課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当社が本報告書提出日現在において判断したものです。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社は、事業活動の基礎となる「ENEOSグループ理念」を次のとおり定めています。

 

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当社グループは、この「ENEOSグループ理念」の実現のために、基幹事業の強化・イノベーションの推進・グローバルな事業展開を図ります。あわせて、これらを推進していくうえで欠かせない高い倫理観とチャレンジ精神を持った人材を育成し、国際的な競争力を有するアジアを代表するエネルギー・素材企業グループを目指します。

 

(2)長期ビジョンの策定

当社グループは、世界的な脱炭素社会形成に向けた動きの加速、IoT・AI等の普及によるイノベーションの急速な進展、SDGs(持続可能な開発目標)をはじめ企業に求められる社会的責任の高まりなど、過去に例を見ない社会環境・事業環境の変化に直面しています。加えて、国内の燃料油需要は、年々減少し、2040年には現在の約半分となることが想定されます。このように事業環境の先行きに対する不安が増しつつある一方、当社グループには、その事業特性上、長期的展望に基づく戦略的な投資が不可欠であることから、未来を見据えたビジョンの構築が必要です。

そのため、当社は、「長期グローバルトレンド」を分析して「2040年の社会シナリオ」を想定した上で、同年における当社グループの「ありたい姿」とその実現のための「事業の将来像」を描き、これらを「2040年当社グループ長期ビジョン」として取りまとめ、2019年5月に公表しています。(一部改訂、2020年5月20日)

 

・「長期グローバルトレンド」と「2040年の社会シナリオ」

「長期グローバルトレンド」としては、脱炭素・循環型社会の形成に向けた取り組みが進み、デジタル革命の進展と相まって、人々のライフスタイルは大きく変化することが予想されます。こうした潮流の下、世界の一次エネルギー需要は、非化石エネルギーの割合が増加し、世界の石油化学製品需要・銅地金需要は、アジアの新興国の経済成長を背景に拡大すると見込まれます。

このような「長期グローバルトレンド」を踏まえると、「2040年の社会シナリオ」としては、安価な再生可能エネルギーの大量導入、EVやカーシェアリングの普及、各施設・住宅への分散型太陽光発電及び蓄電池の設置等が進むと想定されます。また、プラスチック・金属をはじめとする資源のリサイクルインフラが拡充されていくものと考えられます。さらに、これらの変化に伴い、人々の生活を快適にするべく、多様なサービス提供者が現れると思われます。

 

・2040年における当社グループの「ありたい姿」とその実現のための「事業の将来像」

以上の「長期グローバルトレンド」と「2040年の社会シナリオ」を前提に、当社グループが将来にわたって社会に必要とされる企業集団であるための要素を検討し、2040年における当社グループの「ありたい姿」を定めました。当社グループは、この「ありたい姿」を実現するため、安全・環境・健康を最優先に考えるとともに、多様性に富んだグローバル人材の育成・登用やICT(情報通信技術)活用による業務品質の劇的向上等により、企業風土の変革を図っていきます。

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当社グループは、長期ビジョンに掲げる「ありたい姿」の実現のための「事業の将来像」を礎とした、第2次中期経営計画を実行することにより、成長戦略の追求とキャッシュ・フロー重視経営との両立による持続的な企業価値の向上を図り、すべてのステークホルダーの期待に応えていきます。

(3)目標とする経営指標

当社は、2020年5月に2020年度からの3ヵ年の第2次中期経営計画(2020-2022年度中期経営計画)を次のとおり策定しています。

当社は、本中計を「2040年当社グループ長期ビジョン」の実現に向けた変革の推進と位置づけ、各事業ポートフォリオにおける「構造改革の加速」及び「成長事業の育成・強化」をテーマに策定しています。

 

