連結会計年度の研究開発費の総額は4,348百万円です。

各セグメント別の主な研究開発活動は次のとおりです。

〈乳製品〉

当連結会計年度の研究開発費の総額は1,828百万円です。

●当社

コロナ禍による家飲み需要が伸長するなか、おつまみ向けの「6Pチーズ ペッパー入り」「ガーリック ベビーチーズ」の発売を行いました。「6Pチーズ ペッパー入り」は、ホワイト、ブラックの2種類のペッパーをバランス良く配合し、おつまみにぴったりな刺激のある味わいに仕立てました。「ガーリック ベビーチーズ」は、現在販売されている商品との差別化のため、他社にないフレーバーで、チーズとの相性が良いガーリック味を選定し、風味豊かに仕立てました。

また、リモートワークが定着していく過程において朝食の喫食率が上昇していることから、朝食時のチーズトーストやサンドイッチなどに使いやすい新商品として「雪印北海道100 とろけるスライス バターブレンド(7枚入り)」「スライスチーズ(13枚入り)」「とろけるスライス(13枚入り)」の発売を行いました。「雪印北海道100とろけるスライス バターブレンド(7枚入り)」は、北海道産生乳100%で作ったナチュラルチーズとバターを原材料とし、豊かな香りとコクのある味わいに仕立てました。本商品を通して国産生乳の付加価値向上、需要拡大へ繋げて参ります。「スライスチーズ(13枚入り)」「とろけるスライス(13枚入り)」はファミリーユースを想定し、ご家族どなたでも召し上がれるように、クセのないマイルドな風味に仕立てました。

油脂カテゴリーでは「発酵バター仕立てのマーガリン」「北海道練乳 ソフト」の発売を行いました。「発酵バター仕立てのマーガリン」は、認知度は上昇しているものの、未だ喫食経験が低い「発酵バター」を15%配合し、気軽に発酵バターの風味を楽しんでいただけるマーガリンに仕立てました。「北海道練乳 ソフト」は北海道練乳を2%配合し、練乳を想起させる甘さと、パンスプレッドとして飽きの来ない塩味をバランス良く仕立てました。

今後も様々な食シーンの提案と、たゆまざる商品力向上へ取り組んで参ります。

 

乳製品事業における「おいしさ」と「健康機能」に関する研究を行い、おいしさを構成する技術と、当社独自の乳製品の健康機能の深耕を目的に検討を行い、得られた研究成果(新知見、新技術、新手法など)を乳製品の商品開発と商品力強化、および当社独自の機能性素材の価値向上に活用致しました。

主な研究成果は以下の通りです。

・マーガリンにおける香気成分の発現機構の解明を目的に、20種類の香気成分を添加した2種類のモデルマー

 ガリンを調製した。香気分析の結果、香気物質の官能基、LogP、モノグリセリドに結合した脂肪酸の飽和度

 により、モデルマーガリンから遊離する香気成分の量が異なっていた。ラクトンの遊離は、香気物質の炭素

 鎖とモノグリセリドの脂肪酸鎖間の分子間相互作用の影響を受けること、不飽和アルデヒドとエステルと脂

 肪酸の遊離は、香気物質の界面への吸着に対するモノグリセリドの脂肪酸鎖の立体障害の有無が影響するこ

 とが推察された。

・共同研究により、LC-MS/MSを用いて天然の菜種油中の-OOH基の結合位置を特定する分析手法を構築してい

 る。この手法を用い、合成した脂肪酸鎖長の異なる5種類のトリグリセリドを用いて、酸化により生成した-

 OOH基が、当該手法により分析できることがわかった。

・乳タンパク質が炭酸水素イオン存在下で金属イオンと複合体を形成する性質を活用し、試料に含まれる金属

 イオンを可溶化状態で分離し高い効率で回収する金属回収方法を検討した。その結果、WPI濃度0.125%、炭酸

 水素ナトリウム濃度20 mMで複合体を形成させ、限外濾過膜処理でFe3+を100%回収した。金属をCu2+、

 Zn2+に変えた場合にも同様に回収可能であった。しかし、金属種によって複合体形成に必要なタンパク質濃

 度、炭酸水素ナトリウム濃度、金属イオンの回収率等が異なった。大豆などの植物に由来するタンパク質素

 材では、素材によって複合体形成に必要なタンパク質濃度、金属イオンの回収率等が異なった本技術は、特

 殊な薬剤を使用せず、限外濾過膜処理のみの単純な工程で金属イオンを回収する、簡便で効率的な方法にな

 り得る。

これらの研究成果は日本食品科学工学会、日本農芸化学会の各学会で発表しました。

 

