課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

以下の文中における将来に関する事項については、有価証券報告書提出日(2022年3月28日)現在、入手しうる情報に基づいて判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは、社是「おもしろおかしく」のもと世界で事業展開する分析・計測機器メーカーとして「真のグローバルカンパニー」をめざし、様々な産業分野のグローバルな市場に対して、分析技術を中心とした事業活動を通じて、「地球環境の保全」「ヒトの健康」「社会の安全・利便性向上」「科学技術の発展」などをもたらすことにより社会貢献することを基本理念としています。

また、連結経営を重視し、世界49社にのぼる当社グループの「人財(注1)」・「技術」リソースを活かした連携強化及び融合を積極的に推進しております。

 

(2)目標とする経営指標

当社グループは、2019年8月に5年後の2023年度を目標年度とする中長期経営計画「MLMAP2023(Mid-Long Term Management Plan 2023)(注2)」を策定し、連結売上高3,000億円、営業利益400億円、ROE(自己資本当期純利益率)10%以上をめざしております。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略及び会社の対処すべき課題

当社グループは、市場別に自動車、環境・プロセス、医用、半導体、科学の5つのセグメントで事業展開をしております。各市場において設備投資や研究開発投資の循環サイクルなどの特性があり、それぞれに柔軟に対応する必要があります。異なる市場で各事業部門が強みを発揮できるよう、継続的にバランスよく投資を進めています。事業部門間で「人財」や生産設備等の事業リソースを一時的にシフトすることにより、業績の悪い事業の負担を軽減する柔軟な対応をとるなど、互いに補完しながら持続的に成長できる体制を取っております。

当社グループを取り巻く事業環境は劇的に変化しています。自動車産業においては技術の潮目が変わり、電動化や自動運転といった次世代技術に大きな進展を見ることができます。また、感染症拡大という事態がAIやIoTといった先進技術の普及を加速し、半導体、バイオ、ヘルスケアといった市場においても地殻変動が起きています。さらに、中国やインドを中心としたアジア諸国は先進国に肩を並べる勢いで成長を遂げ、世界の市場構造そのものが大きく変わり始めています。

加速度を増して変化する外部環境にスピーディに対応しながら、さらなる事業成長と企業価値向上の実現をめざすため、当社グループは、2019年8月に「ONE STAGE AHEAD」をスローガンに据えた中長期経営計画「MLMAP2023」を策定しました。加速度を増して変化する外部環境にスピーディに対応しながら、さらなる事業成長と企業価値向上の実現をめざしております。

このMLMAP2023を達成するために、以下の3つの重点施策を設定のうえ、様々な取り組みを行っています。

 

●重点施策1:「Market Oriented Business」

メガトレンドをリードする3フィールドに、コア技術を活用した分析・計測ソリューションを展開

 

当社グループが5つの事業部門でグローバルに保有する技術、営業チャネル、生産拠点、顧客ネットワークを有機的に組み合わせ、お客様のニーズに応える独自の分析・計測ソリューションを提供します。当社グループの強みである「はかる」技術を通じて、メガトレンドをリードする3フィールドにおいて、イノベーションを加速させる企業体への変革をめざします。

 

<3フィールドにおける主な施策>

Energy/Environment

・ホリバMIRA社(イギリス)、ホリバ・フューエルコン社(ドイツ)とのシナジーを最大化させた自動車事業に加え、科学事業のリソースも活用し、エネルギー効率向上への寄与が期待される、電動化や自動運転などの次世代自動車技術におけるビジネスを拡大します。また、自動車開発全般におけるフロントローディング(開発プロセス短縮による工数低減)を実現する最適アプリケーションの提供を通じて、お客様の課題を解決し、自動車開発に欠かせないパートナーとしての地位確立をめざします。

・環境・プロセス事業においては、ガス、水、大気、石油化学領域における多様な製品ラインアップを生かし、新興国における規制対応から、先進国における生産性向上に至るまで、グローバルレベルでの環境保全/改善に貢献します。

 

■ 当連結会計年度においては、世界的なカーボンニュートラル実現への希求から派生するエネルギーの効率的な利用に向けた需要の拡大に対応し、燃料電池、バッテリー、水素生成の水電解などに向けた評価、計測ソリューションなど、水素関連事業を拡大させるための積極的な投資を進めました。また、パワーエレクトロニクス技術を有する電源装置メーカーのBeXema社(ドイツ)を買収しました。さらに、ホリバ・フューエルコン社(ドイツ)新社屋建設を進めており、完成後の延床面積は、既存設備の約6倍となり生産能力は約3倍の増強を見込みます。グループ一体となって新たな製品・ソリューション開発に取り組むことで、拡大するエネルギー市場へ向けての製品供給力を強化します。

 

Materials/Semiconductor

・自動車の電動化加速により拡大する二次電池開発需要や、半導体材料や有機材料の解析などの分野では、当社グループがグローバルに展開するアカデミアや自動車/半導体産業といった幅広い顧客層に、科学事業が保有する最先端の分析・計測装置を提供することで、事業拡大を実現します。

・半導体事業においては、グローバルに展開する強固な開発/供給体制を基盤に、主力製品であるマスフローコントローラーと薬液濃度モニターのさらなるシェア拡大をめざします。また、半導体製造装置周辺に搭載された、当社グループの計測/制御機器が生み出す様々なデータを活用できる環境を提供し、半導体生産プロセスの改善に貢献します。

 

■ 当連結会計年度においては、リモートワークの増加や5G技術への投資加速などにより、グローバルで半導体需要や性能・品質要求が高まりました。主力製品においては、タイムリーな製品供給を通じて現地のお客様のニーズに応えさらなる事業成長を果たすため、韓国と中国でマスフローコントローラーの生産体制を強化、また日本における薬液濃度モニターの生産体制を強化しました。新市場開拓に向けては、クロスセグメントでの活動により、光学技術を用いた新たな製品開発を推し進めました。半導体製造工程における様々な計測需要に応え、半導体技術のさらなる発展に貢献します。

