課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)事業環境に関する認識

当社は徳山製造所のインテグレーションされた高効率な生産プロセスが競争力の源泉であり、石炭火力発電所に依存したエネルギー多消費型事業が収益を牽引してまいりました。しかし産業構造の変化が加速し、デジタル革命の急進といった社会環境の変化、日本においては少子高齢化による国内需要の減少や健康志向の高まり、また循環型社会実現に向けての環境意識の向上や規制強化が進むことが想定され、これまでの延長線上にない事業の構築・成長によって収益力・競争力を確保していくことが必須であると考えております。

 

(2)経営方針及び中長期的な会社の経営戦略

このような事業環境の認識のもと、当社は環境との調和を明確に意識するとともに、消費者が求める価値を私たちの顧客とともに創造する企業になることを掲げ、当社の経営理念を定めた存在意義を「化学を礎に、環境と調和した幸せな未来を顧客と共に創造する」に再定義しました。また存在意義に基づいた経営方針として、以下のありたい姿を策定しています。

マーケティングと研究開発から始める価値創造型企業

独自の強みを磨き、活かし、新領域に挑み続ける企業

社員と家族が健康で自分の仕事と会社に誇りを持てる企業

世界中の地域・社会の人々との繋がりを大切にする企業

 

(3)対処すべき課題

中長期的な当社の経営戦略として、2021年2月25日に策定した「中期経営計画2025」において、以下の3項目を重点施策といたしました。

 

1.事業ポートフォリオの転換

新たな成長事業を「電子」「健康」「環境」と位置づけ、連結売上高比率50%以上を目指します。化成品・セメント事業は効率化を進め、安定的に収益を確保いたします。

当連結会計年度において、環境対応型自動車などに搭載されるパワー半導体モジュールの絶縁・放熱材料として使用される窒化ケイ素の量産技術実証のための製造設備が竣工いたしました。今後も電動化が進む自動車分野や情報通信分野等で高い成長が見込まれる放熱材市場において、事業展開を加速してまいります。

また、韓国において半導体製造プロセスで使用される電子工業用高純度イソプロピルアルコール(以下、高純度IPA)の製造・販売会社をSK Geo Centric Co., Ltd.(以下、SKGC社)と合弁で設立することに合意いたしました。当社が強みとする高純度IPAの製造技術、品質管理能力とSKGC社の韓国国内での高いプレゼンスを組み合わせることで、新たに韓国の顧客ニーズに応える生産・販売体制を整備してまいります。

鹿島工場においては、歯科用充填剤の製造工程の増強工事が竣工いたしました。歯科材料の主要市場である欧米に加えて、インドやブラジルなどでもグローバルに事業を展開し、伸長する需要を獲得し事業拡大につなげてまいります。

 

 

2.地球温暖化防止への貢献

世界的な環境意識の高まりを受け、当社は「2050年度カーボンニュートラル達成」を目標として掲げました。その達成のために原燃料の脱炭素化、環境貢献製品の開発・実装及び水素やアンモニアなどの次世代エネルギーの技術開発の加速、事業化を目指します。また、徳山製造所内のプロセス改善に取り組むとともに、国内外のバイオマス燃料の開発・利活用を推進し、2030年度にCO総排出量を30%削減(2019年度比)することを実現します。

当連結会計年度において、周南コンビナートの産業競争力の維持・強化と脱炭素化の推進に取り組むことを目的として設立された周南コンビナート脱炭素協議会に参画いたしました。今後、カーボンニュートラル実現に向けて、「コンビナート連携」「産業連携」「地域連携」という視点からのアプローチを行っていきます。

また、三菱重工エンジニアリング株式会社とセメントプラント向けCO回収実証試験に関する覚書(MOU)を締結しました。本年6月から9ヶ月間にわたり、稼働中のセメントプラントからCO回収の実証実験を行う予定です。長期連続運転の信頼性評価を行うとともに回収したCOガス内の不純物などのデータを分析し、セメント工場における最適なCO回収技術の適用性を検証します。

 

3.CSR経営の推進

当社は、持続可能な未来を社会とともに築く活動を継続的に行い、社会課題の解決に貢献し、多様なステークホルダーからの信頼を高め、企業価値の向上を目指すことをCSR経営の基本理念としています。その実現に向けて、CSR経営に関わる社会的な課題を抽出しマテリアリティ(重要な取り組み課題)として、昨年までの9項目に「心と体の健康推進」を加え、以下の10項目を特定し各課題の解決に取り組んでいます。

当社にとって、最も重要な課題の一つである「地球温暖化防止への貢献」に関して、2021年2月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同を表明、2022年3月に当社グループの気候変動に対する取り組みを公表いたしました。TCFDで開示を要求されている気候変動に関する当社のガバナンスの体制及びリスク管理のプロセスは、社長が議長を務め、全執行役員を委員とする「CSR推進会議」において気候関連のリスク・機会について議論し、重要事項として取締役会に報告しています。CSR推進会議の実効性を高めるために各種委員会を設定していますが、当連結会計年度に気候変動や人権、CSR調達等を議論する「サステナビリティ委員会」を新設し、積極的にリスクと機会の評価を行う仕組みを構築いたしました。

また、「心と体の健康推進」については、従業員とその家族の心と体の健康づくりと働きやすい職場づくりを実現するために、経営トップである社長が健康経営統括責任者を務め、健康経営を推進した結果、2022年3月に、経済産業省と日本健康会議が共同で取り組んでいる「健康経営優良法人(ホワイト500)」に初めて認定されました。今後も経営トップのコミットメントのもとで、健康経営の取り組みを進めてまいります。

 


 

(4)「中期経営計画2025」達成目標

2025年度の達成目標を以下のとおりとしています。

指標

2021年度 実績

2025年度 達成目標

売上高

2,938億円

3,200億円

営業利益

245億円

400億円

成長事業の売上高成長率(CAGR)

19.9%

10%以上

ROE

13.2%

10%以上

[前提]

為替レート

国産ナフサ

 

112円/$

56,800円/㎘

 

105円/$

32,500円/㎘

 

なお、当該将来に関する事項については、その作成時点での予想や一定の前提に基づいており、その達成及び将来の業績について保証するものではありません。

 

(5)目指すビジネスモデル

現在のトクヤマは、エネルギー多消費型事業からの転換という大きな節目を迎えています。このような現状認識に立ち、今後は私たちの強みを活かせる「電子」「健康」「環境」という3分野を、新たな成長市場と位置づけています。独自技術とマーケティングを組み合わせ、この3市場に向けて他社にない価値を提供する、ソリューション型のビジネスを展開していきます。この新たな事業モデルを通じて、自社が排出するCO2を削減しながら、SDGsにつながるマテリアリティの達成を目指します。そして、私たちのありたい姿として定義した「独自の強みを磨き、活かし、新領域に挑み続ける企業」を体現していきます。

 


 

 

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