●雪印ビーンスターク㈱

「赤ちゃんとお母さんをはじめ、家族の健康といきいきしたくらしをサポート」する商品をお客様にご提供するために、「母乳調査研究」、「乳幼児の食生活実態調査」をはじめとする赤ちゃんに関する調査研究、「妊産婦・授乳婦の食事調査」などの調査研究を実施しています。これらの調査研究をもとに、粉ミルク・ベビーフードなどの赤ちゃん向け商品、お母さんのための母親向け商品、シニア世代の健康をサポートする食品などの幅広い商品の開発を行っています。

今年度は、妊娠中の女性向け商品「ビーンスタークマム 葉酸+鉄」を2021年7月より特長が判りやすい表示にパッケージをリニューアルいたしました。

生後9か月頃からのベビーおやつ「栄養プラスシリーズ」3品を2021年9月より発売しました。お母さんがお子さまに与えたい栄養素や成分である「鉄」、「カルシウム」、「乳酸菌」、「オリゴ糖」、「食物繊維」を配合した赤ちゃん向けサプリメントおやつです。

口腔ケア用「リフレケア 滅菌スポンジブラシ」を2021年9月より、北海道と九州の一部のドラッグストア並びに、雪印ビーンスタークオンライン(通信販売)にて発売しました。一般用スポンジブラシとして日本初の滅菌加工を行っています。

乳児用調製粉乳「ビーンスターク・すこやかM1」、乳児用調製液状乳「ビーンスターク・液体ミルク すこやかM1」、フォローアップミルク「ビーンスターク・つよいこ」を2022年3月よりデザイン・表示変更を行いリニューアル発売しました。母乳研究の成果を生かし、母乳の脂肪球膜に多く含まれ、脳に大切な成分「ホスファチジルセリン」を表示に追加しました。また、「ビーンスターク・つよいこ」にはカラダを守る成分「オステオポンチン」も表示に追加しました。

1才半頃からの口中清涼食品「ビーンスターク ハキラ」7品につきましては、小粒化と大幅なデザイン変更を行い、2022年3月よりリニューアル発売しました。1袋当たりの重量と価格はそのままに、粒数を45粒から60粒に増量し、お得感と満足感のある商品規格に変更いたしました。

研究開発では、雪印メグミルク㈱と当社による第3回全国母乳調査を継続して実施しています。本調査では、日本全国1,210名の授乳中の女性にご協力をいただき、母体の健康状態、ライフスタイル等の要因が母乳成分にどのように影響するか、また母乳成分が児の成長にどのように関連するかなどを明らかにするために実施しております。本年度は、ご協力いただいた対象者の家庭環境や健康状態、母乳中の主要成分の分析、さらには児の健康状態のデータをまとめ、本調査の母集団特性としてまとめました。この結果、産後1-2ヵ月の母乳成分の粗タンパク質量や脂肪量は過去の文献等と同様な傾向を示しました。また、本調査の母乳サンプルの一部を用いて、免疫や脳の発育に重要なオステオポンチンや、脂肪酸、ビタミンD、リン脂質の定量も実施しており、本内容は、BMJ Open誌にて報告しました。全国母乳調査は、5歳になるまで母子の健康に関する追跡調査を計画しております。今後、母乳に含まれる栄養素や生理活性物質の分析、母乳育児や母子の健康、子どもの発達に影響を与える生活習慣や環境要因を調査してまいります。

また本調査を活用し、育児ストレスに関する解析結果をNutrients誌において報告いたしました。本研究では、育児ストレスが母乳育児のタイプ(完全母乳の群、または混合栄養の群)と関連するかどうかを検討しました。育児ストレスは、「育児疲れ」、「子どもの成長が心配」、「パートナーの協力が得られない」の3つの項目からなる日本語の有効な尺度で測定しました。この結果、産後6ヵ月後には差が認められなかったものの、産後2ヵ月の時点では完全母乳の群は混合栄養の群に対して、育児ストレスの低減が認められたことから、完全母乳の優位性について報告いたしました。今後も「母乳のちから」を探求し、粉ミルクの機能の向上を目指して開発を進めていきたいと考えています。

