業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

<当社グループを取り巻く環境>

当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症を背景とする景気悪化からの持直しの動きがみられましたが、感染再拡大や原油価格高騰によるインフレ等の影響により本格的な回復には至りませんでした。

ドバイ原油の価格は、期初は1バーレル当たり62ドルでしたが、期中は、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種進展による景気回復への期待やOPECプラスの協調減産等によるエネルギー需給ひっ迫を受けて上昇しました。さらに、期末にかけて、ロシアによるウクライナ侵攻をめぐる国際情勢緊迫化により急騰し、一時は1バーレル当たり128ドルとなりました。

LME(ロンドン金属取引所)銅価格は、期初は1ポンド当たり398セントでしたが、新型コロナウイルス感染症対策としての世界的な金融緩和や最大の消費国である中国の経済回復、将来的な電気自動車(EV)普及に伴う需要増への期待感等から堅調に推移し、一時は過去最高額である1ポンド当たり487セントまで上昇しました。

 

<連結業績の概要>

このような事業環境下、当社グループは、基盤事業の競争力強化による継続的なキャッシュ創出に努めるとともに、長期ビジョンの実現に向け、第2次中期経営計画(2020年度から2022年度まで)に沿って成長事業の育成・強化と事業ポートフォリオの最適化を進めるなど、諸施策を実行しました。

当期における在庫影響を除いた営業利益相当額は、資源価格上昇に伴う上流事業での増益及びタイムラグによる白油・輸出マージンの良化、電子材料の増販等により、4,156億円(前年同期は2,155億円)となりました。

また、当連結会計年度の連結業績は、売上高は前年同期比42.6%増の10兆9,218億円、営業利益は7,859億円(前年同期は2,542億円)、親会社の所有者に帰属する当期利益は5,371億円(前年同期は1,140億円)となりました。

 

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(注)上図内の原油価格、銅価、為替レートは期平均値です。

 

セグメント別の概況は、次のとおりです。

 

[エネルギーセグメント]

石油製品及び石油化学製品の需要は、新型コロナウイルス感染症の影響緩和により回復の動きが見られたものの、依然として同感染症のまん延前を下回る水準で推移しています。

 

<基盤事業>

石油精製販売事業については、国内需要の減少が続く中にあっても、国民生活に不可欠な石油製品の安定供給の使命を果たし、サプライチェーンの最適化・効率化・強靭化によりキャッシュ・フローを創出すべく、次の諸施策に取り組みました。

●SSネットワークの強化

国内最大のSSネットワークを一層強固な事業基盤とすべく、お客様の利便性や満足度を高めるための様々なサービスを展開しました。

具体的には、前連結会計年度に引き続き、セルフSSブランド「EneJet」の強化、キーホルダー型のスピード決済ツール「EneKey」の発行推進に加え、お客様がWEBサイトを通じてカーメンテナンス商品を予約できる「エネアポ予約」の利用可能店舗や取扱い商品の拡大も進めました。また、バックオフィス業務にRPAを中心とした技術を適用する子会社の設立や、特約店・SSとのコミュニケーションの円滑化を目的とした情報共有サイトの開設など、デジタル技術を駆使した業務効率化を推進しました。

●サプライチェーン改革の断行

安全操業及び安定供給を大前提として、サプライチェーン全体のさらなる競争力強化に取り組みました。これまで実行してきた室蘭製造所・大阪製油所の製造・精製機能の停止、川崎地区の製油所・製造所の組織一体化、根岸製油所の一部装置の廃止決定に続き、当期においては、知多製造所の製造機能を停止するとともに、和歌山製油所の精製・製造・物流機能の停止(2023年10月目途)を決定しました。

●デジタル技術の積極導入

株式会社Preferred Networksとともに、熟練運転員のノウハウが求められる石油精製・石油化学プラントのオペレーションを自動化するAIシステムを開発し、国内初となるAI技術による石油化学プラントの連続自動運転に成功しました。また、同社と合弁会社を設立し、新物質開発・材料探索を高速化する汎用原子レベルシミュレータ「Matlantis™」をクラウドサービスとして提供する事業を開始しました。

