文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結子会社、以下同じ。)が判断したものです。
(1) 経営方針
当社グループは、道づくりのエキスパートとして歩んできた90余年にわたる建設技術をベースに、時代の変化や環境の変化に速やかに対応するため、「社是・社訓」に「スピードと徹底」を加え、「経営理念」のもと、「経営ビジョン」「経営基本方針」を掲げ、顧客満足度向上のための「道づくり」に誠実に取り組んでまいります。
《社是》
「創意研鑽」「協調親和」「信用高揚」
『論語と算盤』(清水建設㈱社是)
《社訓》
一、 |
創意を活かし、 |
技術の向上と業務の改善に努めよう |
一、 |
責任を自覚し、 |
緻密な計画と果断な実行に徹しよう |
一、 |
誠意を尽くし、 |
相互の協調と秩序の確立に努めよう |
一、 |
身心を健全にし、 |
明朗な職場と幸福な家庭を築こう |
一、 |
社業に専念し、 |
会社の繁栄を通じて社会に貢献しよう |
《経営理念》 |
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ESG経営を推進することによって、社会から信頼され、存続を望まれる企業になるとともに、持続可能な社会づくりに貢献する |
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《経営ビジョン》 |
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「従業員を大切にする会社」 |
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「道路建設を通じて社会に貢献する」 |
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「コーポレートガバナンスの充実」 |
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《経営基本方針》 |
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スピードと徹底を合言葉に、揺るぎない技術力で |
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「道づくり」「街づくり」に貢献するSDGs企業を目指す |
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(2) 経営戦略及び経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
①目標とする経営指標
当社グループは2019年5月に、当面5年間の基本方針と重点戦略を取り纏めた「中期経営計画2019(2019~2023年度)」を策定しました。
《日本道路グループを取り巻く事業環境》
1)経営戦略
当社グループは、収益の確保を確実なものにして、事業効率向上と株主価値の最大化を図るため、営業利益率を向上させることが企業価値を高めるものと考えております。
そのために、IT施工活用拡大による徹底した効率化、施工体制強化、技術系職員に対する技術・施工管理教育の強化により、工事利益率を向上させるとともに、組織のスリム化、機構改革、既存業務見直し、基幹システム更新等の業務効率化により、人材を管理部門から生産部門へシフトすることで販管費を削減し、営業利益率を向上してまいります。
2)事業環境
大阪・関西万博の開催もあり、維持補修工事は一定量あるものの、官庁工事の発注量が右肩上がりに伸びていく時代ではなく、今後、建設事業案件が集中する都市部を中心に、民間受注を拡大していく計画としております。
3)顧客動向
中央官庁の主要得意先となる国土交通省については、自然災害に対する国土強靭化の推進、また老朽・消耗によるインフラ機能維持投資により、今後も道路事業に対し一定量が発注されると考えております。
高速道路各社については、災害時の代替道路としての高速道路車線拡幅事業、また高速道路としての乗り心地維持のための舗装補修工事が今後も一定量が発注されると考えております。
民間市場については、今後も都市部の再開発、大阪・関西万博、IR関連の大型投資、また物流ネットワーク強化を目的とした拠点開発事業等があり、都市部を中心に成長が望めると考えております。
4)競合他社の状況
道路舗装業界は、中小事業者を含め市場には多くの競合が存在します。その中で、当社グループは大手道路舗装会社として、揺るぎない「技術力」で「道づくり」「街づくり」を通して「サステナブルな社会づくりに貢献するSDGs企業」を目指してまいります。
5)中期経営計画2019における重要課題
①民間受注の拡大 |
②営業利益率の向上 |
③働き方改革の推進 |
④安全衛生目標の設定 |
