業績

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1)経営成績等の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 経営成績の状況

当連結会計年度における経済環境は、新型コロナウイルスのワクチン接種が進んだものの、変異株の流行による感染再拡大による緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の実施、加えてウクライナをめぐる不安定な国際情勢により、依然として厳しい状況にありました。

このような厳しい経営環境においても、当社グループは、中期方針「未知の可能性への挑戦!」に基づき、変化し続けるお客様ニーズに応え、安定した収益確保と継続的な成長を果たすため、“イノベーションと顧客開発”及び“企業体質の再建”を柱とした事業戦略を推進しております。併せて、企業の潜在力である人材力、開発力、環境対応力を高める経営を継続し、企業体質の強化に取り組んでおります。

当連結会計年度の連結業績は、売上高1,097億71百万円(前連結会計年度比11.2%増)、営業利益109億1百万円(同27.1%増)、経常利益119億27百万円(同26.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益85億53百万円(同36.8%増)となりました。営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益においては、過去最高を更新しました。

 

 

当連結会計年度のセグメントの概況は、次のとおりであります。

(車輌資材事業)

世界的な半導体不足、東南アジアにおける新型コロナウイルス感染症拡大、原油高による原材料価格の高騰により、全世界で自動車の生産、販売活動に大きな影響が及びました。

国内事業は、4月~6月において新型コロナウイルスの影響からの回復が見られたものの、8月以降、世界的な半導体不足による減産や、原材料価格の高騰の影響を大きく受け、前期比で減収・減益となりました。一方、海外事業では、各国が経済活動を再開するなか、特に中国経済の回復が大きく、「クオーレ®」をはじめとする差別化商品の販売が堅調に推移し、車輌資材事業全体では前期比で増収・増益となりました。

当事業の売上高は644億46百万円(前連結会計年度比9.5%増)、営業利益は76億35百万円(同15.7%増)となりました。

(ハイファッション事業)

新型コロナウイルス感染症拡大による衣料品の主力販売店舗休業の影響を受け、ファッションアパレル、インナーアパレルは伸び悩みましたが、アウトドア人口増加の影響により、スポーツアパレルは順調に推移し、前期比で増収・増益となりました。

しかしながら、淘汰が進むアパレル業界では、国内外で老舗ブランドや大手アパレルの大規模な店舗数削減の動きが見られ、生き残りをかけた競争は一層厳しさを増しています。

近年、アパレル業界や消費者において、環境に配慮したモノづくりに関心が高まるなか、差別化商品を小ロット・短納期・在庫レスで製造する当社独自のデジタルプロダクションシステム「Viscotecs®」に注目が集まっております。多彩な商品展開を在庫レスで実現し、バーチャル試着で好みの商品をオーダーできる「Viscotecs make your brand®」は、DX(デジタルトランスフォーメーション)を具現化したものであり、時代にマッチした衣料品の製造販売プラットフォームと考え、事業の拡大に注力しております。

当事業の売上高は186億28百万円(前連結会計年度比13.7%増)、営業利益は1億78百万円と、前連結会計年度比で5億16百万円の増益となりました。

(エレクトロニクス事業)

新型コロナウイルス感染症拡大により、一部のエレクトロニクス商品で、客先での販売不振や在庫調整の影響を受けました。しかし、リモートワークの急速な拡大や外出機会の減少による巣ごもり需要、オリンピック開催を背景としたハードディスクやテレビの需要の高まり、また、海外向けスマートフォン用商材の採用獲得等により、導電性素材「プラット®」やKBセーレン㈱の「ザヴィーナ®」ワイピングHDD テープの売上高が増加しました。今後は、強度・弾性率に優れた「ゼクシオン®」(LCP)や耐熱性・耐薬品性に優れた「グラディオ®」(PPS)を始めとしたエンプラ繊維において、新規顧客開拓並びに用途開発を進めてまいります。

また、人工衛星事業については、製造、販売を開始しており、今後、量産化を目指してまいります。

当事業の売上高は105億34百万円(前連結会計年度比10.9%増)、営業利益は16億53百万円(同29.4%増)となりました。

(環境・生活資材事業)

新型コロナウイルス感染症拡大により大きく落ち込んだ前年に対して、売上高・利益共に前期実績を上回りました。ハウジング資材関連は住宅着工数の回復、住生活資材関連は、病院・介護向けに機能性を高めた製品の受注増加等が売上高に貢献しました。また、産業資材関連ではエクステリア等の新規顧客開拓により、売上高を伸ばしました。

