当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、これらの会計基準に基づき、決算日における資産・負債及び収益・費用の数値に影響を与える見積りが行なわれているものがあります。
会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」をご参照ください。
また、新型コロナウイルス感染症拡大の影響については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)」をご参照ください。
なお、これらの見積りにつきましては、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる場合があります。
当期における世界経済は、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大が進み経済活動に一定の制約があったものの、先進国を中心にワクチンが普及し、景気は回復基調を維持しました。一方で、米中貿易摩擦の長期化、資源価格の上昇、半導体をはじめとする部材の供給不足などによる景気への影響があり、不安定な状況が続きました。
米国では、インフレの進行や金融引き締めの加速等の懸念材料はあるものの、大規模な経済対策等により、景気の回復が進みました。欧州では、各国で経済活動の制限が緩和され、景気は回復に向かいましたが、足元ではウクライナ情勢の緊迫化、エネルギー価格の高騰等が景気減速の懸念となっております。中国では、新型コロナウイルス感染症や電力制限等の政府の規制に加え、資源価格の高騰で景気の回復ペースは減速しました。東南アジアでは、新型コロナウイルス感染症の急激な再拡大からは脱したものの、回復ペースは緩やかでした。日本経済は、新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言の解除後も、新たな変異株の流行や資源価格の高騰等、先行きは不透明な状況ですが、景気持ち直しの動きが続きました。
当社グループにおける市場環境につきましては、国内市場では電子部品、医薬品、自動車などのメーカーによる投資が好調であり、首都圏におけるオフィスビルの建設需要も堅調に推移しました。一方、海外市場では新型コロナウイルス感染症の影響による不透明感が依然続いており、各メーカーによる設備投資は慎重な動きが続きました。
このような状況のもと、当社グループは、1.「グローバル市場における確固たる地位の確立」、2.「将来への取り組みの強化」、3.「魅力ある会社づくりと強固な経営基盤の構築」の3つを基本方針とした中期経営計画(2020年3月期~2022年3月期)の最終年度を迎えました。期間中は、中長期的な成長を目指し、以下の取り組みを推進してまいりました。
はじめに「グローバル市場における確固たる地位の確立」につきましては、技術開発センターの実証センター化やTaikisha Lao Co.,Ltd.の設立による東南アジア事業の拡大に取り組みました。
次に、「将来への取り組みの強化」では、Nicomac Clean Rooms Far East LLP(現・Nicomac Taikisha Clean Rooms Private Limited)への出資によるインド市場への対応強化や、Encore Automation LLCへの追加出資によるオートメーション事業の拡充のほかに、植物工場事業の領域拡大及び自社量産工場設立によって、競争力の向上・事業領域の拡大に向けた方策を実施してまいりました。
最後に「魅力ある会社づくりと強固な経営基盤の構築」として、経費精算の電子化やテレワーク制度の導入等により、多様な働き方の実現に向けた取り組みを行いました。また、従業員の健康管理を経営的な視点で考え戦略的に取り組んでいる法人として、健康経営優良法人の認定を2年連続で取得することができました。
このような状況のもと、当期における受注工事高は、国内、海外ともに増加し、 2,321億20百万円 ( 前期比15.8%増加 )となり、うち海外の受注工事高は、 886億50百万円 ( 前期比0.4%増加 )となりました。
完成工事高は、国内では減少したものの、海外で増加したため、 2,092億61百万円 ( 前期比3.3%増加 )となり、うち海外の完成工事高は、 1,015億52百万円 ( 前期比9.4%増加 )となりました。
利益面につきましては、完成工事総利益は 316億14百万円 ( 前期比24億12百万円減少 )、営業利益は 94億28百万円 ( 前期比22億61百万円減少 )、経常利益は 108億18百万円 ( 前期比14億69百万円減少 )、親会社株主に帰属する当期純利益は 72億48百万円 ( 前期比10億31百万円減少 )となりました。
