課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)経営方針及び経営環境等

① 経営方針

当社は「グローバルな競争社会で成長発展していくために、常に将来を見通し、大胆に変化していく。」を経営方針としております。いまや鶏卵といえども国内情勢だけを見て経営判断できる時代ではなくなったと認識しております。国内、国外の動向を把握し、常に10年後の近未来を予測し、過去、現在の仕事のやり方に固執することなく積極的かつ大胆に変化していく事が肝要です。

 

② 経営環境

当事業年度における日本経済は、新型コロナウイルス感染症対策として繰り返されてきた緊急事態宣言等が昨年10月に解除され、輸送業、観光業、飲食業等を中心に年末に向けて景気回復局面に入りました。しかしながらオミクロン株による第6波の感染拡大から今年1月には全国的にまん延防止等重点措置が発出され、景気回復に水をさすことになりました。さらに2月24日にはロシアがウクライナに軍事侵攻を開始、これを契機に世界的に原油、穀物相場が高騰、国内物価の大幅な上昇を引き起こすなど、国内景気にはますます不透明感が漂ってきています。鶏卵業界においてはコロナウイルス感染症の影響を受け引き続き業務用、加工用需要は低迷、この結果鶏卵相場は昨年7月以降今年1月までほぼ一貫して下落基調となりました。2月に入ると飼料高鶏卵相場安による生産調整が進んだことと、日本で2年連続となる鳥インフルエンザの感染拡大による採卵鶏淘汰の影響で鶏卵相場は反転、上昇基調で推移しております。

一方鶏卵コストの半分を占める飼料については、原料となるトウモロコシ相場が一昨年秋以降北米天候不安、中国の急激なトウモロコシ輸入増加等の影響で高騰、飼料価格も2020年10月以降2022年6月までの1年8カ月間で値上げとなりました。さらにロシアのウクライナ侵攻を受けてトウモロコシ相場はさらに上昇しており、飼料価格は7月以降も大幅な値上げが予想されております。

この様な状況下当社としましては、引き続き当社としての競争優位の源泉となっている小売店への直接販売や農場生産成績の改善、差別化卵の販売比率の引き上げ等を通じて当社収益構造の強化を図ってまいります。

 

(2)経営戦略等

① 事業領域の拡大

当社の持続的成長には、事業領域の拡大が必要です。岩手県、宮城県にある3つの農場、GP工場と、盛岡、仙台の営業支店を拠点に南東北、関東圏への販路、販売量の拡大を引き続き実行してまいります。さらに昨年3月からは香港市場への道産鶏卵輸出を開始、さらなる販路拡大を目指します。

 

② 相場に左右されない収益体質の構築

鶏卵は相場商品であり、このため当社収益も相場動向に左右されやすい収益構造になりがちです。当社は相場に左右されない収益体質構築のため、販売価格が比較的安定し、相場の影響を受けにくい「付加価値卵」(各種栄養成分を強化した卵、アニマルウェルフェアを意識した卵)の開発、拡販に引き続き注力してまいります。

 

③ 農場生産成績向上による鶏卵生産コストの引き下げ

生産コストの引き下げはメーカーでもある当社にとって永遠の取り組み課題です。最新技術を導入した鶏舎への建替え、飼料成分・飼育環境の改良、徹底した防疫対策を通じ、鶏卵生産成績の向上とコスト削減に取り組んでまいります。さらに本年度からは道産飼料原料(子実用トウモロコシ等)の活用に着手してまいります。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社の事業は製品の定価販売が可能な製造業と異なり、製品たる鶏卵、原料である飼料ともその価格が相場に大きく左右されます。このため売上高総利益率等の指標を計画や経営上の目標とすることはかえって経営の本質を見誤る危険性を含んでいるため、事業計画上これらの指標に目標を設定しておりません。代わりに各事業毎の事業成績目標の達成状況を判断するため、産卵率、平均卵重、飼料要求率(卵を産むためにどれだけの餌が必要かを示す指標)、一人一時間当たり製造量(パック詰め等作業)、相場差(販売単価と鶏卵相場の価格差)等の生産・製造・販売に関連する指標を当社では重視しており、結果として売上高総利益率の改善につながるような事業活動を行っております。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 販売価格の改定

過去に例を見ない飼料価格、エネルギーコスト、物流費の高騰に対応するためには量販店への鶏卵納入価格を改定することが喫緊の課題です。当社取引先に対しては原料事情を丁寧に説明し理解を求めたうえで適正価格に改定してまいります。

 

② ケージフリー卵の生産・販売

畜産事業に携わる企業として近年世界的に高まるアニマルウェルフェアへの取り組みを進めてまいります。当社は既に平飼い卵の生産、販売を行っておりますが、本年度はさらに宮城県においてケージフリー卵を本格的な規模で生産する計画で、夏以降関東/東海/北陸/東北の地域で販売してまいります。

 

③ 防疫体制の整備

今シーズンは昨年11月に秋田県で2シーズン連続となる鳥インフルエンザの感染が確認され、その後感染は北海道まで拡大しております。当社では既に道内、東北の全農場で最大限の警戒態勢をとり、鶏舎内外の消毒、外部との無用な接触の遮断等を徹底してきましたが、野生動物の侵入防止等感染防止策をより強化してまいります。

 

④ SDGsへの取組

未来に責任ある企業としてSDGs(持続可能な開発目標)への取り組みは避けて通れない課題と認識しております。当社は既に農場で発生する鶏糞を発酵鶏糞ペレット化する肥料工場を稼働させ、鶏糞の農地還元を行っておりますが、本年度はさらに廃鶏を処理する化製工場を稼働させ、出来上がったチキンミールとチキンオイルを飼料原料の一部として再利用する循環型社会への取り組みを強化してまいります。

 

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