(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりである。
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中、ワクチン接種の普及や社会・経済活動の維持・両立に向けた各種政策もあり、一時は持ち直し基調で推移した。しかしながら、オミクロン株による感染が急拡大したほか、原油価格の高騰や緊迫するロシア・ウクライナ情勢など、景気の下振れリスクが生じており、依然として先行き不透明な状況となっている。
建設業界においては、国土強靭化工事をはじめとした関連予算の執行により、公共投資は堅調に推移しており、民間設備投資も徐々に持ち直しの動きが見られたものの、建設資材の高騰や人手不足の影響による建設コスト増加が顕著化しており、収益への影響が懸念されている。
当連結会計年度は、コロナ禍によるご発注者の設備投資抑制等により厳しい受注環境となったが、屋内外電気設備部門および送電線設備部門における大型プロジェクト工事の受注等も寄与し、業績については受注高が485億6百万円(前連結会計年度は410億2千8百万円)、売上高が532億3千1百万円(前連結会計年度は552億円)となった。
利益については営業利益が30億6千8百万円(前連結会計年度は42億2千万円)、経常利益が33億4百万円(前連結会計年度は47億6千5百万円)、親会社株主に帰属する当期純利益が24億3百万円(前連結会計年度は32億7千8百万円)となった。
セグメントごとの経営成績は次のとおりである。
( 電気設備工事業 )
電気設備工事業については、受注工事高が485億6百万円(前連結会計年度は410億2千8百万円)、完成工事高が503億8千万円(前連結会計年度は517億8千8百万円)、営業利益が57億6千6百万円(前連結会計年度は67億2千7百万円)となった。
鉄道電気設備工事については、東日本旅客鉄道株式会社の安全・安定輸送に伴う設備更新工事、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構の新幹線建設工事等により、受注工事高が265億3千3百万円(前連結会計年度は234億4千8百万円)、完成工事高が299億6千3百万円(前連結会計年度は331億4千5百万円)となった。
道路設備工事については、高速道路会社各社の標識工事、電気通信工事、警視庁及び各警察本部の交通信号機工事等により、受注工事高が89億5千8百万円(前連結会計年度は95億7百万円)、完成工事高が94億7千2百万円(前連結会計年度は102億4千6百万円)となった。
屋内外電気設備工事については、官公庁・民間事業者の電気設備工事、太陽光発電設備工事等により、受注工事高が59億4千8百万円(前連結会計年度は32億6千1百万円)、完成工事高が44億6千3百万円(前連結会計年度は34億3千2百万円)となった。
送電線設備工事については、電力会社各社の架空送電線路工事等により、受注工事高が70億6千6百万円(前連結会計年度は48億1千万円)、完成工事高が64億8千1百万円(前連結会計年度は49億6千3百万円)となった。なお、当部門については、地域間連系線等の大型プロジェクト工事により、受注工事高・完成工事高が増加している。
( 兼 業 事 業 )
兼業事業については、主に交通施設の標識及び交通安全用品の製造・販売等により、売上高が24億6千1百万円(前連結会計年度は30億3千5百万円)、営業損失が2千3百万円(前連結会計年度は2億1千2百万円の営業利益)となった。なお、兼業事業については、景気の低迷を受けて売上高が減少するとともに、売上原価が上昇した。
( 不動産賃貸事業 )
不動産賃貸事業については、土地、建物等の賃貸により、売上高が3億8千9百万円(前連結会計年度は3億7千6百万円)、営業利益が1億9千7百万円(前連結会計年度は1億8千1百万円)となった。
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産の残高は、441億4百万円(前連結会計年度末は444億3千7百万円)となり、3億3千2百万円減少した。主な要因は、現金預金の増加(67億6千万円から78億4千1百万円へ10億8千1百万円の増)、受取手形・完成工事未収入金等の減少(359億9百万円から350億5千2百万円へ8億5千6百万円の減)、未成工事支出金の減少(9億9千7百万円から6億6千7百万円へ3億3千万円の減)、その他(立替金等)の減少(4億7千5百万円から1億9千9百万円へ2億7千5百万円の減)である。
(固定資産)
当連結会計年度末における固定資産の残高は、357億5千2百万円(前連結会計年度末は361億8千万円)となり、4億2千8百万円減少した。主な要因は、リース資産の増加(22億8千7百万円から26億5千7百万円へ3億6千9百万円の増)、機械、運搬具及び工具器具備品の増加(42億6千1百万円から45億2千2百万円へ2億6千1百万円の増)、投資有価証券の減少(151億2千4百万円から143億9千7百万円へ7億2千7百万円の減)である。
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債の残高は、171億3千3百万円(前連結会計年度末は190億8千3百万円)となり、19億4千9百万円減少した。主な要因は、支払手形・工事未払金等の減少(74億9千4百万円から67億5千万円へ7億4千3百万円の減)、未払法人税等の減少(14億3百万円から8億2千5百万円へ5億7千8百万円の減)、賞与引当金の減少(18億7千万円から12億5百万円へ6億6千4百万円の減)である。
(固定負債)