なお、会計方針の変更として、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しております。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (会計方針の変更)」に記載しております。
セグメントごとの業績(セグメント間の内部取引高を含む)は次のとおりであります。
環境システム事業
受注工事高は、海外では前期にタイで大型案件の受注があった反動で減少したものの、国内では産業空調分野が増加したため、環境システム事業全体では前期を上回りました。完成工事高は、国内の産業空調分野やベトナムなどで減少したものの、フィリピンやインドなどで増加したため、環境システム事業全体では前期を上回りました。
この結果、受注工事高は、 1,589億17百万円 ( 前期比17.3%増加 )となりました。このうちビル空調分野は、 433億29百万円 ( 前期比5.6%減少 )、産業空調分野は、 1,155億88百万円 ( 前期比29.0%増加 )となりました。完成工事高は、 1,343億99百万円 ( 前期比0.3%増加 )となりました。このうちビル空調分野は、 409億78百万円 ( 前期比0.1%増加 )、産業空調分野は、 934億20百万円 ( 前期比0.3%増加 )となりました。セグメント利益(経常利益)につきましては、 93億2百万円 ( 前期比18億90百万円減少 )となりました。
塗装システム事業
受注工事高は、前期に北米で大型案件の受注があった反動で減少したものの、国内やマレーシアで増加し、前期を上回りました。完成工事高は、インドや欧州などで増加し、前期を上回りました。
この結果、受注工事高は、 732億2百万円 ( 前期比12.7%増加 )となりました。完成工事高は、 748億82百万円 ( 前期比9.3%増加 )となりました。セグメント利益(経常利益)につきましては、 6億67百万円 ( 前期比2億44百万円減少 )となりました。
セグメントごとの受注工事高・完成工事高(セグメント間の内部取引高を含む)
当社グループが営んでいる事業の大部分を占める設備工事業では生産実績を定義することが困難であり、設備工事業においては請負形態をとっているため販売実績という定義は実態にそぐいません。
よって、受注及び売上の状況については「セグメントごとの業績」において報告セグメントの種類に関連付けて記載しております。
なお、参考のため提出会社個別の事業の状況は次のとおりであります。
設備工事業における受注工事高及び完成工事高の状況
① 受注工事高、完成工事高及び次期繰越工事高
(注) 1 前事業年度以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額を含んでおります。したがって、当期完成工事高にもかかる増減額が含まれております。
2 前期繰越工事高は、収益認識会計基準第84項ただし書きに定める経過的な取扱いに従い、当事業年度の期首より前に新たな会計方針を遡及適用した場合の累積的影響額を調整しております。
3 次期繰越工事高は(前期繰越工事高+当期受注工事高-当期完成工事高)であります。
4 当期受注工事高のうち海外工事の割合は、前事業年度は3.8%、当事業年度は4.3%であります。
5 前事業年度及び当事業年度における海外受注工事高はそれぞれ当期受注工事高の10%を超えていないため、主要な海外受注工事についての記載を省略しております。
② 受注工事高の受注方法別比率
工事の受注方法は、特命と競争に大別されます。
(注) 百分比は請負金額比であります。
③ 完成工事高
(注) 1 海外工事の地域別割合は、次のとおりであります。
2 完成工事のうち主なものは、次のとおりであります。
前事業年度 請負金額40億円以上の主なもの
当事業年度 請負金額20億円以上の主なもの
3 完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の完成工事高及びその割合は、次のとおりであります。
前事業年度
当事業年度
④ 手持工事高 (2022年3月31日現在)
(注) 手持工事のうち請負金額30億円以上の主なものは、次のとおりであります。
当連結会計年度末の流動資産は前期末に比べ1.7%増加し、1,681億90百万円となりました。これは受取手形・完成工事未収入金等が35億43百万円、有価証券が10億円、材料貯蔵品が3億28百万円それぞれ増加し、現金預金が29億74百万円減少したことなどによります。
当連結会計年度末の固定資産は前期末に比べ5.5%減少し、599億69百万円となりました。これは機械、運搬具及び工具器具備品が20億36百万円、建物・構築物が3億53百万円それぞれ増加し、投資有価証券が30億72百万円、繰延税金資産が5億5百万円、それぞれ減少したことなどによります。
