業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(業績等の概要)

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①  財政状態及び経営成績の状況

当期におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症に対する各種政策の効果もあり持ち直しの動きがみられますが、新たな変異株の影響もあり一部で弱さもみられています。また、足元ではウクライナ情勢や金融資本市場の変動など、依然として先行きは不透明な状況にあります。

当社グループを取り巻く環境におきましては、新型コロナウイルス感染症拡大の影響による個人消費や企業活動の停滞、情報媒体のデジタルシフトによるペーパーメディアの需要減少、原材料の供給面での制約や価格高騰など厳しい経営環境が続きました。一方、生活様式の変化に伴うデジタル需要の増加や地球環境に対する意識の高まりなど、新たな需要が見込まれています。

このような環境のなかで当社グループは、「Digital & Sustainable Transformation」をキーコンセプトに、社会やお客さま、トッパングループのビジネスを、デジタルを起点として変革させる「DX(Digital Transformation)」と、事業を通じた社会的課題の解決とともに持続可能性を重視した経営を目指す「SX(Sustainable Transformation)」によって、ワールドワイドで社会課題を解決し、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指しています。また、2021年5月に公表した中期経営計画(2021年4月~2023年3月)では、①事業ポートフォリオの変革、②経営基盤の強化、③ESGへの取り組み深化を中長期の経営課題と位置付け事業変革を図るとともに、経営基盤の強化に取り組んでおります。

以上の結果、当期の売上高は前期に比べ5.5%増1兆5,475億円となりました。また、営業利益は25.0%増735億円、経常利益は31.5%増763億円、親会社株主に帰属する当期純利益は50.2%増1,231億円となりました。

なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)等の適用により、従来の方法に比べて、売上高は229億円減少し、営業利益、経常利益はそれぞれ2億円減少しております。

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

 

a   情報コミュニケーション事業分野

セキュア関連では、ICカード製造は減少したものの、セキュアソリューションが好調に推移し、前年並みを確保しました。海外では、企業における顧客接点構築とサプライチェーン管理を可能にするID認証サービスを欧州や中国の市場に展開するとともに、アフリカを中心とした新興国地域に顧客基盤をもつシステムインテグレーターのFace Technologies社を買収するなど、海外セキュア事業の拡大に取り組みました。また、EC需要増などで拡大する物流業界のDX需要を取り込むため、デジタル技術の活用により物流効率化を推進する株式会社アイオイ・システムを買収しました。

ビジネスフォーム関連では、ビジネスフォームは、金融機関を中心とした非対面手続きの促進による窓口帳票の減少などがあったものの、ワクチン接種関連帳票の取り込みや運輸ラベルの増加により、前年並みとなりました。データ・プリント・サービスは、ワクチン接種関連通知物の取り込みや、金融機関、通信販売を中心としたダイレクトメール(DM)需要の回復がありましたが、経済対策関連の縮小などにより、わずかに減収となりました。また、グループ経営における両社のリソース活用を最大化し競争優位性を強化すべく、トッパン・フォームズ株式会社を完全子会社化しました。

 

コンテンツ・マーケティング関連では、チラシをはじめとした商業印刷の減少があったものの、ゲームカードなどの出版印刷、デジタル化の需要を取り込んだコンテンツ・マーケティングソリューションの増加や、昨年度に新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け急減したSP関連ツールの反動により、前年を上回りました。DXの取り組みとしては、製造DX支援ソリューション「NAVINECT®」における生産実績管理や金型管理などの機能拡充、顧客の行動をリアルタイムで解析できる販促支援ツール「未来のチラシ」の拡販などを推進しました。また、メタバース市場の拡大を見据え、現実空間を仮想空間へ正確に取り込み、その中で商談などのビジネスコミュニケーションが可能なメタバースサービス基盤「MiraVerse®(ミラバース)」を開発しました。電子書籍関連では、海外企業の参入が本格化し競争が激しさを増すなか、株式会社BookLiveは、クリエイターとファンに向けたコミュニティプラットフォーム、「Xfolio(クロスフォリオ)」をリリースするなど、差別化を図りました。

BPO関連では、企業や政府・地方自治体等のアウトソーシング需要を取り込み、好調に推移しました。
  以上の結果、情報コミュニケーション事業分野の売上高は前期に比べ2.9%増9,035億円、営業利益は0.2%増512億円となりました。

なお、収益認識会計基準等の適用により、売上高は88億円減少し、営業利益は0億円減少しております。

 

b   生活・産業事業分野

パッケージ関連では、軟包材は、国内では、トイレタリー・外食向けの需要が回復傾向にあるほか、海外ではインドネシアを中心に販売が拡大し、増収となりました。紙器も、海外での売上が増加し、前年を上回りました。環境配慮の機運が高まるなか、SXの取り組みとしてサステナブル包材の拡販に注力しており、世界最高水準のバリア性能を持つ透明バリアフィルム「GL BARRIER」の新しいラインナップとして、遮光性を有する「GL-ME-RC」を開発しました。なお、「GL BARRIER」はその高い環境適性が評価され販売が拡大しており、昨年度はアルミ箔を用いたパッケージに比べ、CO₂排出量約63,000トンの削減効果を実現しました。また、ライフサイクル全体のCO₂排出量を個別の製品ごとに自動計算するシステム「SmartLCA-CO₂™」の運用や、油性バイオマスインキと水性パックニスを組み合わせた環境対応オフセット印刷「エコラスター®」の生産を開始しました。グローバル市場においては、米国包装材メーカーのInterFlex社、インド大手フィルムメーカーのMax Speciality Films社を買収し、サステナブル包材の現地供給体制を強化しました。

