課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 以下の記載における将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において判断したものであります。

 なお、当行グループは必要な関係当局の許可等が得られることを前提として、2022年10月を目途に持株会社体制へ移行する準備を進めております。

 

(1) 経営方針

当行グループは、グループ経営理念として「地域・お客さま・従業員と分かち合える豊かな未来を共創する」を掲げています。この理念の下、財務体質の健全性はもとより、心技体の充実した健全な行員の育成と、環境変化やお客さまのニーズに柔軟かつ的確に対応できる健全な企業文化の醸成にたゆみない努力を惜しまず、お客さまからのゆるぎない信頼とお客さまのニーズに的確にお応えする卓越した総合金融サービスで、地域社会とともに発展することを目指しています。

また、当行ではステークホルダーを現在および将来の「お客さま」「地域社会」「株主のみなさま」「従業員」と捉え、地域金融機関として本業を通じた地域貢献を第一義とし、本業を超えた幅広い社会貢献活動についても注力しています。

 

(2) 中長期的な会社の戦略

金融機関を取り巻く環境は、人口減少等の我が国の社会構造の変化に伴う経済成長の鈍化、低金利環境の常態化など一段と厳しさが増しており、今後も厳しい事業環境が継続すると想定されます。

こうした事業環境を見据え、またテクノロジーの急速な進展など環境の変化にも対応し、持続可能なビジネスモデルを確立するため、当行では2017年度を起点とする期間10年間の長期経営計画『Vision 2027「未来共創プラン」』を策定いたしました。

この長期経営計画では、「地域・お客さま・従業員と分かち合える豊かな未来を共創する」を長期ビジョンに掲げており、「豊かな未来を創る取組み」「経営の土台を創る取組み」をフレームワークとし、長期ビジョン達成に向けた各種取組みを着実に実施していきます。

 

長期ビジョン達成を確実なものにするため、長期経営計画と併せて2017年度にスタートした前中期経営計画『未来共創プラン ステージⅠ』では、戦略投資やBPRによる効率化・営業力強化などハード面の強化いわば構造改革に取り組みました。

そして、2020年4月からは、前中期経営計画の構造改革の成果を基盤として、外部環境の変化に迅速に対応すると同時に、地域社会とともに発展する当行独自のビジネスモデルの構築に取り組むため、中期経営計画『未来共創プラン ステージⅡ』をスタートしました。本中期経営計画では、組織力や人財の強化といったソフト面の強化いわば行動改革に取り組んでいます。

 


 

具体的には、成長に向けたビジネスモデルを構築するための戦略を5つの柱と定義し、次のような施策を軸に取り組んでいます。


 

これら、5つの柱を軸として、当行グループは、「金融の枠を超え、地域やお客さまのさまざまな課題に向き合い、新たな価値を共創していく銀行グループ」を目指し、環境の変化を前向きに捉え柔軟に対応し、常に変化することを恐れず、成長していく集団に進化していきます。

 

 

(3) 経営環境

日本全体の共通課題とも言える「人口減少・少子高齢化等の社会構造の変化」に伴う経済成長の鈍化、そして、これに伴う既存マーケットの縮小が、当行の営業基盤である東瀬戸内圏においても深刻な問題となっており、今後も厳しい経営環境が継続すると想定しています。

こうした厳しい経営環境の中、中国銀行グループは地域社会あっての存在であることを再認識し、地域の方々に必要とされる存在であり続けることを目指しており、グループとしての企業価値を高めていく必要があると考えています。そのため、当行グループは、地域に根ざしたネットワークとなるとともに、これまでに培ってきた金融面に限らない幅広いノウハウを地元企業のお客さまと共有し、お客さまの様々な課題の解決を通じて、地元企業の成長や地域経済の発展に貢献し、持続可能な地域社会の確立を支援すべく、地方創生、SDGsの取組み(中計「未来共創プラン ステージⅡ」1つ目の柱)を通じて、当行グループの企業価値を高めてまいります。

併せて、当行の加盟している全国規模での地銀アライアンス「TSUBASAアライアンス」の強みを活かし、単独行では実施困難な施策や、「TSUBASAアライアンス」各加盟行でカバーする全国規模での営業基盤を背景とした相乗効果のある収益力増強施策の実施など、差別化を図ることで金利競争に決して負けない経営体力の増強に取り組んでまいります。

加えて、銀行業界はフィンテックやDX(デジタルトランスフォーメーション)といった社会的なデジタル化の進展を背景に異業種からの参入も脅威となっています。しかしながら、この脅威を機会と捉え、既存概念の枠を超えたデジタルの活用に取り組み、行内の業務効率化に留まらず、お客さまとの接点拡大や新たな顧客体験の創造を通じて、顧客基盤の開拓に取り組みます(中計「未来共創プラン ステージⅡ」4つ目の柱)。