 

<成長事業>

「脱炭素・循環型社会の進展」、「デジタル革命の進展」及び「ライフスタイルの変化」が速まることを見据え、スピード感をもって成長事業の育成・強化に向けた諸施策に取り組みました。

(石油化学事業)

石油化学事業については、付加価値の高い誘導品事業を拡大することにより、競争力・収益力の強化を図りました。その一環として、約120億円を投じ、超高圧・高圧電線の絶縁用ポリエチレンの生産能力を約3万トン増強することを決定しました。また、バイオ原料を使用したエチレン誘導品の製造・販売を目指し、株式会社日本触媒及び三菱商事株式会社と共同調査を行うことに合意しました。

(素材事業)

技術立脚型事業の獲得・拡大を目的に、2022年4月、JSR株式会社から、主に合成ゴムの製造・販売を行うエラストマー事業を買収し、新会社「株式会社ENEOSマテリアル」として営業を開始しました。同社が有する業界最高水準性能のタイヤ素材を、成長が期待されるモビリティ産業に提供することにより、収益力を強化します。

また、潤滑油事業においては、電動車のさらなる普及を見据え、EV・ハイブリッド車の駆動システムの特性に合わせたEV専用油の開発及び国内外での顧客獲得に取り組みました。

(次世代型エネルギー供給・地域サービス事業)

●エネルギーサービス

(再生可能エネルギー事業)

2022年度末までに再生可能エネルギーによる総発電容量を100万kW超に拡大することを目指し、国内外で新規電源の開発・獲得に注力しました。

具体的には、国内有数の再生可能エネルギー事業者であるジャパン・リニューアブル・エナジー株式会社の株式を約1,800億円を投じて取得し、同社を子会社化しました。また、日本各地でメガソーラー発電所の建設を進めるとともに、長崎県五島市沖の洋上風力発電事業も推進し、海外では、米国、豪州及びベトナムにおいて太陽光発電事業に参画しました。

 

これらの取組みの結果、当期末時点における国内外の再生可能エネルギーによる総発電容量(建設中を含みます。)は、約122万kWとなりました。

このほか、日本板硝子株式会社及び米国のUbiquitous Energy社と共同で、透明な太陽光発電パネルを建物の窓として使用する国内初の実証実験を開始しました。

(水素事業)

安価で安定的なCO2フリー水素の国際的サプライチェーンの構築に向けて、国内外の広範囲なアライアンスを活用するとともに、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構が実施する「グリーンイノベーション基金事業」(GI基金事業)の支援も受け、実証実験や独自技術の開発等に取り組みました。

具体的には、豪州・マレーシアの計4社と新たに協業検討を開始するとともに、横浜市・川崎市と連携協定を締結しました。また、トヨタ自動車株式会社が建設を進める「Woven City」においてCO2フリー水素の製造・利用を推進するため、同社と共同開発契約を締結しました。

さらに、水素キャリアとして期待されるメチルシクロヘキサン(MCH)を安価に製造する独自技術「Direct MCH®」の実証について、従前の実験室レベルから実際に使用できるレベルまで規模を拡大しました。具体的には、豪州で製造した再生可能エネルギー由来のMCHから水素を日本で取り出し、当該水素を用いて燃料電池自動車を走行させることに成功しました。また、製油所の既存装置を活用し、MCHから水素を取り出す実証を開始しました。

このほか、国内においてENEOS水素ステーション2か所を新たに建設し、合計47か所になりました。また、横浜旭水素ステーションにおいては、ステーション内でのCO2フリー水素の製造及び商用販売を開始しました。

(ガス事業・電気事業)

海外の森林保全プロジェクト由来のCO2クレジットを活用し、CO2を実質的に排出しないカーボンニュートラルLNGの販売を開始しました。また、海外発電事業として出資した米国オハイオ州のサウスフィールドエナジー天然ガス火力発電所の商業運転・米国北東部への電力供給を開始しました。

(地域コミュニティとの連携)

