(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症により厳しい状況が続いたものの、ワクチン接種の進展や感染防止策の実施等により経済回復の動きが徐々に広がりました。しかしながら、2022年の年明け以降、オミクロン株の感染拡大によって、コロナ禍収束による経済正常化への見通しが不透明な状況が続きました。また、2022年2月にはロシアによるウクライナ侵攻という地政学的リスクも顕在化し、資源価格の高騰やサプライチェーンを通じた影響について注視が必要な状況となりました。その一方で、3月の生産工程の有効求人倍率は1.92倍まで上昇する等、製造業の雇用情勢としては求人等の動きに底堅さが見られました。
当社グループを取り巻く環境といたしましては、自動車関連分野では、ASEAN諸国でのロックダウンを起因とする部材不足や世界的な半導体不足によって、大手自動車メーカーにおいて一部で生産調整が生じているものの、依然として完成車需要は強く、今後の生産正常化も想定されることから、人材需要は堅調に推移しました。また、半導体・電子部品関連分野では、自動車向け半導体需要の増加や、次世代通信規格「5G」関連需要による半導体製造装置やデバイス等の生産拡大が進むなか、さらに世界的な半導体不足が拍車をかけて半導体需給がひっ迫していることから、半導体製造装置メーカーや半導体メーカーでは急ピッチで生産能力を引き上げる動きが見られるなど人材需要は活況となりました。
このような状況の下、当社グループは2020年5月20日に発表した第4次中期経営計画(2021年3月期~2025年3月期)の2年目として、「より多くのはたらく人に応えられるキャリアプラットフォームへ」の中期経営目標のもと、「大手製造業向け人材ワンストップ戦略」、「地域プラットフォーム戦略」及び「ソリューション戦略」を成長戦略として推し進めております。中核事業領域である大手製造業向け人材派遣において、製造エンジニア育成を強化することでその領域を拡大し、顧客工場内の全工程でのシェアをさらに高めていくこと、併せて、地域の有力企業との業務提携やM&Aによって地域の職場での安定的な雇用環境を整備し、地域を網羅したキャリアプラットフォームの構築を目指しております。さらに、大手企業グループ向けの人材流動化支援を行い、事業基盤のさらなる強化・拡大に取り組んでおります。
当連結会計年度では、前連結会計年度後半から急回復している人材需要へ対応するため、積極的な採用活動に取り組んだ結果、国内事業において17,662名の採用を実現しました。さらに、第4次中期経営計画に基づく地域プラットフォーム戦略の推進を目的として、2021年5月、愛知県を中心とする地域の派遣事業者である、株式会社プログレスの全株式を所有する株式会社プログレスグループ(新商号 UTプログレス株式会社)及び株式会社スリーエム中部、株式会社スリーエム東海、株式会社スリーエムスタッフの全株式を所有する株式会社スリーエム(新商号 UTスリーエム株式会社)の全株式を取得し、連結子会社化いたしました。また、同中期経営計画に基づくソリューション戦略を推進するため、2021年10月に富士通グループの人材派遣会社である富士通エフサス・クリエ株式会社(新商号 UT エフサス・クリエ株式会社)を新規連結いたしました。これらの取り組みの結果、国内技術職社員数は前連結会計年度末比で7,900名純増し過去最高となり、売上高を大きく増加させることができました。一方で利益面においては、売上成長を加速させるために採用活動を強化したことから採用関連費が一時的に増加し、減益となりました。また、2023年3月期以降の利益成長に向け、中長期的に筋肉質で強固な事業基盤を形成するため、2022年4月のグループ採用データベースの統合、大規模なグループ内組織再編等による業務効率化及びコスト効率化等の取り組みを着実に進めました。
a.財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ11,440百万円増加し、64,107百万円となりました。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ10,406百万円増加し、42,875百万円となりました。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ1,034百万円増加し、21,232百万円となりました。
b.経営成績
当連結会計年度は売上高156,769百万円(前年同期115,131百万円、36.2%の増収)、営業利益6,257百万円(前年同期7,163百万円、12.6%の減益)、経常利益5,954百万円(前年同期7,191百万円、17.2%の減益)、親会社株主に帰属する当期純利益3,140百万円(前年同期4,299百万円、27.0%の減益)、技術職社員数は45,386名(前年同期37,012名、8,374名の増加)となりました。
セグメントごとの経営成績は以下のとおりであります。
(マニュファクチャリング事業)
マニュファクチャリング事業では、大手自動車メーカーにおける一部生産調整の影響が継続し、挽回生産に遅れが生じている状況であるものの、今後の生産正常化が想定されることや、半導体・電子部品分野における引き続きの旺盛な人材需要から、受注獲得状況は好調に推移しました。このような顧客企業の強い人材需要に早急に応えるため、積極的な採用活動を行ったことにより、技術職社員数を大幅に増加させることができました。また、地域でのさらなるキャリアプラットフォームの深耕、拡大を目指し、愛知県を中心とする地域の派遣事業者2グループ6社を新規に連結子会社といたしました。2021年5月に株式会社プログレスの全株式を所有する株式会社プログレスグループ(新商号 UTプログレス株式会社)及び株式会社スリーエム中部、株式会社スリーエム東海、株式会社スリーエムスタッフの全株式を所有する株式会社スリーエム(新商号 UTスリーエム株式会社)の全株式を取得しております。これらに伴い、売上高は伸長いたしました。一方で費用面においては、戦略的な採用関連費の投下と新規連結に伴う人件費の増加により、販売費及び一般管理費が増加いたしました。