<基本方針>

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<財務計画>

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<第2次中期経営計画の進捗>

①業績面

ア.財務計画

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業績面の財務計画については、新型コロナウイルス感染症による影響や生産・供給体制の再構築に伴う一過性損失などがあったものの、コスト削減を進めたことや資源価格高騰に伴うタイムラグを含む石油精製マージン良化、石油・天然ガス開発事業及び金属事業の増益、データ通信向けの旺盛な需要を受け好調な先端素材の増収増益等により、在庫影響(総平均法及び簿価切り下げによる棚卸資産の評価が売上原価に与える影響)を除いた営業利益9,700億円の目標に対し、2022年5月時点の見込みは9,711億円となっており、目標達成を見込める状況となっています。

 

 

 

イ.還元方針

 

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また、この第2次中計の業績見込みを踏まえ、追加の株主還元策として、取得価額総額上限1,000億円(取得し得る株式の総数(上限)3億株)の自社株買いを2022年5月に決定しました。これは、第2次中計の株主還元方針(総還元性向)に沿ったものです。

 

ウ.キャッシュ・フロー

 

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キャッシュ・フローの状況については、営業キャッシュ・フローは、在庫除きの営業利益は計画通りの見通しである一方、原油等の資源価格の高騰による運転資金増加により、第2次中計比では、キャッシュインは、約3,000億円の減少見込みとなりました。

投資キャッシュ・フローは、これまでに大型のM&Aを含む戦略投資を実行しました。買収したジャパン・リニューアブル・エナジー株式会社(以下、JRE)の投資計画も織り込んだ結果、3カ年の設備投資額は1兆6,000億円と、第2次中計を1,000億円上回る見込みですが、ノンコア資産の売却を加速させ、売却収入を2,100億円上乗せしたことで、ネットのキャッシュアウトは約1,100億円減少する見通しです。

その結果、フリーキャッシュ・フローはマイナス400億円の見込みとなりました。第2次中計比では1,900億円の悪化となりますが、これは主に運転資金の増加によるものです。

 

エ.戦略投資

 

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戦略投資については、買収したJREの投資計画を織り込んだ結果、戦略投資の総額は3カ年で9,600億円と、第2次中計比1,300億円の増加となる見込みです。

第2次中計で決定・実行した主な案件として、再生可能エネルギーについてはJREを買収し、第2次中計で掲げた再生可能エネルギーの発電容量目標である100万kWを達成しました。今後、JREの高い事業開発能力を活かし、更なる発電容量の積み上げを目指していきます。

先端素材は、今後、データ通信などの高機能IT向け用途で期待される、需要の拡大を取り込むべく、半導体用ターゲットや圧延銅箔の生産能力をさらに引き上げる投資を順次実行しています。

また、石化・素材では、JSR株式会社(以下、JSR)のエラストマー事業を買収しました。今後、当社が有するエラストマー関連技術との融合により、環境対応型を軸に、より高付加価値な製品開発・販売を強化していきます。

 

②事業戦略面

 

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当社は、「構造改革の加速」を第2次中計の解決すべき課題として位置付け、この方針に沿って基盤事業の競争力強化や成長事業の育成、M&A・資産売却などのポートフォリオ戦略を実行しています。

脱炭素社会への転換や人権を含む社会課題への対応などを踏まえ、石炭事業や一部の上流事業など、ノンコアと位置付けられた事業の撤退・売却を決定しました。また、上場子会社であった株式会社NIPPOの非公開化も実施しています。

基盤事業については、安定供給を前提としつつ、競争力強化の為、生産・供給体制再構築を前倒しで決定した他、長年の経験に基づく運転ノウハウが求められる石油化学プラントでのAIによる自動運転等、デジタル技術の活用なども進めました。また、一層厳しくなる事業環境にも耐えうる強靭なコスト体質実現の為、業務プロセスの無駄を徹底的に削ぎ落す、抜本的な見直しにも着手しました。

