課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
 
 当社グループは、2016年4月より中期経営計画『マスタープラン2016』をスタートし、「既存事業の収益力の強化」「事業ポートフォリオの最適化」「経営基盤の強化」を基本方針に、それぞれの課題解決に取り組んでまいりました。『マスタープラン2016』では、最終年度となる2021年度の連結売上高を250億円、連結営業利益を25億円以上と設定し、その達成に向けて取り組みましたが、遂行期間中に生じた米中貿易摩擦や新型コロナウイルスの感染拡大といった外部環境の変化のほか、新規顧客開拓、新製品の市場投入の遅れ等もあり、連結売上高は161億円、連結営業利益は15億円にとどまり、次年度以降へ課題を残すこととなりました。

そこで当社グループは、『マスタープラン2016』で達成できなかった課題の解決と、さらなる50年先にも持続的に成長を続ける強固な経営基盤を確立するため、新たな中期経営計画『マスタープラン2022』を策定し、2022年度からスタートさせることとしました。『マスタープラン2022』では、長期的に当社グループが目指す企業像を次のとおり定め、社会課題解決への貢献を通して存在感のある企業グループとなるべく努めてまいります。

■ 目指す企業像

 「社会に必要とされる企業」 ~社会の維持継続/進歩発展に貢献する~

 

中期経営計画『マスタープラン2022』では、当社グループが目指す企業像を実現するために対処すべき課題として次の4点を認識しております。

 

(1) 顧客接点の活性化

当社グループが事業を営む情報通信、エレクトロニクス関連市場は5Gの商用化やAI、IoTの活用によるDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展等に伴う成長が見込まれております。また、自動車関連市場はCASE(Connected、Autonomous、Shared、Electric)と呼ばれる大きな転換期を迎え、成熟しながらも進化が続く見通しであります。こうした市場の変化は当社グループにとって成長の機会である一方、変化のスピードに遅れを取れば、世界の競合企業にシェアを奪われることとなります。

市場環境の変化を迅速に読み取り、他社に先駆けて的確な対応策を実行していくためには、顧客との濃密で質の高いコミュニケーションを通して、市場に求められるニーズと当社グループが有する技術や製品との接点を把握することが重要です。顧客との接点を担う営業員には、社内の営業会議や社員研修等により最新の情報とスキルをインプットし、個の能力と顧客に提供するサービスの質を高めてまいります。

当社グループの連結売上高のうち、取引金額の上位10社で約60%を占めています(2022年3月期実績)。こうした重要顧客との取引シェアをさらに拡大していくためには、顧客の経営課題や技術課題を共有し、その解決に向けて共に取り組んでいくことが必要です。当社グループがビジョンに掲げる「ベストパートナー」となるべく、既存顧客との関係性を深めてまいります。

また、新しい顧客と出会う機会を数多く作り出すため、展示会への出展や新聞、雑誌等へのプレスリリース、ホームページ等のメディアを通して当社グループの技術や製品を積極的に広報し、市場での認知度を高めてまいります。並行して新製品、新技術の開発からリリースまでの時間を短縮し、技術、品質、性能の各面で顧客の期待を超えるサービスを提供してまいります。

 

(2) 新製品・新技術開発の加速

当社グループは、創業以来培ってきた精密加工・精密成形・光学技術のコアテクノロジーを活用して、情報通信、自動車、医療・バイオ等の成長市場に向けて商品やサービスを提供しています。当社グループは、提供する商品やサービスは、顧客の成長を支援し、社会の維持継続や進歩発展に貢献するものでなければならないと考えています。過去には光ディスク成形用金型や光コネクタ研磨機といった、まだ世の中に存在していない新しい技術や製品を開発し、CDやDVD等の光ディスクの普及や、光通信によるインターネット環境の構築に貢献してまいりました。新製品・新技術開発を担う技術員は、市場のニーズに合った製品開発を行うために、また、より幅広い領域での貢献を可能とするよう常に技術力を研鑽するとともに、顧客とのコミュニケーションを通して市場の情報を捉え、その製品開発が社会に役立つ姿を検証しています。中期経営計画『マスタープラン2022』では、2026年度末の連結売上高に占める新製品比率を30%以上とする計画です。

 

市場にリリースする商品やサービスが社会に大きく貢献するためには、タイミングが極めて重要です。ニーズが成熟し、市場に他社の類似製品が出た後でリリースすることになれば、社会への貢献は限定的な範囲に留まることとなってしまいます。当社は、新製品や新技術の開発状況を社内で共有することで、開発期間のマネジメントを強化することとしました。併せて各開発案件の目的やターゲット市場、想定される業績インパクト等も共有して開発担当者の意識向上を促し、新製品・新技術開発を加速させてまいります。

