課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社が判断したものであります。
 
 

(1)経営の基本方針

当社グループは、「21世紀のグッドカンパニー」の実現を目指し、株主・取引先・社員・地域社会の皆様方から高い信頼を得られる企業経営を基本方針としております。この方針のもと、株主、お客様の視点に立ち、「五ゲン主義(原理・原則・現場・現物・現実)」活動を共通の意識として、企業構造の革新と企業体質の改革に積極的に取り組んでおります。また「のびのび いきいき ぴちぴち」の経営理念のもと、社員一人ひとりが自主性・責任感・使命感を持ち、不条理・矛盾を許さないフェア精神とコンプライアンス精神とを持って企業活動を行っております。これらを確実に推進することによって、より高い付加価値の創造と企業価値の向上、さらには企業の社会的責任を果たすことにつながるものと考えております。

(2)経営環境及び中長期的な会社の経営戦略と対処すべき課題等

企業業績や個人所得に改善が見られるものの、新型コロナウイルス感染症の収束時期は未だ予測が難しく、先進諸国の政策動向、そして原油価格や為替変動など、企業を取り巻く環境は依然不透明な状況が続き、経営環境については一層の注視が必要です。セーレングループは、変化し続ける経営環境においても、常にお客様のニーズに応え、かつ安定した収益確保と継続的な企業成長を果たすため、当社グループの企業文化である「五ゲン主義」に立ち返り、特に、仕事の原理「個々の役割と責任のもと、ひとりひとりが仕事を付加価値に結び付けていく」に基づいた仕事を確実に実行してまいります。その基本戦略は下記の4点であります。
①「IT化・ビジネスモデル転換」・・ITを活用し、新しいビジネスモデルを構築
②「非衣料・非繊維化」・・・・・オンリーワン技術の活用による新規事業の創出
③「グローバル化」・・・・・・・地球規模での事業展開
④「企業体質の改革」・・・・・・のびのび いきいき ぴちぴちで、強い企業体質へ
 これら4つの基本戦略の制定から今日に至るまで、幾たびの経済環境や社会構造、そして流通構造の激しい変化がありました。それらを越えた今、得られた成果を評価すると、この基本戦略は、いつの時代においても将来を見据えた確かな戦略であったと確信しております。次の新たな飛躍を目指し、「素材から製品化、BtoBからBtoC」を中期事業戦略におき、従来よりも付加価値の高い流通ポジションにおける販売事業拡大を進め、高収益モデルへの転換に取り組んでまいります。

① IT化・ビジネスモデル転換

企画・製造・販売の「流通一貫機能」と原糸製造から縫製までの「一貫生産体制」による「小ロット・短納期・在庫レス・オンネット・低コスト・省資源・省エネルギー」を進化させ、生活者のニーズ・CS(顧客満足度)に100%対応しつつ、究極の環境対応策であるムダ・ロスのゼロを実現する21世紀型ビジネスモデルの完成を目指します。

1)DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、当社独自のデジタルプロダクションシステム「Viscotecs®」とSCM(サプライチェーン・マネジメント)システムをさらにレベルアップさせ、ビジネスモデルの基盤を強化。

2)パーソナルオーダーシステム「Viscotecs make your brand®」の販売拡大に向け、継続して経営資源を投入。バーチャル試着など利便性を高めたシステム開発やコンテンツ開発を推進し、在庫レス小売を目指した新しいビジネスモデルによるSPA事業を拡大するとともに、BtoBビジネスにおいても、同システムの事業を展開。

3)原糸製造から縫製までの「一貫生産体制」を活用し、製品化・部品化の拡大及びBtoCビジネスの拡大。

4)生産工場のスマートファクトリー化による業務効率化・生産性向上推進。

② 非衣料・非繊維化

繊維技術を事業展開シーズとして、そこから派生する繊維加工技術、応用化学、機械工学、ITを活用し、車輌資材事業、エレクトロニクス事業、環境・生活資材事業、メディカル事業の非衣料・非繊維分野の事業を拡大してまいります。

1)金属、陶器、樹脂、ガラス、コンクリートなどの非繊維材料において、省資源・省エネルギーでさまざまな顧客ニーズに対応する非繊維ビスコテックス・システム外販ビジネスの市場拡大と拡販。
非繊維ビスコテックスの生産を行うSV工場における小ロット、短納期、高付加価値商品の事業拡大。(用途:車輌用インストルメントパネル、インテリア資材など)

2)車輌内装材向けの高級感と優れた機能性を備えた“革を超える新素材”「クオーレ®」の拡販及びファッション、産業資材分野等における新規用途開拓。
さらなる快適機能や高耐久性能の付加、非繊維ビスコテックスとの融合による高付加価値品の開発と拡販。

