当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が見られるなか、景気に持ち直しの動きが見られました。しかしながら、ウクライナ情勢等の影響による原材料価格の上昇に加え金融資本市場の変動など先行きに対する不透明感が増してまいりました。
建設業界におきましては、政府建設投資がわずかに減少したものの、新型コロナウイルス感染症の影響によりEコマースの普及が一層進み、倉庫・物流施設への投資が堅調に推移するなど民間建設投資は増加しました。
このような情勢下におきまして当社グループは、当期が初年度となる「長期経営計画“To zero, from zero.”」に基づき、国内土木・建築・建築リニューアル事業を「コア事業」、国際・不動産・新規事業を「戦略事業」と位置づけ、人材とデジタル技術を競争優位の源泉として3つの提供価値(「脱炭素」「廃棄物ゼロ」「防災・減災」)を軸とした5つの重点戦略(「東急建設ブランドの訴求・確立」「コア事業の深化」「戦略事業の成長」「人材・組織戦略」「財務・資本戦略」)に取り組んでまいりました。
この結果、当連結会計年度の経営成績は、売上高は258,083百万円(前期比11.5%増)となりました。損益面では、2021年11月8日に公表いたしました「業績予想の修正に関するお知らせ」、2022年4月22日に公表いたしました「業績予想および配当予想の修正に関するお知らせ」のとおり、施工中工事の不具合や、過年度引渡し物件に係る瑕疵補修費用の発生に加え、海外工事の採算悪化や不動産事業における開発事業収支の見直しによる損失見込み額を計上したことなどにより、営業損失は6,078百万円(前連結会計年度は3,549百万円の営業利益)、経常損失は5,132百万円(前連結会計年度は4,891百万円の経常利益)となりました。これに、税金費用等を加味した結果、親会社株主に帰属する当期純損失は7,459百万円(前連結会計年度は2,647百万円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。
なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首より適用しております。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)及び(セグメント情報等)セグメント情報 2.報告セグメントごとの売上高、利益又は損失の金額の算定方法」をご参照ください。
完成工事高については、国内官公庁工事が減少したものの、国内民間工事及び海外工事の増加により、198,045百万円(前期比29.2%増)となりました。一方、セグメント利益については、7,678百万円(前期比1.5%増)となりました。
完成工事高については、国内官公庁工事、国内民間工事及び海外工事の減少により、57,501百万円(前期比24.1%減)となりました。一方、セグメント損失については、6,148百万円(前連結会計年度は3,280百万円のセグメント利益)となりました。
不動産事業等売上高については、2,536百万円(前期比2.8%増)となりました。損益面については、賃貸事業等で利益を計上したものの、長期大型開発事業の収支見直しに伴い不動産事業等損失引当金を計上したことなどにより、1,770百万円のセグメント損失(前連結会計年度は1,585百万円のセグメント損失)となりました。
当連結会計年度末の資産の部につきましては、未成工事支出金が11,004百万円減少した一方、受取手形・完成工事未収入金等が21,771百万円、現金預金が4,474百万円それぞれ増加したことなどにより、資産合計は前連結会計年度末と比較して11,243百万円増加(5.0%増)し、237,811百万円となりました。
負債の部につきましては、短期借入金が5,075百万円減少した一方、支払手形・工事未払金等が9,350百万円、工事損失引当金が6,973百万円それぞれ増加したことなどにより、負債合計は前連結会計年度末と比較して21,688百万円増加(17.6%増)し、144,747百万円となりました。
純資産の部につきましては、親会社株主に帰属する当期純損失を7,459百万円計上したことや、配当を3,142百万円実施したことなどにより、利益剰余金が減少した結果、株主資本は9,965百万円減少しました。また、株式相場の影響を受けてその他有価証券評価差額金が1,066百万円減少したことなどにより、その他の包括利益累計額は507百万円減少しました。この結果、純資産合計は前連結会計年度末と比較して10,444百万円減少(10.1%減)し、93,064百万円となりました。
