当社グループは、社会及び顧客の多様なニーズに応えるため、環境保全、エネルギー対策等の社会に貢献する技術や、生産性向上、品質確保、コストダウン等に資する工法や技術のほか、事業領域の拡大を図るための技術開発など多岐にわたる分野の研究開発活動を実施している。
また、研究開発活動の幅を広げ、効率化を図るため、国内外の大学、公的研究機関、異業種企業との技術交流、共同開発も積極的に推進している。
当社グループの当連結会計年度における研究開発に要した費用の総額は
なお、当社は研究開発活動を国内建築、海外建築、国内土木、海外土木、不動産及びその他の各セグメントには区分していない。
(1) 当社
① MR施工管理アプリ「holonica®」を開発
MR(Mixed Reality:複合現実)技術を利用して、目に見える実際の施工場所にBIMデータを重ね合わせて表示することで、設計情報確認、検査記録作成といった施工管理業務を効率化するアプリケーション「holonica®(ホロニカ)」を開発した。
メガネ型ウェアラブル端末やタブレット端末など、利用シーンに適した機器を選択でき、BIMデータが持つ3次元の形状や仕様などの属性情報をMR技術により現地に重ね合わせて表示し、視覚的に設計を理解することを支援するとともに、デジタル空間内の該当箇所への施工管理情報の記録を容易にすることが可能となる。
内装仕上げ検査業務では、階や部屋ごとに細かな設計の違いがあり情報の参照や記録が煩雑となりがちであるが、「holonica®」の適用により、目に見える実際の施工場所にBIMデータを重ね合わせて表示することで設計情報が確認でき、情報の伝達漏れを防止し、精度の高い施工管理を維持することができる。また、検査記録作成機能を備え、従来の紙図面を使用した検査方法と比較して約30%の時間短縮効果がある。
② 「Smart BIM Connection®」を開発、販売へ
BIMモデリングの状況を共有するマネジメントシステム「Smart BIM Connection®」をトランスコスモス㈱、応用技術㈱と共同で開発し、販売を開始した。
BIMを設計から生産設計、施工管理まで一貫して利用するためには、建築に関わる関係者全員が、一つのBIMモデルを作り上げていくこと(BIMモデリング)で、常に最新で正しい情報を共有し、効率的に活用していくことが肝要である。
一般的に、BIMモデリングは、建物の形状や仕様が不確定な状態から、顧客の要望を反映し、技術的な検討を経て、徐々に確定度合いを高めていく方法を採っている。「Smart BIM Connection®」は、BIMモデル上で部材ごとの確定度合いの入力と仕様情報の自動チェックにより、BIMモデリングとLOD(※)管理を一元化するシステムで、BIMモデリングを進めながらLODを即座に把握できるため、関係者間で確定度合いを共有でき、また、膨大なモデル情報の中から確定情報が判別できるため、効率的にBIMモデルを活用できる。
※進展度(LOD:Level of Development):2008年にアメリカ建築家協会が制定したBIMモデルの進展度基準
③ 猛暑日でも流動性を確保できるコンクリート「サンワーク®」を開発
特殊混和剤を用いることで、猛暑日でも良好な施工性を確保し、高品質なコンクリート構造物を構築できるコンクリート「サンワーク®」を開発した。
暑中期のコンクリート工事では、外気温の影響によりコンクリート温度も高くなるために硬化が早くなり、施工不良の発生が懸念されるため、土木学会や建築学会では、コンクリート温度の上限は35℃以下にするように定めている。しかし、近年ではヒートアイランド現象や地球温暖化の影響などにより、最高気温が35℃を超える猛暑日が発生しているため、コンクリート温度を35℃以下に制御することが困難となり、不具合が生じるリスクが高まっている。
「サンワーク®」は、特殊混和剤により、気温が35℃~40℃でも施工に必要なコンクリートの流動性を長時間確保できるため、猛暑日においても高品質なコンクリート構造物を構築できる。また、プラントで製造した一般的なコンクリートに特殊混和剤を添加し攪拌するだけで容易に製造でき、また特殊混和剤は、使用材料(セメント、骨材、混和材、化学混和剤など)の種類によらず添加でき、強度や耐久性など硬化後の性状に影響を与えることなく一般的なコンクリートに適用することが可能である。
④ 高耐久な土系舗装「オーククレーR」を開発
ポリマー混和材「レジバインダー」を用いた高耐久な土系舗装「オーククレーR」を大林道路㈱、三光㈱と共同で開発した。
これまでの道路整備は安全かつ円滑な通行を主な目的とするため、アスファルト舗装が一般的であったが、近年では土の質感により公園や街並みと調和することに加え、土の保水性により夏場の路面温度上昇を抑制することができる土系舗装が注目されている。従来の土系舗装は路面が荒れやすいため、歩道での適用に限られていた。そこで、土の含水状態の影響を受けずに高い強度を発揮するポリマー混和材を用いることで、舗装材の強度を向上させ、高耐久で路面が荒れにくい土系舗装を開発した。
「オーククレーR」は、含水率の影響を受けることがなく、舗装材の強度を高く保てるため、車両の通行量が限られる軽交通道路であれば問題なく適用することが可能であり、また保水性があるため、夏場の路面温度の上昇を一般のアスファルト舗装に比べて最大18℃抑制でき、ヒートアイランド現象を緩和できる。
⑤ ビジュアル工程管理システム「プロミエ®」を開発
BIMモデルやQRコード(※)を活用して各種工事の進捗を視覚的かつリアルタイムで把握できるビジュアル工程管理システム「プロミエ®」を開発した。