静岡市清水区袖師地区を中心とした次世代型エネルギーの推進及び地域づくりを実現すべく、前期に締結した静岡県に続き、静岡市と基本合意書を締結しました。また、東京都東村山市と2020年に締結した連携協定に基づき、EVを活用したエネルギーマネジメントサービス実証の実施を決定しました。

(東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会)

ENEOS株式会社は、「東京2020ゴールドパートナー(石油・ガス・水素・電気供給)」として、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の関連施設に再生可能エネルギー由来の電気等を供給するとともに、東京2020オフィシャル水素である「ENEOS水素」を供給しました。

●モビリティサービス・ライフサポート

モビリティサービス事業については、SSネットワークを販売拠点としたカーリース事業「ENEOSカーリース」の全国展開を開始しました。同事業は、自動車ユーザーのストレスを緩和するサービスが評価され、2021年度グッドデザイン賞を受賞しました。また、EV及びプラグインハイブリッド車の普及を見据え、日本電気株式会社と充電ネットワーク拡充に取り組むとともに、北米のスタートアップ企業であるAmple社とEVの蓄電池交換サービス提供に向けて協業を開始しました。

ライフサポート事業については、医療専門家とのオンライン健康相談や検査機器によるバイタルデータの計測を行う専用無人ブース「スマートライフボックス」を株式会社ネクイノと共同開発し、これを活用した実証実験を開始しました。

(環境対応型事業)

バッテリーのユース・リユース・リサイクルが循環する仕組み「BaaS(Battery as a Service)プラットフォーム」の構築を目指し、MIRAI-LABO株式会社と協業を開始したほか、2022年4月、電動モビリティの普及を目的に、国内大手二輪メーカー4社と共同で、電動二輪車用共通仕様バッテリーのシェアリングサービスを提供する「株式会社Gachaco」を設立しました。BaaSプラットフォームの構築にあたっては、エネルギー・資源・素材を幅広く手掛けるENEOSグループの総合力を最大限に活用します。

また、脱炭素・循環型社会の実現に向けて、使用済タイヤからタイヤ素原料を製造するケミカルリサイクル技術を確立すべく、GI基金事業を活用し、株式会社ブリヂストンと共同プロジェクトを開始しました。加えて、古紙を原料とするバイオエタノール事業の立上げについて、凸版印刷株式会社と協業検討を実施しました。

このほか、三菱ケミカル株式会社と共同で、鹿島製油所に隣接する同社茨城事業所に商業ベースで国内最大規模の処理能力を備えたケミカルリサイクル設備を建設し、プラスチック油化事業を開始することを決定しました。

 

(エネルギーセグメントの業績)

エネルギーセグメントの売上高は、石油製品の販売数量が前連結会計年度並であった一方、原油高を背景に製品価格が上昇したことから、前年同期比49.0%増の8兆9,350億円、営業利益は4,775億円(前年同期は1,211億円)となりました。在庫影響を除いた営業利益相当額は、石油化学製品マージンの良化、国内石油製品・輸出等の油価上昇局面におけるタイムラグ等があったものの、製油所トラブルによる稼働率低下や経費増から、1,072億円(前年同期は824億円)となりました。

 

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[石油・天然ガス開発セグメント]

既存事業の価値最大化に向け石油・天然ガスの安定生産を維持するとともに、他社とのアライアンスを活用しながら、CCS*/CCUS*技術を梃子に、成長事業と位置付ける環境対応型事業を推進しました。加えて、成長事業の育成・強化に向けた最適な資産ポートフォリオを構築すべく、英国事業を売却しました。

*CCS(Carbon dioxide Capture and Storage):二酸化炭素回収・貯留

*CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage):二酸化炭素回収・有効利用・貯留

 

<基盤事業>

●既存事業の価値最大化

新型コロナウイルス感染症の流行下においても安定生産を維持し、既存事業の価値を最大化すべく、複数のプロジェクトにおいて生産拡大に向けた取組みを進めました。

ベトナムにおいては、オペレーターとしてランドン油田の生産操業を続ける洋上15-2鉱区について経済的な開発及び生産活動を維持するため、当該鉱区のパートナーであるPetroVietnam Exploration Production Corporation 社と現行ライセンス期限以降の共同操業の継続に向けた相互協力にかかる覚書を締結しました。