素材事業では、JSRからのエラストマー事業の買収や、半導体用ターゲット・圧延銅箔などの先端素材の生産能力増強などを決定しました。

また、次世代エネルギー・環境対応では、JRE買収の他、 水素サプライチェーン構築や持続可能な航空燃料SAFの早期事業化に向けた実証、CCSやリサイクルに関する共同検討などを順次進めています。

今後もリスクとリターン、短期と中長期の収益獲得時期など、バランスを考慮した投資を着実に進めることで、事業構造改革・トランジションを成功させ、長期ビジョン実現を目指します。

 

 

 

(4)ESG(環境・社会・ガバナンス)に関する取り組み

・ESG経営の推進

当社グループは、「2040年ENEOSグループ長期ビジョン」に示す「ありたい姿」の実現を通じて、SDGs(持続可能な開発目標)の目指す持続可能な社会の形成に貢献し、経済価値のみならず社会価値を創造すべく、ESG経営を推進しています。世界的に関心が高まっている社会課題を踏まえた将来のリスク・事業機会については、「ESG経営に関する基本方針」に基づき、経営会議において包括的に審議し、特定したリスク・重点課題への対応状況を確認しています。また、取締役会は、その内容の報告を受けることで、監視・監督しています。

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・第三者からの評価(2022年3月31日現在)

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・ESG説明会の開催

2022年3月、当社は、アナリストや機関投資家を対象にESG説明会をオンラインで開催しました。同説明会においては、当社がESGを経営の根幹に位置付けていること、将来の社会課題を踏まえた事業戦略を立案・遂行していることなどについて説明し、参加者と活発な議論を行いました。引き続き、当社グループにおけるESG経営について、積極的な情報発信に努めます。

 

・具体的な取り組み

[脱炭素・循環型社会への貢献]

地球規模での気候変動は、エネルギー・素材を扱う当社グループにとって、経営上の重要なリスクであると同時に、新たなビジネスの機会と捉えています。そのため、気候変動にかかる情報開示の重要性を認識しており、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言」に賛同・署名しています。当期においては、TCFD提言に沿った情報開示の強化・充実に取り組み、気候変動に伴うリスク・機会を特定のうえ、2021年9月発行の「統合レポート2021」の中で、以下の通り財務影響※を開示しました。

※財務影響試算は、多くの潜在的なリスク・不確実な要素・仮定を含んでおり、実際には、重要な要素の変動により、各シナリオとは大きく異なる可能性があります。

 

 

<気候変動に伴うリスク・機会とその対応>

当社グループは、2017年度からCOSO※ERMフレームワークに基づく全社的なリスクマネジメント(ERM)を導入しています。このプロセスを踏まえ、気候変動に関するリスク・機会を下表のとおり特定しています。

※COSO(Committee of Sponsoring of the Treadway Commission :トレッドウェイ委員会支援組織委員会)が発表した内部統制のフレームワークで、世界各国で採用されています。

 

特定したリスク・機会の時間軸

区分

具体例

時間軸

移行リスク

政策と法

カーボンニュートラル達成のために要するコストの増加

中~長期

テクノロジー

EV技術の進展による石油需要の減少

中~長期

(需要減はすでに顕在化)

市場と評判

環境意識の高まりによる石油需要の減少

短期

(需要減はすでに顕在化)

市場

石油上流資産の座礁化

中~長期

物理リスク

急性リスク

異常気象による極端な風水害の発生、過酷度の増加

短期

(異常気象はすでに増加)

慢性リスク

温暖化に伴う海面上昇

中~長期

機会

資源効率に関する機会

リサイクル資源に対する需要の増加

中~長期

エネルギー源に関する機会

再生可能エネルギー、水素に対する需要の増加

分散型エネルギーに対する需要の増加

中~長期

製品・サービスに関する機会

モビリティ産業における環境負荷低減への取り組み拡大

環境負荷の小さい電化社会に必要となる電子材料の需要増加

中~長期

市場に関する機会

デジタル革命、ライフスタイルの変化による分散型エネルギー市場に対するアクセスの増加

中~長期

レジリエンスに関する機会

レジリエンス確保に向けたエネルギーの多様性

中~長期

 

