業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

 当事業年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化するなか、感染対策の浸透やワクチン接種の進展等から一部経済活動に回復の動きが見られましたが、第3四半期末以降は新たな変異株のまん延に加えて、原油価格や原材料価格の高騰、円安の進行など、先行きは極めて不透明な状況で推移しました。

 当業界におきましては、橋梁事業では、新設鋼橋の発注金額が前事業年度比で増加であったにも関わらず、前事業年度に大きく増加した保全工事の発注金額が減少したことで、全体の発注金額は減少しました。鉄構事業では、首都圏を中心とした大型再開発事業だけでなく、物流倉庫・データセンター・製造業の工場建設等、大型案件の出件が相次ぎ、鉄骨需要はようやく端境期を脱し回復基調へ向かいました。しかしながら、鋼材価格高騰と納期の長期化だけでなく、工期・工程ずれの常態化・技能者人材不足・燃料費高騰等多くの課題が立ちはだかり、受注に向けては慎重な取組みを求められました。

 このような状況のもとで当社は、橋梁事業では限られた経営資源を最大限に活用するため、対象案件を絞った受注活動を継続し、第3四半期以降徐々に受注高を伸ばしましたが、第4四半期に受注高を積み増すことが叶わず、前事業年度並みの受注高を確保することが出来ませんでした。鉄構事業では、上半期での目標案件の失注を補うべく、工場の稼働確保と採算の改善を目指した営業活動を継続し、年度末には近畿圏での目標案件も受注しましたが、受注高は低調な結果に終わりました。

 これらの結果、当事業年度の受注高は橋梁事業11,079,011千円、鉄構事業2,982,423千円、総額14,061,434千円となり前事業年度の6割強にとどまりました。

 

 また、当事業年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

イ.財政状態

(資産の部)

 当事業年度末の資産合計は、前事業年度末に比べ2,101,501千円減少し、24,546,118千円となりました。

 流動資産は12,960,223千円(前事業年度末15,706,830千円から当事業年度末12,960,223千円)となりました。これは主に、年度末における完成工事高の計上が前事業年度比で減少したことで完成工事未収入金が2,100,213千円減少したことと、収益認識に関する会計基準等の適用から未成工事支出金が427,170千円減少したことによるものです。

 固定資産は11,585,894千円(前事業年度末10,940,789千円から当事業年度末11,585,894千円)となりました。これは主に建設中の全天候型塗装工場に係る費用が建設仮勘定として749,000千円増加したことと、減損損失の計上等により有形固定資産の貸借対照表計上額が130,782千円減少したことによるものです。

(負債の部)

 当事業年度末の負債合計は、前事業年度末に比べ2,305,888千円減少し、5,509,574千円となりました。

 流動負債は5,384,786千円(前事業年度末7,591,974千円から当事業年度末5,384,786千円)となりました。これは主に工事未払金の減少1,403,368千円、短期借入金の減少200,000千円、工事損失引当金の減少262,591千円によるものです。

 固定負債は124,788千円(前事業年度末223,489千円から当事業年度末124,788千円)となりました。これは主に繰延税金資産との相殺消去による繰延税金負債の減少90,960千円によるものです。

(純資産の部)

 当事業年度末の純資産合計は、前事業年度末に比べ204,387千円増加し、19,036,543千円となりました。これは当期純利益の計上747,728千円とその他有価証券評価差額金の減少98,844千円、剰余金の配当による減少198,237千円及び自己株式の取得246,259千円によるものです。この結果、自己資本比率は77.6%(前事業年度は70.7%)となりました。

ロ.経営成績

 損益面につきましては、前事業年度を上回る完成工事高を確保できたものの、橋梁事業の構成比率が減少した影響で営業利益と経常利益は前事業年度実績を下回りました。また、2年続けての特別損失計上となったものの、金額的には、前事業年度から大きく減少したことで、当期純利益は前事業年度を上回る結果となりました。

 当事業年度の業績は、完成工事高15,669,637千円(前期比2.9%増)、営業利益763,620千円(前期比11.1%減)、経常利益937,831千円(前期比2.0%減)、当期純利益747,728千円(前期比52.7%増)であります。

 セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

 橋梁事業

 橋梁事業におきましては、前事業年度からの各工事の進捗に停滞感が漂う状況から抜け出すことが出来ず、完成工事高は12,169,607千円(前期比10.9%減)と減少し、セグメント利益も1,018,179千円(前期比17.0%減)と前事業年度を下回る結果となりました。受注面では、充分でない経営資源の中で新設鋼橋の受注維持に努め、相応の成果を上げましたが、限られた応札回数では数字は伸びず、当事業年度の受注高は11,079,011千円(前期比29.6%減)となり、堅調に推移した前事業年度を大きく下回る結果となりました。これらの結果、当事業年度末の受注残高は16,212,471千円(前期比6.7%減)となり前年度末残高を確保することが出来ませんでした。

 鉄構事業

 鉄構事業におきましては、前事業年度の受注高の改善から、当事業年度の完成工事高は3,500,030千円(前期比123.7%増)と増加しましたが、利益確保に必要な完成工事高には届かず、セグメント利益は△254,559千円(前期はセグメント利益△367,711千円)と赤字が継続する結果となりました。受注面では、目標としていた大型案件の失注が尾を引き、年度末には近畿圏での目標案件を受注したものの、前事業年度を大幅に下回る極めて低調な結果となりました。当事業年度の受注高は2,982,423千円(前期比53.4%減)、受注残高は4,933,358千円(前期比14.4%減)であります。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末より39,180千円減少し、3,667,653千円となりました。

