課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 会社の経営の基本方針

当社は、「開拓者精神を貫き、社会に貢献しよう。」の社是のもと、北海道寒地農業の振興と国内甘味資源自給率確保の社会的使命を企業理念として掲げ、安全で高品質の砂糖の安定的供給を主たる目標に事業を遂行しております。
 当社グループを取り巻く環境は、農業従事者の高齢化や後継者不足による離農等を受けたてん菜耕作面積の減少、消費者の低甘味嗜好や砂糖に代わる安価な甘味料の増加等の影響により減少傾向にあった砂糖消費量が、新型コロナウイルス感染症の影響によりさらに著しく落ち込み、労働力不足やライフスタイルの変化等を受け、大変厳しい状況となっております。
 今後につきましては、主力製品である砂糖の深刻な消費低迷に直面しており、また、ウクライナ情勢等の影響によるエネルギーコストの高騰により、砂糖を始めとした製品の製造コストが著しく増加することが見込まれており、当社グループを取り巻く環境は、引き続き厳しい状況が続くものと予想されます。

 

このような状況のもと、当社は2019年に創立100周年を迎え、さらなる100年に向けて歩み始めたところであり、2021年3月期から3年間の「第1次日甜グループ中期経営計画」を策定いたしました。子会社も含めた当社グループ全体で、社是のもと、てん菜・てん菜糖事業の継続、さらに各事業を成長させ、砂糖事業・不動産事業に続く第2の柱を構築し、社会的責務を果たしてまいります。
 中期経営計画で定める経営方針を、以下のとおりとしております。

・「新しい価値の創造」と「チャレンジ」で課題に取り組む

・SDGsを踏まえ、持続可能な社会の実現を目指す

・持続的なてん菜・てん菜糖事業を構築する

・当社独自の技術を生かし、事業を成長させ、第2の柱を構築する

 

セグメントごとの施策・注力事項は以下のとおりであります。なお、砂糖事業・不動産事業を基盤事業、食品事業・飼料事業・農業資材事業を成長事業(第2の柱)と位置づけております。

<砂糖事業>

・てん菜耕作省力化への取り組み   ・てん菜の工場受入れ設備の大型化による効率化
・省力化・省エネによるコスト削減  ・環境対策・品質向上対策への取り組み
・包装形態を多様化しユーザーによるハンドリングを向上

<食品事業>

・国内唯一のメーカーである優位性を活かした国産ドライイーストの展開
・てん菜糖蜜を活用した「フラクトオリゴ糖」の販売

<飼料事業>

・DFAⅢ(*)を使用した当社独自の機能性飼料の販売拡大と海外市場への模索
・牛用サプリメントのネット販売  (*ミネラル吸収促進効果のあるオリゴ糖)

<農業資材事業>

・海外販売の拡大   ・「省力化」を切り口とした農機具の開発
・中国企業への移植技術指導を実施

<不動産事業>

・各テナントとの友好的な関係を重視しながら、安定収益源として事業継続

 

第1次日甜グループ中期経営計画の2年度目となる2022年3月期は、主に砂糖事業において、販売数量の増加及び値上げにより売上高が増加するなど好調に推移した結果、中期経営計画の目標を達成しております。
 中期経営計画の最終年度となる2023年3月期は、本来であればさらなる利益向上を目指すところですが、新型コロナウイルス感染症による販売面への影響に加え、エネルギーコストの高騰という外部環境の急激な変化に直面し、数値目標の達成が極めて厳しい状況となっております。そのため、中期経営計画の上記の方針を維持しながら、まずは、この危機的状況からの脱却を目指すことといたします。

また、当社グループでは、既にサステナビリティに配慮した研究・製品開発や、CO低減等の環境対策への取り組みを行っておりますが、現在の取り組みをさらに推し進めるべく、当社グループが目指す道標として本年1月に「日甜アグリーン戦略」を掲げることといたしました。
 (「アグリーン」は「アグリカルチャー」と「グリーン」を掛け合わせた造語)
 将来の当社グループの事業の方向性として「てん菜糖業」から「てん菜産業」への飛躍を図り、農業を基盤とした成長事業の展開を掲げております。
 「日甜アグリーン戦略」で諸課題にチャレンジし、持続可能な食料システム構築と新たな価値の創造を目指し、多くの方に支持され続ける企業グループに成長してまいります。

 

「日甜アグリーン戦略」

調達作物・各種作物栽培方針並びに新たな製品開発方針

・栽培作物中CO吸収能力の極めて高い“てん菜”を、引き続き当社事業の核とし、『持続可能なてん菜産業』実現のため、従来からの砂糖製造に加えて、てん菜を原料とした新たな製品・用途開発(健康食材・食品以外の素材開発など)を目指す。