 

<「移行リスク」による財務影響 >

●カーボンニュートラル達成のために要するコストの増加

当社グループは2040年までに自社排出分のカーボンニュートラル達成を目指しています。2040年時点で想定される自社排出分の1,600万㌧について、この全量を炭素クレジット購入により対応した場合、850億円※1のコスト増加となりますが、環境負荷の一層の低減や、政府支援も含めたパートナー企業とのCCSへの取り組み、森林事業などのオフセット策への取り組みにより当該リスク対策に努めます。

※1 炭素クレジット価格(52ドル/tCO2(IEA World Energy Outlook2020(以下、IEA WEO2020))×数量(1,600万トン)×為替

 

●EV技術の進展による石油需要減少/環境意識の高まりによる石油需要減少

IEA WEO2020のSTEPシナリオ※2では、2040年に国内石油需要が2019年対比で4割減少することとされています。この需要減少による影響は、第2次中期経営計画におけるエネルギーセグメントの石油製品等の営業利益見込みから、概算で約400億円※3と想定しています。

※2 各国のNDCベースの政策に加え、新型コロナウイルス感染拡大による影響を織り込んだシナリオ

※3 2020-2022年度営業利益見込み÷3カ年×40%

 

●石油上流資産の座礁化

当社グループが有する石油上流資産の埋蔵量326百万バーレル(2021年度末時点、石油換算)は、現状の生産量(33百万バーレル/年)の約10年分に相当します。したがって、長期的なリスクは小さいと認識しています。なお、第2次中期経営計画(2020-2022年度)における石油・天然ガス開発事業の営業利益見込みの単年度平均は約600億円です。

 

<「物理リスク」による財務影響 >

当社グループは、設備投資の計画段階で、異常気象による極端な風水害や海面上昇に伴うリスク等を考慮するとともに、必要に応じて事業継続計画(BCP)に織り込む等の対策を講じています。

例えば、ENEOS株式会社(以下、ENEOS)は日本国内に物理的に分散の取れた10カ所の製油所を有しており、一部地域の製油所が操業上の制限を受けた場合にも、他の製油所で一定程度カバーし得る供給体制を整えています。

 

●異常気象(大型台風)による極端な風水害の発生、過酷度の増加

2018年度、2019年度に発生した大型台風による補修費用の実績から、仮に同規模の台風被害を受けた場合、大型台風の直撃1回につき20億円程度の対応コストの発生が見込まれています。

 

●温暖化に伴う海面上昇

2018年度、2019年度に行った海面上昇対策(高潮対策設備の嵩上げ、排水ポンプの増強等)に要した費用の実額は、10億円程度でした。同様の対応コストの発生が見込まれています。

<「機会」による財務影響 >

●リサイクル資源に対する需要の増加

脱炭素・循環型社会やデジタル革命の進展に伴い、ベースメタルである銅や各種レアメタルの需要が増加すると見込んでいます。こうした需要増加に対応するためには、リサイクル資源の活用をさらに進めて行く必要があります。

当社グループの銅製錬事業では、すでに、必要な原材料の約12%にリサイクル資源を活用していますが、この比率を50%程度まで高める取り組みを進めています。2021年度には銅製錬、リサイクル事業で約400億円の営業利益を上げており、今後、さらなる利益規模の拡大を目指していきます。

 

●再生可能エネルギー・水素に対する需要の増加

脱炭素・循環型社会の進展に伴い、水素、再生可能エネルギーやEVに対する需要が増加すると想定しています。

これらの2040年時点の市場規模を想定し、当社のシェアや営業利益率について一定の仮定を置いて試算した結果、1,000億円規模の営業利益を見込んでいます。当社は経済性も考慮しながら、これらを成長事業に積極的に取り組んでいくことで、企業価値の向上を図ります。

