(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりである。
当連結会計年度の国内経済は、新型コロナウイルス感染症の影響による厳しい状況が徐々に緩和され持ち直しの動きがみられたものの、変異株の感染拡大による影響や供給面での制約、原材料価格の動向による下振れリスクに十分注意する必要があった。当建設業界における受注環境は、公共投資は弱含んでおり、民間設備投資は持ち直しに足踏みがみられた。当社を取り巻く経営環境は、各鉄道会社の旅客収入の大幅な減少による設備投資の抑制や民間工事における低価格での受注競争が激化すること等により近年にない厳しい状況であった。
このような状況の中で、当社グループは営業体制の強化を図り、グループを挙げて新規工事の受注確保に努めた結果、当連結会計年度の連結受注高は1,723億円(前連結会計年度比90%)となった。
連結売上高は、当連結会計年度の期首より「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)等の適用により33億円増加した結果、1,735億円(前連結会計年度比89%)となり、連結繰越高は1,445億円(前連結会計年度比84%)となった。
なお、収益認識会計基準等の適用前の連結売上高は顧客の設備投資の抑制や前期に大型工事の完成が集中したことの反動等により1,702億円(前連結会計年度比87%)となり、連結繰越高は過去最高の1,761億円(前連結会計年度比102%)となっている。
利益については、前期に比べ工事採算性が低下したこと等により、連結営業利益は74億54百万円(前連結会計年度比53%)、連結経常利益は87億3百万円(前連結会計年度比57%)、親会社株主に帰属する当期純利益は52億22百万円(前連結会計年度比55%)となった。
部門別の状況は次のとおりである。
当連結会計年度は、顧客の設備投資の抑制等により厳しい状況であったが、東日本旅客鉄道株式会社を始めとするJR各社、公営鉄道及び民営鉄道等に対して組織的営業を展開し受注の確保に努めた結果、連結受注工事高は1,013億円(前連結会計年度比91%)となった。
連結完成工事高は、収益認識会計基準等の適用により24億円増加した結果、1,001億円(前連結会計年度比90%)となり、連結繰越工事高は791億円(前連結会計年度比82%)となった。
なお、収益認識会計基準等の適用前の連結完成工事高は976億円(前連結会計年度比87%)となり、連結繰越工事高は1,007億円(前連結会計年度比104%)となっている。
当連結会計年度は、顧客の設備投資の抑制等により厳しい状況であったが、建設需要が高い工事等を中心に、顧客志向に基づいた営業活動を展開し受注の確保に努めた結果、連結受注工事高は472億円(前連結会計年度比96%)となった。
連結完成工事高は、426億円(前連結会計年度比85%)となり、連結繰越工事高は470億円(前連結会計年度比100%)となった。
なお、収益認識会計基準等の適用前の連結完成工事高は426億円(前連結会計年度比85%)となり、連結繰越工事高は517億円(前連結会計年度比110%)となっている。
当連結会計年度は、顧客の設備投資の抑制等により厳しい状況であったが、得意先等に対し全社的な受注の確保に努めた結果、連結受注工事高は224億円(前連結会計年度比79%)となった。
連結完成工事高は、収益認識会計基準等の適用により8億円増加した結果、279億円(前連結会計年度比91%)となり、連結繰越工事高は181億円(前連結会計年度比64%)となった。
なお、収益認識会計基準等の適用前の連結完成工事高は271億円(前連結会計年度比88%)となり、連結繰越工事高は233億円(前連結会計年度比83%)となっている。
当連結会計年度は、連結受注高は13億円(前連結会計年度比87%)となり、連結売上高は28億円(前連結会計年度比88%)となった。
(注) 「その他」の事業には、不動産業及びビル総合管理等の関連事業、ソフトウェアの開発及び電気設備の設計等を含んでいる。
② 財政状態の状況
資産
当連結会計年度末における資産の残高は、2,577億0百万円(前連結会計年度末は2,656億57百万円)となり、79億56百万円減少した。
負債
当連結会計年度末における負債の残高は、725億7百万円(前連結会計年度末は812億93百万円)となり、87億85百万円減少した。
純資産
当連結会計年度末における純資産の残高は、1,851億92百万円(前連結会計年度末は1,843億63百万円)となり、8億29百万円増加した。
当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は、投資活動及び財務活動による資金の減少があったものの、営業活動による資金の増加により、前連結会計年度末から1億31百万円増加し、421億73百万円となった。
営業活動によるキャッシュ・フローは、95億14百万円の資金増加(前連結会計年度比100億56百万円減少)となった。これは、税金等調整前当期純利益83億17百万円の計上及び未成工事支出金の減少額302億97百万円等による資金増加要因と、売上債権の増加額230億49百万円及び法人税等の支払額44億62百万円等による資金減少要因によるものである。
投資活動によるキャッシュ・フローは、66億44百万円の資金減少(前連結会計年度比27億57百万円増加)となった。これは、有形固定資産の取得による支出27億13百万円及び無形固定資産の取得による支出22億61百万円等によるものである。
財務活動によるキャッシュ・フローは、27億37百万円の資金減少(前連結会計年度比4百万円増加)となった。これは、配当金の支払額22億71百万円及びリース債務の返済による支出3億76百万円等によるものである。