環境の変化を言い訳にしても未来はありません。地域社会やお客さまの様々な課題を一緒に解決し、地域社会とともに発展する当行グループでありたいと思います。これは、地域のリーディングカンパニーとしての使命であり、所属する役職員の矜持です。

2020年度よりスタートした中期経営計画「未来共創プラン ステージⅡ」では、役職員の行動の拠りどころである「ちゅうぎんバリュー」の実践、つまり、地域社会やお客さまのために当行グループとして何が出来るかを考え、行動することを通じて、問題解決や新たな価値を提供することで地域社会やお客さまの発展に貢献してまいります。

近年、新型コロナウイルス感染症の世界的拡大に伴い、内外の経済活動が大きく低下しました。2021年度においては、前半は新型コロナウイルス感染症の感染再拡大により、緊急事態宣言が断続的に発令され、経済活動は停滞しましたが、感染状況が落ち着くにつれ、景気は持ち直してきました。しかし、半導体不足やウクライナ情勢により原材料価格や燃料価格が高騰しており、企業収益や個人消費への影響が懸念され、依然として先行き不透明な状況が続いております。当行の営業エリアにおいても、設備投資は高水準が続いているものの、新型コロナウイルス感染症の再拡大により、生産活動、個人消費の持ち直しの動きが緩やかになっております。また、今後は資源価格高騰などによる企業収益の悪化も懸念され、地域経済の状況に注視するとともに地元企業への積極的な資金供給や経営課題解決への対応を通じて、地元経済の回復に貢献してまいります。

 

 

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

今後の経営環境につきましては、これまでの人口減少・高齢化やマイナス金利政策の長期化に加え、新型コロナウイルス感染症の長期化やウクライナ情勢、米国の利上げの影響など不透明な状況続くことが想定され、企業収益の悪化や個人消費の落ち込み、それに伴う地域経済の停滞が懸念されます。また、昨年も豪雨等の大規模な自然災害が発生しており、気候変動問題への対応も喫緊の課題であります。

 このような経営環境に対応するため、当行グループは中期経営計画で掲げる主要戦略「5つの柱」を着実に実行してまいります。中期経営計画の最終年度である今年度は集大成として、各施策の効果を十分発揮するとともに計画を達成し、次の飛躍のステージにつなげてまいります。

 「1.地方創生・SDGsへの取組み強化」では、自治体との連携を深めながら、地域の特色ある産業の支援、創業・ベンチャーの支援、観光資源の活用などの取組みを強化してまいります。また、脱炭素化への取組みを重要な成長戦略と位置付け、外部の機関や事業者と積極的に連携し、地域、お客さまの脱炭素化の支援を先導して進めることで、持続可能な地域の発展へ貢献してまいります。

 「2.お客さま本位の営業の『深化』」では、法人・個人事業主のお客さまに対しては、新型コロナウイルス感染症の長期化に伴う資金繰り支援を継続して行うとともに、デジタル化や脱炭素化などの多様化・複雑化するニーズや課題に対して、最適なソリューションを提供してまいります。個人のお客さまに対しては、デジタル技術やデータの利活用を一層進め、店舗などの対面チャネルとデジタルチャネルを適切に組み合わせて、ライフプランに応じた一生涯のサポート活動を展開してまいります。

 「3.組織の活性化」では、新人事制度の運用定着により自律と挑戦の風土醸成に努めてまいります。また、女性活躍推進については一層取組みを強化し、ダイバーシティの推進を進めてまいります。

 「4.デジタル戦略の強化」では、デジタル人財の育成・確保を図りながら、幅広い領域においてDX(デジタル・トランスフォーメーション)を進め、ビジネスモデルの変革につなげてまいります。当行グループ一体となったコンサルティング体制の強化、外部連携の強化等により地域・お客さまのデジタル化支援を一層進めてまいります。法人・個人事業主のお客さま向けの「会員制ポータルサイト」の導入、個人のお客さま向けの「ちゅうぎんアプリ」の機能追加、データ活用の推進などにより、チャネル・サービスのデジタル化を強化することで、お客さまの利便性向上、効率的な営業を実現してまいります。グループ内のデジタル化については、事務レス、ペーパーレスをさらに進めて、業務改善や働き方改革につなげ、生産性の向上に努めてまいります。

