(1) 経営成績等の状況の概要
当事業年度におけるわが国経済は、引き続き新型コロナウイルス感染症が大きな影響を及ぼしました。感染対策の徹底及びワクチン接種が促進されるなか、各種政策の効果や海外経済の改善もあり、景気は持ち直しの動きが見られました。しかし、変異ウイルスなどの感染症は依然として収束しておらず、景気の先行きは予断を許さない状況が続いております。
このような環境の中、当社は断熱材技術の革新とリサイクル技術により住まいの省エネルギー化を促進、住宅・建築物の「脱炭素」の課題に取り組む基本方針の下、高気密・高断熱性能を有する「アクアフォーム」の商品力と全国施工ネットワークを有する強みを活用し、各部門において積極的な受注活動を展開してまいりました。
この結果、当事業年度の当社の業績につきましては、売上高は、23,903百万円と前期比で9.3%の増収となりました。一方、売上原価はウレタン原料市況の上昇により19,163百万円と前期比で15.7%増加しました。この結果、営業利益は、1,412百万円と前期比で25.5%の減益となり、経常利益は1,429百万円と前期比で25.2%の減益、当期純利益につきましては953百万円と前期比で29.0%の減益となりました。
当社は利益改善の取り組みとして、主力の戸建部門に原料使用量を約30%削減する新開発「アクアフォームLITE」を当事業年度の6月より投入、ウレタン原料市況が高止まりする中において工事利益の改善を図りました。
品目別の業績は次のとおりであります。
① 戸建住宅向け断熱材
戸建住宅市場において、新設住宅着工は持ち直しの動きがみられ、脱炭素社会に向けて住宅の省エネ適合義務化への議論がされる中、高気密・高断熱の住宅に不可欠な断熱材「アクアフォーム」に対する需要は増加しており、戸建部門の売上高は13,185百万円と前期比で5.9%の増収となりました。
② 建築物向け断熱材
建築物市場においては、断熱・耐火工事・防水等の多工事化の取組みにより、建築物部門の売上高は、5,499百万円と前期比で13.4%の増収となりました。
③ 商品販売
原料販売・機械等の売上高は5,217百万円と前期比で14.0%の増収となりました。
当事業年度末における総資産は18,279百万円(前事業年度末比14.1%増)となり、前事業年度末に比べ2,257百万円の増加となりました。当事業年度末における負債合計は10,327百万円(前事業年度末比23.2%増)となり、前事業年度末に比べ1,944百万円の増加となりました。当事業年度における純資産は7,951百万円となり、前事業年度より313百万円の増加となりました。この増加の主な要因は、当期純利益による利益剰余金が953百万円増加したことに対し、配当により利益剰余金が646百万円減少したことによるものであります。
当事業年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前事業年度末に比べ、274百万円増加し、1,926百万円(前年同期1,651百万円)となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローはそれぞれ、営業活動によるキャッシュ・フローは520百万円の収入(前事業年度は694百万円の収入)、投資活動によるキャッシュ・フローは355百万円の支出(前事業年度は609百万円の支出)、財務活動によるキャッシュ・フローは109百万円の収入(前事業年度は311百万円の支出)となりました。
当社の主たる事業である断熱材の施工販売は、受注を契機として施工を行い、かつ主力の戸建住宅分野では施工期間が原則1日間と短期であることから、生産実績と販売実績とは近似しており、記載を省略しております。
当事業年度における建築物分野の受注実績は以下のとおりであります。
(注)1. 前期の受注総数においては統計を取っていないため、前期比は(-)表示としております。
2. 戸建住宅分野において、受注から施工実施、販売までの期間が短期であることから、受注実績と販売実績とは近似しており、記載を省略しております。
3. 上記の金額には、消費税は含まれておりません。
当社は、単一セグメントでの事業を行っておりますが、当事業年度(自 2021年1月1日 至 2021年12月31日)における販売実績を品目別及び地域別に示すと、次のとおりであります。
品目別販売実績
地域別販売実績
(注)当事業年度より北信越ブロックは、関東・中部の各ブロックに統合されております。前年同期比は、前年販売高を当期の各ブロック区分で再集計したうえで比較しています。
(注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1) 当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
①売上高
売上高は、 23,903 百万円(前事業年度と比べ2,031百万円、前年同期比 9.3 %増)となりました。これは、戸建住宅向け断熱材の施工販売が13,185百万円(前年同期比5.9%増)、建築物向け断熱材の施工販売が5,499百万円(前年同期比13.4%増)、機械販売が1,098百万円(前年同期比68.8%増)、商品販売が4,119百万円(前年同期比5.0%増)となったことによるものです。戸建住宅部門は、新設住宅着工は持ち直しの動きがみられ、脱炭素社会に向けて住宅の省エネ適合義務化への議論がされる中、高気密・高断熱の住宅に不可欠な断熱材「アクアフォーム」に対する需要は増加しております。建築物部門は、 断熱・耐火工事等の多工事化の取組みにより 増収となったものであります。商品販売は、施工力強化のための認定施工店支援システムである新事業モデル推進により機械販売が増加したこと、 原料販売・空調システム等の拡販などにも取組んだことから増収となったものであります。