以上の結果、売上高104,984百万円(前年同期69,252百万円、51.6%の増収)、セグメント利益2,628百万円(前年同期3,437百万円、23.5%の減益)、技術職社員数36,844名(前年同期29,956名、6,888名の増加)となりました。このうち、前第4四半期連結会計期間より新規に連結子会社といたしましたGreen Speed Joint Stock Company、Green Speed Co., Ltd.及びHoang Nhan Company Limitedを除く国内の結果は、売上高97,803百万円(前年同期67,503百万円、44.9%の増収)、セグメント利益2,637百万円(前年同期3,385百万円、22.1%の減益)、技術職社員数23,094名(前年同期16,680名、6,414名の増加)となりました。
(ソリューション事業)
ソリューション事業では、世界的なEV(電気自動車)生産の拡大に伴い車載用電池の製造にかかる稼働が増加したことに加え、2021年7月より、大手企業グループのインハウスソリューション®(正社員転籍型請負)による請負案件が新たに立ち上がったこと、及び2021年10月に富士通グループの人材派遣会社である富士通エフサス・クリエ株式会社(新商号 UT エフサス・クリエ株式会社)を新規連結したこと等により技術職社員数が増加し、売上高が伸長しました。一方で費用面においては、一部で半導体不足や部材調達不足の影響を受けたものの、人材需要の堅調な推移に伴い、技術職社員の採用を強化したことにより採用関連費が増加いたしました。
以上の結果、売上高35,035百万円(前年同期29,717百万円、17.9%の増収)、セグメント利益1,168百万円(前年同期1,309百万円、10.8%の減益)、技術職社員数5,852名(前年同期4,469名、1,383名の増加)となりました。
(エンジニアリング事業)
エンジニアリング事業では、大手半導体製造装置メーカーや半導体メーカーを中心とするフィールドエンジニアの需要が拡大いたしました。前事業年度において新型コロナウイルス感染症の感染拡大の状況下で運用が困難であった製造オペレータからエンジニアへのキャリアチェンジを支援する社内制度「One UT」の再開に加えて、半導体製造装置エンジニアを育成するための専門研修施設「テクノロジー能力開発センター」の4拠点目を大阪に開所し、半導体製造装置エンジニアの育成・輩出力を強化いたしました。また、建設技術者分野における需要の高まりを受け、技術職社員の採用と迅速な配属に注力したことにより売上高が伸長しました。一方で費用面においては、上述の人材需要に対応するために、技術職社員の採用を強化したことにより採用関連費が増加いたしました。
以上の結果、売上高16,792百万円(前年同期16,218百万円、3.5%の増収)、セグメント利益2,485百万円(前年同期2,431百万円、2.2%の増益)、技術職社員数2,690名(前年同期2,587名、103名の増加)となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、25,827百万円(前連結会計年度末比560百万円増)となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの増減要因は、以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は、2,279百万円(前年同期は6,654百万円の獲得)となりました。これは主に、法人税等の支払額2,815百万円が計上されたものの、税金等調整前当期純利益5,235百万円が計上されたことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、6,300百万円(前年同期は2,413百万円の使用)となりました。これは主に、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出2,955百万円、無形固定資産の取得による支出1,445百万円及び関係会社株式の取得による支出1,415百万円が計上されたことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果獲得した資金は、4,554百万円(前年同期は2,613百万円の獲得)となりました。これは主に、長期借入れによる収入10,630百万円が計上されたものの、長期借入金の返済による支出3,301百万円及び配当金の支払額2,665百万円が計上されたことによるものであります。
当社グループは生産活動を行っていないため、記載を省略しております。
当社グループが行うマニュファクチャリング事業、ソリューション事業及びエンジニアリング事業においては、受注時の業務量をその後の顧客の要望に合わせて変更することが多いため、記載を省略しております。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、10%未満のため記載を省略しております。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
a.財政状態の分析