 

●モビリティ産業における環境負荷低減への取り組み拡大/環境負荷の小さい電化社会に必要となる電子材料の需要増加

脱炭素・循環型社会の進展に伴い、EVをはじめとする次世代自動車の普及が見込まれます。動力の如何にかかわらずタイヤは必要であることから、その原料である合成ゴム事業は国内外とも年率2~3%で成長することを見込んでいます。当社グループは、JSRから、合成ゴムの主原料であるエラストマー事業を買収し、低燃費・高性能タイヤの主原料を主力製品とした高性能素材を提供することで、環境負荷低減に貢献していきます。このエラストマ―事業は、2023年度には営業利益で約100億円の貢献を見込んでおり、以後、将来にわたり堅調に推移することを期待しています。

また、デジタル革命の進展に伴い、IoT・AI・ロボット等に必要な高機能材料・先端材料に対する需要は拡大し続けると想定しています。当社グループは、すでに、半導体ターゲット、磁性材ターゲット等の電材市場において約60%の世界シェアを有しています。2021年度は機能材料事業や薄膜材料事業等において約500億円の営業利益を上げており、今後、さらなる利益規模の拡大を目指していきます。当社グループの金属事業は、銅鉱山、銅製錬、リサイクル事業等も含めた事業全体において、2021年度に約1,600億円の営業利益を上げており、拡大が見込まれる銅需要を踏まえ今後も堅調に推移すると見込んでいます。

 

 

<ENEOSグループ カーボンニュートラル計画>

2022年4月、カーボンニュートラル実現に向けた戦略策定及び具体策を早期かつ着実に推進すべく、「カーボンニュートラル戦略部」を設置しました。また、同年5月には、自社排出分(スコープ1*、スコープ2*)にかかる従来の計画について国際基準等を参考に見直したことに加え、自社排出分以外(スコープ3*)についても2050年度のカーボンニュートラル実現を目指し、政府・他企業と歩調を合わせてさらなるCO2排出量削減に取り組むことを決定しました。引き続き、再生可能エネルギーの拡大や水素・「持続可能な航空燃料」(SAF)・合成燃料等の早期実用化を通じ、エネルギートランジションを推進します。

 

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 *スコープ1 :事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)

 *スコープ2 :他社から供給された電気等の使用に伴う間接排出

         *スコープ3 :スコープ1、スコープ2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)

 

[社会課題解決への不断の取り組み]

当社グループは「ENEOSグループ人権ポリシー」を定めており、事業活動にあたり人権尊重の取り組みを推進しています。

当連結会計年度においては、2019年に続き、第2回人権デュー・ディリジェンスを実施しました。具体的には、当社グループの人権リスクを自己評価したうえで、外部専門家(認定NPO法人ヒューマンライツ・ナウ)を起用し、労働組合との対話を踏まえ、人権課題を評価・検証しました。今後も、役員・従業員への研修等を通じて、人権侵害の未然防止と人権課題への対処に取り組みます。

また、従業員一人ひとりの意欲や創造性を高め、かつ能力を最大限に発揮できるよう、ワークライフ・マネジメントを推進し、また、ダイバーシティ&インクルージョンにも積極的に取り組んでいます。具体的には、年次有給休暇の取得促進、テレワーク勤務の推進、育児・介護・病気と仕事の両立支援制度の拡充など、あらゆる従業員が持続的にキャリアを形成するための人事プログラムを企画・運用するとともに、人材の多様性確保に向けて、属性別に新卒採用・管理職登用の目標を設定しています。また、2022年4月、社員が希望するポストに応募して職務を得る等の自律的なキャリア形成を支援する「ENEOSジョブグレード制度」をENEOSの管理職に導入しました。加えて、これらの取り組みにはマネジメント層の意識改革・浸透が重要との考えから、継続的に各種研修を実施しています。

