(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」といいます。)の状況の概要は次のとおりです。
当連結会計年度における我が国経済は、海外ならびに国内においても、一昨年初に発生した新型コロナウイルス感染症について、デルタ株感染者の減少後、オミクロン株の世界的拡大の後、年初後ピークを迎え、ワクチン接種者も増加し、各国罹患状況に時期での跛行性はあるものの1日当たりの新規感染者数が10万人を超える国も減少し、現在、累計での感染者数5億14百万人超・死者623万人超の状況です。日本でも新規感染者数が2月初旬にはピークを迎え、まん延防止全面解除後は漸減傾向が続いております。世界的には、オミクロン株の影響が減少していく中で景気回復気運が上昇し、中央銀行による金融緩和策の縮小が想定される状況となりました。米国では労働需給ひっ迫によるインフレ懸念も相俟って、連邦準備理事会では2年間続けていた量的金融緩和政策終了させ2022年3月17日政策金利誘導範囲を0~0.25%から0.25~0.5%とし、その後2022年7回、2023年3.5回の引き上げを示唆しました。しかし、2月24日に勃発したロシアによるウクライナ侵攻が、新型コロナウイルス感染症拡大がもたらした、サプライチェーン寸断化・物流システムの混乱に伴う原材料価格の高騰化・納期遅延等を更に加速させる世界的な原材料高もあり、先行き不透明な経済が長引くものと推測される状況です。
一方、国内経済についても、オミクロン株の急拡大を受け、2022年1月7日まん延防止等重点措置の沖縄県等3県への再発令となり、2月2日には、初めて国内新規感染者数が9万人を超えましたが、その後、3回目ワクチン接種率も、現在、全国で50%を上回りながらも、前述したまん延防止等重点措置が2ヶ月半ぶりの3月21日に全面解除されましたが、新規感染者は都市部にて減少するものの、地方にて増加するなど、1日当たりの国内新規感染者数は2万人台という漸減状況となっております。また、世界的な利上げ気運の中で、日銀黒田総裁の金融緩和継続姿勢に伴う日米金利差による円安動向にて、20年振りに1ドル130円台となっており、円安による輸入価格の高騰も、景気先行き懸念となっております。本年3月11日発表、関東財務局長野財務事務所の法人企業景気予測調査(3ヶ月毎実施)では、全規模・全産業での景況判断は、直前調査時に比べ、「下降」超に転じ、翌3ヶ月後の先行きは、直前調査時に比べ、大企業は「上昇」超に転じ、中堅企業は「上昇」超で推移、中小企業は均衡となるものの、翌々3ヶ月後(7~9月)に再び「下降」超に転じる見通しです。また、設備投資については、令和3年度は全規模・全産業ベースで前年比57.4%の増加見込み、令和4年度は全規模・全産業ベースで前年比1.0%の増加見込みとされております。業種別では、製造業が前年比82.1%の増加、非製造業では前年比14.3%の減少と見込まれております。本件調査は本年2月中旬時点のものであり、その後のウクライナ情勢に伴う更なる原材料価格の高騰や急激な円安動向を勘案すると、今後景気については、先行き不透明です。
当地区においては、新型コロナウイルス感染症拡大の飲食・宿泊業への影響は引き続いており、業種による跛行性はあるものの、設備投資の減衰感は楽観視できる状況ではなく、工事価格や工事期間等、厳しい受注環境が以前にも増して続いております。
このような状況のもと、利益面においては、販売費及び一般管理費の一層の削減に引き続き努めながら、BIM、CIM、マシンコントロール、マシンガイダンス、VR、ARを駆使しつつ、IEを主としたKAIZEN活動の全社展開や仮設資材等の軽量化・省力化による工数削減等にての原価削減に一層取り組み、受注高、売上高、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益についても、厳しい環境が引き続く中、資機材価格の高騰、供給制約による材料・製品の納期遅延等の見通しは不透明な状況ですが、現在の業況は堅調に推移しました。
このような環境下にあって、当社グループの当連結会計年度における業績は、受注高(開発事業等含む)265億45百万円と前年同期と比べ25億89百万円(10.8%)の増加、売上高は279億46百万円と前年同期と比べ31億17百万円(12.6%)の増収、営業利益21億23百万円と前年同期と比べ7億36百万円(53.1%)の増益、経常利益23億17百万円と前年同期と比べ7億73百万円(50.1%)の増益、親会社株主に帰属する当期純利益は14億95百万円と前年同期と比べ3億52百万円(30.9%)の増益となりました。
事業部の種類別セグメントの実績は次のとおりであります。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(セグメント情報等)」をご参照ください。
建設事業