また当社は、2021年度末時点で国内外に151件の特許を保有しています。他社との差別化を図り、技術的な優位性を担保する上で特許は重要なツールです。一方、技術内容によっては特許として公開せず、社内にノウハウとして留めておく方が効果的な場合もあります。当社は、2026年度末時点の特許登録件数を2021年度末から30%以上増加させることを目指し、ノウハウとして秘匿する技術情報を戦略的に判断しながら、他社との技術的な優位性を確立していく考えです。

 

(3) ものづくり力の強化

当社グループは、金型や成形品は主に日本で、光コネクタは主に中国で生産し、市場に提供しています。日本の労働環境は少子高齢化により生産人口の減少が続いています。一方中国は毎年5%程度の経済成長率で推移しており、労働者への賃金もこれに比例する形で年々上昇しています。こうした状況に対処するため、当社グループは、成形品や光コネクタ等、量産品の自動製造装置を自社開発しています。当社は、国内子会社の不二電子工業株式会社と共同プロジェクトを2018年に立ち上げ、車載用成形品のバリ取り工程や検査工程の自動機を当社が開発し、不二電子工業に供給してまいりました。また、2021年には新型光コネクタ「Intelli-Cross Pro」の組立から検査、梱包までを一貫して行う自動組立装置を開発しています。今後、AIやIoT等も応用しながら、さらなる生産効率の向上を図ってまいります。

一方、足元では半導体や樹脂材料の供給不足により、仕入れ価格の高騰や納期の遅延等の懸念材料が払拭できません。また、発生から2年を経過しても未だに終息しない新型コロナウイルス感染症や、2022年に入ってから緊迫化しているウクライナ情勢等が資源価格の高騰や円安に拍車をかけ、国家間の物流も近年にないほど混乱した状況となっています。そうした中でも、最良の部材を最も適切な価格で安定的に調達できるよう、世界中の取引先との良好なパートナーシップを維持してまいります。また、物流面では受注から納品までの無駄を排除し、コストと時間を最小化するサプライチェーンの構築に取り組んでまいります。

また、当社グループは、「高品質な商品を安定して製造すること」が最も地球に優しい事業活動である(無駄な資源・エネルギーを消費しない、無駄な廃棄物を排出しない)と考え、品質管理体制の維持と改善に取り組んでいます。2019年度からは、日本と中国の生産拠点がグループとして一貫性のある、整合の取れた品質意識を持ち、共同で品質課題の解消に取り組むため、グローバル品質会議を開催しております。仕様を満足する製品を安定的に供給する品質管理体制を維持し、顧客から信頼される「ベストパートナー」となるべく、引き続き努めてまいります。

 

(4) 経営基盤の強化

永続的な企業価値の成長を実現し、真に社会に必要とされる企業となるためには、環境(Environmental)、社会(Social)、企業統治(Governance)の各側面のサステナビリティな活動を通して経営基盤を強化することが重要と考えています。中期経営計画『マスタープラン2022』では、当社グループ全体のサステナビリティ活動を統括する組織として、社長直轄の「サステナビリティ推進室」を設置しました。

環境面においては、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、温室効果ガスの排出削減に取り組みます。『マスタープラン2022』の最終年度となる2026年度には、自社排出量を2020年度比17%削減することを目指し、再生可能エネルギーの活用も含めて施策を検討、実行してまいります。また、製造する金型の構造を工夫し、使用する樹脂材料を減らす「ホットランナー金型」や、リサイクル樹脂の使用による廃棄の削減、製造工程における環境負荷物質の排除など、開発・設計・製造・販売のあらゆる企業活動において継続的な環境改善の実施に努めてまいります。

 

社会面においては、多様な人材が健康に活き活きと働ける環境を整備するほか、ペーパーレス化やクラウドの活用等により、有事の際にも事業活動を継続できる体制の構築を進めます。当社単体では、2018年度より働き方改革「メリハリワーク」を導入して個々の社員の能力向上と業務効率の改善に取り組んでいます。その結果、当事業年度の当社社員全体の時間外労働は、導入前の2017年度と比べて約24%削減することができました。2020年度には有給休暇を1時間単位で取得できる制度を導入しました。今後は、現在無給となっている子供を看護するための休暇について一部有給化する等、引き続き社員にとって働きやすい職場環境づくりに取り組んでまいります。

企業統治面においては、2016年度に監査等委員会設置会社へと移行しました。当連結会計年度末現在、9名の取締役のうち4名の独立社外役員を選任しており、取締役会の監視機能の強化を図っております。また、当社グループの中長期的な業績や株式価値と、取締役報酬との連動性を明確にする目的で、2016年度に、取締役に対して業績連動型株式報酬制度を導入しました。2018年度には執行役員制度を導入して権限を委譲し、意思決定スピードの迅速化を図っております。

当社グループは、中期経営計画『マスタープラン2022』で明確化した方針と施策を遂行することにより、成長の土台となる経営基盤を一層強化し、より幅広い産業領域において永続的に社会の発展に貢献する企業グループとなるべく、努力してまいります。

 

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