当連結会計年度末における固定負債の残高は、72億1千9百万円(前連結会計年度末は68億9千7百万円)となり、3億2千2百万円増加した。主な要因は、リース債務の増加(13億2千4百万円から14億8千9百万円へ1億6千5百万円の増)、退職給付に係る負債の増加(51億6千5百万円から53億1千7百万円へ1億5千1百万円の増)である。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産の残高は、555億4百万円(前連結会計年度末は546億3千7百万円)となり、8億6千7百万円増加した。主な要因は、利益剰余金の増加(480億9千2百万円から495億6千7百万円へ14億7千4百万円の増)、その他有価証券評価差額金の減少(21億5千7百万円から16億6千万円へ4億9千6百万円の減)である。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)の期末残高は、営業活動による資金の流入、財務活動及び投資活動による資金の流出により前連結会計年度末より10億8千1百万円増加し、78億2千8百万円となった。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローの流入額は、26億2千5百万円(前連結会計年度は30億6千9百万円の流入)となった。これは主に、税金等調整前当期純利益の計上による資金の流入、売上高の減少に伴う仕入債務の減少及び法人税等の支払による資金の流出によるものである。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローの流出額は、4億5千5百万円(前連結会計年度は15億2千万円の流出)となった。これは主に、水戸支社建替、静岡営業所の土地等の有形固定資産及び社内基幹システム構築等の無形固定資産の取得による資金の流出によるものである。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローの流出額は、10億8千8百万円(前連結会計年度は20億1千7百万円の流入)となった。これは主に、ファイナンス・リース債務の返済及び配当金の支払による資金の流出によるものである。
なお、機動的な資金調達手段を確保し、財務の安定化及び資金効率の向上を図ることを目的として、主要銀行と総額50億円のコミットメントライン契約を締結しているが、当連結会計年度末において、コミットメントライン契約に基づく借入はない。
(注) 1 当連結グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産の状況」は記載していない。
2 セグメント間取引については、相殺消去している。
3 売上実績に対する割合が100分の10以上の相手先別の売上高及びその割合は、次のとおりである。
なお、参考のため提出会社個別の事業の状況は次のとおりである。
電気設備工事業における受注工事高及び完成工事高の状況
(ⅰ) 受注工事高、完成工事高及び次期繰越工事高
(注) 前期以前に受注した工事で、契約の更改により請負金額に変更があるものについては、当期受注工事高にその増減額を含む。したがって、当期完成工事高にもかかる増減額が含まれる。
(ⅱ) 受注工事高の受注方法別比率
工事受注方法は、特命と競争に大別される。
(注) 百分比は請負金額比である。
(ⅲ) 完成工事高
(注) 1 完成工事のうち主なものは、次のとおりである。
第12期の完成工事のうち主なもの
第13期の完成工事のうち主なもの
(注) 2 完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の完成工事高及びその割合は、次のとおりである。
(ⅳ) 次期繰越工事高
(注) 次期繰越工事のうち主なものは、次のとおりである。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されている。この連結財務諸表の作成にあたっては、過去の実績や状況に応じ合理的と考えられる見積りの部分があり、見積り特有の不確実性により、実際の結果が異なる場合があるため、連結財務諸表に影響を及ぼすものと考えられる。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載している。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績
当連結会計年度は、2019年度を初年度とする中期経営計画「Challenging RIETEC 2021」の最終年度として、引き続き経営の合理化・効率化を推進し、経営資源を最大限に生かして、より一層の収益力向上に努めた。また、中長期的な企業価値向上を目指し、ESG経営や働き方改革についても重点的な取組みとして推し進めてきた。
前連結会計年度に続き、一年間を通じて新型コロナウイルス感染症の収束が見通せず、あらゆる面で不確実性を伴う状況であったが、「工事を通じてインフラを支え、社会に貢献する」という当社グループの使命を果たすべく、事業への影響を最小限に抑えるため、感染拡大防止策を積極的に進めるとともに、受注の確保と着実な施工に努めてきた。また、2022年3月に発生した福島県沖地震により甚大な被害を受けた東北新幹線の設備復旧工事に従事するなど、災害復旧にも尽力した。
当連結会計年度の売上高については、鉄道電気設備部門における北陸新幹線の敦賀延伸工事や渋谷駅の大型改良工事、送電線設備部門における飛騨信濃直流幹線工事など大型プロジェクト工事の進捗・完成が寄与したものの、前連結会計年度に比べて19億6千9百万円の減少となった。営業利益については、工事の受注条件が厳しさを増す中、利益率が低下したこと等により、前連結会計年度に比べて11億5千2百万円の減少となった。
