文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
当社グループは、グループミッションである「はたらく力で、イキイキをつくる。」を実現するため、「はたらく人」と「企業」双方を顧客として捉える「ツインカスタマー戦略」を推進し、事業展開しております。
2030年に向けた長期経営ビジョンとして「これからのはたらき方のプラットフォームになる」を掲げ、2025年3月期をターゲットとする第4次中期経営計画では「より多くのはたらく人に応えられるキャリアプラットフォームへ」を中期経営目標として、持続的な企業価値の向上を目指しております。
当社グループは、成長と安定のバランスをとりながら持続的に企業価値を向上させることを経営の目標としております。経営指標としては、成長性を評価する観点から「EBITDA(営業利益に減価償却費、のれん償却額及び株式報酬費用を加算した額の金額)成長率」、投資と財務安定性を確保するために「グロスDEレシオ」としております。
第4次中期経営計画においては、EBITDA成長率は2021年3月期からの年平均成長率30%以上、グロスDEレシオは2025年3月末で1.0以下を目標として、高い成長率と財務の安定性の両立を目指してまいります。
また、当社グループは、株主へ還元することを重視しており、将来の事業展開や経営環境の変化等を勘案のうえ、「総還元性向30%以上」を基本方針として継続的な株主還元に努めてまいります。
(第4次中期経営計画(2021年3月期~2025年3月期)の前提)
わが国の生産年齢人口(15歳~64歳)は、少子高齢化の進行によって1995年の8,176万人をピークに減少に転じ、平成27年国勢調査によれば2015年には7,629万人まで減少しております。人口動態のトレンドは大きく変わることはなく、2030年には約7,000万人程度まで減少することが予測されています(国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年4月)」(出生中位・死亡中位推計))。このような生産年齢人口の減少に対応するため、政府では、はたらく人の個々の事情に応じた多様な働き方ができる社会に向けた働き方改革が進められています。
このような状況下において、当社グループは、2020年3月期に終了した第3次中期経営計画において、「日本全土に仕事をつくる」をビジョンとして掲げ、主な事業領域として製造業の中でも全国の大規模工場に特化することで、製造オペレータからエンジニアへのキャリアアップを可能とするキャリアプラットフォームを構築し、技術職社員数は計画開始前の10,926名から19,634名へと大幅に増加、売上高も44,050百万円から101,103百万円と事業規模を大幅に拡大することができました。
一方、事業モデルの特性上、対象となるはたらく人は男性の若年層が中心となり、それ以外の働く意欲を持った方々への機会提供は十分とは言えませんでした。
また、新型コロナウイルス感染拡大の影響は、2020年1月頃の発生以降、長期化の様相を呈しています。感染拡大を防ぐ措置としての人の移動制限等から2020年春に「新しい生活様式」が示され、テレワークを含む働くスタイルの多様化は、今後も不可逆的なものとして継続し、より一層強まることも想定されます。従来は全国の職場での転勤を伴うキャリアアップが志向されていたはたらく人の価値観も今後は大きく変化する可能性があります。
(第4次中期経営計画の概要)
これらの状況を踏まえ、当社グループでは2020年5月に「より多くのはたらく人に応えられるキャリアプラットフォームへ」を中期経営目標とする第4次中期経営計画を策定いたしました。
① モノづくり人材の育成と供給
第3次中期経営計画において確立した業界トップの製造業向け人材サービスをさらに強化、拡充し、中核事業としての基盤を盤石にします。具体的には、採用と育成という当社グループの中核機能にHRTech等の技術を取り入れ、機能の強化と効率化を追求することで、企業に対するサービス品質を高め、キャリアを重視する働き方に応え、はたらく人のキャリア形成を効果的に促進することで、「キャリアアップを意識してイキイキ働ける環境づくり」を目指します。
② 地域密着プラットフォームの拡充
はたらく人のライフステージによっては、キャリア形成よりも安定を重視する時期があります。また、新型コロナウイルスの影響によって地元志向の求職者が増加することも想定されます。これらに対応するため、これまでの「キャリア形成の場」としてのキャリアプラットフォームに「安定した生活基盤」としての機能を拡充し、その役割をさらに拡大していきます。