なお、自己資本は92,490百万円となり、自己資本比率は前連結会計年度末と比較して6.5ポイント減少し、38.9%となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローにつきましては、売上債権の増加や税金等調整前当期純損失4,864百万円の計上等による資金減少があったものの、仕入債務の増加や未成工事支出金の減少等の資金増加により、12,201百万円の資金増加(前連結会計年度は11,629百万円の資金増加)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローにつきましては、有形及び無形固定資産の取得による支出や投資有価証券の取得による支出等により、476百万円の資金減少(前連結会計年度は3,753百万円の資金減少)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローにつきましては、短期借入金の減少や配当金の支払額等により、7,531百万円の資金減少(前連結会計年度は3,308百万円の資金減少)となりました。
この結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末から4,474百万円増加し、38,648百万円(前連結会計年度末は34,173百万円)となりました。
(注) 当社グループでは「建設事業(建築)」及び「建設事業(土木)」以外では受注生産を行っておりません。
(注)1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産の実績」は記載しておりません。
3 前連結会計年度及び当連結会計年度ともに売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はありません。
なお、参考のため提出会社個別の事業の実績は次のとおりであります。
(注) 1 「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当事業年度の期首から適用
しており、当事業年度の前期繰越工事高については、当該会計基準等を適用した後の数値となっておりま
す。
2 前事業年度以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にそ
の増減額を含みます。従って、当期完成工事高にもかかる増減額が含まれます。また、前事業年度以前に
外貨建で受注したもので、当事業年度中の為替相場の変動により請負金額の増減がある場合についても同
様の処理をしております。
3 次期繰越工事高は(前期繰越工事高+当期受注工事高-当期完成工事高)であります。
工事の受注方法は、特命と競争に大別されます。
(注) 百分比は請負金額比であります。
(注) 1 完成工事のうち主なものは、次のとおりであります。
前事業年度
当事業年度
2 前事業年度及び当事業年度ともに完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はありません。
d.次期繰越工事高(2022年3月31日現在)
(注) 次期繰越工事のうち主なものは、次のとおりであります。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等
当社グループの当連結会計年度の経営成績等について、売上高は258,083百万円(前連結会計年度比11.5%増)となりました。損益面では、2021年11月8日に公表いたしました「業績予想の修正に関するお知らせ」、2022年4月22日に公表いたしました「業績予想および配当予想の修正に関するお知らせ」のとおり、施工中工事の不具合や、過年度引渡し物件に係る瑕疵補修費用の発生に加え、海外工事の採算悪化や不動産事業における開発事業収支の見直しによる損失見込み額を計上したことなどにより、営業損失は6,078百万円(前連結会計年度は3,549百万円の営業利益)、経常損失は5,132百万円(前連結会計年度は4,891百万円の経常利益)、親会社株主に帰属する当期純損失は7,459百万円(前連結会計年度は2,647百万円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。
財政状態については、受取手形・完成工事未収入金等や現金預金が増加したことなどにより資産合計は237,811百万円(前連結会計年度末比5.0%増)となりました。また、支払手形・工事未払金等や工事損失引当金が増加したことなどにより、負債合計は144,747百万円(前連結会計年度末比17.6%増)、利益剰余金の取崩などにより純資産は93,064百万円(前連結会計年度末比10.1%減)となりました。自己資本比率は38.9%(前連結会計年度から6.5ポイント減少)となりました。