②売上原価
売上原価は 19,163 百万円(前事業年度と比べ 2,601 百万円、前年同期比 15.7 %増)となりました。前事業年度と比べて、売上原価率が上昇しましたが、これは主に北米のハリケーン被害等による原料価格の高騰の影響によるものです。売上総利益率は前事業年度の24.3%から19.8%に低下いたしました。
③販売費及び一般管理費
販売費及び一般管理費は、 3,327 百万円(前事業年度と比べ 85 百万円、前年同期比 2.5 %減)となりました。これは、 新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、採用の抑制による人件費の減少と展示会の出店自粛による広告宣伝費の減少 によるものであります。販売費及び一般管理費の売上高に占める割合については13.9%となり、前事業年度と比べ1.7ポイント減少いたしました。
④営業外損益
営業外収益は、 49 百万円(前事業年度と比べ3百万円、前年同期比 6.7 %増)となり、営業外費用は、 32 百万円(前事業年度と比べ1百万円、前年同期比 5.0 %増)となりました。
⑤特別損益
特別利益は、0百万円(前事業年度と比べ4百万円、前年同期比 97.8 %減)となり、特別損失は1百万円(前事業年度と比べ10百万円、前年同期比 89.8 %減)となりました。
⑥法人税等合計
法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額を合わせた法人税等合計は 474 百万円(前事業年度と比べ 88 百万円、前年同期比 15.7 %減)と、前事業年度に比べ大幅に減少となりました。これは、原料価格高騰による原価上昇により、税引前当期純利益が減少したことによるものであります。以上の結果、当期純利益は 953 百万円(前事業年度と比べ 388 百万円、 29.0 %減)となりました。
⑦収益性
目標とする経営指標として収益性については、自己資本利益率(ROE)で15%、配当方針としては配当性向50%を設定しておりましたが、当事業年度において自己資本利益率(ROE)は 12.2 %、配当性向は 67.7 %となりました。この要因としては、自己資本利益率(ROE)については、原料価格高騰により当期純利益が減益となったため、目標を2.8%下回りました。配当性向については当期純利益は減益となったものの、今後の事業成長性を勘案し、配当を当初計画から据え置きにしたことにより大幅に上回ったものであります。
(2) 財政状態の分析
(総資産)
当事業年度末における総資産は18,279百万円(前事業年度末比14.1%増)となり、前事業年度末に比べ2,257百万円の増加となりました。
(流動資産)
当事業年度末における流動資産は13,591百万円(前事業年度末比18.5%増)となり、前事業年度末に比べ2,121百万円の増加となりました。この増加の主な要因は、現金及び預金が274百万円、売掛金が1,279百万円、未収入金が806百万円増加したことに対し、商品が125百万円、仕掛品が157百万円減少したことなどによるものであります。
(固定資産)
当事業年度末における固定資産は4,688百万円(前事業年度末比3.0%増)となり、前事業年度末に比べ、135百万円の増加となりました。この増加の主な要因は、仙台リサイクル工場によるものであり、建物の取得により172百万円増加、機械装置の取得により122百万円増加したことに対し、減価償却による資産の減少が207百万円あったことによるものであります。
(負債合計)
当事業年度末における負債合計は10,327百万円(前事業年度末比23.2%増)となり、前事業年度末に比べ1,944百万円の増加となりました。
(流動負債)
当事業年度末における流動負債は10,166百万円(前事業年度末比24.2%増)となり、前事業年度末に比べ1,980百万円の増加となりました。この増加の主な要因は、買掛金の1,215百万円の増加、短期借入金800百万円の増加に対し、未払消費税等の139百万円の減少などによるものであります。
(固定負債)
当事業年度末における固定負債は161百万円(前事業年度末比18.4%減)となり、前事業年度末に比べ36百万円の減少となりました。この減少の主な要因は、長期借入金が33百万円減少したことなどによるものであります。
(純資産)
当事業年度における純資産は7,951百万円となり、前事業年度より313百万円の増加となりました。この増加の主な要因は、利益剰余金が当期純利益により953百万円増加したことに対し、配当により利益剰余金が646百万円減少したことによるものであります。
当事業年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前事業年度末に比べ、274百万円増加し、1,926百万円(前年同期1,651百万円)となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における営業活動による資金の増加は520百万円(前年同期は694百万円の増加)となりました。これは主に税引前当期純利益1,428百万円に加え、減価償却費207百万円、たな卸資産の減少299百万円、仕入債務の増加1,215百万円による資金の増加の一方、売上債権の増加1,343百万円、未収入金の増加759百万円、法人税等の支払438百万円による資金の減少等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における投資活動による資金の減少は355百万円(前年同期は609百万円の減少)となりました。これは主に有形固定資産の取得327百万円、無形固定資産の取得27百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における財務活動による資金の増加は109百万円(前年同期は311百万円の減少)となりました。これは主に、配当金の支払いによる支出646百万円、長期借入金の返済による支出33百万円に対し、短期借入金の純増加額800百万円などによるものであります。