そのため、地域毎に異なる顧客ニーズに迅速に対応できるよう、地域の有力企業との業務提携やM&Aを推進するとともに、既存地域オフィスが営業から採用までを独自の判断で行えるように再編すると同時に効率性を高めるため、オフィス共通のITインフラを整備します。
また、対象となる企業属性を従来のような製造領域だけに限定せず、地域における職場数の拡大を図り、はたらく人の雇用を安定化させることで、「地元でイキイキ働ける環境づくり」を目指します。
③ 外国人がイキイキ働ける環境整備
わが国では、少子高齢化によって生産年齢人口の減少が続いており、将来的にもこのトレンドが継続するものと予測されております。改正入国管理法により、外国人技能実習生の活用範囲が拡がるとともに、習熟した人材が日本で働くことが可能となりました。同時に、新興国では経済成長に伴い製造業の発展、拡大が見込まれます。日本で身につけた技術を生かして母国で働きたい人のニーズや新興国で製造拠点を作る企業のニーズの拡大を想定し、日本国内と海外新興国における人材の育成と橋渡しとなることで、「日本で外国人がイキイキ働ける環境づくり」と「日本で学んだ外国人が母国でイキイキ働ける環境づくり」の両立を目指します。
④ 高スキルエンジニア領域の開拓
企業が生産性を向上させるには、テクノロジーの活用が欠かせません。また、ソフトウエアやネットワークとモノづくりが一体となった製品開発の増加により、領域横断での知識・経験等高度な技術を持った人材がより多く必要となっていきます。
当社グループは、この領域に対し、実績のある大手企業との提携やM&Aを活用して規模拡大と機能強化を図ります。技術の領域で働き続けたいエンジニアや高度なスキルを身につけたい人材等のニーズに応えることで、「技術を追求しながらイキイキ働ける環境づくり」を目指します。
⑤ 人材流動化支援の推進
働く意欲がある誰もが年齢にかかわりなく、その能力を十分に発揮できるよう改正された高齢者雇用安定法では、企業に対して定年後も就労を希望する高齢者の再雇用を求めています。当社グループでは、特に従業員数が多い大企業向けに、合弁会社の設立等により、継続雇用を支援し、高齢者の豊富な経験を様々な領域で生かすことができる職場の開拓を目指します。
また、事業環境や経営戦略の変化に伴う事業再編によって発生する中核製品以外の製造事業・事務派遣事業等のノンコア事業のオペレーションやそこではたらく人材を当社グループが譲り受ける人材ソリューションの提案を行います。主に人材関連の事業を当社グループ内に取り込むことにより、間接コストを削減する等、経営効率の改善を図ります。
当社グループが提供するキャリアプラットフォームに参加することにより、はたらく人にとってはこれまでのキャリアの一貫性を保つことができると同時に、事業譲渡した企業では中核事業に経営資源を集中することで新たな成長戦略に取り組むことができます。
このような大企業特有の人材活用に関する経営課題に対して最適なソリューションを提供し、人材の流動性を高めることで、「経験豊富な人材がイキイキ働ける環境づくり」を目指します。
⑥ 新たな職域での事業基盤の構築
当社グループは、製造業の生産工程を中心とした人材派遣事業が中心であることから、派遣先企業で働く技術職社員の属性は若年層の男性中心となっております。今後は、女性を含む多様なはたらく人のニーズに応えるため、生産工程以外の新たな職場領域の開拓を計画しております。しかし、これらの職場領域を事業領域とする事業者が多数存在する市場に新規参入して規模を拡大することは困難なことが想定されることから、当社独自の事業モデルであるソリューション事業を活用して規模の拡大を図ってまいります。
これまでに大企業向けの人材流動化支援により譲受けた事務派遣事業やBPO事業を基盤として、新たな事業基盤を構築することで「女性を含む多様な人材がイキイキ働ける環境づくり」を目指します。
(第4次中期経営計画の進捗)
当社グループは、第4次中期経営計画の2年目となる当連結会計年度において、売上高とシェアの拡大に注力した結果、当該計画の売上高目標を1年前倒しで実現する等、好調な進捗であることから、2022年5月に2023年3月期から最終年度である2025年3月期の売上高・EBITDA目標を修正しております。
(4) 気候変動への対応
当社グループでは、2021年4月に策定した「サステナビリティ基本方針」のもと、「はたらく人の可能性を広げる」「事業基盤の継続的な強化」「公正で透明性の高い組織統制」「環境への適切な配慮」を重点課題に据えております。とりわけ気候変動に関連して大規模な自然災害が発生した場合には、顧客企業等の製造設備の被害等により生産活動が停止する可能性があり、サプライチェーンに関わる物理的なリスクが高まります。このように気候変動をはじめとする世界規模で顕在化している環境課題に対しては、2021年4月に策定した「環境方針」のもと、上述の重点課題「環境への適切な配慮」を踏まえた環境マネジメント体制の構築を進めております。さらに、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)が提唱するフレームワークに則り、「ガバナンス」「リスク管理」「戦略」「指標と目標」の4つの項目について、推奨される情報を継続的に開示してまいります。