b.経営成績に重要な影響を与える要因
国内建設市場につきましては、引き続き新型コロナウイルス感染症の影響が懸念されるとともに、建設市場固有の課題として、新設等を主体とした「フロー」型から維持・修繕等の「ストック」型への需要の質的変化や、高齢の建設就労者の大量退職による人材不足が深刻化することが予想され、長時間労働の解消や働き方改革の実現等への対応が求められるなど、構造変革が迫られております。
また、新型コロナウイルス感染症の影響により経済の今後の見通しは当面厳しい状況が続くと見込まれ、建設市場の縮小、顧客による事業計画の見直し、施工中案件の工事中断等により当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
このような情勢下におきまして当社グループでは、新型コロナウイルス感染症の影響を見極め適切な対応を図りつつ、「長期経営計画 “To zero, from zero.”」に基づき、国内土木・建築・建築リニューアル事業を「コア事業」、国際・不動産・新規事業を「戦略事業」と位置づけ、「知の深化」と「知の探索」を実践し、人材とデジタル技術を競争優位の源泉として3つの提供価値を軸とした5つの重点戦略を実行することで当社グループの持続的な企業価値向上を目指してまいります。
c.目標とする経営指標の達成状況
当社グループが「長期経営計画“To zero, from zero.”」で掲げた目標及び、当連結会計年度の実績は以下のとおりです。
※1 効率性指標である連結ROIC、連結ROEの2021年度実績は、親会社株主に帰属する当期純損失のため記載しておりません。
※2 ㈱リンクアンドモチベーション「モチベーションクラウド」によるエンゲージメントレーティングであります。対象は子会社を含めたグループ全体の従業員としており、全11段階に分かれており、2021年度実績の「BB」は、「AAA」「AA」「A」「BBB」に次ぐ上位から5段階目のレーティングとなっております。
※3 2018年度を基準としております。なお、GHG排出量の2021年度実績については、その信頼性を高めるための第三者保証を受けており、2022年7月頃の開示を予定しております。
2021年度実績につきましては、2021年11月8日公表の「業績予想の修正に関するお知らせ」、2022年4月22日公表の「業績予想および配当予想の修正に関するお知らせ」のとおり、施工中工事の不具合や、過年度引渡し物件に係る瑕疵補修費用の発生に加え、海外工事の採算悪化や不動産事業における開発事業収支の見直しによる損失見込み額を計上したことなどにより、業績は想定を下回ることになりました。なお、引き続き、3つの提供価値(「脱炭素」「廃棄物ゼロ」「防災・減災」)と人材・デジタル技術の競争優位構築による「東急建設ブランドの訴求・確立」をはじめとする5つの重点戦略を着実に実行するとともに、2023年3月期までの構造改革の完遂と品質管理体制の強化による再発防止策の徹底に努め、計画達成に向けて取り組んでまいります。
d.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、「第2 事業の状況 3経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりでありますが、当社グループの運転資金需要のうち主なものは、工事の完成に要する外注費等の工事費の支払や人件費等の販売費及び一般管理費等の営業費用によるものであります。また、当社グループは提出日現在、事業運転資金の安定的且つ機動的な調達を目的として、取引金融機関5行及び19行との間でそれぞれ締結しております、シンジケーション方式によるコミットメントライン契約等からの借入により資金調達を行っております。
e.セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。
(建設事業(建築))
当連結会計年度における受注高は238,968百万円(前連結会計年度は255,737百万円)、完成工事高は198,045百万円(前連結会計年度は153,253百万円)、セグメント利益は7,678百万円(前連結会計年度は7,561百万円)となりました。
(ⅰ) 完成工事高(個別)
当事業年度における当社個別の完成工事高は、前事業年度比45,415百万円(32.7%)増加の184,407百万円となりました。
工事分類別では、前事業年度に比べ「流通施設」が増加し、「販売用一般住宅」、「鉄道・埠頭・空港」、「店舗」が減少しました。また、発注者別では、官公庁工事が減少、民間工事が増加となりました。
(単位:百万円)
(ⅱ) 完成工事総利益率(個別)
利益率は、好採算の民間工事の減少により、前事業年度比1.4ポイント減少し、7.1%となりました。