パプアニューギニアにおいては、既存のLNG事業における長期安定的な収益・生産量を確保するため、将来的な天然ガス供給源として期待されるプニャンガス田について、パプアニューギニア政府等との間で、今後の開発に関する枠組みを定める契約を締結しました。

●英国事業の売却

選択と集中による事業ポートフォリオの見直しの一環として、英国事業会社であるJX Nippon Exploration and Production (U.K.) Limited 社の全株式を売却しました。

 

<成長事業>

●CCS/CCUS技術の活用

脱炭素・循環型社会の実現及び石油・天然ガス開発事業における環境負荷の低減に向け、CCS/CCUS技術の活用機会の拡大を図りました。

CCS/CCUS技術のさらなる知見獲得・向上を目的として、deepC Store社と共同スタディ契約を締結し、豪州における洋上CO2回収貯留ハブ・プロジェクト「CStore1」に参画しました。また、CCS技術を活用した水素・アンモニア製造等を含むエネルギー分野全般を対象とする共同スタディ・事業検討に関して、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構と共同で、インドネシアの国営石油会社であるPertamina社と覚書を締結しました。さらに、米国におけるPetra Nova CCUSプロジェクト、ベトナムにおけるCO2-EOR*パイロットテストに続き、インドネシアのタングーLNGプロジェクトにおいて、CCUS技術を用いたCO2排出量の削減及び天然ガスの生産効率向上・増産を図る開発計画について、現地当局の承認を得ました。これにより、同プロジェクト全体のCO2排出量を約半分に削減します。このほか、2022年4月、国内における排出源で分離・回収されたCO2を国内適地において貯留するプロジェクトの検討を進めるべく、「国内CCS準備室」を設置しました。

*EOR(Enhanced Oil Recovery):石油増進回収

●環境対応型事業の推進

環境対応型事業を迅速かつ集中的に推進する組織として「サステナブル事業推進部」を立ち上げるとともに、2022年4月、地域社会のカーボンニュートラルへの貢献を目指すため、中条油業所内に「中条共創の森 オープンイノベーションラボ」を開設しました。また、環境対応型事業に資する知見・技術の獲得・向上に向けて、持続可能な脱炭素社会の実現に注力する先進的な米国企業である8 Rivers Capital社と包括提携協定を締結しました。

 

(石油・天然ガス開発セグメントの業績)

こうした状況のもと、石油・天然ガス開発セグメントの売上高は、前年同期比116.3%増の2,431億円となりました。営業利益は、原油及び天然ガスの価格上昇や英国事業の売却を主因として前期から大幅に増加し、970億円(前年同期は28億円)となりました。

 

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[金属セグメント]

銅は再生可能エネルギーやEVの普及に欠かせない素材であり、脱炭素・循環型社会の実現に向けて需要が拡大しています。金属事業においては、これに対応すべく諸施策に取り組みました。

資源事業については、カセロネス銅鉱山におけるストライキの影響により生産量が減少したものの、銅価格の上昇を主因に増益となりました。金属・リサイクル事業については、原料である銅鉱石の買鉱条件が悪化した一方、貴金属価格が高値圏で推移し、また、硫酸国際市況が良化したことなどにより、増益となりました。

機能材料事業及び薄膜材料事業の各製品の販売量は、高機能IT分野での需要が堅調に推移したことから、概ね前期を上回りました。

 

<ベース事業>

●資源事業

カセロネス銅鉱山のさらなる安定・効率操業に向けて、推進組織の横断的な活動を通じ、自動制御システムの導入をはじめとする操業改善を図るとともに、設備メンテナンス・資材調達の効率化を推進しました。