 

[ガバナンス体制の強化]

当社は、当社グループの持続的な成長と中長期的な企業価値向上を図るため、コーポレートガバナンスの適切な構築・運営に取り組んでいます。

2021年6月に改訂された「コーポレートガバナンス・コード」(株式会社東京証券取引所が定める企業統治指針)については、取締役会において対応方針を議論し、プライム市場向けの内容を含め、同コードが定める各原則の全てを引き続き実施することとしました。

また、当社の取締役会は取締役会の実効性評価を2016年度から毎年度行っており、当期においても2021年12月から2022年1月にかけて全取締役を対象にアンケートを実施しました。その結果、全ての設問で肯定的回答が多数を占めており、取締役会の実効性は概ね確保されていることを確認しました。前期に課題とされた「監督機能のさらなる強化」と「取締役会での議論・説明の質の向上」に関しては、大型投資案件の進捗状況報告や資本コストを考慮した事業評価を実施するとともに、環境経営の審議機会を拡充させ、また、取締役会以外にも新規事業の取り組みにかかる社外取締役との議論の場を設定することにより、議論の充実を図りました。このような取り組みに対し一定の評価を得たものの、引き続き改善が必要な課題であると認識していることから、今後も取締役会の実効性のさらなる向上に向けて取り組んでいきます。

(5)対処すべき課題

脱炭素・循環型社会の形成の流れが世界的に加速しており、これに伴い国内の燃料油需要が減少することは確実である一方、デジタル革命の進展やモビリティの電動化・自動化により各種電子材料の需要は増加する見通しです。加えて、新型コロナウイルス感染症の影響により「新しい生活様式」の浸透や価値観の多様化が進んでおり、エネルギー・素材分野においても、様々なニーズ・ビジネスチャンスの創出が見込まれます。

当社は、環境変化と長期的な見通しを踏まえて「2040年ENEOSグループ長期ビジョン」を策定しており、下図のように事業構造の変革を成し遂げ、企業価値を向上し続ける考えです。

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事業構造の変革に向けた成長事業の育成・強化については、事業ごとに収益貢献に至るまでに時間差があるため、短期と中長期のバランスを考えながら、各施策に取り組んでいます。

当面は、電子材料・機能材をはじめとする素材事業で成果をあげ、2025年以降は、再生可能エネルギー事業やCCS/CCUS事業、2030年以降は、CO2フリー水素、合成燃料等の次世代型エネルギーの各事業が実を結ぶべく、それぞれ育成していく計画です。

まず、早期に収益貢献が見込まれる素材事業に関し、機能材分野では、JSRから買収したエラストマー事業を核とした高機能素材メーカーとして、グローバルな事業規模とプレゼンス確立を目指します。また、電子材料(機能材料・薄膜材料)分野では、世界的に旺盛な半導体需要を着実に取り込むべく、半導体用スパッタリングターゲットの増産に向けた設備増強を進めるとともに、データ社会の進展やモビリティの電動化・自動化等に伴う電子材料の高機能化・需要拡大を見据えて国内外で新工場の建設を進め、先端材料の開発・生産に取り組みます。このほか、航空業界における脱炭素化の進展を見据え、「持続可能な航空燃料」(SAF)の量産供給体制の確立を目指します。具体的には、フランスのTotalEnergies社と、根岸製油所におけるSAF製造に関するフィージビリティスタディを共同で実施します。また、SAFの主な原料である廃食油については、株式会社野村事務所と連携し、日本各地から安定的に調達する仕組みの構築を目指します。他方、三菱商事株式会社と連携し、SAFを含む次世代燃料の社会実装に向けた共同検討も実施します。