 「5.持続可能な成長モデルの確立」では、環境の変化に柔軟に対応できるよう、持株会社体制により持続可能なビジネスモデルを確立し、金融を中心とした総合サービス業へ進化し、地域社会の持続的な発展に貢献してまいります。コンサルティング活動を含む本業での収益安定化を図るとともに、コスト構造の抜本的な見直し、米国の利上げなどによる不安定な金融市場下での有価証券ポートフォリオの再構築など、厳しい環境下においても持続可能な利益成長の実現を目指します。またTSUBASAアライアンスなどの連携施策はこれからも積極的に強化してまいります。

 以上の「5つの柱」がそれぞれ太くなり、そしてシナジー効果を発揮することで、地域社会とともに発展するビジネスモデルを構築してまいります。

 

(5) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な経営指標等

2020年4月よりスタートさせました中期経営計画『未来共創プラン ステージⅡ』(期間:3年間 2020年4月~2023年3月)においては、前中期経営計画での構造改革(戦略投資及びBPRによる効率化・営業力強化)の成果をもとに、外部環境の変化に迅速に対応するとともに、地域社会とともに発展する「当行独自のビジネスモデル」の実現に向け、組織力と人財育成を強化していきます。

中期経営計画における指標、当事業年度における達成・進捗状況につきましては、下記のとおりです。

引き続き、KPI達成を通じて長期的には域内(東瀬戸内経済圏※1)人口とGDPの向上を目指しています。


 

※1:東瀬戸内経済圏…岡山県、香川県、広島県東部(備後地域)、兵庫県西部(播磨地域)

※2:創業支援先数…当行が開催する創業支援イベント等により、創業した先数

※3:事業承継支援先数…事業承継コンサルティングサービス受託先数

※4:金融リテラシー向上等に資する活動…金融リテラシー、ビジネススキル等の向上に資する各種イベント・勉強会等の開催件数

※5:お客さま満足度…お客さまアンケート「満足・やや満足」の合計(法人・個人アンケートを隔年で実施)

※6:人件費支払前コア業務純益における労働分配率…人件費÷(コア業務純益+人件費)

 

●5つの柱の進捗と成果(サマリー)


 

 

(6) 気候変動への対応とTCFD(気候変動関連財務情報開示タスクフォース)提言への取組状況

当行グループでは、気候変動への対応を重要課題と捉え、地域のリーディングバンクとして気候変動問題に対して先導的に取組みをおこない、地域・お客さまの持続的な成長を支援するため、2021年5月にTCFD(気候変動関連財務情報開示タスクフォース)に対する賛同を表明しました。

 

1.ガバナンス

気候変動への取組姿勢

当行グループでは、経営理念や経営ビジョンのもと、ちゅうぎんSDGs宣言で「地域経済・社会」「高齢化」「金融サービス」「ダイバーシティ」「環境保全」の5つの重点課題を定めています。「環境保全」では、脱炭素や気候変動を特に重要性の高い課題と認識し、これまでの気候変動に関する取組みをより一層推進するとともに、TCFD提言に沿った情報開示の充実を図っています。

 

監督体制

当行グループのサステナビリティ経営への取組強化を目的として、2022年4月に「CSR委員会」「人権・同和問題研修委員会」を統合し、「サステナビリティ委員会」を新設しました。サステナビリティ委員会では、サステナビリティ課題の特定や見直しをはじめとして、気候変動や生物多様性などの「環境問題」やダイバーシティや労働環境、人権などの「社会問題」に関する施策・方針、取組状況などについて審議・議論をおこなっています。

気候変動に関する重要事項等については、サステナビリティ委員会および常務会での審議・議論を経て、取締役会へ付議・報告をおこなっています(年1回以上)。取締役会による審議結果は、経営戦略やリスク管理・評価に反映させる体制としています。

取締役会は、気候変動関連の議案(目標設定や取組みの進捗状況等)について監督の役割を担っています。

 


サステナビリティ委員会では、気候変動を含む環境課題や社会課題に対する施策や方針などのサステナビリティに関する事項について年4回の頻度で審議・議論を深めています。同委員会は、頭取を委員長として、経営、リスク管理、営業部門をはじめとした部署の担当役員、部長、グループ各社社長などのメンバーで構成しています。


 

 

2.戦略

気候変動に関する経営戦略

社会課題・環境課題を経営上のサステナビリティ課題として認識し、「地域社会の発展への貢献」と「企業価値の向上」の永続的な好循環を創り出すことを目指し、2022年4月に「ちゅうぎんグループサステナビリティ基本方針」を制定しました。中でも、気候変動は当行グループおよびステークホルダーにおける重要課題であり、グループ経営理念や経営ビジョンにもとづきサステナビリティ経営の戦略の一つとして取組みを強化していきます。