建設事業につきましては、医療介護・マンション・流通・食品関連・水力発電設備及び道路・河川建設工事など公共工事等の受注に注力しました。また、企業建築向け「オイシールド」、「イーファクト」、「アットワークス」の3ブランド投入による顧客拡大を図るとともに、顧客ニーズに対応するべく開発したハイグレードな自由設計住宅ファミレを始めとする住宅等の受注に注力いたしました。加えて、エンジニアリング事業との協働にて長年取り組んでいる水力発電事業関連案件の大型受注獲得に、同事業も含め寄与しました。
その結果、受注高210億19百万円と前年同期と比べ17億34百万円(9.0%)の増加、完成工事高229億3百万円と前年同期と比べ25億92百万円(12.8%)の増収、営業利益は21億43百万円と前年同期と比べ6億18百万円(40.6%)の増益となりました。
エンジニアリング事業
エンジニアリング事業につきましては、創業時よりのモノづくりの系譜を背景とした事業ですが、設備投資も実施しながら、ダム関連工事、合成床版、大型精密製缶工事、水力発電設備工事等に注力いたしました。
その結果、受注高29億74百万円と前年同期と比べ45百万円(1.6%)の増加、完成工事高24億91百万円と前年同期と比べ2億85百万円(10.3%)の減収、営業利益は3億66百万円と前年同期と比べ98百万円(21.2%)の減益となりました。
開発事業等
開発事業等につきましては、永年培ったノウハウを基に、首都圏等でのマンション分譲事業やリノベーション事業に加え、再生エネルギー事業等に注力いたしました。
その結果、開発事業等売上高25億81百万円と前年同期と比べ8億9百万円(45.7%)の増収、営業利益94百万円と前年同期と比べ1億63百万円(前年通期は68百万円の営業損失)の増益となりました。
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ9億82百万円増加し、当連結会計年度末には29億16百万円になりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により獲得した資金は29億73百万円となりました。主な要因は、その他の棚卸資産の増加7億86百万円、未収入金の増加1億47百万円などによるキャッシュ・フローの減少の一方、売上債権の減少8億26百万円、仕入債務の増加7億32百万円などによるキャッシュ・フローの増加によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金はマイナス1億96百万円となりました。主な要因は、有形固定資産の売却による収入70百万円の一方、有形固定資産の取得による支出2億4百万円、投資有価証券の取得による支出47百万円等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により使用した資金はマイナス17億94百万円となりました。主な要因は、短期借入金の返済による支出17億円、配当金の支払いによる支出94百万円によるものです。
当連結企業集団が営んでいる事業の大部分を占める建設事業及びエンジニアリング事業では生産実績を定義することが困難であり、また請負形態をとっているため販売実績という定義は実態にそぐいません。
当連結企業集団においては建設事業及びエンジニアリング事業以外では受注生産形態をとっておりません。
したがって受注及び販売の状況については各セグメントごとの業績に関連付けて記載しております。
当社グループは、連結ベースでの事業別受注工事高、完成工事高、繰越工事高及び施工高の状況は作成しておりません。
なお、当社単独の事業の状況は、以下のとおりです。
(注) 1 前期以前に受注した工事で契約の変更により請負金額を変更したものについては、当期受注工事高にその増減額を含めております。従って、当期完成工事高にもかかる増減額が含まれます。
2 次期繰越工事高の手持工事高は(前期繰越工事高+当期受注工事高-当期完成工事高)に一致します。
3 次期繰越工事高のうち施工高は、未成工事支出金により手持工事高の施工高を推定したものであります。
1 完成工事のうち主なものは次のとおりです。
第62期の完成工事のうち請負金額2億円以上の主なもの
建設事業
第63期の完成工事のうち請負金額2億円以上の主なもの
建設事業
2 完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の完成工事高及びその割合は次のとおりであります。
第62期
該当はありません。
第63期
該当はありません。
④ 手持工事高(2022年3月31日現在)
1 手持工事のうち請負金額2億円以上の主なものは次のとおりであります。
繰越工事
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
② 当連結会計年度の経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、以下のとおりです。
当社グループの連結会計年度において、新型コロナウイルス感染症の動向、ウクライナ情勢を含めた原材料・資機材価格高騰、円安動静等の変動要因も多岐にわたり、世界経済情勢を勘案しても、民間設備投資についての慎重な姿勢・価格競争が依然として激しい状況で推移しております。