 

〈飲料・デザート類〉

当連結会計年度の研究開発費の総額は1,557百万円です。

●当社

牛乳・乳飲料カテゴリーにおいては、2021年3月に発売した「MBPドリンク100ml」の市場定着と拡大に取組んでまいりました。飲料タイプとして初めてとなる「骨密度を高める」機能性表示食品として、松岡修造さんを起用したTVCM投入等、積極的なマスプロモーション展開も実施してまいりました。2022年度においても、プロモーション投入を含め更なる拡大を目指して参ります。

色物飲料については、下期から「Doleワイナリー」「ベジサポ速菜チャージ」の2アイテムを発売。いずれもこれまでにないコンセプト、更に常温販売も可能なロングライフ商品という特性を活かして、チルド売場のみならず、ドライ売場やレジ前販売、陳列什器を使用した突き出し販売など、様々な展開を行ってまいりました。

「Doleワイナリー」については、11月のボジョレーや12月のクリスマスといった催事に合わせた露出による飲料シーンの提案、「ベジサポ速菜チャージ」については、手軽に一食分の野菜が摂取できる機能性表示食品(「脂肪や糖の吸収を抑える」・「おなかの調子を整える」)として、市場での定着・拡大に取り組んでおります。

ヨーグルトカテゴリーは、6月にキリンとの協業商品となる機能性表示食品「記憶ケアヨーグルトβラクトリン」を発売。機能性ヨーグルトの市場低迷や競争激化もあり、販売は苦戦しております。(但し、下期に発売した宅配専用「記憶ケアβラクトリン」(白物乳飲料)については、当初想定を上回る実績進捗となっております。)

更に、下期には「乳酸菌ヘルベヨーグルト」(食べるタイプ)を発売。こちらもドリンクタイプ同様、通年での定番定着へ向けて、取組みを継続しています。

デザートカテゴリーでは、2021年春に「Parfait Style」を発売。当社独自の積層技術による4層仕立てのデザートとして、新たなデザートの楽しみ方の提案を行ってまいりました。また「栗原さんちのおすそわけ」については、添付ソースを廃止。装いも新たにリニューアルし、素材本来のシンプルな味わいが楽しめるデザートとしてご好評いただき、前年を大きく上回る実績となっております。

更に秋からは、これまでにはない新たなチルドデザートとして、「ジュレグルト」を発売。みずみずしいフルーツジュレと、北海道産生クリームを使用したコクのあるヨーグルトを組み合わせた2層仕立てのデザートで、当初エリア限定での発売としていましたが、2月より全国発売となりました。

飲料・デザート類事業における「おいしさ」、「健康機能」に関する研究では、主に当社独自のプロバイオティクス乳酸菌や乳素材の機能性の深耕を目的に検討を行い、得られた研究成果(新知見、新技術、新手法など)を「ヨーグルト」、「牛乳、乳飲料」などの商品開発に応用し、商品力強化に活用致しました。また、環境に配慮した容器包装についても研究を続けております。

主な研究は以下の通りです。

・ホイップクリームディスペンサーを使用し、タンパク質分散液の発泡特性に対するガスとタンパク質の種類

 の影響を調査した。その結果、泡の安定性に対する影響はタンパク質の種類による影響も見られたが、ガス

 の種類による影響の方が大きいことがわかった。

・ヨーグルト製造においてホエイ粉添加によりカード強度や保水性に影響を与えることがわかっている。そこ

 で、ホエイ粉中の各成分がカード形成に与える影響について検討した。その結果、ホエイ粉中のミネラルの

 添加量が多いほどカード強度が低下した。しかし、加熱時におけるκカゼイン脱離量とカード強度との関係

 性はなかった。また、ミネラルは加熱時よりもカード形成過程中に、カード強度を低下させることが示唆さ

 れた。

・睡眠の特性や睡眠に関わる遺伝子はヒトとショウジョウバエの間でよく保存されている。そこで、モデル動

 物であるキイロショウジョウバエを用い、これまでに、ハエの睡眠を有意に促進する乳酸菌株Lactobacillus

 plantarum SBT2227を見出し、さらに効果の大きいBifidobacterium adolescentis SBT2786を特定した。

 SBT2227及びSBT2786を摂取したハエにおいて脳についてRNAseqによるトランスクリプトーム解析をし、発現

 が変化する遺伝子を抽出した。また、インシュリンシグナルがこれらSBT2227とSBT2786の睡眠促進効果に関

 与することが示唆された。

これらの研究成果は、論文としてJournal of Food Engineering誌に掲載され、日本食品保蔵科学会、日本分子生物学会の各学会で発表しました。

 