 

 

リスクと機会

気候変動に関する経営戦略策定やリスク管理強化には、気候変動関連のリスクと機会を評価し、お取引先ならびに当行への影響を把握することが重要な視点と考えます。

気候変動による影響の把握は、シナリオ分析により行います。気温上昇を2℃未満に抑える「2℃シナリオ ※1 」、低炭素化が進まない「4℃シナリオ ※2 」を用い、「移行リスク」「物理的リスク」「機会」を把握します。

※1 2℃シナリオ・・・厳しい気候変動に対する対策をとれば、世界平均気温が産業革命時期比で0.9~2.3℃上昇に抑えられるシナリオ

※2 4℃シナリオ・・・現状を上回る温暖化対策をとらなければ、世界平均気温が産業革命時期比で3.2~5.4℃上昇することが想定されるシナリオ

 

(シナリオ定義)


 

(リスクと機会)


 

炭素関連資産

「石油・ガス・石炭」「電力ユーティリティー」セクターの当行貸出金等に占める割合は、「2.3%」となっています。

なお、2021年TCFD改訂付属書にもとづく炭素関連資産(※)の割合は、「31.9%」となっています。

(※)炭素関連資産は、「石油・ガス・石炭」「電力ユーティリティー」「運輸」「素材・建築物」「農業・食糧・林業製品」セクターと再定義され、当行では日銀業種分類をベースにお取引先の主たる事業に該当する業種を対象セクターと見做し集計。

 

ビジネス機会への取組み

気候変動対応をビジネス機会として捉え、お客さまの脱炭素への移行やSDGs/ESGの取組支援として、関連する各種サービスや商品の提供や商品開発を積極的におこなっています。中長期的な目線でお取引先や地域のお客さまの課題やニーズを理解し、気候変動対応や脱炭素社会への移行の支援をおこなうことで、投融資をはじめとしたソリューションの提供などのビジネス機会の創出・拡大に取組んでいます。

 


 

 

3.リスク管理

当行では、統合的なリスク管理として、「信用リスク」「市場リスク」「流動性リスク」「オペレーショナル・リスク」を管理しています。気候変動に伴うリスクについては、「信用リスク」「オペレーショナル・リスク」など当行が定めるリスクカテゴリーごとに影響を把握し、サステナビリティ委員会にて定期的にリスクの識別・評価をおこない、管理する体制としています。

気候変動に伴うリスクを「将来の不確実性を高める要素」と捉え、統合的なリスク管理など既存のリスク管理プロセスへの反映を検討しています。

2021年4月に「責任ある投融資に向けた取組方針」を定め、環境や社会に対し負の影響を与える可能性がある投融資については慎重に判断し、その影響を低減・回避するよう努めるものとしており、加えて特定の業種・セクター(兵器製造、石炭火力発電所の新設、違法伐採や人権侵害の恐れのあるパーム油農園開発・森林伐採事業)に対する投融資は十分に留意した対応をおこなっています。

気候変動に関するシナリオ分析結果を踏まえ、気候変動への対応や脱炭素社会への移行に向け、お客さまとの対話(エンゲージメント)を強化します。お客さまごとの課題やニーズを深く理解しソリューションを提供することで、ビジネス機会の創出や管理の強化によるリスク低減に取組んでいきます。

 

4.指標と目標

CO₂排出量の削減目標

カーボンニュートラルの達成を目指し、当行のエネルギー使用に伴うCO₂排出量に関する新たな削減目標を設定しました。

引き続き使用エネルギー量の削減をおこなうとともに、今後はクリーンエネルギーへの切替えなどによる対応を進めていくことで目標達成に向けて意欲的に取組んでいきます。


当行のScope1、2のCO₂排出量推移は次のグラフのとおりです。

Scope3(Scope1、2以外の間接排出)については、今後の開示に向けた検討を進めています。


 

サステナブルファイナンス目標

当行は、地域金融機関として地域のお客さまの気候変動に対する理解を深めていただき、脱炭素社会に向けた取組みを支援するため、新たに「サステナブルファイナンス目標」を設定しました。


サステナブルファイナンスでは、社会関連や環境関連の課題解決に向けた投融資等を通じてお客さまの取組みを積極的に推進していきます。対象のサステナブルファイナンス目標は、次の分野のファイナンスに加え、地方創生やSDGs/ESGの取組支援を含む2020年度から2030年度までの実行額としています。

 

<社会分野>

<環境分野>

医療・介護・保育、教育 ほか

太陽光、風力、バイオマス、EV ほか

 

 

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