経営成績の分析
(売上高)
当連結会計年度における売上高は、279億46百万円と前年同期と比べ31億17百万円(12.6%)の増収となりました。これは主に、厳しい環境のもと、地域密着型の堅実経営を目指し、BIM、CIM、マシンコントロール、マシンガイダンス、VR、AR、3Dレーザースキャナーを始めとするICT化を駆使した提案型営業の積極的な展開により、医療介護・マンション・流通・食品関連・水力発電設備及び道路・河川建設工事など公共工事等の受注に注力した結果であります。各セグメントの売上高の連結売上高に占める割合は、建設事業が82.0%と前年同期と比べ0.2ポイント(前年同期81.8%)の増加、エンジニアリング事業が8.9%と前年同期と比べ2.3ポイント(前年同期11.2%)の減少、開発事業等が9.1%と前年同期と比べ2.1ポイント(前年同期7.0%)の増加となりました。
(売上総利益)
当連結会計年度における売上総利益は、建設事業を中心に、BIMを駆使し、IEを主としたKAIZEN活動の全社展開や仮設資材等の軽量化・省力化による工数削減等にての原価削減に引き続き取り組んだ結果、51億53百万円と前年同期と比べ6億83百万円(15.3%)の増益となりました。また、売上総利益率は、18.4%と前年同期と比べ0.4ポイント(前年同期18.0%)の増加となりました。
(営業利益)
当連結会計年度における販売費及び一般管理費は、支払手数料、人件費、広告宣伝費等の増加はありましたが、消耗品費、寄付金、租税公課等の減少があり、30億29百万円と前年同期と比べ53百万円(1.7%)の減少となりました。
以上の結果、当連結会計年度の営業利益は、21億23百万円と前年同期と比べ7億36百万円(53.1%)の増益となりました。
(経常利益)
当連結会計年度における営業外収益は、受取利息、受取配当金や受取保険金等にて2億24百万円と前年同期と比べ44百万円(25.0%)の増益となりました。
営業外費用は、支払利息等にて30百万円と前年同期と比べ7百万円(35.0%)の増加となりました。
以上の結果、連結会計年度の経常利益は、23億17百万円と前年同期と比べ7億73百万円(50.1%)の増益となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度における特別利益は固定資産売却益での1百万円と前年同期と比べ1億8百万円(98.7%)の減益の計上、また、固定資産の売却・除却損失での2百万円と前年同期と比べ14百万円(83.7%)の減少の特別損失を計上しております。
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、14億95百万円と前年同期と比べ3億52百万円(30.9%)の増益となりました。
財政状況の分析
(資産の部)
当連結会計年度末の総資産は、245億1百万円となりました。これは、主に現金預金、開発事業等支出金などの増加による流動資産の増加の一方、投資有価証券・繰延税金資産等投資その他の資産の増加はあったものの、建物・工具備品等有形固定資産とソフトウェア等の無形固定資産の減少により固定資産が減少しました。
(負債の部)
当連結会計年度末の負債は、67億8百万円となりました。これは、主に退職給付に係る負債などの固定負債と契約負債等の増加の一方、短期借入金等流動負債の減少により減少しました。
(純資産の部)
当連結会計年度末の純資産残高は177億93百万円となりました。これは、主に退職給付に係る調整累計額の減少はあったものの、当期純利益確保による繰越利益剰余金の増加、その他有価証券評価差額金の増加によるものです。
自己資本比率は3.1ポイント増加して72.6%となりました。
キャッシュ・フローの分析
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりです。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりです。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、工事原価のほか、商品の仕入、販売費及び一般管理費等の営業費用です。投資を目的とした資金需要は、設備投資等によるものです。
当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。短期運転資金は自己資金及び金融機関からの一時的な短期借入を基本とし、設備投資資金の調達につきましては、基本的に自己資金としております。
なお、当連結会計年度末における借入金残高はありません。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は29億16百万円となっております。
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