⑤環境目標の設定 |
⑥コンプライアンスの徹底 |
6)中期経営計画2019における成長投資方針
手元資金をベースに、安定的な経営基盤構築のため、成長分野に対し優先順位をつけ、スピード感を持って設備投資を実行してまいります。
2019~2023年(5ヵ年累計) 400億円
(内訳)
①建設事業投資 100億円
②製造・販売事業拠点整備投資 240億円
③営業拠点環境整備投資 40億円
④システム等情報投資 20億円
7)中期経営計画2019の目標(連結)
(単位:億円)
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2021年度 |
2022年度 |
2023年度 |
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実績 |
予想 |
目標 |
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建設事業受注高 |
1,203 |
1,300 |
1,370 |
・ROE 6.7% ・配当性向 30.0% |
建設事業売上高 |
1,295 |
1,290 |
1,330 |
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製造・販売事業売上高 |
202 |
230 |
235 |
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賃貸事業等売上高 |
66 |
60 |
75 |
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総売上高 |
1,563 |
1,580 |
1,640 |
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営業利益 |
82 |
77 |
100 |
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親会社株主に帰属する当期純利益 |
56 |
51 |
65 |
②設備投資計画
「中期経営計画2019」の成長投資方針に則り、建設事業投資、製造・販売事業拠点整備投資、営業拠点環境整備投資、システム等情報投資を実行してまいります。(2022年度実施ベースでは連結77億円を投資予定)
③技術研究開発
技術研究開発は、膨大な舗装ストックに対応した調査診断技術、低コストな維持メンテナンス技術とライフサイクルコスト低減に資する高耐久舗装技術の充実を推進してまいります。また、SDGs達成につながる技術開発、モビリティーイノベーションへの対応技術、ICT、IoTの活用による工事品質・生産性の向上、工事の安全対策、労働環境改善等の技術開発を中心に、幅広いニーズに的確に対応した研究開発を進めてまいります。
(3) 経営環境
当社グループは、2022年3月29日をもって清水建設㈱の連結子会社となり、シミズグループの一員として新たな体制でスタートしました。創業以来、90余年にわたって培った「技術の日本道路」というDNAを継承しながら、これまで以上に同社との連携強化を図り、両社で事業領域の拡大に繋がるシナジー効果を発揮しながら、社会の発展に寄与してまいります。
当社グループの主要事業は舗装工事を中心とした建設事業であり、経営環境の変化が激しい中、揺るぎない技術力をもって、都市型・地方型等各地域の実状に即したエリア戦略を策定し、市場競争力の強化を図っていくことが重要課題であると認識しております。また、当社グループである地域舗装会社の体制をさらに強化することで相乗効果を発揮するとともに、成長戦略としてのM&Aにも積極的に取り組んでおります。
親会社である清水建設㈱との連携強化については、大型の造成工事や橋梁の床版取替工事、洋上風力発電の陸上部工事、海外プロジェクトへの協働での取り組みをこれまで以上に増やしていくことによって、新たな領域に挑戦することが可能となり、事業規模の拡大と技術者のさらなるスキルアップに繋がると考えております。同社の民間営業網を活用した民間顧客への営業強化は、質の良い直接受注を増やすことで、当社の受注・売上・利益に貢献すると考えております。DX(デジタルトランスフォーメーション)への対応は、同社の最新のICT技術やノウハウと人財といったリソースを活用することにより、当社グループの新技術の開発・導入、新工法開発、業務効率化、基幹システム・情報セキュリティの強化に繋がると考えております。これらへの取り組みは、2050年のカーボンニュートラル(脱炭素)達成に向けた環境負荷低減及びコスト削減に繋がるとともに、人財確保や両社の技術研究所、機械部門、管理部門での人財交流や連携を通じて、働き方改革による職場環境改善、ESG経営の推進及びコンプライアンス・ガバナンス強化に繋がるものと考えております。
