課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1) 経営環境及び当社の経営方針

 当社は、国内での労働力人口の減少等を背景とした、日々刻々と変化する労働市場の中で、中途採用の積極化、女性や高齢者、外国人等の活躍の推進等、人材サービス業界の社会的役割、当社グループの果たすべき役割やその責任は大きいものと捉えております。また、当社は、「人生100年時代」において、世界的に寿命が延びていく中で“はたらく”期間が長くなることから、生涯にわたって様々な仕事をする機会が多くなり、加えて、「テクノロジー、AIの進化」により、あらゆる産業における個人のはたらき方が変化すると想定しております。

 2030年時点の社会を予測しながら、“はたらく”世界の変容を捉え、「人生100年時代」における新しいはたらき方、そして企業や組織の新たな雇用のあり方を提案し続けることで、当社グループビジョン「はたらいて、笑おう。」を実現できる企業を目指してまいります。

 

(2)価値創造ストーリーについて

 グループビジョン「はたらいて、笑おう。」の実現のため、企業活動と社会貢献のサイクルを「2030年に向けた価値創造ストーリー」として設計しました。これまで培ってきた価値創造の源泉を磨き、事業活動の成長につなげてまいります。その結果として、社会的価値と経済的価値の双方を高め、新たな価値の創造を実現します。同時に、国連で採択された持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)達成に貢献してまいります。

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価値創造ストーリーを実現するために、事業活動において3つの重点戦略を策定いたしました。

a.『個人』にフォーカスする

 すべてのはたらく個人のワークエンゲージメント向上に資する取り組みに、優先的に投資を行います。「はたらく個人」の視点から、よりよい仕事、よりよいはたらき方、よりよい人生とはなにかを見つめ、これからの未来を形づくる多様な“はたらく”を創造し、支援していきます。具体的には、ライフステージの変化や適性・能力に合わせたはたらく機会と気づきの提供を行います。また、仕事選びのタイミングだけではなく、はたらく個人の生涯に寄り添い続けるパートナーとして、仕事以外の領域での支援も行います。すべてのライフステージにおいて、継続的に十分な選択肢を得られるよう、学びの機会を提供してまいります。

 

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b.『テクノロジー』を武器にする

 テクノロジーを最大限活用し、デジタルトランスフォーメーションを推進することで、新たなはたらき方や、雇用のあり方を提案してまいります。これまで蓄積された膨大な個人・法人のデータを分析、活用するための基盤整備を行い、人材派遣、人材紹介等の基盤事業においてデジタル化を推進することで、さらに高度化してまいります。また、これまでの提供価値を最新のテクノロジー活用の視点で捉え直すことで、未来の新たな事業を創出してまいります。

 

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c.世界で価値を提供する

 人口減少や少子高齢化に伴う労働力不足等、“はたらく”に関する課題を多く抱える課題先進国である日本から、APAC地域で価値提供できる経営体制を整えます。さらに、その先には、世界の社会課題の解決に貢献し、グループビジョン「はたらいて、笑おう。」を実現します。

 

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 また、当社グループでは、経営理念である「雇用の創造」、「人々の成長」、「社会貢献」に基づき、持続可能な社会を目指して、多様なステークホルダーと連携し、社会課題解決に積極的に取り組んでおります。グループビジョンを実現する過程で、国連が定めるSDGs(持続可能な開発目標)の目標の中から、事業を通じて直接的に関与することができる「質の高い教育をみんなに」「ジェンダー平等を実現しよう」「働きがいも経済成長も」「産業と技術革新の基盤をつくろう」「人や国の不平等をなくそう」の5つのSDGs達成を重点課題として取り組むとともに、17すべてのゴールについて、達成に寄与する人材の成長支援や雇用創出の実現を目指してまいります。

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(3)中期経営計画2023について

a.全体方針

 2030年に向けた、最初の3年間であるグループ中期経営計画2023では、事業の磨き込みと経営基盤の整備による成長に向けた基礎作りを行う3ヶ年と位置付け、「社会的価値の向上」「経済的価値の向上」「SBU体制への移行」「成長領域の特定」「テクノロジーによる事業強化」の5つの全体方針を策定いたしました。全体方針及び進捗は以下のとおりです。

 

・中期経営計画2023の全体方針

社会的価値の向上

・グループビジョン実現に向け、「はたらいて、笑おう。」指標を設定し、向上に資する施策を実行

・ESGを推進し、グループの取り組みを統合レポートで開示

経済的価値の向上

・単年のP/L重視経営から持続的に企業価値の成長を実現する経営へ

・ROIC等を活用した資本収益性の指標を導入し、グループ全体の企業価値向上を推進

SBU体制への移行

・当社の収益を支えるStaffing SBU、Career SBUを一層強化しつつ、Professional Outsourcing SBUを第3の柱として位置付け