 

Bio/Healthcare

・医用事業においては、当社グループの強みである検体検査市場でのさらなるビジネス拡大をめざします。ローム株式会社からの事業承継により取得した、微量血液検査システムの技術を生かして製品ラインアップを拡充するとともに、シーメンスヘルスケア・ダイアグノスティクス社(アメリカ)との長期的パートナー契約により対象市場を拡大します。得意分野の開業医/中小型病院市場に加えて、中大型病院市場にも切り込み、グローバルな事業成長を加速させます。

・創薬/製薬分野においては、主に科学事業が保有するノウハウを活用し、粒子計測や分光分析技術の応用により、独創的なソリューションを提供します。

 

■ 当連結会計年度においては、国立研究開発法人産業技術総合研究所との粒子計測連携研究ラボの設立や、株式会社島津製作所との協業による新しい分析装置の開発など、産学官の連携を深め、オープンイノベーションを推進しました。産学連携では先端研究と産業を結び付け、産産連携では企業が持つ独自の強みを組み合わせた新しいソリューションを創出することで、社会課題の解決に貢献していきます。

 

●重点施策2:「Solution Provider Beyond Life Cycle Management」

製品導入からリプレイスまで、全方位でお客様のコアビジネスをサポート

 

当社グループでは、1,000を超える製品群の中からお客様に最適なソリューションパッケージを提供し、保守点検からリプレイスまでトータルにサポートするビジネスモデルを築いてきました。今後は、今まで見えなかった情報の定量化により、新たなアプローチからお客様の課題解決に貢献する、データマネジメントの領域にもビジネスを拡大します。製品の稼働データによる正確な機器管理により、顧客設備の効率運用をサポートすることに加え、計測データの解析により新しい価値の提供を実現し、機器販売と高付加価値なサポートの融合を実現します。「Always with You」をキーワードに、常にお客様に寄り添ったソリューションを提供していきます。

 

■ 当連結会計年度においては、堀場テクノサービス社の新社屋が稼働を開始いたしました。「Always Here With

You」をコンセプトにした新社屋ではサービス事業の一翼を担うAnalytical Solution Plazaやトレーニング施設、校正施設など様々な機能の一元化、また技術を中心としたお客様からのお問合せに迅速に答える機能を拡充しました。新社屋を起点としてグローバルでのフィールドサービス体制を強化していきます。

 

●重点施策3:「HORIBA Core Values」“The Next Stage of Super Dream Team”

すべての事業活動推進の原動力となる「強い人財」を作る組織体制の強化

 

重点施策1、2で挙げた事業活動を推進していく原動力は人財にあります。これまで当社グループは、人財育成の面においても様々な施策に取り組んできました。ブラックジャックプロジェクト(注3)は、フロントライン、すなわち現場の最前線の情報を経営陣と共有するシステムとして機能し、当社グループの新しい企業文化として根付いてきました。今後は、成長著しいアジア地域でのアクティビティを強化し、全グループへのさらなる浸透を進め、経営目標を現場に繋げる活動を推進していきます。ダイバーシティ推進プロジェクトであるステンドグラスプロジェクト(注4)についても、グループ会社間での人財交流活性化を通じて、活動をさらに発展させています。ホリバリアン(注5)がより働きやすく、働き甲斐を感じられる職場環境を整備することで、多様な人財によるSuper Dream Teamを実現し、既存ビジネスの変革や新ビジネスの創出を加速します。

これらの企業文化を含めた資産価値の最大化を実現するために導入した経営指標、HORIBA Premium Valueを用いて、事業部門やグループ各社、そして当社グループ全体の資産効率の最適化に向けた活動を加速します。迅速な経営判断により機動的な資源投入を実現するだけでなく、利益拡大と継続投資双方のバランス成長を実現します。

 

■ 当連結会計年度においては、社内外の変化に対応しながら世代間のギャップを埋めることを目的にステンドグラスプロジェクトを新体制へと移行しました。若手管理職メンバーを中心とした5つのワーキンググループが現場や経営トップをつなぎ、対話に基づいて自律的に活動を推進します。また、2023年度末の目標である管理職における女性比率20%に向けた女性活躍推進を積極的に行っており、2021年4月には内部昇格による2人目の女性執行役員が就任しました。

 

これら3つの重点施策の実現を通じて、当社グループでは、2023年度に連結売上高3,000億円、営業利益400億円、ROE(自己資本当期純利益率)10%以上をめざします。

 

 

(注)1.人財:当社グループでは、従業員を大切な財産と考えて「人財」と表現しています。

2.MLMAP(Mid-Long Term Management Plan):当社グループでは中長期経営計画を「MLMAP」として社内浸透させています。

3.ブラックジャックプロジェクト:「従業員の意識と行動の変革」を目的として1997年に開始した当社グループ独自の業務改善活動で、当初から専任組織を設置して活動の促進を図ってきました。経営者が最前線の現場(フロントライン)からの直接の情報を得る機会であるとともに、グローバルでの経験/知識を共有する大切な役割も担っており、Super Dream Team実現のための重要な活動のひとつです。

4.ステンドグラスプロジェクト:「性別、年齢、国籍、障害などを乗り越えて多様な個性と才能が輝き、新たな価値を創造し続けることで強いHORIBAを実現する」をミッションに掲げたプロジェクトです。2014年開始。

5.ホリバリアン:当社グループで働くすべての人を同じファミリーであると考え、ホリバリアンと呼んでいます。

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