従来、鉄骨など各建設部材の搬入時の管理や取り付け・建て方完了時の進捗状況把握は図面の部材に色を塗るなどアナログ的な手法を用いていたことから、煩雑な作業となり管理情報の共有も難しく非効率であった。
今回開発した「プロミエ®」では、建設部材の作業工程などを管理でき、クラウドサービスと連携したBIMモデルを用いることで、対象工事の進捗状況を3Dで視覚的に確認、管理が可能となるほか、発注者や協力会社などの関係者間でリアルタイムに情報を共有することができる。さらに、BIMモデルが持つ部材の属性情報を活用することで工事出来高の算出が容易になり、従来の業務にかかっていた手間やヒューマンエラーを低減し、施工管理の業務効率化に大いに貢献する。
※株式会社デンソーウェーブの登録商標である。
⑥ 「スティフクリート®」を開発し、RC床版補強工事に適用
道路橋リニューアル工事における交通規制期間の短縮と耐久性の向上を目的として、大林道路㈱、宇部興産㈱と共同で「スティフクリート®」を開発した。
昨今、社会インフラの老朽化が社会問題となっており、国内の道路橋においても、その約半数が今後10年間で建設から50年を経過することから、リニューアルが急務となっている。
橋梁のRC床版が老朽化した場合、従来の補強工法では、床版が増厚になることで周囲の舗装面と高さが合わなくなり、また下部工の補強も必要となる場合があった。それに対し、今回開発した「スティフクリート®」は、超高強度材料の採用により薄層での補強が可能となり、長期耐久性にも優れている。また、「早期強度の発現性能」と「早期硬化時間の制御性能」を付与することで、施工後3時間で交通開放に必要な強度が確保でき、橋面に勾配がある橋梁への適用も可能となる。加えて、小型の施工機械で施工可能であり、車載ミキサーを含めたすべての設備が1車線内に収まるため、夜間1車線規制内で施工し、交通量の多い昼間には全車線交通開放でき、道路利用者への影響を低減できる。
⑦ 低床式AGVを複数台連携させる自律搬送システムを開発
建設現場での資材搬送において、自律走行するAGV(Automatic Guided Vehicle:無人搬送車)を複数台連携することで工事現場の規模を問わず対応できる、フレキシブルな自律搬送システムを開発した。
米国のSRI Internationalと共同で開発した自律搬送機能は、搬送先と経由地の座標を指定することで、障害物を回避しながら搬送先まで走行することを可能にする。複数台の低床式AGVを連携させることで、仮設エレベーターへの乗降を制御できるため、無駄な待ち時間や昇降回数が減り、稼働率を向上できる。また、端末を通じて稼働状況を監視できるため、オペレーター1人ですべての低床式AGVの稼働状況を管理できる。
⑧ 避難安全検証とBIMをデータ連携した「SmartHAK™」及び耐火性能検証とBIMをデータ連携した「SHAREDTIK™」設
計システムを開発
建築物における安全安心な設計及び合理的で自由度の高い性能設計を実現するため、当社で遂行している意匠構造BIMワンモデルと連携一元化した新しい設計システム「SmartHAK™」と「SHAREDTIK™」を開発した。
「SmartHAK™」は建築設計における避難安全検証法とBIMモデルを相互連携し、データを一元的に利用する設計システムである。建築確認申請での審査となる設計法(ルートB1、B2)から国土交通省の審査による大臣認定を受ける設計法(ルートC)まで幅広い手法での活用が可能である。
「SHAREDTIK™」は、超高層建築物での耐火被覆厚低減を実現する耐火性能検証法に必要な情報を自動計算処理するプログラムである。検証作業の効率化及び審査の向上・時間短縮により、従来に比べ7割以上の大幅な業務削減効果が期待できる。
⑨ リアルタイムに現場状況を反映する「4D施工管理支援システム」を開発
デジタル空間上に現場の人やモノといった状況をリアルタイムに反映させたデジタルツイン(※)を作成し、施工管理に活用する4D施工管理支援システムを開発した。
BIMの3Dモデルを基にした建築物の施工状況に、ドローンによって取得した点群データを重ね合わせることで現場の起伏などを再現する。そのデジタル空間をプラットフォームとし、IoT化した重機の位置や稼働状況、監視カメラの映像、作業員の出面情報など現場管理に必要な情報を連携させることで、リアルタイムに現場の状況を反映させることができる。
従来は現地で確認していた現場の稼働状況を一元的に「見える化」することで、施工管理に必要な情報の収集にかかる手間を削減するとともに、現地に行かなくても遠隔からの状況確認を可能とする。また、収集した情報を解析することで出来高の算定や施工計画のシミュレーションなどに活用することができる。
※デジタルツイン:実空間で収集したデータを基に、デジタル空間上に実空間のモノを再現する技術
(2) ㈱内外テクノス
天井ルーバー施工のための新省力化工法の開発
木材活用として室内で多く採用されている天井ルーバーの省力化工法を㈱大林組、㈱オクジュー及び太平洋マテリアル㈱と共同開発した。
従来の工法は、ルーバー吊りとボード張り作業が別々で進行し、工程数も多く、位置調整が困難であった。新工法はルーバー吊り金物と天井ルーバーに取り付けるレール状金物を一体化設計するなどして、従来の工法に比べ約2割の工数を削減。ルーバーの取り付け位置も自由に変更可能となり、施工の簡素化及び迅速化を図ることができる。
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