課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものである。

 

(1)経営の基本方針

 当社グループは、「当社は、鉄道の技術から発展した総合電気工事会社として、安全を第一に、品質の向上と技術の研鑽に努め、変革に挑み続けます。そして、卓越した技術と誠実な施工により、お客様から信頼され、共に成長し、広く社会基盤の構築に貢献することで、持続可能な社会を目指します。」という経営理念を掲げ、お客様の期待と信頼に応え、社会に貢献していく。また、以下の3つの基本方針を掲げ、時代の変遷に対応するため、「変革と挑戦」への意識改革の取組みをより一層強化するとともに、会社の変革を目指して社員一人ひとりが仕事の仕組みを変え、会社を変革し続けることにより企業価値の向上を図っていく。

 

(安全)

 安全は経営の根幹である。労働災害及び重大事故ゼロを目指して、役員、社員一人ひとりが自らの職責を全うして安全を築き上げます。

 

(意識改革で会社・社会の発展)

 役員、社員一人ひとりが、常にチャレンジ精神で自ら考え行動することにより、競争力と収益力に優れた企業として、持続的に成長し企業価値と社会価値の向上を目指します。

 

(社員の働きがい)

 役員、社員一人ひとりが、仕事に誇りを持って自らの成長に努め、社会への貢献を通じて、仕事と生活の調和のとれた働きがいのある職場を実現します。

 

(2)環境基本理念

 当社グループは、「工事を通じてインフラを支え、社会に貢献する」ことを使命とし、これまでも「エネルギー」や「まちづくり」などの分野で、環境を巡る課題解決と親和性の高い事業を行ってきた中で、あらためて2022年度に以下に掲げる環境基本理念を定め、これまで以上に環境に対する事業活動を力強く推進していくこととした。

 

(環境基本理念)

 日本リーテックグループは「広く社会基盤の構築に貢献する」という経営理念のもと、地球環境に対する継続的改善を経営の重要課題と位置づけ、事業活動の全ての場面において、環境負荷の低減に努め、持続可能な社会の実現に向けて貢献いたします。

 

(3)中長期的な経営環境と対処すべき課題への取り組み

今後の日本経済については、新型コロナウイルス感染症の収束時期が見通せない中ではあるが、経済活動の正常化に向けた動きが活発化してくるものと思われる。しかしながら、原油をはじめとした資源価格が大幅に上昇しており、企業収益に大きな下振れ圧力がかかっている。また、個人消費に目を向けると物価上昇による消費マインドの低下が懸念されるなど、先行きの不確実性は高く、依然として動向の見極めが必要な状況となっている。

このような状況の中、当社グループを取り巻く環境は、ウィズコロナそしてアフターコロナを見据えた景気の回復基調が進むことを前提に、徐々に受注環境の改善段階に移行していくものと思われる。しかし、2023 年3月期に進捗・完成計上される工事は、前年度からの繰越工事をはじめ、受注条件の厳しい工事が多く含まれることから、利益率の回復には、いま少し時間を要するものと想定している。一方で、社会構造の大きな転換点に際し、私たちの主要なお客様であるインフラ事業者が、従来の収益基盤から脱炭素社会への取り組みやデジタル技術を用いた新たなサービス展開への取り組みに力を入れようとしている点に着目し、この経営環境の変化をチャンスと捉え、2022 年度を初年度とする新たな中期経営計画「Change and Innovation RIETEC 2024」をスタートさせた。

いまだ不透明感が拭えない社会・経済情勢ではあるが、DX戦略や経営資源の更なる効率化を力強く推進し、「工事を通じてインフラを支え、社会に貢献する」という変わらぬ使命を果たすとともに、新たな社会の課題解決に向けて持続的成長企業を目指していく。

 

(中期経営計画「Change and Innovation RIETEC 2024」の骨子)

① 全ての基盤である「NR安全の樹」

経営の根幹である「安全」は、安全品質№1企業を目指し、当社の安全ポリシー「NR安全の樹」を企業文化として、そのこころをグループ一人ひとりがアイデンティティとなるまでに高めること、そして、安全を支える活力ある職場作りを通じ、私たちの仕事が社会を支えているという高い志「NR品質・NRプライド」を持つ人材の育成に取り組み、お客様から更なる信頼をいただけるよう努める。

 

② 持続可能な社会とNRグループの新たな成長を目指す「NRサステナビリティ」

近年、サステナビリティを巡る課題解決に向けた企業活動の取り組みが高まっている中で、特に当社グループにとって重要な社会課題である「環境」に重点を置き、「環境基本理念」を制定する共に、TCFD提言に基づく気候関連の情報開示を行い、具体的取り組みを策定した。「環境」をキーワードとする当社グループの新たな成長戦略によりサステナブルな社会の実現に貢献すると共に、既存分野においても近年目覚ましい発展を遂げるデジタル技術を活用した生産性向上に取り組み、成長軌道としてのGX(グリーン・トランスフォーメーション)とDX(デジタル・トランスフォーメーション)を実現していくものとする。

 

③ 成長基盤の根幹となる「人間企業NR」

当社グループの企業力の源泉は、社員一人ひとりの技術力の集積であり、継続的に成長していくためには、社員一人ひとりが成長し続けていかなければならない。人を育て、人を大切にする「人間企業NR」として、引き続き働き方改革を進めるとともに、総合研修センターを中心とした教育・研修体制の充実を図り、規律ある優秀な技術者の育成に努める。優秀な人材を確保するため、採用の強化、ダイバーシティへの取り組み、社員の待遇改善等、当社グループの社員であることに誇りを持てる仕組みを構築して、将来を見据えた人材育成に取り組む。