この結果、当連結会計年度末の資産合計は前期末に比べ0.3%減少し、2,281億59百万円となりました。
セグメントごとの資産は次のとおりであります。
(環境システム事業)
当連結会計年度末の流動資産は前期末に比べ0.4%増加し、780億52百万円となりました。これは受取手形・完成工事未収入金等が6億64百万円増加したことなどによります。
当連結会計年度末の固定資産は前期末に比べ4.5%減少し、313億67百万円となりました。これは機械、運搬具及び工具器具備品が5億11百万円、建物・構築物が3億77百万円それぞれ増加し、投資有価証券で23億43百万円減少したことなどによります。
その結果、当連結会計年度末の資産合計は前期末に比べ1.1%減少し、1,094億20百万円となりました。
(塗装システム事業)
当連結会計年度末の流動資産は前期末に比べ5.9%増加し、546億73百万円となりました。これは受取手形・完成工事未収入金等が27億19百万円増加したことなどによります。
当連結会計年度末の固定資産は前期末に比べ1.8%減少し、160億45百万円となりました。これは機械、運搬具及び工具器具備品が3億85百万円増加し、ソフトウエアが4億51百万円、繰延税金資産が3億90百万円減少したことなどによります。
その結果、当連結会計年度末の資産合計は前期末に比べ4.0%増加し、707億19百万円となりました。
当連結会計年度末の流動負債は前期末に比べ5.8%減少し、818億86百万円となりました。これは短期借入金が89億46百万円、完成工事補償引当金が2億38百万円それぞれ増加し、未成工事受入金が72億98百万円、支払手形・工事未払金等が49億47百万円それぞれ減少したことなどによります。
当連結会計年度末の固定負債は前期末に比べ0.9%減少し、154億84百万円となりました。これは長期借入金が8億35百万円増加し、繰延税金負債が9億44百万円減少したことなどによります。
この結果、当連結会計年度末の負債合計は前期末に比べ5.0%減少し、973億71百万円となりました。
当連結会計年度末の純資産合計は前期末に比べ3.5%増加し、1,307億88百万円となりました。これは、利益剰余金が41億91百万円、為替換算調整勘定が22億55百万円それぞれ増加し、その他有価証券評価差額金が23億29百万円、退職給付に係る調整累計額が4億84百万円それぞれ減少したことなどによります。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前期末に比べ18億78百万円減少し、487億91百万円(前期末は506億70百万円)となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の計上などにより増加したものの、未成工事受入金の減少や仕入債務の減少などにより、85億44百万円の資金減少(前期は9億73百万円の資金増加)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、定期預金の払戻による収入や投資有価証券の売却による収入などにより増加したものの、定期預金の預入れによる支出や有形及び無形固定資産の取得による支出などにより、10億71百万円の資金減少(前期は69億13百万円の資金減少)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払額や非支配株主への配当金の支払額などにより減少したものの、短期借入金の純増額などにより、60億円の資金増加(前期は14億35百万円の資金減少)となりました。
設備工事等のための材料費、労務費、外注費、経費、販売費及び一般管理費等の営業費用並びに業務改革、技術開発、情報化投資、海外拠点の拡充など当社グループの市場競争力強化のための投資等に資金を充当しております。
主として営業活動により稼得した資金のほか、金融機関からの借り入れにより、必要資金を調達しております。また、運転資金の効率的な調達を行うため、主要取引銀行と貸出コミットメント契約を締結しております。
連結財務諸表を作成するにあたり、在外連結子会社の財務諸表を換算しているため、為替相場の変動により、総資産、キャッシュ・フロー、完成工事高及び経常利益に影響を受けております。主に米ドル、タイバーツ、ユーロ及びインドルピーの為替の変動が大きく影響しております。
主な在外連結子会社における完成工事高及び経常利益に与える為替変動による影響
(注) *1 子会社4社を含んだ連結数値
*2 子会社6社を含んだ連結数値
*3 子会社10社を含んだ連結数値
*4 換算レートは第76期及び第77期における期中平均レート
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