建装材関連は、国内では、コマーシャル市場はコロナ前の水準には届かないものの、住宅市場の緩やかな回復や、高意匠・高機能化粧シートの販売拡大により、増収となりました。海外では、巣ごもり需要の拡大が落ち着きつつある一方、家具等インテリア向け化粧シートの販売が好調に推移し、増収となりました。DXの取り組みとしては、健康意識の高まりを受け、建装材とIoT機器を組み合わせることで、住まいの生活動線で個人の健康情報を収集・蓄積するサービス「cheercle™(チアクル)」を開発しました。また、増加する環境衛生ニーズに対応すべく、既存のテーブルやタッチパネルなどに貼付可能な「トッパン抗ウイルス・抗菌クリアシート」を開発し、第三者機関であるSIAA(抗菌製品技術協議会)の認証を取得しました。

以上の結果、生活・産業事業分野の売上高は前期に比べ4.3%増4,442億円、営業利益は3.0%増285億円となりました。

なお、収益認識会計基準等の適用により、売上高は111億円減少し、営業利益は1億円減少しております。

 

c   エレクトロニクス事業分野

半導体関連では、フォトマスクは、5G・AIなどを背景とした需要拡大に加え、データセンターや車載向けなど幅広い用途で半導体需要が拡大し、好調に推移しました。また、これまで以上の技術開発・設備投資を想定し、自ら資金調達し機動的な意思決定を行うべく、将来的なIPOを視野に、株式会社トッパンフォトマスクを新設しました。高密度半導体パッケージ基板のFC-BGA基板は、通信データ量の増大に伴い需要が高まるなか、業界最高水準の品質と技術を武器に大型・高多層の高付加価値品を取り込み、増収となりました。また、次世代LPWA(低消費電力広域ネットワーク)通信規格「ZETA」を活用し、工場やビルの環境保全業務の効率化・省人化を可能にするなど、IoTの本格普及に向けた取り組みを強化しました。

 

ディスプレイ関連では、カラーフィルタは、車載向けを中心に需要が回復基調にあるものの、事業譲渡の影響により前年を下回りました。反射防止フィルムは、テレワークや巣ごもり需要によりノートPC、モニター向け需要が拡大し、好調に推移しました。TFT液晶パネルは、マレーシアにおけるロックダウンの影響を受けたものの、車載や産業機器向けなどの需要回復により、前年を上回りました。また、衛生配慮による非接触ニーズが高まる中、パネルと並行に空中に映像を出現させる新方式の空中タッチディスプレイをオフィスビル向けに提供するなど、新たな事業の拡大に取り組みました。

以上の結果、エレクトロニクス事業分野の売上高は前期に比べ20.6%増2,215億円、営業利益は150.8%増300億円となりました。

なお、収益認識会計基準等の適用により、売上高は29億円減少し、営業利益は1億円減少しております。

 

財政状態の状況は、次のとおりであります。

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ753億円減少2兆2,881億円となりました。これは受取手形、売掛金及び契約資産が342億円、のれんが161億円、原材料及び貯蔵品が146億円、機械装置及び運搬具が103億円それぞれ増加したものの、投資有価証券が1,064億円、現金及び預金が760億円それぞれ減少したことなどによるものです。
  負債は、前連結会計年度末に比べ593億円減少8,509億円となりました。これは長期借入金(1年内返済予定を含む)が548億円減少したことなどによるものです。
  純資産は、前連結会計年度末に比べ159億円減少1兆4,372億円となりました。これは利益剰余金が1,081億円増加したものの、その他有価証券評価差額金が696億円、非支配株主持分が582億円それぞれ減少したことなどによるものです。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ829億円(16.7%)減少し、4,142億円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益 1,809 億円に減価償却費等の非資金項目、営業活動に係る債権・債務の加減算を行った結果、647億円の収入となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資を行った一方、投資有価証券の売却及び償還による収入があったことなどにより、328億円の収入となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、連結範囲の変更を伴わない子会社株式の取得や長期借入等の返済、自己株式の取得、配当金の支払を行ったことなどにより、1,869億円の支出となりました。


 

 

(生産、受注及び販売の状況)

(1) 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

情報コミュニケーション事業分野

891,385

2.8

生活・産業事業分野

440,781

5.6

エレクトロニクス事業分野

224,295

23.6

合    計

1,556,462

6.1

 

(注) 上記金額は、販売価額によっており、セグメント間の取引につきましては相殺消去しております。

 