(4) 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
現状における当社の資金需要の主なものは、運転資金、納税資金、固定資産への投資資金です。運転資金の主な内容は、ウレタン原料の製造及び仕入代金、認定施工店への外注費、副資材の仕入代金、販売費及び一般管理費等の営業費用です。販売費及び一般管理費の内訳は、人件費、広告宣伝費、販売手数料等です。固定資産への投資資金の主な内容は、ハブ拠点建設の土地及び建物等の有形固定資産、ソフトウエア等の無形固定資産、並びに敷金及び保証金等の投資その他の資産への投資資金です。
資金調達については、主に銀行借入と内部留保資金により調達しております。今後、大きな資金需要が発生した場合には、増資等による資金調達の可能性もありますが、当面必要な運転資金、固定資産への投資資金については、銀行借入と内部留保資金及び営業活動によるキャッシュ・フローにより十分調達可能であると考えております。
(5) 経営者の問題認識と今後の方針について
当社の経営陣は、現在の事業環境及び入手可能な情報に基づき、新型コロナウイルス感染拡大の防止策を講じつつ、最善の経営方針を立案するように努めております。現在の経営方針は以下のとおりであります。
1.全社的取り組みについて
(1) 断熱工事について
当社の断熱工事については、各行政機関からの要請・方針、並びに元請会社と連携を図りながら、感染防止対策を徹底したうえで行ってまいります。今後も施工人員の安全や感染拡大防止の対策を徹底し、対応措置を継続いたします。
(2)事業所における新型コロナウイルス感染症の拡大防止について
①従業員にマスクの着用の徹底を周知しています。
②消毒備品等を各所に配置し、利用者・従業員に手洗いや手指消毒の徹底を周知しています。
③複数の人が触れる場所は、こまめに清掃・消毒をしています。
④従業員に出勤前に検温や体調確認をさせ、毎日報告させています。
⑤体調不良の従業員に休養を促し、勤務中に体調不良になったものは直ちに帰宅させています。
(3)業務執行・監督について
取締役会、社内の会議は、感染防止対策の観点から、電話会議システムまたはビデオ会議システムをフル運用して重要な業務の決定や業務執行の監督は平常通り行われています。
2.品目別の見通しについて
(1)戸建住宅向け断熱材
戸建市場では、省エネ性能を有する住宅ストックの形成を図ることを目的として「こどもみらい住宅支援事業(令和3年度補正予算)」制度が成立しました。本制度ではZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)に適合する省エネ新築住宅には、100万円/1戸の補助金が支給されます。そこで、当社は高気密・高断熱の「アクアフォームLITE(壁)」と「脱炭素」を促進するウレタンリサイクル品「アクアブロー(天井)」を組み合わせることでZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)基準に適合する断熱ソリューションを提供し増収を図ります。
(2)建築物向け断熱材
建築物市場では、新型コロナウイルス感染症の影響により、工事の遅延がありましたが、遅延現場の工事が始まっております。こうした状況の下、断熱・耐火の多工事化と施工力強化によって増収を図ります。なお、建築物市場において、ウレタン原料はサプライチェーンの混乱により供給タイト化が顕在化しておりますが、当社はこれまでも北米、中国、国内メーカーより分散調達を継続し調達価格の上昇を抑制しているうえ、供給ルートの多様化の取り組みにより、断熱工事に影響が出ないように努めております。
(3)防水部門
当社は、2020年9月より、新製品「超速硬化防水アクアハジクン」をもって戸建、建築物の防水市場に参入しました。アクアハジクンはポリウレアを原料とした防水材で、超速硬化による短工期とリファレンスサービスライフ15年の長寿命性能を有するうえ、建築基準法に定める飛び火認定を取得しております。飛び火認定とは、火災時の延焼防止を目的としたもので防火・準防火地域の住宅・建築物の屋根、ベランダ、バルコニーの防水工事に適用されるものです。戸建向けでは屋根、バルコニーなどの防水工事に需要があり、大手共同住宅建設会社から共用廊下、ベランダなどに引き合いを受けております。建築物向けでも需要のすそ野は広く工場や鉄道駅舎の屋根やマンションの屋上、立体駐車場のスロープ向けなど新築および改修物件に販売をしており今後も施工力強化によって増収を図ります。
(4)環境(脱炭素)への取組み新規投資について
当社は環境省広域認定制度( 認定番号第253号) の下、施工現場からウレタン端材を回収し、ブローイング断熱材として再製品化することで産廃処理で発生するCO2排出量を削減しております。ウレタン断熱材の再利用とCO2削減の更なる強化に向けた取り組みを進めるにあたり、次のとおりリサイクル工場を新たに設置しました。
①2021年9月、仙台営業所(仙台市宮城野区)敷地内に仙台リサイクル工場が完成、10月より拡張ラインが稼働開始しました。
②2021年9月、九州リサイクル工場にブローイング製造機械を設置し、10月より稼働を開始しました。リサイクル工場が新たに稼働することにより、CO2を年間で500t削減(前年度比+200t増)する見込みです。
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