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は49,748百万円となり、前連結会計年度末に比べ5,768百万円増加いたしました。これは主に、現金及び預金が560百万円及び売掛金が4,669百万円増加したことによるものであります。固定資産は14,359百万円となり、前連結会計年度末に比べ5,672百万円増加いたしました。これは主にM&Aに伴い、のれんが1,726百万円及びその他無形固定資産が848百万円、当社グループのシステム構築への投資に伴い、ソフトウエア仮勘定が1,518百万円増加したことによるものであります。
この結果、総資産は64,107百万円となり、前連結会計年度末に比べ11,440百万円増加いたしました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は25,467百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,903百万円増加いたしました。これは主に、支払手形及び買掛金が2,236百万円減少したものの、未払費用が1,999百万円、1年内返済予定の長期借入金が1,320百万円及び未払消費税等が1,102百万円増加したことによるものであります。固定負債は17,408百万円となり、前連結会計年度末に比べ7,503百万円増加いたしました。これは主に、長期借入金が6,826百万円増加したことによるものであります。
この結果、負債合計は42,875百万円となり、前連結会計年度末に比べ10,406百万円増加いたしました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は21,232百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,034百万円増加いたしました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益3,140百万円計上及び非支配株主持分が375百万円増加したものの、利益剰余金による配当を2,663百万円行ったことによるものであります。
この結果、自己資本比率は30.8%(前連結会計年度末は36.2%)となりました。
b.経営成績の分析
当連結会計年度は、前連結会計年度後半から急回復している人材需要へ対応するため、戦略的に採用活動を強化し、シェア拡大に注力しました。さらに、第4次中期経営計画に基づく地域プラットフォーム戦略の推進を目的として、地域の有力な派遣事業者2グループ6社を連結子会社化しました。また、同中期経営計画に基づくソリューション戦略を推進するため、富士通グループの人材派遣会社を連結子会社化しました。
これらの取り組みの結果、国内技術職社員数は前連結会計年度末から7,900名純増の、31,636名と過去最高を大幅に更新し、売上高を大きく引き上げることができました。一方、で利益面においては、シェア拡大、売上成長を加速させるために採用活動を強化したことから採用関連費が一時的に増加したものの、2023年3月期以降の利益成長に向け、グループ採用データベースの統合や大規模なグループ内組織再編等による業務効率化及びコスト効率化等の取り組みを着実に進めたことにより、第4次中期経営計画の最終年度における業績目標を達成するための成長基盤は整ったと考えます。
これらの結果、当連結会計年度における経営成績は、売上高156,769百万円(前年同期比36.2%増)、営業利益6,257百万円(前年同期比12.6%減)、経常利益5,954百万円(前年同期比17.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益3,140百万円(前年同期比27.0%減)となりました。
c.経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループの主幹事業であるマニュファクチャリング事業・ソリューション事業・エンジニアリング事業が属する製造業界におきましては、為替変動や国内外の景気変動の影響等により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
そのほか、経営成績に重要な影響を与える可能性のある要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のものがあります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.キャッシュ・フローの状況
キャッシュ・フローの状況は、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のものがあります。
b.資本の財源及び資金の流動性
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、売上債権の回収サイクルと仕入債務の支払いサイクルのギャップ及び営業活動上において必要な人件費や手数料等の販売費及び一般管理費であります。設備投資資金としては、主に自社利用のソフトウエア等への投資であります。
所要資金は、運転資金需要が中心であるため、自己資金をベースとしつつも、M&Aを含む成長局面の需要に対しては金融機関からの借入を適時組み合わせ、必要資金を賄っております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産、負債、収益及び費用の報告金額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
(のれんの回収可能性)
当社グループは、のれんについて、20年以内の合理的な年数で定額法により償却を行っております。のれんの回収可能性については子会社の業績や事業計画等を基に検討しており、将来において当初想定した収益等が見込めなくなり、減損の必要性を認識した場合には、翌連結会計年度においてのれんの減損処理を行う可能性があります。
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