〈飼料・種苗〉

当連結会計年度の研究開発費の総額は962百万円です。

●雪印種苗㈱

飼料分野では、弊社が共同出資して設立した新会社「ホクレンくみあい・雪印飼料株式会社」の製造工程が飼料製品の消化性に与える影響を検討しました。新たに設備導入した高温高圧膨化加工装置により調製したペレットは、従来のペレットに比べてデンプン消化率と蛋白質バイパス率が向上することを確認しました。弊社では、このペレットを配合した飼料製品を2021年12月から製造・供給しています。

 周産期(分娩前後の時期)には体脂肪の動員に大きな変化が起こることから、飼養管理が難しいとされていま

す。弊社では、機能成分シリマリンを配合した周産期の飼料サプリメント「レバリン」を開発し、2022 年1月か

ら販売開始しました。分娩前後の疾病対策、分娩後の産乳の正常化に貢献する製品として、普及を進めていま

す。

 弊社が本年度に実施した粗飼料分析の測定点数は過去最高の9,914点となりました。北海道内における本年度の

1番草・2番草・トウモロコシサイレージの栄養成分の傾向を解析し、お客様の飼料設計に活用しています。

牧草・飼料作物種子分野では、寒地型牧草として開発しているオーチャードグラス「わせじまん(東北8号OG)」のOECD登録が完了しました。また、アルファルファ「カール(Karlu)」が北海道優良品種審議会において北海道優良品種に認定されました。アルファルファはタンパク質供給源として貴重な飼料作物です。本品種は北海道で栽培されている主要草種チモシーとの混播生育特性に優れていることから、現行品種「ケレス」と並んで粗飼料の栄養価を改善する自給飼料作物として開発を進めていきます。

 暖地型牧草では、既存の牧草品種に比べて収量性・耐倒伏性に優れるイタリアンライグラス「たちモン(KYI-

01)」を農業・食品産業技術総合研究機構と共同開発しており、品種登録出願を行いました。

 畑作・園芸種苗分野では、作型の異なる複数のダイコン品種について良好な栽培特性を確認し、市場導入に向

けて推進しています。前年度に販売開始したカボチャ「栗てまり」の抑制栽培・品種比較に関する技術資料を作

成し、普及に取り組んでいます。

 緑肥作物開発では、土壌中で不溶化したリン酸の吸収を助けるアーバスキュラー菌根菌の増殖が期待されるヒ

マワリの特性とヒマワリ半身萎凋病(バーティシリウム属菌)抵抗性を併せ持つ新品種「NS-クルナ」の開発を完

了し、2022年度春季からの発売に向けて準備を進めています。肥料原料が高騰している現状の環境に対応する緑

肥作物として普及を進めていきます。

 環境緑化分野では、千葉県と共同育種したクリーピングベントグラス品種「CY-4」が開発の最終段階を迎え

ています。現行品種「CY-2」よりも耐病性に優れ、密度が高くゴルフ場グリーンに適している品種特性を圃場

で実証し、市場に導入する予定です。

 生理活性物質関係では、北海道大学・明治大学・弊社の共同研究において、乳酸菌の培養液に含有されるフェ

ニル乳酸がトリプトファンと共存することによって植物の発根を促進する作用があることを解明し、Plant

Biotechnology誌に発表しました。乳酸菌培養液を作物生産へ有効利用する基礎的な知見として、また、日本古来

の有機質肥料であるボカシ肥料の作用機作の一部を解明したものとして注目されています。

 

当社グループは、今後もコーポレートスローガンである「未来は、ミルクの中にある。」を基本に、乳(ミルク)の可能性の追求および酪農生産への貢献を目指した、高付加価値で独自性のある商品の開発を進めてまいります。

 

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得

お知らせ

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得