●金属・リサイクル事業

製錬事業とリサイクル事業の一体運営体制のもと、2040年度までにリサイクル原料の割合を50%まで高めた製錬形態「ハイブリッド製錬」を実現すべく、リサイクル原料の増集荷・増処理に取り組みました。具体的には、台湾の彰濱(ザンピン)リサイクルセンターにおいて集荷・処理能力を増強し、また、大分リサイクル物流センターの稼働を開始するとともに、佐賀関製錬所のリサイクル原料前処理設備を増設しました。

 

<フォーカス事業>

●機能材料事業

機能材料事業においては、モバイル端末やデータセンターなどの通信インフラ分野に使用される圧延銅箔・高機能銅合金条等を製造・販売しています。圧延銅箔については、通信技術の進歩やモバイル端末の小型化・高機能化に伴う需要拡大に対応するため、前期の生産能力増強に続き、当期においては、生産能力を前期比で約25%増強すべく、日立事業所における新工場建設を決定しました。

●薄膜材料事業

薄膜材料事業においては、先端半導体の材料となるスパッタリングターゲットの製造・販売を通じて、モバイル端末やPC等の演算能力向上・消費電力低減に貢献しています。当期においては、世界的な脱炭素化の前進によるEVの普及やデジタルトランスフォーメーションの進展による半導体の需要拡大を見据え、半導体用スパッタリングターゲットの生産能力を前期比で約80%増強すべく、既存拠点の生産能力強化に加え、茨城県日立市における新工場建設を決定しました。

●タンタル・ニオブ事業

タンタル・ニオブ事業を担うTANIOBIS社では、同社製品の世界シェア拡大を目指し、顧客密着型のビジネスモデルである「Customer First Project」を営業・研究開発・製造が一体となって推進しました。また、同社のタイ生産拠点においては、機能性タンタル粉末製造設備の生産能力増強を決定しました。

●チタン事業(東邦チタニウム株式会社)

東邦チタニウム株式会社では、脱炭素社会の実現に向けて、チタン新製錬技術の開発に取り組んでいます。当該技術は、金属チタン製錬工程において、コークスを使用しないことによりCO2を排出せず、また、電解精製を用いることで電力消費量の低減を実現できるものです。当期においては、2025年度の実用化に向けて、当該技術のパイロットプラントでの実証試験開始に向けた取組みを進めました。

●研究開発

研究開発については、技術立脚型新規事業を創出すべく、外部リソースを積極的に活用した共創型開発に取り組むとともに、技術開発体制を強化しました。

具体的には、出資先であり、金属3Dプリンター用金属粉の開発等で協業している英国のAlloyed社が、金属3Dプリンターを用いたチタン合金製足首用インプラントを設計・造形し、これを用いた初めての手術が実施されました。

他方、使用済車載用リチウムイオン電池の大量発生時代の到来に備え、「電池材料・リサイクル事業推進室」を設置するとともに、国内の技術開発拠点としてJX金属サーキュラーソリューションズ株式会社を、欧州の事業開発拠点としてドイツにJX Metals Circular Solutions Europe社をそれぞれ設立しました。

さらに、「6G」時代におけるデータ通信の大容量化や高度なセンシング技術の実用化に不可欠な受発光素子、脱炭素社会の実現に欠かせないパワー半導体等に用いられる新たな結晶材料に関しての成長戦略策定と事業推進を担う「結晶材料事業推進室」を設置しました。

 

<国内外における大規模新工場の建設について>

金属事業では、圧延銅箔・高機能銅合金条や半導体用スパッタリングターゲット等、多数の世界トップシェア製品を有しています。これらの製品は、データ通信の高度化に不可欠であり、今後、さらなる需要増が見込まれることから、国内外に大規模新工場を建設することを決定しました。

国内においては、茨城県ひたちなか市に約24万㎡の用地を取得し、2025年度の操業開始に向けて取組みを進めています。当該新工場は、圧延銅箔・高機能銅合金条や半導体用スパッタリングターゲットといった既存の成長分野の製品群に加え、「6G」時代に飛躍的な成長が見込まれる結晶材料等の新規分野における製品群の製造を担う新たな中核拠点となる予定です。