当事業の売上高は85億35百万円(前連結会計年度比17.0%増)、営業利益は9億19百万円(同23.0%増)となりました。

(メディカル事業)

化粧品事業は、前年度は新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けましたが、コモエース直営店の回復、自社EC サイトの強化により、売上高を伸ばしました。

また、医療用資材では、貼付材とエスパンシオーネの絆創膏用途が拡大しました。

コロナ禍において発売した高性能抗ウイルスマスク「BYERUS®」の開発で培った抗ウイルス技術については、インテリア、介護分野等、異なる分野へ応用展開を進めております。

当事業の売上高は67億33百万円(前連結会計年度比16.0%増)、営業利益は13億83百万円(同20.4%増)となりました。

 

(その他の事業)

㈱ナゴヤセーレンの不動産賃貸管理事業等が堅調に推移しました。

当事業の売上高は8億93百万円(前連結会計年度比3.6%増)、営業利益は5億15 百万円(同2.5%増)となりました。

 

② 財政状態

(資産の部)

 当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末と比較して107億91百万円増加の1,554億93百万円となりました。流動資産は、現金及び預金が減少した一方で棚卸資産が増加し、前連結会計年度末と比較して52億45百万円の増加となりました。固定資産は、投資有価証券の時価評価が減少した一方で海外を中心とした設備投資により有形固定資産が増加し、前連結会計年度末と比較して55億46百万円の増加となりました。

(負債の部)

負債の部は、設備関連の未払金が増加した一方で、借入金を返済したことで、全体で1億55百万円減少し、636億48百万円となりました。

(純資産の部)

純資産は、為替換算調整勘定の変動、利益剰余金の増加などにより、全体で109億47百万円増加し、918億45百万円となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は354億51百万円となり、前連結会計年度末より40億46百万円減少しました。

「営業活動によるキャッシュ・フロー」は、97億12百万円の収入(前連結会計年度は129億58百万円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益117億5百万円、減価償却費48億63百万円があった一方で、棚卸資産の増加による支出40億3百万円があったことによるものです。

「投資活動によるキャッシュ・フロー」は、86億52百万円の支出(前連結会計年度は18億89百万円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出75億36百万円があったことによるものです。

「財務活動によるキャッシュ・フロー」は、66億23百万円の支出(前連結会計年度は123億17百万円の収入)となりました。これは主に、借入金の返済による支出45億6百万円、配当金の支払による支出19億31百万円があったことによるものです。

 

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a. 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

当連結会計年度(百万円)

前年同期比(%)

車輌資材

28,838

11.3

ハイファッション

11,223

13.4

エレクトロニクス

6,992

5.1

環境・生活資材

2,067

8.0

メディカル

3,625

9.0

その他

-

-

合計

52,747

10.6

 

(注) 1. 当社企業集団の各事業は、素材の支給を受けて委託加工を行う事業と素材を仕入れて加工を行い販売する事業から成り、各々の加工高を生産実績としております。

2. セグメント間の取引については、内部振替前の数値によっております。

 

b. 受注状況

当社及び連結子会社は、受注生産形態をとらない製品が多いため、セグメントごとに受注状況は記載しておりません。

 

c. 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

当連結会計年度(百万円)

前年同期比(%)

車輌資材

64,446

9.5

ハイファッション

18,628

13.7

エレクトロニクス

10,534

10.9

環境・生活資材

8,535

17.0

メディカル

6,733

16.0

その他

893

3.6

合計

109,771

11.2

 

(注) 1. セグメント間の取引については相殺消去しております。

2. 相手先別の販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10を超える相手先がいないため、主な相手先に対する販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合の記載は省略しております。

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

① 経営成績の分析

(売上高と営業利益)

当連結会計年度の売上高と営業利益の分析につきましては、「(1)経営成績等の概要 ① 経営成績の状況」に記載のとおりであり、売上高原価率は70.7%と前連結会計年度比1.0ポイントの低下、また、売上高営業利益率は9.9%と前連結会計年度比1.2ポイントの上昇となりました。

 

(営業外損益と経常利益)

当連結会計年度の営業外損益は10億26百万円の利益となり、前連結会計年度の8億71百万円の利益から1億54百万円の増加となりました。これは、雇用調整助成金が6億29百万円減少した一方で、為替差損益が6億12百万円増加したこと、及び補助金収入により雑収入が1億2百万円増加したことなどによります。この結果、経常利益は119億27百万円と、前連結会計年度比24億75百万円(26.2%)の増益となりました。

 

(特別損益)