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
①ESG経営
当社グループは、企業が中長期的な成長を遂げるために必要である3つの要素、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の観点からESG経営を実践しております。ESG経営の推進にあたっては社長を委員長とするESG委員会を設置しており、気候変動対応や従業員の健康・労働環境への配慮をはじめとするサステナビリティに関する課題の審議検討及び定期的な取締役会への報告を実施することで、取締役会による指示監督体制及び全社横断的に検討・議論していく体制を整えております。
中期経営計画2019(2019~2023年度)では気候変動リスクへの対応として、脱炭素社会の実現に向け温室効果ガス(CO2)の排出量削減の目標値を設定しており、環境負荷の少ない環境対策型のアスファルトプラント、建設機械、車両を導入し、地球環境に配慮した経営を進めております。また、2021年8月に環境ビジョン「Nichido Blue & Green Vision 2050」を策定し、カーボンニュートラル(脱炭素)の実現、循環型社会の形成、生物多様性への配慮に向けた2050年までの長期的な目標を掲げました。同年10月には「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言に賛同を表明しました。今後はシナリオ分析を通じて経営の強靭化を図り、事業活動を通じた持続可能な社会の実現への貢献と新しい価値の提供を引き続き進めてまいります。なお、分析結果についてはコーポレートサイトにおいて開示しております。さらに2022年2月には環境省が企業の環境活動を推進する「エコ・ファースト制度」において、「エコ・ファースト企業」として認定されました。引き続き2050年のカーボンニュートラル(脱炭素)達成に向け研究・技術開発を進めてまいります。
また、コンプライアンスの徹底やリスクマネジメントには当社グループ一丸となって継続して取り組み、グループガバナンス体制を確立してまいります。
様々なESG課題に『スピードと徹底』の姿勢で取り組み、「ESG経営を推進することによって、社会から信頼され、存続を望まれる企業になるとともに、持続可能な社会づくりに貢献する」ことを経営理念として掲げ、企業価値を高めてまいります。
②新型コロナウイルス感染症について
相次ぐ変異株の発生により新型コロナウイルス感染症の収束が見通せない中、経済情勢の悪化による建設市場の縮小等、受注環境の変化を注視するとともに、必要に応じた資金調達方法の確保や下請協力業者の経営状況にも配慮してまいります。
また、当社グループでは全事業所の従業員を対象にテレワーク・時差出勤・直行直帰等の施策を推進し、「安否確認システム」を利用した週1回の健康状態の確認により、従業員の安全・健康の確保と感染防止に努めております。
③働き方改革の取り組み
当社は、「従業員を大切にする会社」を経営ビジョンとして掲げ、従業員一人ひとりが「自身の人生を豊かに楽しく!」を実感できるよう、ワークライフバランスの充実を図る取り組みを続けております。持続可能な発展のために、年度毎に休日取得目標を定め、目標達成に向け、課題を洗い出し、継続的に取り組んでおります。また、女性活躍、外国人の受入及び障がい者雇用の推進を含めた人財確保・育成に引き続き取り組むとともに、情報化施工等ICTを有効活用した工事現場での生産性向上や、業務改善、基幹システムの更新による業務効率化等の施策と併せて、当社グループ一丸となって働き方改革をさらに推進してまいります。
④建設事業
人命尊重を最優先に安全第一主義のもと、「質の高い仕事」をすることに徹して、企業価値を高める施策を確実に推進してまいります。大規模工事はもとより、中・小規模工事においても情報化施工、ICTの活用度を高め、災害や事故の発生を抑止するとともに品質向上、コストダウンによる収益率の向上を目指しております。
また、当社グループの重点実施事項として掲げております「エリア環境に適合した戦略的営業を実行し、質の高い受注を拡大する」という目標達成に向け、スピードと攻めの姿勢に徹した提案型営業を強化し、民間営業を展開してまいります。
そして、人財育成については特に力を入れ若手技術者のスキルアップのための教育指導を強化し、技術の伝承に取り組んでまいります。さらに、業務改善による“働き方改革”を加速し、従業員に対し技術面、管理面の意識を高める指導を行うことにより次世代の担い手づくりも進めてまいります。
⑤製造・販売事業
原材料価格の高騰が続いている中、利益の確保に向け、コストに見合う価格改定を実施するとともに、引き続きコスト削減に取り組んでまいります。
営業力の強化と製造・販売拠点の効率化のための拠点再配置を進めることにより、シェアの拡大を図ります。