海外においては、米国における半導体産業の集積地であるアリゾナ州で同州内の既存拠点の約6倍となる約26万㎡の用地を取得し、2024年度以降の操業開始に向けて取組みを進めています。当該新工場は、半導体用スパッタリングターゲットの製造に限らず、北米における先端素材に関する新規事業展開の活動拠点としても活用します。

 

(金属セグメントの業績)

こうした状況のもと、金属セグメントの売上高は、前年同期比18.4%増の1兆2,930億円、営業利益は、金属価格の上昇及び電子材料の増販等により、1,582億円(前年同期は781億円)となりました。

 

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[その他]

その他の事業の売上高は前年同期比1.1%減の4,984億円、営業利益は494億円(前年同期は491億円)となりました。

●株式会社NIPPO

株式会社NIPPO(以下、NIPPO)は、舗装、土木及び建築の各工事並びにアスファルト合材の製造・販売を主要な事業内容としています。当連結会計年度は、公共投資が概ね高水準で推移した一方、民間設備投資については本格的な回復には至りませんでした。また、労働需給のひっ迫や原油高を背景とした原材料価格の上昇を受け、前連結会計年度と同様に厳しい経営環境が続きました。

このような事業環境下、アスファルト舗装の技術優位性をさらに高めるべく、高耐久特殊アスファルトを用いたひび割れ対策型の舗装「エラスペーブ」を開発しました。さらに、海外において新たな収益の柱を育成・強化すべく、タイ等に続き、インドネシアにアスファルト合材の製造・販売を行う合弁会社を設立しました。また、脱炭素・循環型社会の実現に向けて、NIPPOの全事業所・工場でCO2排出量ゼロの電力に切り替えることを決定しました。

このほか、当社グループの事業ポートフォリオの再構築及びガバナンス体制強化の一環として、NIPPO株式を非公開化し、親子上場を解消しました。今後、当該非公開化を共同で進めたゴールドマン・サックス・グループが有するグローバルネットワーク等を活用して、NIPPOのさらなる企業価値向上を実現したうえで再上場を目指します。

 

上記各セグメント別の売上高には、セグメント間の内部売上高が合計477億円(前年同期は491億円)含まれています。

 

(2)生産、受注及び販売の実績

ア.生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

エネルギー

5,019,679

158.5

石油・天然ガス開発

244,325

214.1

金属

965,922

117.6

その他

89,670

74.7

合計

6,319,596

149.6

(注)1.上記の金額は、各セグメントに属する製造会社の製品生産金額の総計(セグメント間の内部振替前)を記載しています。

 

イ.受注実績

当社グループでは主要製品について受注生産を行っていません。

 

ウ.販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

エネルギー

8,930,602

149.0

石油・天然ガス開発

242,959

216.2

金属

1,290,573

118.4

その他

457,625

99.2

合計

10,921,759

142.6

(注)1.セグメント間の取引については、相殺消去しています。

 

 

(3)財政状態及びキャッシュ・フローの概況

①流動性と資金の源泉

当社は、効率的で安定的な資金の確保と、事業活動のための流動性の維持を、財務活動の取組みとして重視しています。効率的な調達に向けて、コマーシャル・ペーパーや社債等の直接金融と、金融機関からの借入等の間接金融を、機動的に選択しています。

当社は安定的な資金の確保に向けて、直接金融市場への継続的なアクセスを図るとともに、間接金融についても原油備蓄資金のための制度融資なども活用しており、政府系金融機関及び市中金融機関と幅広く関係を維持しています。また、財務基盤の健全性を維持しつつ長期的な戦略投資の実現を両立し得るハイブリッド社債の発行、グリーンボンドやトランジション・リンク・ボンドといったサステナブル・ファイナンスによる資金調達を実施する等、調達ソースの多様化を図って十分な流動性を確保しています。

また、金融市場の環境変化にも対応できる流動性を維持するために、現金及び現金同等物を確保する他、取引金融機関と特定融資枠契約(コミットメントライン契約)を締結しています。当該契約の極度額は当連結会計年度末では4,550億円であり、また同契約に係る借入残高はありません。