全ての従業員がこれらの重要性を理解し、当社グループの持続的成長の実現に向けて、当社グループの価値の源泉である“はたらく人の成長”を支えるための事業基盤と組織統制体制の一層の強化に努めてまいります。
① ガバナンス
a.取締役会が気候関連課題について報告を受けるプロセス、議題として取り上げる頻度、監視対象
UTグループでは全社でのリスクマネジメント体制において気候変動を含むリスクを管理・分析し、その分析内容を経営会議及び取締役会に年1回以上報告する体制を構築しております。
b.経営者の気候関連課題に対する責任、報告を受けるプロセス(委員会等)、モニタリング方法
気候関連課題に対する最高責任権限を有する代表取締役社長は、経営会議及び取締役会においてサステナビリティ推進を行うサステナビリティ事務局を設置し、気候変動を含むサステナビリティ課題に関する取り組みを管理・推進しています。
② リスク管理
a.気候関連リスクの特定・評価プロセスの詳細、重要性の決定方法
UTグループでは全社でのリスクマネジメントプロセスの一環として、網羅的なリスクアセスメントを定期的に行っており、その中で気候変動に関するリスクを抽出しております。その後、関連部署へインタビューを経て発生頻度、影響度などにより重要性を決定しております。
b.重要な気候関連リスクの管理プロセスの詳細、優先順位付けの方法
気候関連リスクを含む重要なリスクは、リスクモニタリング事務局がその対策状況のモニタリングやリスク情報を経営会議及び取締役会へ報告する体制としております。
c.全社リスク管理の仕組みへの統合状況
UTグループでは気候変動を含む重要なリスクは定期的に行われるリスクアセスメントを経て、経営会議で管理され、その状況は取締役会によってモニタリングされております。
③ 戦略
④指標と目標
a.気候関連リスク・機会の管理に用いる指標
UTグループではオフィスで使用する紙の使用量について抑制するため、売上高に対する紙使用率(2020年3月期実績を100とする指数)を指標として設定しております。
b.実績
※ 2020年3月期を100とした指数
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
(1)~(3)に記載の長期経営ビジョン及び第4次中期経営計画を実行し、持続的な企業価値の向上を目指す上で、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は、以下のとおりであります。
① 景気変動の影響を受けにくい事業基盤の構築
当社グループの事業は、製造工場の生産現場を中心とした職種への人材派遣や製造請負の占める割合が高いため、景気変動、自然災害及び感染症等の事象に影響される派遣先企業の生産調整によって、人材需要低下等の影響を受けやすい構造にあります。従来は、半導体・電子部品分野の割合が高かったことから、シリコンサイクルの影響を低減するため、自動車関連分野等、異なる製品分野への分散を図ってまいりました。分散化により、個別の製品分野に対する生産変動への耐性は高まったものの、経済全体の減速に伴いすべての製品分野において生産量の減少が生じた際には、依然として解約リスクをゼロにすることは難しいと認識しています。
そのため、大幅な景気後退が生じた際の解約防止のための顧客工場内シェアの拡大や大企業を中心とした構造改革需要を取り込むソリューション事業の強化を図っております。また、製造業の中でも景気変動の影響を受けにくい上流工程の設計・開発領域等、生産工程以外の職種開拓や各地域の職場開拓による地域プラットフォームの確立によって、景気変動の影響を受けにくい事業基盤を構築してまいります。
② 恒常的な欠員確保
当社グループの事業は、派遣先企業で働く派遣労働者を当社グループで正社員として雇用することで、はたらく人の雇用の安定化と企業へのフレキシビリティの提供を両立させております。この事業モデルを機能させるためには、ある職場で人員が余剰となった際に、異なる職場への配置転換を迅速に行わなければなりません。そのため、全国各地の職場において、欠員(受注残)を恒常的に確保しておくための活動が必要となります。