3)繊維と金属の複合化技術により差別化を高めた導電性素材「プラット®」の用途開発と市場拡大及び拡販。

4)KBセーレン㈱のエンプラ繊維である、LCP繊維「ゼクシオン®」並びにPPS繊維「グラディオ®」の用途開発と市場開拓及び拡販。

5)セーレンKST㈱における、5G・光通信用デバイス向け材料や、超小型ディスプレー用光学エンジンの開発及び市場開拓。

6)シルクたんぱく質「セリシン」をベースにした当社オリジナル化粧品「コモエース®」シリーズやヘルスケア商品の拡販、及びセリシンの優れた機能である保湿、美白、酵素安定、細胞保護、抗酸化機能などを応用した医療分野などへの参入・拡販。

7)瞬間消臭機能を備えた「デオエスト®」(用途:アンダーウエア)、「イノドールクイック瞬感消臭®」シリーズ(用途:ブランケット、シーツ、介護商品など)の拡販。

8)人工衛星及び人工衛星部品の開発・製造・販売等、宇宙関連分野の事業拡大。

③ グローバル化

少子高齢化による人口減少、国内市場縮小が見込まれるなか、今後さらなる経済成長が期待される新興国市場での収益拡大を図るとともに、グローバルでの最適地生産・最適地仕入等、グループ経営の強化を進めてまいります。

1)海外新拠点拡充による車輌資材事業の世界シェア拡大。新たにハンガリーに生産拠点を設立し、2022年度に合成皮革の車輌シート材の量産を開始予定。環境意識の高い欧州において拡販を進める。

2)Saha Seiren Co.,Ltd.(タイ)における「Viscotecs®」を中核とする原糸から製品までの衣料一貫生産の安定稼動と衣料製品事業の拡大。

3)上海を拠点とする世聯美仕生活用品(上海)有限公司(中国)によるセーレングループ差別化商材の拡販。

④ 企業体質の改革

1)意識改革

A)仕事の目的を理解し、その目的を完遂するための役割と責任の明確化。

B)企業理念「のびのび いきいき ぴちぴち」「五ゲン主義(原理・原則・現場・現物・現実)」の徹底。仕組みとしての「整流」「見える化」「見つけましたね運動」「革命的VA活動」等の浸透・定着。

2)研究開発型企業としての強化
技術開発、設備開発、ソフト開発などへの積極的な投資と環境づくり。

3)グローバル企業としての強化

A)グローバル本社体制による、グループ企業のガバナンス強化。

B)グローバル事業拡大に向けた人材育成。

4)財務体質の強化とキャッシュ・フロー経営の推進
自己資本比率、ROE(自己資本当期純利益率)、ROA(総資産事業利益率)、有利子負債率などの改善、及びグループ余剰資金の効率的運用など。

5)グループ連結経営の強化
グループ企業価値を最大化にするために、グループ各社の役割・責任を明確にし、効率的で最適な企業統治システムを構築するとともに、各社の事業の見直し・選択と集中を行う。

     6)本社改革

スピード経営のための仕組みやシステムの構築、会長・社長スタッフとしての役割機能強化など。

 

     7)人材の育成・確保、雇用安定

21世紀型の高付加価値新規事業の創出やグローバル事業の拡大を重点的に推し進めているなかで、新たな人材ニーズにマッチングする人材の不足が顕在化しております。当社グループの中期戦略を見据えてグループ全体の人員戦略を見直すとともに、ローテーションや人材育成を含めた適切な施策を行ってまいります。
また、新型コロナウイルスの感染拡大は今も世界経済に深刻な影響を及ぼしており、先行き不透明な状況が続いております。当社グループでは社員の雇用の安定確保に必要な措置を継続して実施してまいります。

     8)ESG経営に向けた取り組み

当社では、地球環境保全と持続可能な循環型社会の実現に向けた取り組みは、企業に課せられた重要な経営課題の一つと認識しており、原価低減・省エネルギー活動、及び環境対応型製品の開発に取り組み「ロス、ムダの廃止・リサイクル・環境負荷の低減」を図ってまいります。さらに会社法、金融商品取引法に基づいたコーポレート・ガバナンスや内部統制システムを構築・推進し、企業統治や企業活動の透明性を高め、ステークホルダーから高い信頼をいただけるESG経営を推進してまいります。

 

以上、今後も“変えよう、変わろう”を合言葉に、改革の手を緩めることなくこれらの課題を着実に具現化し、「生活価値創造企業」を目指して邁進していきます。

 

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