当連結会計年度における研究開発費は
当社は、技術開発センター(神奈川県)、テクニカルセンター(神奈川県)の2研究開発組織において、空調設備及び塗装設備の各分野における技術開発を前期に引き続き精力的に実施し、多くの成果を得ました。
セグメントごとの研究開発は以下のとおりであります。
当連結会計年度における研究開発費の金額は
① 直膨空調システムの拡充
当社では、冷凍機の冷媒で空気を直接冷却する直膨空調システムの開発を進め、主に環境試験室用途に導入してまいりました。
当連結会計年度は、この技術を近年のウェルネスオフィスへ適用するために、直膨式輻射空調設備の開発を実施致しました。天井面設置のアンビエント空調用輻射パネル、机上設置を想定したタスク空調用輻射パネルに加え、足元部分に冷却時の廃熱利用タスク加熱用輻射パネルを追加することで、省エネ性と快適性を向上させたシステムとなっております。これらの直膨式輻射空調システムと、室全体に空気のよどみのない環境を提供する「ゆらぎ換気システム」を組み合わせることでニューノーマル時代に適応するウェルネス空調を提供いたします。技術開発センターやR&Dサテライトへ導入し、その快適性、省エネ性を体感していただくことで顧客へ技術PRを行い、拡販を進めてまいります。
② ロボット制御技術
当社では、将来へ向けた取り組みの一つとしてロボット制御技術に取り組んでおります。この取り組みは、当社の施工現場での活用のみならず、DX要素技術の集合体であるロボット開発を通じ、専門技術を持つ企業様との協働関係の構築・強化なども目指しております。また、この開発で得た技術や知見を他の開発へ展開することも目的とし取り組んでおります。
当連結会計年度は、試運転計測の自動化を目指し、自走式温湿度計測ロボットの開発に着手いたしました。技術開発センター内での試験や、実際の現場での活用を想定した本社事務所での計測試験を実施致しました。
今後は、無人計測である特徴を最大限活用するため、低露点室やクリーンルームなどの室内環境で活用するための改善や温湿度以外の計測器への対応などを進めてまいります。これらの技術は働き方改革への対応につながるものと考えております。既開発済みの複合現実(mixed reality)技術や画像認識技術などと組み合わせ、施工現場において多くの場面で活用することを目指し開発を続けてまいります。
③ 低露点室変風量制御
当社では、二次電池製造工程などで必要とされる低露点室向け省エネルギー技術として、変風量除湿システムの開発に取り組んでおります。これは、従来の技術では常に最大能力で運転されていた除湿装置を、室内負荷(主に人による除湿負荷)により送風量・除湿能力を可変させながら、室内負荷変動に追従する技術です。これにより消費エネルギーの大幅な削減が可能となります。
当連結会計年度は、この空調システムの開発・実証を行いました。この技術は、室内負荷減少時には装置供給風量・除湿量を低負荷運転状態へ移行し、負荷増加時にはそれらを定格運転へ移行させることで、負荷に合わせた運転状態を作るものです。運転容量の変更に際してシステムの応答性を考慮して制御することで、室内露点条件(給気露点温度条件)を保ったまま消費エネルギーの削減を実現いたします。
技術開発センター内に設けた検証室を活用し、室内負荷の変動に対する除湿装置の応答性を考慮した運転状態の変更、その変更タイミングなどの検証を完了いたしました。現在実用化へ向けての最終段階に入っております。今後はこの技術のPRを実施し、多くのお客様への導入を目指すと同時に、低露点室設備の受注拡大を図ってまいります。
④ 人追従空調システム
当社では、工場や倉庫における作業員向けスポット空調技術として、人追従空調システムの開発を実施いたしました。この技術は当社の開発技術のPRを通じて顧客ニーズを把握し、開発技術を発展させたものとなります。
当連結会計年度は、試作機の作成、検証を実施致しました。これは、対象エリア内(おおむね5m×5m程度)の人の動きをセンサー(色識別カメラ)でとらえ、可動式ノズル(X,Yの2軸)で対象者へスポット気流を供給し続けるシステムとなっております。これにより、大空間において局所空調を効果的に行うことが可能となり、空調エネルギーを削減することができます。同システムは、
1) センサーカメラと吹出口が一体となっており、ユニットして単体で設置可能
2) 100V電源があれば設置可能
3) 低消費電力・低圧損により省エネ
等の特徴を有しております。この特徴を生かし、工場組立工程、倉庫、搬出入ヤード、厩舎など空間面積に対して人が少ない場所、作業場所が移動する場所、空間を囲うことが難しい場所等への局所空調設備として導入を目指しております。現在量産化に向け、長期動作試験や先行導入による機能確認などを実施しております。これら省エネルギー技術を社会に提供することで脱炭素社会の実現へ貢献してまいります。
当連結会計年度における研究開発費の金額は
① IoT・AIを活用した塗装工場の監視解析システム「i-Navistar」の開発
最近のIT技術の流れの中において、当社はIoT・AIを活用した塗装工場全体における監視解析システム「i-Navistar」を主として自動車塗装ライン向けに展開しております。「i-Navistar」は、主に稼働解析システムと品質解析システムの2つより構成されています。稼働解析システムは、設備の運転状態を各種センサーにより常時監視し、測定値の傾向より故障予測をすることができるので、効率のよい保全作業を可能にし、設備稼働率の向上に繋がります。品質解析システムは、品質不良の要因を、収集された稼働・品質データをもとに解析することにより、要因特定までの時間を大幅に短縮する事ができます。また同時に熟練技術者への依存度を軽減することも可能になります。本システムの積極的なPR活動により、既に自動車塗装ラインへの納入実績に加え、更に新たな受注も決定しております。
また「i-Navistar」は3つ目の機能として、『無駄なエネルギーの見える化、シミュレーター機能を使った最適エネルギー管理』を目的とした塗装工場のエネルギーマネージメントシステム(EMS)を加えるべく開発を進めています。世界各地でのカーボンニュートラルへの取り組みが活発になるほど、EMSへの要求もさらに高まっていくものと予想しております。
今後も、お客様の要求に応えられるシステムを提供し続ける事ができるように、「i-Navistar」の継続的な進化を続けて、受注拡大を図ってまいります。
② 少風量ブース「i-LAVB」の開発
当社の主力設備である塗装ブース設備稼働によるCO₂排出量は、自動車塗装工場全体で排出されるCO₂のおよそ50%を占めております。近年高まっている地球環境負荷低減へ貢献できる技術としてブース給気量を削減し、同時にCO₂排出量削減可能な少風量ブース「i-LAVB」を開発しました。
従来のブースでは、上部の天井全面から均一なダウンフローを給気することによりブース内のクリーンな環境と安定した塗装品質を確保しています。少風量ブース「i-LAVB」は、ブース天井部に配置した半円ダクトからのコントロールされた局所給気によってより少ない風量で従来塗装ブースと同等の塗装環境を作り出すことを可能としました。
ブース各部位の気流を機能別に再考し、必要な機能に絞り込んだ気流(車体廻りの塗料ミストを速やかに除去するブースセンター気流と壁汚れを防止するブースサイド気流)に最適化することで、給気風量を削減しながら車体の塗装品質を確保する事ができました。この技術を導入することにより、温湿度制御に必要な空調エネルギー及びCO₂削減が可能となります。
現在、多くのお客様に導入の検討を進めていただいております。今後も継続して省エネルギー・環境負荷低減技術での社会への貢献を目標に「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に向けた開発を推進してまいります。
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