当連結会計年度の特別損益は2億22百万円の損失となり、前連結会計年度の12億52百万円の損失から10億29百万円の改善となりました。これは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で操業休止関連費用として11億64百万円を計上した前連結会計年度と比較して、特別損失が減少したことなどによるものです。

 

(親会社株主に帰属する当期純利益)

経常利益の119億27百万円に特別損益の損失2億22百万円を減じた結果、当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は117億5百万円となりました。ここから税金費用31億16百万円及び非支配株主に帰属する当期純利益35百万円を控除した親会社株主に帰属する当期純利益は85億53百万円となり、前連結会計年度比23億1百万円(36.8%)の増益となりました。この結果、1株当たり当期純利益は159円43銭となり、前連結会計年度の113円80銭から45円63銭増加しました。

 

当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

② 財政状態の分析

当連結会計年度の財政状態の分析につきましては、「(1)経営成績等の概要 ② 財政状態」に記載のとおりであります。

 

③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a. キャッシュ・フローの分析

当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであり、営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを差し引いた当連結会計年度のフリー・キャッシュフローは10億59百万円となりました。

 

b.資本の財源及び資金の流動性係る情報

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、製商品仕入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要のうち主なものは、海外子会社を中心とした生産能力増強のための設備投資であります。

当社グループは、事業の拡大や新規事業構築のための戦略的設備投資、グローバル化投資、研究開発投資及びM&A等に資金を機動的に活用するとともに、リスクを許容できる十分な株主資本の水準を保持することを基本方針としております。これに従い、営業活動によるキャッシュ・フローの確保に努めるとともに、不足分については、基本的に銀行借り入れによる調達を実施しております。

 

なお、キャッシュ・フロー等に関する主要指標の推移は、下記のとおりであります。

 

2018年
3月期

2019年
3月期

2020年
3月期

2021年
3月期

2022年
3月期

自己資本比率(%)

63.0

58.5

62.0

55.0

58.2

時価ベースの自己資本比率(%)

97.2

72.4

57.0

72.1

76.8

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)

1.1

2.0

1.1

2.7

3.1

インタレスト・カバレッジ・レシオ

201.9

123.1

176.7

260.1

310.9

 

(注)自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
 

   1. 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しています。

 2. 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式総数(自己株式控除後)により算出しています。

3. 営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、短期借入金、長期借入金及び新株予約権付社債を対象としています。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の「利息の支払額」を使用しています。

 

④ 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える見積り、判断及び仮定を使用することが必要となります。当社グループの会計方針のうち、見積り等の重要性が高いものは以下のとおりです。

 

(固定資産及びのれんの減損会計における将来キャッシュ・フロー)

固定資産及びのれんのうち減損の兆候がある資産または資産グループにつき、将来の収益性が著しく低下した場合には、固定資産及びのれんの帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上することとしております。この回収可能価額については、事業計画に基づく将来キャッシュ・フローによる見積りに依存するため、経営環境の変化等によりその見積り額が減少した場合、減損損失の計上が必要となる可能性があります。

なお、減損会計に係る会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。

 

(繰延税金資産の回収可能性)

将来の課税所得を合理的に見積り、回収可能性を評価した上で繰延税金資産を計上しております。将来の課税所得は過去の業績及び事業計画等に基づいて見積っておりますが、税制改正や経営環境の変化等によりその見積り額が減少した場合、繰延税金資産が減額され税金費用を計上する可能性があります。繰延税金資産の詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(税効果会計関係)」に記載のとおりです。

当連結会計年度において、新型コロナウイルス感染症の収束時期の見通しは困難であるものの、固定資産の減損や繰延税金資産の認識の見積りを要する会計処理に際して、2020年より生じている国内外の経済活動への悪影響は、ワクチン普及等により緩やかに正常化が進むものと仮定しております。なお、新型コロナウイルス感染症の収束時期等の見通しには不確実性を伴うため、実際の結果はこれらの仮定と異なる可能性があります。

 

⑤ 目標とする経営指標の達成状況等

当社及び当社グループは、グループトータルの企業価値を最大にするための連結経営を基本としております。その目標とする連結経営指標は、売上高営業利益率10%以上、ROE(自己資本当期純利益率)10%以上を目標としております。さらには、ROA(総資産事業利益率)、自己資本比率、キャッシュ・フローなどを念頭に、企業価値を高めるための経営を行ってまいります。

なお、当連結会計年度の連結売上高営業利益率は9.9%(前連結会計年度8.7%)、ROEは10.1%(同7.9%)でした。

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