営業利益及び経常利益については、当連結会計年度の期首に公表した連結業績予想を下回る結果となった。これは計画時に想定した利益率の水準を概ね確保した一方で、売上高が計画を下回ったことによるものである。親会社株主に帰属する当期純利益については、連結業績予想の24億3千万円を若干下回ったものの、政策保有株式や固定資産の売却による特別利益が寄与したことで、ほぼ同水準の利益となった。
なお、部門別の経営成績に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりである。
(鉄道電気設備部門)
受注工事高は、主な顧客である東日本旅客鉄道㈱の渋谷駅をはじめとした駅大型改良工事や中央線グリーン車導入に伴う関連工事等を受注した結果、265億3千3百万円(前連結会計年度は234億4千8百万円)となった。
完成工事高は、前連結会計年度からの北陸新幹線敦賀延伸工事の他、首都圏及び東北地区の各大型工事が順調に進捗・竣工した結果、299億6千3百万円(前連結会計年度は331億4千5百万円)となった。
(道路設備部門)
受注工事高は、高速道路会社の標識補修の他、警視庁及び各警察本部の交通信号機工事等受注が堅調に推移した結果、89億5千8百万円(前連結会計年度は95億7百万円)となった。
完成工事高は、首都高速道路の標識補修工事や東海北陸自動車道のトンネル照明更新工事の他、全国の交通信号機工事が順調に進捗・竣工した結果、94億7千2百万円(前連結会計年度は102億4千6百万円)となった。
(屋内外電気設備部門)
受注工事高は、官公庁や商業施設等からの受注獲得に尽力し、高輪ゲートウェイ駅周辺開発工事などの大型プロジェクト工事を受注した結果、59億4千8百万円(前連結会計年度は32億6千1百万円)となった。
完成工事高は、駅ビルや商業施設、教育施設の電気設備工事などの大型工事が順調に進捗・竣工したことにより、44億6千3百万円(前連結会計年度は34億3千2百万円)となった。
(送電線設備部門)
受注工事高は、各電力会社からの送電線鉄塔建替工事や電線張替工事等、複数の大型工事を受注した結果、70億6千6百万円(前連結会計年度は48億1千万円)となった。
完成工事高は、前連結会計年度からの飛騨信濃直流幹線新設工事の他、各地区における大型送電線建設・改修工事が順調に進捗・竣工したことにより、64億8千1百万円(前連結会計年度は49億6千3百万円)となった。
b.財政状態
当連結会計年度末における資産合計の残高については、798億5千7百万円(前連結会計年度末は806億1千8百万円)となり7億6千万円減少した。主な要因は現金預金の増加、受取手形・完成工事未収入金等の減少、未成工事支出金の減少、投資有価証券の減少である。
負債合計の残高については、243億5千3百万円(前連結会計年度末は259億8千万円)となり16億2千7百万円減少した。主な要因は支払手形・工事未払金等の減少、賞与引当金の減少である。
純資産合計の残高については、555億4百万円(前連結会計年度末は546億3千7百万円)となり8億6千7百万円増加した。主な要因は利益剰余金の増加である。
以上の結果、自己資本比率は69.5%(前連結会計年度末は67.8%)となり前連結会計年度末より1.7%増加し、安定的な財政状態を維持している。
c.キャッシュ・フロー並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度末におけるフリーキャッシュ・フローについては、新基幹システムの構築、水戸支社建替、静岡営業所新築に伴う土地購入等の固定資産の取得による資金の流出があったものの、営業活動による資金の流入により、黒字となった。当連結会計年度の現金及び現金同等物の期末残高は78億2千8百万円(前連結会計年度末は67億4千7百万円)となり当社グループの連結売上高を勘案すると、適正な水準を維持している。
また、当社グループの資金需要は、事業を行う上で必要となる運転資金、持続的成長のための成長投資及び配当金がある。
これらの資金は営業キャッシュ・フローを主とした内部資金を基本としているが、当社が営業活動から得られるキャッシュ・フローは季節的変動があり短期的に資金が不足した場合には金融機関からの借入にて資金調達を行っている。
借入金は安定的なキャッシュポジションを見極めながら営業活動から得られるキャッシュ・フローで返済しており、今後においても適切に調達することが可能であり、コミットメントライン契約(主要銀行と総額50億円)を含め十分な流動性を確保していると考えている。
なお、当連結会計年度末においては短期借入金の残高は無く、現時点においては長期借入金の調達は想定していない。
当社キャッシュ・フロー指標のトレンドについては下記のとおりである。
(注) 1 各指標の算出方法は以下のとおりである。
2 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出している。
3 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出している。
4 営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用している。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち、リース債務を除く利子を支払っている負債を対象としている。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用している。
d.経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループの経営に影響を与える大きな要因は、2「事業等のリスク」に記載している。
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