 当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果獲得した資金は1,430,486千円(前期は1,830,121千円の使用)となりました。これは主に売上債権の減少によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は825,320千円(前期比328.9%増)となりました。これは主に有形固定資産の取得によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は644,347千円(前期は200,940千円の獲得)となりました。これは主に短期借入金の返済と自己株式の取得によるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

イ.生産実績

 当事業年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当事業年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

前期比(%)

橋梁事業(千円)

11,997,933

△11.3

鉄構事業(千円)

3,556,567

+97.5

合計(千円)

15,554,501

+1.5

 

ロ.受注実績

 当事業年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高

前期比(%)

受注残高

前期比(%)

橋梁事業(千円)

11,079,011

△29.6

16,212,471

△6.7

鉄構事業(千円)

2,982,423

△53.4

4,933,358

△14.4

合計(千円)

14,061,434

△36.5

21,145,829

△8.6

 

 

ハ.販売実績

 当事業年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当事業年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

前期比(%)

橋梁事業(千円)

12,169,607

△10.9

鉄構事業(千円)

3,500,030

+123.7

合計(千円)

15,669,637

+2.9

 (注)1.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前事業年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

当事業年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

国土交通省

6,436,995

42.3

6,807,912

43.4

大成建設㈱

2,588,261

16.5

静岡県

1,777,510

11.7

2.前事業年度の大成建設㈱及び当事業年度の静岡県については、売上高に占める割合が100分の10未満のため記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当事業年度の完成工事高は15,669,637千円(前期比2.9%増)を確保しましたが、橋梁事業の構成比率が減少した影響で営業利益は763,620千円(前期比11.1%減)、経常利益は937,831千円(前期比2.0%減)となりました。しかしながら特別損失(固定資産の減損損失)が前事業年度から大きく減少したことで当期純利益は前事業年度を上回る747,728千円(前期比52.7%増)となりました。

イ.財政状態の分析

 財政状態につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」をご参照下さい。

 

ロ.経営成績の分析

(完成工事高)

 当事業年度は、橋梁事業・鉄構事業ともに受注は低調で、手持ち工事の進捗にも停滞感が漂う状況ではありましたが、前事業年度末に相応の受注残高を確保していたため、完成工事高は微増の15,669,637千円(前期比2.9%増)となりました。その内訳は、橋梁事業12,169,607千円(前期比10.9%減)、鉄構事業3,500,030千円(前期比123.7%増)であります。

 

(営業利益)

 完成工事高は増加したものの、橋梁事業の完成工事高の減少に伴う利益の減少を、鉄構事業の完成工事高の増加による利益で補いきれず、販売費及び一般管理費は1,261,553千円(前期比0.6%減)と前事業年度実績を下回りましたが、営業利益は763,620千円(前期比11.1%減)となりました。そのため、売上高営業利益率は4.9%となり前事業年度実績5.6%には届きませんでした。

 

(当期純利益)

 営業外収益につきましては、受取配当金の増加と有価証券売却益の発生により前事業年度より61,260千円増加し199,371千円となりました。営業外費用につきましては、支払利息と投資有価証券売却損の減少から前事業年度より15,381千円減少し25,160千円となりました。これらの結果、経常利益は937,831千円(前期比2.0%減)となり、経常利益率は6.0%と前事業年度実績6.3%をわずかに下回りました。

 特別損益につきましては、黒字回復が実現せず、受注高も伸びなかった鉄構事業について2年連続で特別損失(固定資産の減損損失)を計上いたしましたが、金額的には、前事業年度から大きく減少したことで、税引前当期純利益は前事業年度を上回る803,183千円(前期比24.5%増)となりました。

 法人税等合計(法人税等調整額を含む)が前事業年度より少ない55,455千円の計上となったことで、当期純利益は、前事業年度より257,979千円増加し747,728千円(前期比52.7%増)となりました。この結果当期純利益率は前事業年度から1.6%改善した4.8%となりました。

 

ハ.経営成績に重要な影響を与える要因について

 経営成績に重要な影響を与える要因については、「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

(キャッシュ・フロー)

 当事業年度末における現金及び現金同等物は、前事業年度末より39,180千円減少し、3,667,653千円となりました。当事業年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

(資金需要)

 当社の主な運転資金需要は、製品製造のための原材料仕入や協力会社への外注費用、人件費等の販売費及び一般管理費が主なものであります。また、設備資金需要は生産効率の向上や品質確保のための設備投資が主なものであります。

(財務政策)

 当社は内部留保金を有効に活用することで、事業活動に必要な流動性の確保に努めております。また、品質確保のための設備投資や資本参加も見据えた事業展開に活用することで、経営基盤の強化を目指しております。運転資金は自己資金を基本としつつ、金融機関からの借入を有効活用することで円滑に業務を推進しております。

 当事業年度末における短期借入金の残高は2,000,000千円であり、当事業年度末における現金預金の残高は3,667,653千円であります。

 

 経営方針・経営戦略又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」をご参照下さい。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表作成にあたっては、当事業年度における経営成績等に影響を与えるような見積りを必要としております。当社は過去の実績や現在の状況を踏まえ、合理的と判断される前提に基づき継続的に見積りを行っておりますが、見積りには不確実性を伴うことから、実際の結果とは異なる場合があります。

 財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

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