(注) 「その他」の事業のうち受注生産を行っていない不動産の賃貸・管理等は、上記金額には含まれていない。
(注) 1.当社グループでは、生産実績を定義することが困難であるため、「生産の状況」は記載していない。
2.完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の完成工事高及びその割合は、次のとおりである。
なお、参考のため提出会社個別の事業の状況は次のとおりである。
建設業における受注工事高及び完成工事高の状況
前事業年度 自 2020年4月1日 至 2021年3月31日
(注) 1.前事業年度以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額を含む。したがって、当期完成工事高にもかかる増減額が含まれる。
2.「その他」の当期完成工事高には、受注生産を行っていない不動産の賃貸等の売上高が含まれているため、当期完成工事高は(前期繰越工事高+当期受注工事高-次期繰越工事高)に一致しない。
当事業年度 自 2021年4月1日 至 2022年3月31日
(注) 1.前事業年度以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額を含む。したがって、当期完成工事高にもかかる増減額が含まれる。
2.「その他」の当期完成工事高には、受注生産を行っていない不動産の賃貸等の売上高が含まれているため、当期完成工事高は(前期繰越工事高+当期受注工事高-次期繰越工事高)に一致しない。
3.前期繰越工事高については、収益認識会計基準等を当事業年度の期首から適用しているため、2021年3月期の次期繰越工事高に一致しない。
工事の受注方法は、特命と競争に大別される。
(注) 百分比は請負金額比である。
(注) 1.完成工事のうち主なものは、次のとおりである。
前事業年度の完成工事のうち主なもの
当事業年度の完成工事のうち主なもの
2.完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の完成工事高及びその割合は、次のとおりである。
(d) 次期繰越工事高(2022年3月31日現在)
(注) 次期繰越工事のうち主なものは、次のとおりである。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。
「日本電設3ヶ年経営計画2021」の初年度である2022年3月期は、依然として各鉄道事業者をはじめとした顧客がコロナ禍の影響を受け厳しい経営状況に直面しており、各鉄道会社の旅客収入の大幅な減少による設備投資の抑制や民間工事における低価格での受注競争が激化すること等により、当社グループにとっても厳しい経営環境であった。このような状況の中で、業績の確保に向けて鋭意努力した結果、前連結会計年度比で減収減益となったものの、売上高、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益において計画を達成した。
部門別の経営成績の分析・検討内容は次のとおりである。
連結受注工事高は、各鉄道事業者の工事抑制の影響を受けたものの、公営鉄道の変電所工事等の受注拡大により、計画を大きく上回る結果となった。
連結完成工事高は、新幹線工事等の大型工事の施工が順調に推移したこと等により、計画を大きく上回る結果となった。
連結受注工事高は、計画を下回ったものの大型工事や官公庁工事を受注したこと等により高水準を維持した。
連結完成工事高は、竣工物件の少ない端境期にあたり、前連結会計年度比で減少したものの概ね計画通りとなった。
連結受注工事高は、得意先の工事抑制により前連結会計年度比で減少となったものの、大型のネットワーク工事の受注により概ね計画通りとなった。
連結完成工事高は、不感地対策工事の収束による反動等により前連結会計年度比で減少したものの計画を上回る結果となった。
その他
連結受注高は、グループ会社の資材・物品等の販売が減少したことにより、前連結会計年度比で減少した。
連結売上高は、賃貸ビルのテナント退去および大型工事の調査・設計受託の減少により、前連結会計年度比で減少したが概ね計画通りとなった。
資産
当連結会計年度末においては、収益認識会計基準等の適用により受取手形・完成工事未収入金等が増加したものの、同基準の適用及び工事量の変動に伴い未成工事支出金等が減少した。
負債
当連結会計年度末においては、工事量の変動に伴い支払手形・工事未払金等及び電子記録債務が減少した。
純資産
投資有価証券の時価の変動に伴いその他有価証券評価差額金が減少したものの、親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことに伴い利益剰余金が増加し、自己資本比率は66.9%となった。
利益剰余金のうち提出会社の繰越利益剰余金については、2022年6月24日開催の第80期定時株主総会において、下記のとおり決議された。
1株当たり配当額 31円
配当総額 1,906百万円
別途積立金の積立 2,500百万円
なお、配当政策については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」の項目を参照のこと。
③ キャッシュ・フローの状況に関する分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度における「現金及び現金同等物の期末残高」(以下「資金」という。)は、投資活動及び財務活動による資金の減少があったものの、営業活動による資金の増加により、前連結会計年度末から1億31百万円増加し、421億73百万円となった。
なお、詳細については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」の項目を参照のこと。
b. キャッシュ・フロー指標のトレンド