・原料てん菜及び他作物の栽培方法において、減農薬・減肥料・省人省力化(スマート農業)を目指し、生産費を低減する。

・有機農業を視野に入れた製品群・栽培方法を開発・製造し、内外に普及させる。

・大量の炭素を長期間貯蔵する林業事業に当社技術(紙筒移植ほか)を活用し内外に普及させる。

・牛の健康に良い飼料を開発・製造し、牛の長命連産を目指す。

・メタン発生量を減少する家畜用飼料を開発・製造することを目指す。

生産から流通までの全工程における取り組み方針

・原料輸送・貯蔵・製造・製品保管・製品輸送・販売において、効率化を目指し、省エネ・省人省力・省資材化を図り、製造費・販売費を低減する。

カーボンニュートラル・環境負荷低減の取り組み方針

・各工場・各事業所・不動産事業等で使用する電力・燃料の脱炭素化を目指す。

・各工場・各事業所から排出される産業副産物の有価物利用を促進(資源の循環利用)。

・社用車、社用農業機械などの使用燃料の脱炭素化を目指す。

・当社製品に使用される化石燃料由来のプラスチック・ビニールなどの包装・容器資材類について、削減並びに代替資材類の使用を目指す。

 

(2) 目標とする経営指標

当社の主業である砂糖事業の収益は、原料であるてん菜の収量・糖分・品質、及び国内糖価の指標である砂糖の国際価格の変動などの様々な要因から年度により大きく変動するため、一層のコストダウンの推進を図り、外的変動要因を受けにくい経営基盤を目指します。また、より付加価値の高い事業への多角化等により収益の向上を図ります。

当社グループは、安定的な配当の継続及び企業体質の強化・充実を図るため経常利益の確保を目指しており、売上高経常利益率を経営指標として設定し、売上高経常利益率4.0%を目標としております。

 

(3) 対処すべき課題及び中長期的な経営戦略

砂糖業界におきましては、消費者の低甘味嗜好や安価な加糖調製品・異性化糖・高甘味度人工甘味料の増加等により消費減少が続くなか、2020年以降はコロナ禍における経済活動抑制の影響が重なり、深刻な消費低迷に直面しております。2022年3月に農林水産省が公表した「砂糖及び異性化糖の需給見通し」は、2021年10月から2022年9月までの1年間の分蜜糖消費量を172万トンと見込み、コロナ禍で10万トン減少した前年同時期からさらに2万トン減少しております。
 2021年産の原料てん菜による製糖作業は、10月上旬に開始いたしました。昨年の原料てん菜は、生育前半に少雨が続き干ばつの影響が心配されましたが、その後の降雨で回復し、高品質原料を確保することができました。また、製糖資材使用の抑制を進めるなど、製造コストの低減を図りました。
 一方、2022年度に入り、コロナ禍における砂糖消費の低迷に加え、ウクライナ情勢等の影響によるエネルギーコストの高騰により、砂糖を始めとした製品の製造コストが著しく増加することが見込まれるため、当社グループの経営環境は、非常に厳しい状況となっております。
 当社グループは、このような著しい外部環境の変化に適応する経営戦略の再構築が急務と捉えており、今まで以上のコスト削減への努力に加え、適正価格での販売を含めた事業基盤の強化に取り組んでまいります。

 

当社グループといたしましては、厳しい企業環境に対処するため、引き続き、競争力の強化を中長期的な重点課題として取り組んでまいります。
〔品質競争力の強化〕
 品質管理の徹底を図り、安全で高品質の製品を生産し、品質面での優位性を確保します。
〔コスト競争力の強化〕
 原材料・需要品調達段階でのコスト削減、製造工程でのコスト削減、効率的投資による省エネ・合理化、流通体制の効率化等により、コスト削減を推し進めます。
〔営業競争力の強化〕
 各営業所を通じたユーザーサポートを一層きめ細やかに展開し、競争力アップを図ります。また、ユーザーニーズの多様化、流通形態の変化などに対応できる態勢作りを進めます。
〔企業競争力の強化〕
 長年の研究により培われたバイオ技術を具体化し、新規事業の開発と既存事業の裾野拡大を図ってまいります。

 

「会社の経営の基本方針」に記載のとおり、当社グループは2021年3月期から3年間の「第1次日甜グループ中期経営計画」を策定、計画の最終年度となる2023年3月期の経常利益27億円を目標とし、売上高経常利益率4.6%の達成を目指すこととしております。
 第1次日甜グループ中期経営計画(2021年3月期~2023年3月期)方針
 「省力化、効率化、環境・品質対策を通じて、砂糖事業のコスト低減を目指す」
 「第2の柱として、食品事業、飼料事業、農業資材事業を成長事業と位置づける」

また、2021年1月に当社はDM三井製糖ホールディングス㈱と資本業務提携契約を締結いたしました。
 資本業務提携の目的の一つに効率的生産体制の構築がありますが、現在、DM三井製糖ホールディングス㈱の子会社である北海道糖業㈱との間で、同社本別製糖所からの受託生産(2023年10月より開始予定)に向けて協議を進めるとともに、当社芽室製糖所において受託生産に必要な設備投資を計画しております。

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