当社グループでは、人材管理とともに顧客への提案活動を行う管理者を顧客毎に配置して欠員の確保を行っております。また、事業部毎に設置した営業組織により、事業会社を横断したサービス提案や新規顧客開拓等の活動を通じた欠員の確保を行っております。
③ 安定的な採用体制の構築
わが国では、少子高齢化によって生産年齢人口の減少が続いており、将来的にもこのトレンドが継続するものと予測されております。当社グループの技術職社員の大多数が若年層であり、中長期的にはこの影響を大きく受けること から、人材採用が困難になる可能性があります。
このような環境の中、当社グループは人材の安定的な採用のため、求人広告をはじめとする様々な採用媒体の活用や当社グループ独自の求人サイトの構築、全国の拠点における面接担当者のスキルの標準化等により、採用効率を高め、安定的に人材を採用できるための体制を構築してまいります。
当社グループは、持続的に高い売上高を達成し、利益成長を続けることを目指しております。それに伴い、経営管理や事業運営を行う人員を育成・確保するとともに、事業規模に応じた組織基盤を確立させることが欠かせません。
このため当社グループでは、これらの経営管理や事業運営を支える人員の確保・育成とともに、柔軟な組織運営やそれを支える業務システムの構築等を重要課題として取り組んでおります。
⑥ コーポレート・ガバナンスと内部統制の継続的な強化
当社グループの持続的な成長と企業価値の向上を実現するためにはコーポレート・ガバナンス体制の強化が重要であ ると認識しております。
当社グループは、的確かつ迅速な意思決定及び業務執行体制とそれを適切に監督・監視する体制の構築を図っております。経営の健全性や透明性を確保する観点から、今後も事業規模に応じたコーポレート・ガバナンス体制の強化を継続的に図ってまいります。また、企業規模の拡大やグループ会社の増加、海外での事業展開等、内部統制の重要度が増してきていることから、グループ全体での内部統制につきましても継続的な強化を図ってまいります。
⑦ M&Aによる事業拡大
当社グループの主力事業である製造業向け人材派遣事業は、業界に先駆けた無期雇用派遣と高い人材供給力や高品質な人材育成・管理体制によって、特に大企業において大きなシェアを獲得しております。一方、地域における職場数や技術者領域や事務領域等の製造工程以外での職種等、当社グループが未だ競争力を発揮できていない領域が あります。これらの今後開拓すべき事業領域では、M&Aが有効な手段であると考えております。
当社グループは、採用・育成プラットフォームや既存事業とのシナジーを考慮した上で、ターゲット企業に対して事業の評価を行い、企業価値の向上に資するM&A戦略を推進してまいります。また、買収後には、グループ全社の経営基盤機能を有する経営基盤部門内に設置したPMI専門組織が、ガバナンス強化を行い早期にグループシナジーが実現できる体制を構築してまいります。
⑧ 業務プロセスの効率化とITによるグループ共通業務基盤の構築
当社グループの各拠点における採用・営業・事務等の業務には、帳票類やプロセスの標準化等、システム導入による 効率化の余地があると認識しております。
当社グループでは、全社横断のプロジェクトチームを設置し、課題の抽出やITによる効率化の可能性の検討を重ね、段階的にシステム導入を進めております。2022年4月には、共通の事業特性を持つ子会社を統合する等、大幅なグループ内組織再編を実施いたしました。第4次中期経営計画の各戦略をより明確な道筋で推進することにより、中長期的に筋肉質で強固な業務基盤を構築してまいります。
⑨ 外国人材の活用促進
わが国では、生産年齢はもとより総人口の減少が続いており、将来的にもこのトレンドは継続するものと予測されております。2019年4月に施行された改正入国管理法では、新たな在留資格が創設される等、外国人を受入れるための法整備が進んでおります。また、当社グループが持続的に成長していく上では、国内だけでなく海外での事業 展開も視野に入れることが必要であると認識しております。
当社グループは、2017年より外国人技能実習生を対象とした労務管理代行事業を開始し、企業が外国人を活用する際に、外国人の権利保護等のコンプライアンスを遵守する体制を構築してまいりました。当社グループは、外国人が活躍できる環境をつくるため、技能実習により技術を身につけた外国人材が特定技能ビザに基づいて日本国内で継続的に働くための就労支援や、企業に対する労務管理の代行事業を推進してまいります。また、母国に帰国したあとにその技術を活かして働くことを支援するために、現地の有力企業との資本・業務提携を通じた人材サービス事業の構築を進め、海外における事業基盤の拡大を図ってまいります。
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