次に、中長期的に育成する各事業に関し、次世代型エネルギー供給・地域サービス事業については、これまで培ってきたエネルギー事業者としての知見とJREの事業開発能力とを結集し、太陽光・風力発電の開発を進め、日本を代表する再生可能エネルギー事業者となることを目指します。また、当社グループの既存インフラを活用できる合成燃料「ENEOS e-fuel」(再生可能エネルギー由来の水素とCO2を原料とする合成燃料)の商用化や、水素キャリア製造に関する独自技術「Direct MCH®」を活用した国際的なCO2フリー水素サプライチェーンの構築にも尽力します。

他方、世界的に加速するEVシフトに伴い創出される各種サービスの需要を取り込むべく、全国12,000か所超のSSネットワークを活かした経路充電(移動途中における充電)、「ENEOSでんき」と連携した基礎充電(自宅等での充電)、EVのリース・シェア・メンテナンス等のモビリティ関連サービスを展開します。

さらに、環境対応型事業については、SSや「ENEOSでんき」で培ったノウハウや顧客基盤を活用し、他社との協業を進めることで、バッテリーのユース・リユース・リサイクルが循環する仕組み「BaaSプラットフォーム」の構築に取り組みます。また、Petra Nova CCUSプロジェクトに続くCCS/CCUS技術を活用した事業機会について、電源開発株式会社をはじめとする幅広いパートナーとともに政府による支援策を活用しつつ追求するほか、天然ガス開発にCCS/CCUS技術を導入して生産されるクリーンなガスを用いた発電事業や、CO2を分離した後の残渣ガスを利用したブルー水素・アンモニア製造事業に取り組みます。このほか、使用済車載用リチウムイオン電池(LiB)に含まれるレアメタルを再び車載用LiBの原料として使用する「クローズドループ・リサイクル」の実現に取り組むとともに、次世代電池として期待される全固体電池向け材料の技術開発を進め、事業化を目指します。

以上のとおり、事業構造の変革によりビジネスチャンスを確実に捉え、収益拡大と同時にカーボンニュートラルの実現に貢献してまいります。このような企業価値向上戦略は、エネルギー・素材分野の各事業を有する当社グループであるがゆえに成し得るものといえます。

 

<新型コロナウイルス感染症の影響について>

新型コロナウイルス感染症の影響は、経済、企業活動、社会生活の広範囲に影響を与えている事象であり、当社グループが展開する様々な事業における各種製品の需要や価格に影響を与えています。この影響は今後も一定程度継続することを前提として、各事業や製品ごとの状況を踏まえ、次期の業績予想や第2次中期経営計画等への影響を算定しています。

今後も、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、世界経済の動向や国内における需要の回復状況に応じて、その時点の業績予想や第2次中計への影響について情報開示していきます。

コロナ禍とともにスタートした第2次中期経営計画は、2022年度を計画の最終事業年度としており、新型コロナウイルス感染症の収束が見通せない状況が続いているものの、当社グループは引き続き同計画の達成に向けて一丸となって取り組んでいきます。

 

<次期の連結業績予想について(2022年5月公表)>

前期の資源価格高騰に伴う石油製品等のマージンのプラスのタイムラグが解消するほか、前期に売却した英国の上流事業の利益が剥落することなどにより減益の見通しです。一方で、製油所の稼働回復や銅の生産数量回復を見込んでいる他、今年度からJSRより買収したエラストマー事業の投資貢献などがあり、実質的な収益性は改善すると見込んでいます。前提条件に基づく次期の業績予想は下記のとおりです。

●前提条件(2022年4月以降)

為替:120円/ドル、原油(ドバイスポット):90ドル/バーレル

銅価:420セント/ポンド(2022年4‐6月 450セント/ポンド、2022年7月以降 410セント/ポンド)

売上高:12兆8,000億円 営業利益:3,400億円 親会社の所有者に帰属する当期利益:1,700億円

なお、在庫影響(総平均法及び簿価切下げによる棚卸資産の評価が売上原価に与える影響)を除いた営業利益相当額は、営業利益と同額の3,400億円と見込んでいます。

 

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