課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

当社グループを取巻く食のグローバル流通事業の外部環境は、新興国の所得水準向上やいわゆる米国ミレニアル世代の台頭に代表されるような食の多様化、供食形態の変化(外食・中食需要増)、人口増加による食料資源問題、為替変動等により激しく変化しております。他方、日本食を中心としたアジア食品のグローバル化の進行は未だその途上と考えられます。

日本食のスタイル及び食材は、2013年に「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されたことにも代表されるように、世界における認知度や評価は年々高まっており、伝統的な和食スタイルのみならず、現地の食生活により馴染む形で発展、浸透しつつあります。

また、世界的な環境問題や個々の健康に対する関心が高まり、それらの課題と味・嗜好との両立等、食に対するニーズがさらに多様化する中、既存の食品業界の領域を超えて、様々な技術・サービスが新たに生まれております。

これら外部環境の大きな変化に先んじて対応し、持続可能な収益基盤を構築していくためには、当社グループの事業構造を継続的に改革していくことが切要と考えております。具体的には、既存事業における一層の収益性向上を目指すべく、以下の戦略・方針を実現してまいります。併せて、世界的な食に対するニーズの多様化を成長分野として取り込むために、「食」の領域と、「医(ヘルスケア)」・「Eco」・「新しいライフスタイル」・「Food Informatics」等が融合する新たな領域において、専門的かつグローバルなソリューションを提供する企業グループを目指し、新たな事業分野に対する人材投資を継続してまいります。

 

(1) 営業戦略

アジア食グローバル事業では、より強固な営業基盤を構築するとともに、従来の主たる顧客である日本食レストランや日系・アジア系の量販店に留まらず、非日系の量販店等、新規顧客の開拓を推進することでシェアの拡大を図ります。北米での成長を維持しつつも、北米以外の地域についても、より一層積極的に市場開拓に向けて取り組んでまいります。本事業は、各国の食品に係る各種規制対応等、グローバルに事業を展開する上で新規参入障壁が高い分野であると認識しております。併せて、当社グループは100年を超える実績のもと、世界各国に拠点を有し、輸入卸と物流機能を一気通貫で展開可能な体制を整備しております。その様な競争優位性を活かしながら、各地域のニーズ・嗜好や新型コロナウイルス感染症拡大以降の消費形態の変化に対応した商品の開発、フードセーフティの強化、事業オペレーションの効率化等によって更なる差別化を図り、中長期での収益性の向上を達成してまいります。

また、多様化する食のニーズをとらえ、新しい食材やメニュー、新しい食の文化を探求・提供していくことが、当社グループの使命と心得、各国において、より現地に根差した活動を行っております。現地のニーズを反映した商品開発や、非日系大手量販店等の新たな販路拡大に結び付けられるよう、専門スキル及び広範なネットワークを有する現地プロフェッショナルの採用を積極的に進めてまいります。

農水産商社事業では、サンキスト・グロワーズ社の日本輸入総代理元として、柑橘類を中心に生鮮青果の幅広い商品を全国の卸売市場、量販店及び外食産業へ販売しております。卸売市場の規制変更等国内の事業環境の変化を踏まえ、今後は同社との取引を一層深化させるとともに、グローバルな調達力と輸入青果に係る国内販売網の両方を有する企業として、これまでに培った知見や技術、取引先との信頼関係を活かし、中国を中心としたアジア各国への販路を拡大してまいります。その一環として、2021年11月16日付けでシンガポールの有力青果物輸入卸商社であるBan Choon Marketing Pte. Ltd.の全株式取得契約を締結(企業結合日は2022年1月7日)いたしました。同社を東南アジア地域における農水産商社事業の核として位置づけ、同地域の青果物事業の拡大を目指すとともに、同社の販路を活かしアジア食グローバル事業の規模拡大にも繋げていく計画です。そのほか、各国より調達した水産物を日本国内に販売する等、複合的な販売活動も展開しております。

 

その他事業では、海外のユニークなブランド食品を日本市場に紹介する他、ハロウィン、クリスマス等のイベント商品やキャラクター商品の企画・販売を行っております。この他には通販ギフト、催事への出店、サプリメント販売の各事業にも取り組み、食が創り出す楽しさ・喜びを国内一般消費者にもお届けしております。

キャラクター商品の販売については、新型コロナウイルス感染症拡大以降、主要顧客である小売業態の営業規制等による影響を受けておりますが、ECサイトの取り組み等、販売網の多様化にも努めております。

 

(2) 商品戦略

当社グループは、北米地域を中心に世界各国へ日本食を中心としたアジアの食品・食材を供給しております。そのため生産者やメーカーと協働し市場ニーズを的確に捉え、各地のマーケットに合わせた商品を企画・開発し提供してまいりました。1921年に商標登録したプライベートブランド「Shirakiku」は、以来1世紀にわたり有数の日本食ブランドとして米国を中心に世界各地で親しまれています。今後もその商品ラインナップを拡充し、「健康・安全・美味」を象徴するブランドとして一層強化・育成してまいります。

当社グループの商品戦略は、既成の商品をそのまま販売するだけでなく、マーケットから求められている商品を開発していくことを基本方針としております。そのために各国の日本食レストラン経営者及び食品メーカーとの連携を密にし、商品開発にあたっては現場で収集した情報を生かし、資源動向、需給バランス等の変化に対応していくよう取り組んでおります。また、新たな販路開拓に係る施策として、非日系レストラン及び量販店に向けた商品開発も強化しております。