(注) 1.自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
2.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出している。
3.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出している。
4.営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用している。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を払っている全ての負債を対象としている。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用している。
当社グループは、現金及び現金同等物並びに営業活動によるキャッシュ・フローを資金の源泉としている。一方、資金需要については、運転資金、更なる経営基盤の充実に備えるための人材の確保と育成、教育、DX(デジタルトランスフォーメーション)や環境経営の推進に向けた設備投資、軌陸車等の工事用機材、事業所整備、事業開発、重大な損害・災害発生時の支出及び株主の皆様への配当等である。
資金の流動性については、これらの資金需要に対して自己資金により対応できる適切な水準を維持することを基本方針としている。当連結会計年度末は、現金及び現金同等物421億73百万円を確保し必要な流動性水準を維持している。
また、現時点では上記基本方針を維持することとしているが、緊急時における資金需要に備えるため、複数の金融機関と当座貸越契約を締結している。
④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されている。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いているが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性がある。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりである。
なお、会計上の見積りにおける新型コロナウイルス感染症の影響については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 追加情報」及び「第5 経理の状況 2 財務諸表等 注記事項 追加情報」の項目を参照のこと。
売上債権、貸付金等の貸倒による損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率に基づき、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に債権の回収可能性を勘案し、回収不能見込額を計上している。
将来の不確実な経済条件の変動等により、貸倒実績率を補正すること等が必要となった場合、引当金の金額が増減する可能性がある。
完成工事に係るかし担保の費用に備えるため、当連結会計年度の完成工事高に対し、過去の完成工事に係る補償額の実績を基に将来の発生見込額を加味して計上している。
見積りを超える完成工事のかし及びその補償費用が発生した場合、引当金の追加計上が必要となる可能性がある。一方、実際の補償費用が引当金の金額を下回った場合は引当金戻入益を計上することとなる。
受注工事に係る将来の損失に備えるため、当連結会計年度末における手持受注工事のうち、損失が確実視されその金額を合理的に見積ることができる工事について、損失見込額を計上している。
損失見込額の見積りは、工事契約ごとに策定した実行予算に基づき算定している。また、実行予算は、作成時点で入手可能な情報に基づき、作業内容や原材料価格等について仮定し策定している。工事の進捗等に伴い継続して実行予算の見直しを行っているが、工事契約の変更や仕様変更、工事着手後の状況の変化等が発生した場合は、引当金の金額が増減する可能性がある。
退職給付債務及び退職給付費用は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算定しており、これらの前提条件には、割引率、予定昇給率、退職率、死亡率及び年金資産の長期期待運用収益率等が含まれている。
将来の不確実な経済条件の変動等により前提条件の見直しが必要となった場合、退職給付債務及び退職給付費用に影響を与える可能性がある。
固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上することとしている。
将来の不確実な経済条件の変動等により見積りの見直しが必要となった場合、減損損失が発生する可能性がある。
繰延税金資産の回収可能性については毎期見直しており、過年度の業績、納税状況及び将来の業績予測等を総合的に勘案し、課税所得の額を合理的に見積ることにより判断している。
将来の不確実な経済条件の変動等により見積りの見直しが必要となった場合、繰延税金資産が減額され税金費用が発生する可能性がある。
履行義務の充足に係る進捗度の測定は、連結会計年度末までに発生した工事原価が、予想される工事原価総額に占める割合(原価比例法)に基づいて行っている。
工事原価総額は、工事契約ごとに策定した実行予算に基づき算定している。また、実行予算は、作成時点で入手可能な情報に基づき、作業内容や原材料価格等について仮定し策定している。工事の進捗等に伴い継続して実行予算の見直しを行っているが、工事契約の変更や仕様変更、工事着手後の状況の変化等が発生した場合は、完成工事高及び完成工事原価に影響を与える可能性がある。
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