 

④ ガバナンス体制の維持と企業価値の向上「NRガバナンス」

当社グループは、社会基盤構築に貢献する企業として安全最優先の企業風土、コンプライアンスとリスクマネジメント力の強化を図り、ステークホルダーからの信頼を確固たるものにしていく。

 

当社グループは合併後財務体力強化に努め、強固な財務基盤を構築してきた。今後は、積み上げた財務体力を積極的に活用し、「NRサステナビリティ」で取り組む新規事業への進出や生産性向上に必要な成長投資を行う。この中期経営計画を通して、各種社会インフラ基盤整備事業への参画により、社会に必要とされる企業グループとして持続的な成長を目指す。一方で、経営環境の大きな変化を踏まえ、既存事業における効率化と生産性向上に向けた取り組みを加速させ、企業価値向上を目指す。

 

(中期経営計画の目指す方向性 ~3つのS(Safety Smart Sustainability))

新型コロナウイルス感染症の蔓延や世界情勢の悪化により、社会経済は大きな影響を受けた。お客様の経営環境が激変するとともに、地球温暖化による災害増加は私たちの暮らしそのものに大きな影響を与え始めており、これらは当社にとって大きなリスクとなっている。しかしながら、発足以来一貫して工事を通してインフラを支えることで社会に貢献することを使命としている当社グループにとっては、これらのリスクをチャンスに変え、新たなニーズをビジネスに繋げていくことで、グループの持続的成長と持続可能な未来の暮らしづくりの両立に向けて、3つのS(Safety Smart Sustainability)に取り組むことが重要であると捉え、3つのの課題解決へと取り組んでいく。

 


 

 

取組むべき重要課題(Safety Smart Sustainability=3つのS)


 

(経営数値目標)

当面、厳しい受注環境が予想される中、既存事業の生産性向上と環境を中心とした新規事業にチャレンジするため、積極的な成長投資による持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指す。そして中期経営計画最終年度(2024年度)においては、コロナ前の水準である売上高と営業利益を目標とする。

 


 

 

(ESG経営における重要課題の特定)

本中期経営計画の策定にあたっては、当社グループ事業のESG経営における重要課題(マテリアリティ)の特定と、その課題解決に向けた指標と目標を設定した。

 

ESG経営における重要課題の特定


 

ESG経営における指標と目標値の設定


 

 

 

(4)TCFD提言に基づく気候関連の情報開示について

現在、気候変動を起因とした自然災害が頻発・激甚化し、安全・安心な社会を脅かす重大な問題となっている。当社は、気候変動による事業への影響を重要な経営課題の一つと認識し、関連情報の開示を進めていく。

 

 ① ガバナンス

当社は、環境に関連する課題を審議・決定する機関として、社長を委員長とし経営層をメンバーとする「環境経営推進委員会」を設置している。当委員会では、気候変動に関連する課題について、具体的な方針や施策の決定、レビューを行っており、重要な方針については取締役会や経営会議に付議し決定している。なお、気候変動に関する重要事項は、各本部及びグループ会社に伝達され共有すると共に、主要取引先にも協力を要請するガバナンス体制を構築している。


 ② 戦略

当社の事業に影響を与えるリスクと機会として、「気候変動」についてシナリオ分析を行った。リスクと機会には、炭素排出量増大による地球温暖化を抑えるための規制の強化や市場の変化などの「移行」に起因するものと、地球温暖化そのものが引き起こす「物理的変化」に起因するものが考えられる。

起因するもの

シナリオ分析

産業革命前と比べて

今世紀末の気温上昇に対して

移行

IEA(国際エネルギー機関)

1.5℃に抑えるシナリオ

物理的変化

IPCC(国際気候変動に関する政府間パネル)

4℃を越えるシナリオ

 

 

リスクと機会


 

この結果、当社はZEBや再生可能エネルギー関連工事などの事業機会もあり、十分なレジリエンスを有しているものと分析した。

 

 ③ リスク管理

当社では、環境経営推進委員会において気候変動をはじめとする環境に関連するリスクの最小化と、機会の最大化を目指し、基本的な方針および施策を審議している。

また、環境問題における重要な意思決定事項については、取締役会・経営会議に付議している。各部門においては、業務プロセスに内在するリスクを把握、低減策を講じた上で業務を遂行し、内部監査部門である監査部が、各部門のリスク管理状況を監査している。当社はこれらのリスク管理を通じて、今後多様化・広域化・激甚化する気候変動に関するリスクや機会に対処する。

 

 ④ 指標と目標

当社は、2050 年カーボンニュートラルに向けて、事業活動における CO 2 排出量削減の取組みを開始した。中期経営計画において、重点施策を実施することにより、具体的な CO 2 排出削減目標を設定した。

 

目標(単位:t-CO2

2040年

①スコープ1におけるCO2排出量削減率

▲50%(基準年2022年)

②スコープ2におけるCO2排出量削減率

▲50%(基準年2022年)

 

 

(スコープ1)燃料の燃焼などによる直接排出:社有車の使用に伴う直接排出量

(スコープ2)電気の使用による間接排出:自社施設で購入した電気・熱の使用に伴う間接排出量

 

 

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