(ⅲ) 受注高(個別)
受注高は221,382百万円で、前事業年度比21,537百万円(8.9%)の減少となりました。
(発注者別)
中央官庁からの受注は前事業年度比54.4%減少、地方自治体からの受注は同161.2%増加し、官公庁工事の受注額合計では同86.2%増加しました。東急グループを除く民間の受注は前事業年度比20.2%減少、東急グループからの受注は同54.5%の増加となり、民間の受注額合計では同12.2%の減少となりました。なお、受注高全体に占める東急グループ発注工事の割合は、当事業年度18.0%となりました。官公庁工事と民間工事では、官公庁工事4.9%、民間工事95.1%の構成比となりました。
(工事分類別)
「住宅」は前事業年度比86.4%増加し、構成比では38.7%となりました。「倉庫・流通施設」は前事業年度比56.7%減少し、構成比は20.0%となり、「宿泊施設」は前事業年度比188.9%増加し、構成比は12.8%となりました。
(エリア別)
国内において、首都圏と地方の比較でみると、首都圏の割合が前事業年度比28.2ポイント減少し、国内全体に占める割合は70.2%となりました。
(建設事業(土木))
当連結会計年度における受注高は53,828百万円(前連結会計年度は65,179百万円)、完成工事高は57,501百万円(前連結会計年度は75,762百万円)、セグメント損失は6,148百万円(前連結会計年度は3,280百万円のセグメント利益)となりました。
(ⅰ) 完成工事高(個別)
当事業年度における当社個別の完成工事高は、前事業年度比18,682百万円(24.7%)減少の56,886百万円となりました。
工事分類別では、前事業年度に比べ「電線路」が増加し、「鉄道」、「道路」が減少しました。また、発注者別では、官公庁工事、民間工事ともに減少となりました。
(単位:百万円)
(ⅱ) 完成工事総利益率(個別)
利益率は、施工中工事における施工不良に伴う損失見込み額計上等により、前事業年度比14.2ポイント悪化し、△6.2%となりました。
(ⅲ) 受注高(個別)
受注高は53,281百万円で、前事業年度比10,432百万円(16.4%)の減少となりました。
(発注者別)
中央官庁からの受注は前事業年度比15.8%減少、地方自治体からの受注は同26.1%増加し、官公庁工事の受注額合計では同11.0%減少しました。東急グループを除く民間の受注は前事業年度比51.9%減少、東急グループからの受注は同103.3%の増加となり、民間の受注額合計では同24.6%の減少となりました。なお、受注高全体に占める東急グループ発注工事の割合は、当事業年度16.9%となりました。官公庁工事と民間工事では、官公庁工事64.4%、民間工事35.6%の構成比となりました。
(工事分類別)
「道路」は前事業年度比33.5%増加し、構成比は35.9%となりました。「鉄道」は前事業年度比58.8%減少し、構成比は19.8%となり、「治山・治水」は前事業年度比113.3%増加し、構成比は8.2%となりました。
(エリア別)
国内において、首都圏と地方の比較でみると、首都圏の割合が前事業年度比22.9ポイント減少し、国内全体に占める割合は49.2%となりました。
(不動産事業等(連結))
不動産事業等売上高は2,536百万円(前連結会計年度は2,467百万円)となりました。この主な内容は、賃貸収入等に係るものであります。また、損益面では、長期大型開発事業の収支見直しに伴い不動産事業等損失引当金を計上したことなどにより、1,770百万円のセグメント損失(前連結会計年度は1,585百万円のセグメント損失)となりました。
②重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
新型コロナウイルス感染症の影響の考え方については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 注記事項 追加情報」に記載しております。なお、繰延税金資産については、将来の事業計画に基づき課税所得を見積り、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について計上しております。当該課税所得を見積るにあたって、前提とした条件や仮定に変更が生じ、課税所得の見積りが減少した場合、繰延税金資産が取崩され、税金費用が増加する可能性があります。新型コロナウイルス感染症については、上記にあたえる影響は軽微であると仮定しておりますが、今後の感染拡大状況によっては、課税所得の見積りに影響を与える可能性があります。
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