(2) 受注状況

当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

情報コミュニケーション事業分野

892,192

3.3

40,483

3.5

生活・産業事業分野

441,463

6.8

108,493

5.2

エレクトロニクス事業分野

226,851

22.1

24,694

35.9

合    計

1,560,507

6.7

173,670

8.3

 

(注) 上記金額は、販売価額によっており、セグメント間の取引につきましては相殺消去しております。

 

(3) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

情報コミュニケーション事業分野

890,839

2.9

生活・産業事業分野

436,105

4.3

エレクトロニクス事業分野

220,589

20.5

合    計

1,547,533

5.5

 

(注) 1  セグメント間の取引につきましては相殺消去しております。

2  相手先別販売実績につきましては、総販売実績に対する割合が10%以上の販売先はないため、記載を省略しております。

 

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)

経営者の視点による当社グループ(当社及び連結子会社)の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成しております。この連結財務諸表の作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5  経理の状況  1  連結財務諸表等  (1)連結財務諸表  注記事項  (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)及び(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

なお、新型コロナウイルス感染症の影響に関する会計上の見積りについては、「第5 経理の状況  1 連結財務諸表等  (1)連結財務諸表 注記事項  (追加情報)」に記載のとおりであります。

 

(2) 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度に比べ、5.5%増1兆5,475億円となりました。情報系印刷物は減少したものの、企業や政府・地方自治体等からのBPO受託、建装材や海外パッケージが伸長したほか、半導体市場の旺盛な需要を取り込んだフォトマスクや市況回復に伴うTFT液晶の増加により、全体として増収となりました。

売上原価は前期比4.1%増1兆2,127億円、売上原価率は1.1ポイント低下して78.4%となりました。なお、収益認識会計基準等の適用により、売上原価は226億円減少、売上原価率は1.5ポイント低下しています。この結果、売上総利益は、前期比11.1%増3,347億円となりました。総合的なコスト削減策が奏功し、売上原価率は2020年3月期に80%を切った後、さらに2期連続で低減しています。引き続き、組織のスリム化や生産の効率化、原材料調達の見直しなどに取り組んでいきます。

販売費及び一般管理費は、前期比7.7%増2,612億円となりました。対売上高比率は16.9%で、前期の16.5%から0.4ポイント上昇しました。当社グループでは現在、収益力強化に向けた事業構造改革を進めており、最適な人員配置による外部委託費の低減、総労務費圧縮などを引き続き推進していく方針です。

営業利益は前期比25.0%増735億円となり、売上高営業利益率は4.7%と、前期の4.0%から0.7ポイント上昇しました。当社グループは、本業の収益力を測る指標として営業利益を重視しており、今後もその拡大に向けた施策を積極的に講じる方針です。

税金等調整前当期純利益は前期比39.2%増1,809億円となりました。これは、減損損失の計上など一連の保有資産価値見直し施策が一段落したことや、政策保有株式の売却益を計上したこと、また2020年末以降の株高を受けて、投資有価証券評価損や投資有価証券売却損が減少したことなどによるものです。

以上の結果、非支配株主に帰属する当期純利益を控除した親会社株主に帰属する当期純利益は、前期比50.2%増1,231億円となり、1株当たり当期純利益は、前期の237円16銭から365円21銭に増加しました。なお、収益認識会計基準等の適用により、当期の1株当たり当期純利益は57銭減少しています。

利益率は、総資産当期純利益率(ROA)が前期の3.6%から5.3%へ、また自己資本当期純利益率(ROE)が前期の6.5%から9.2%へ、それぞれ上昇しました。

セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

情報コミュニケーション事業分野の総資産は382億円4.8%)増加し、8,402億円となりました。生活・産業事業分野の総資産は639億円14.5%)増加し、5,055億円となりました。エレクトロニクス事業分野の総資産は171億円8.3%)増加し、2,249億円となりました。

なお、セグメント別の経営成績については「第2  事業の状況  3  経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析  (1)経営成績等の状況の概要  ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

 

(3) 資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社グループの運転資金は主に製品製造に使用する原材料や部品の調達に費やされており、製造費や販売費及び一般管理経費に計上される財・サービスに対しても同様に費消されております。また、設備投資資金は、生産設備取得等生産体制の構築、情報システムの整備等に支出されております。

これらの必要資金は、主に手元のキャッシュと営業活動によるキャッシュ・フローから創出し、必要に応じて柔軟的かつ機動的に借入や社債発行等により調達しており、資産効率の向上と今後の持続的な成長を実現させるため、将来の成長事業と構造改革への投資財源へ充当してまいります。

また、当社グループは手元流動性残高から有利子負債を控除したネットキャッシュの水準を重視した資金管理を実施しており、必要な流動性資金は充分に確保しております。これらの資金をグループ内ファイナンスを有効に活用することにより、効率的な資金運用を図っております。

これらの方針により、成長に向けた積極投資を継続しながらも、持続的な安定配当により株主還元とのバランスをとり、財務健全性との両立を重視した運営を堅持してまいります。

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