 

(3) 物流・システム戦略

当社グループでは、特にアジア食グローバル事業において自社で小口配送網を持ち、きめ細かな物流サービスを提供しております。このことは、大手の卸売会社を容易に参入させない優位性を堅持する一方、一部の国・地域においては、在庫管理、流通加工及び配送業務において、人手に頼った非効率なオペレーションに依存していることも否めません。

世界的に物流に係る人件費が上昇している中、当社グループは次のような施策を推進し、在庫管理及び物流機能の効率化・強化に努めます。

・受注から配送までの業務を一貫して効率運用できるグローバルベースでの物流・業務システムの再構築

・グループ会社間での情報管理システムの共有化

・自動制御ロジスティックシステム等の先進技術の導入検討

 

(4) フードセーフティ・法令対応

当社グループは、世界各地を市場として「食」の向上に貢献する企業であります。したがって、各国ごとに異なる食品に関する法令・規制に漏れなく対応すると同時に、法令・規制対応に限定せず、取扱食品の安心・安全を担保するフードセーフティ(以下「FS」という。)活動は、必須かつ永続的な課題であります。

当社グループでは、情報収集とその分析・対応を迅速かつ正確に行う体制として、当社にホールディングカンパニーとしての総合的な統括部署を設置している他、各国の事業会社ごとにFS担当部署を設けております。また、事業部門にもFS担当部署との窓口担当者を配することで漏れの無い体制を構築しております。かかる組織体制により、まず事業部門の担当者が情報収集にあたり、その情報整理と対策に事業会社FS担当部署があたり、さらに全体を当社統括部署が監修し、必要に応じて社外の専門家を活用しながら、課題の設定やスケジュール管理を行う体制が整っております。これにより情報共有と業務連携が円滑に行われ、グローバルかつ網羅的なFS管理を可能にしております。

 

 

(5) 財務戦略

当社グループでは、主要取引が米ドルを中心とした外貨取引であるため、為替リスク対応が重要な課題と認識しております。このため、グループ会社間における為替マリー(※)の活用や、三国間取引を行うことで為替リスクの極小化を図ってまいります。

また、当社グループの継続的成長を図る上で、資金調達力の強化は重要な検討事項であると捉えております。今後は公募増資、社債発行等資本市場からの直接金融による資金調達力も考慮のうえ、安定した財務基盤の構築に取り組んでまいります。

 

 (※)外国為替の売り持高と買い持高を結びつけることによって、為替持高を相殺することを指します。

 

(6) M&Aを活用した成長の追求

当社グループでは、これまで主にアジア食グローバル事業の拡充を目的として、成長性が高く、かつ、マーケット全体に占める割合の大きいアジア及び欧州において複数のM&Aを実施してまいりました。当連結会計年度におきましても、2021年2月に英国・スコットランドのInterlock Investments Limitedを連結子会社化いたしました。また、2022年1月には、シンガポールのBan Choon Marketing Pte. Ltd.を連結子会社化いたしました。既存事業の強化、及び当社グループが今後目指す新規事業の構築に寄与する投資機会がある場合には、デュー・ディリジェンスの実施によって財務・法務上の精査を十分行った上で、新規のM&Aを実施していくことが切要であると捉えております。

 

(7) 新技術、パラダイムシフトへの対応

食品業界においても、AI、IoT、ロボット等新技術の急速な進歩により、一次産業の都市化・工業化(養殖の自動化、野菜工場等)や、サプライチェーンの自動化(生産・在庫管理、不良品選別・異物検出、配送車の自動運転等)の実用化が進行しております。また、冷凍技術の進歩で、天然物を空輸するより美味しい冷凍食品が提供されるようになりました。

このような新技術は、現在大きな社会問題となっている食品廃棄の削減にも大きな貢献が期待されています。当社グループは、今後こうした食品に関する新技術への研究・投資を検討課題とし、食を通した社会への貢献を果たしてまいります。

 

(8) 目標とすべき経営指標

当社グループは、「北米地域の事業のグループ内シェア」及び「ROWC(=Return on Working Capital)」を目標とすべき主要な経営指標としております。

「北米地域の事業のグループ内シェア」は、当社グループの事業基盤を支える北米地域における事業を伸ばしながらもその構成比率を引き下げること、言い換えると、北米以外の地域における事業で北米地域における事業を上回る成長を実現することにより、グループとしての成長を加速させることを目指しているものです。

北米以外の地域の事業構成比率(売上高ベース)は、欧州における事業規模拡大等により、株式上場した2017年12月期比4.5ポイント増の45.6%となりました。

「ROWC」は、大きな設備をあまり必要としない当社グループの事業効率の指標として採用しており、営業利益(Return)が運転資本(Working Capital)に占める割合になります。運転資本とは日々営業活動を継続するための資金で、(売上債権+たな卸資産-買入債務)で求められます。ROWCの算出には一般に前期末と当期末の平均が用いられます。

2021年度の実績は、新型コロナウイルス感染症の影響を受ける中、収益回復のための施策に取り組み(前期比268.3%増)、前期比プラス13.8ポイントの19.6%となりました。

 

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