安全環境対策についても、効果的な技術開発と環境に配慮した設備投資を実施するとともに、グリーン電力への切り替えや、化石燃料に代わる代替燃料の導入も進めてまいります。
⑥海外事業
2021年は新型コロナウイルス感染拡大によりアジア全域において官民投資が停滞した状態が続いていましたが、今後緩やかに回復していくと予測しております。海外現地法人を設置しているタイ・マレーシアにおいては、引き続き現地優良企業並びに日系企業からの工事受注を目指してまいります。
なお、新たな収益源となる事業として、特殊アスファルト合材の製造販売や薄層舗装等のアジア地域への販売促進に取り組んでまいります。また、今後の海外事業展開のための人財育成強化、現地雇用職員のスキルアップ、海外現地法人の現地化を継続して推進し、収益体制を強固なものにしてまいります。
⑦グループ事業
日本道路本体との連携強化やM&Aを含め、グループ会社の経営環境に応じたエリア戦略の実行による事業領域拡大、収益力強化と成長力底上げを実現するため、営業所・合材センター・地域舗装会社の連携をさらに強化するとともに、内部統制体制とICT環境の整備による効率化を進め、グループ支援体制の強化を図ってまいります。
⑧企業倫理・法令順守の徹底について
当社グループは、中期経営計画の重要課題の1つに「コンプライアンスの徹底」を掲げ、「コンプライアンス基本理念」及び「コンプライアンス指針」を制定し、役職員の行動規範としております。また、法令を順守した公正な取引活動を徹底するために「自由な競争及び公正な取引順守基本方針」を定め、独占禁止法に関する社外専門家による監査や社員教育を継続的に行っております。また、毎年7月30日を当社グループの「コンプライアンスの日」と定め、経営幹部を対象にした研修や職場での啓蒙活動を実施することにより、企業倫理に対する意識の向上に努めております。
(業務リスク管理体制の整備)
内部統制システム及びコンプライアンスを主管する業務リスク管理部を置き、各事業所を網羅した業務リスク管理体制を整備し、コンプライアンスの維持管理状況をモニタリングしています。各支店に「支店業務リスク管理委員会」、各事業所に「業務リスク連絡会」を設け、法令順守をさらに徹底する体制を構築しています。
(内部通報窓口の整備)
社内窓口である「コンプライアンス相談窓口」、社外の専門会社による「日本道路企業倫理の窓口」、監査役が直接通報を受ける「監査役直通窓口」を設け、社内外から広く情報を募ることとしています。
(適正な受注活動のための業務運用方法の改善)
以下の通り、恒常的に受注活動の検証を行っています。
・同業者との接触における禁止事項の明示、同業者との打ち合わせなどの事前審査・結果確認
・営業職員の行動記録の報告書の確認
・公共入札に関する社内協議記録の整備・監査
・公共入札に関するモニタリングシステムの導入
(意識改革の徹底と研修の強化)
「コンプライアンス基本理念」及び「コンプライアンス指針」の改訂と「自由な競争及び公正な取引順守基本方針」の制定に伴い、これらを周知徹底するために、携帯用リーフレットの作成・配布とe-ラーニングを実施しています。2020年7月に「コンプライアンス啓蒙週間」を設けてコンプライアンス意識調査等を行い、7月30日の「コンプライアンスの日」に経営トップの訓示と外部講師の講演からなる特別研修を行いました。また、「独占禁止法・下請法順守の手引」を作成して役職員に配布するなど、コンプライアンス意識の更なる向上を図っています。
(社内監査・第三者監査の実施)
当社では、独占禁止法順守のための法務監査を毎年実施しており、業務リスク管理部が、各支店の支店長、営業部長及び製販部長へのヒアリング並びに営業担当者の営業記録、同業者との打ち合わせ報告書、受注検討会資料及び教育訓練記録などの閲覧を行い、他の事業者と共同することなく自主的に営業活動を行っていることを確認しています。また、独占禁止法の順守状況を監視するために、第三者による定期的な監査も併せて実施しています。
(適切な組織・人事管理)
所属長、事業所長の定期的な人事異動を実施している他、独占禁止法違反を懲戒該当事項として就業規則に明記し、処分の厳格化を周知しています。
(社長巡回会議の実施)
当社グループでは、従来から社長が年2回各支店を回り、「社長巡回会議」を開催し、独占禁止法違反に関して法令順守やコンプライアンスの徹底、労働環境改善など全社で取り組むべき課題について説明を行ってきました。
2021年度は、新型コロナウイルス感染防止の観点から、集合での参加は支店幹部に限定し、管内事業所長はWebで参加するハイブリッド方式にて実施しました。各支店内で水平展開を図ることにより、従業員一人ひとりが求められている課題を理解し、毎日の業務の中で今年度の取り組みが組織の最前線まで浸透、促進できるようにしています。
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