・Asia Pacific SBUはマネジメントを一本化。コストシナジーにより収益性を改善

成長領域の特定

・Professional Outsourcing SBUを当社の第3の柱として確立すべく、SBU内のシナジー創出に加えて、積極的にM&A等の投資を実施

・Solution SBUにおいて新規事業の創造を積極的に推進

テクノロジーによる事業強化

・Digital Transformation(DX)への投資による生産性向上・顧客満足の向上

 

・中期経営計画2023の進捗

社会的価値の向上

・2021年9月に統合報告書2021を発刊し、ESG関連の開示を充実化

・2021年9月にジェンダーダイバーシティ委員会、2022年3月にサステナビリティ委員会をそれぞれ新設

経済的価値の向上

・取締役会などにおいて、ROICを踏まえた議論やモニタリングを継続実施

・2022/3期のROICは14.2%と、最低水準として設定した10%を上回って着地

SBU体制への移行

・2021年7月にコーポレートガバナンス委員会を新設し、ガバナンス機能を強化

・これにより迅速に意思決定できるSBU体制においても経営監督機能を確保

成長領域の特定

・Professional Outsourcing SBUにおいて、M&A投資を引き続き模索中

テクノロジーによる事業強化

・2022年2月に「はたらく未来図構想(注)」の中核を担うキャリアマネジメントサービス「PERSOL MIRAIZ」のβ版を提供開始

(注)あらゆる個人が自分らしくはたらき、自らの未来を描くことをサポートする仕組み

 

 

b.財務方針

 企業価値向上に向けて、資本収益性重視の財務方針に転換し、さらに強固かつ機動性の高い財務基盤の構築を目指します。また、株主還元及びキャッシュポジションについても下記のとおり方針を定め、株主還元を強化してまいります。

 

企業価値向上に向けた資本収益性の導入

・企業価値向上の観点から、従来のPLから、資本収益性を重視する方針に転換

・将来的なIFRS導入を見据え、当社のROICは、『のれん償却前税引後営業利益÷投下資本(=有利子負債+自己資本)』で算出

・2023年3月期は、最低基準として10%を上回る水準を設定

将来的なIFRS導入

・海外での買収により導入を延期していたIFRSを2024年3月期を目途に導入予定

・将来的なIFRS開示を踏まえ、のれん償却前当期純利益をベースとした調整後EPSを継続的に開示

株主還元

・調整後EPSの25%を目途とした配当実施を基本とする

・調整後EPSは、のれん償却前当期純利益をベースに、特別損益の影響を除外しているため、比較的安定的な配当水準で推移できる見込み

キャッシュポジション

・適正キャッシュポジションとして、「ネットキャッシュまたはネットデットが連結EBITDAの1倍以内」と定義

・今後、投資が計画通りに進まず、過剰キャッシュとなった場合、または投資を実行した結果、過剰債務状態になった場合の基本方針は以下のとおり

-ネットキャッシュが連結EBITDAの1.0倍を超える場合、自己株式取得等の株主還元強化を検討

-ネットデットが連結EBITDAの1.0倍を超える場合、増資等による資本充実を検討

 

 

c.ガバナンス方針

 2021年3月期以降、事業執行体制及びガバナンス体制を変更しております。事業執行体制については、SBU(Strategic Business Unit)体制とし、事業執行に関する意思決定をSBUに適切に権限委譲することで、執行の迅速化を図るとともに、2021年7月にコーポレートガバナンス委員会を新設し、ガバナンス機能を強化しております。さらに、独立社外取締役比率を原則2分の1以上にすることで、取締役会はモニタリングモデルへ移行したほか、CEOの意思決定を補佐する機関としてHMC(Headquarters Management Committee)の設置に加え、HMCの助言機関として、投資委員会、人事委員会、リスクマネジメント委員会、テクノロジー委員会、ジェンダー・ダイバーシティ委員会(2021年9月新設)、サステナビリティ委員会(2022年3月新設)を設置し、意思決定の迅速化とガバナンスの両立を図ってまいります。

 

d.業績数値目標

 中期経営計画2023の最終年度である2023年3月期には、売上高1兆円、営業利益450億円、親会社株主に帰属する当期純利益268億円の数値目標を掲げておりましたが、当連結会計年度において、売上1兆608億円、営業利益481億円、親会社株主に帰属する当期純利益315億円の業績を実現し、1年前倒しで中期経営計画2023の数値目標を達成いたしました。

 

 

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