連結における資金管理では、当社を中心に集中して資金調達を行い、国内外の金融子会社を通じてグループ各社に資金を配分するというグループファイナンス制度を設けています。その運営においてキャッシュマネジメントシステムを活用しており、流動性資金の一元管理及び効率化を実現しています。

当社は、資金調達とグローバルなビジネスを円滑に行うため、格付投資情報センター(R&I)、日本格付研究所(JCR)、ムーディーズ・ジャパン(ムーディーズ)の3社から格付けを取得しています。3社の2022年6月時点の当社に対する格付け(長期/短期)は、R&IがA+(見通し安定的)/a-1、JCRがAA-(見通し安定的)/J-1+、ムーディーズがBaa2(見通し安定的)/(短期は取得無し)となっています

 

②連結財政状態計算書

ア.資産 当連結会計年度末における資産合計は、資源価格上昇による棚卸資産及び営業債権の増加や事業再編等により、前連結会計年度末比1兆5,894億円増加の9兆6,482億円となりました。

イ.負債 当連結会計年度末における負債合計は、棚卸資産の増加に伴う運転資金の増加やNIPPO株式の公開買付けに伴う借入金の増加等により、前連結会計年度末比1兆1,079億円増加の6兆4,141億円となりました。

有利子負債残高は、前連結会計年度末比6,986億円増加の2兆7,355億円となり、また、手元資金を控除したネット有利子負債は、前連結会計年度末比5,671億円増加の2兆1,850億円となりました。

ウ.資本 当連結会計年度末における資本合計は、配当金の支払やNIPPO株式の公開買付けに伴う非支配持分の減少等があったものの、当期利益の計上等により、前連結会計年度末比4,815億円増加の3兆2,341億円となりました。

なお、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度末比0.8ポイント増加し29.7%、1株当たり親会社所有者帰属持分は前連結会計年度末比166.70円増加の890.88円、ネットD/Eレシオは前連結会計年度末比0.09ポイント悪化し、0.68倍(資本合計ベース)となりました。

 

③連結キャッシュ・フロー

当社は、第2次中期経営計画においても基本方針の柱の一つに「長期ビジョン実現に向けた事業戦略とキャッシュ・フローを重視した経営の両立」を掲げて、基盤事業からのキャッシュ・フローを最大化し、財務基盤の健全性維持とキャッシュ・フローの適正な配分を行っていきます。

なお、当連結会計年度の各キャッシュ・フローの状況と主な要因は以下のとおりです。

ア.営業活動によるキャッシュ・フロー

営業活動の結果、資金は2,095億円増加しました(前期は6,791億円の増加)。これは、資源価格上昇による運転資金の増加や法人税の支払等の資金減少要因があったものの、税引前利益や減価償却費等の資金増加要因が上回ったことによるものです。

イ.投資活動によるキャッシュ・フロー

投資活動の結果、資金は3,499億円減少しました(前期は3,068億円の減少)。これは、英国の石油・天然ガス開発事業の売却等による増加があったものの、ジャパン・リニューアブル・エナジー株式会社の株式取得をはじめとした再生可能エネルギー事業への投資や、LNG火力発電所の建設及び、製油所における石油精製設備の維持・更新のための投資により減少したものです。
ウ.財務活動によるキャッシュ・フロー

財務活動の結果、資金は2,260億円増加しました(前期は3,551億円の減少)。これは、NIPPO株式の公開買付けに伴う支出や配当金の支払い等の資金減少要因を、当該公開買付けに伴う長期借入れやハイブリッド社債の発行による増加要因が上回ったことによるものです。
 

この結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は5,240億円となり、期首に比べ1,117億円増加しました。

 

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(4)重要な会計方針及び見積り

当社の連結財務諸表はIFRSに準拠して作成しています。当社は「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第1条の2に掲げる「指定国際会計基準特定会社」の要件を満たすことから、同規則第93条の規定を適用しています。

重要な会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況 連結財務諸表 注記3、4」をご参照ください。

 

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