事業等のリスク

2【事業等のリスク】

(1) 当社のリスクマネジメント体制

 リスク管理の対応については、当社のリスク管理委員会が中心となってリスクの把握・対応を行っております。同委員会は原則として四半期に1回以上開催し、「亀田製菓グループリスク管理規程」にもとづき、当社およびグループ各社の事業活動を継続するにあたって、経営に対し重大な影響を及ぼすと想定されるリスクの予見と未然防止策の検討を行うとともに、外部専門家を講師とする「危機管理セミナー」を開催し、役職員の危機対応への意識向上にも努めております。万一、係るリスクが現実のものとして顕在化した場合には、直ちに危機対策本部を設置し、「危機管理マニュアル」に定められた手順に沿って迅速に適切な対応と情報開示を行うこととしております。

 また、当グループは、グローバル化等に伴うリスクの高まりに対し健全に牽制する経営体制の構築・社外取締役による高度なモニタリングモデルの実現を図るため、自主判断により、取締役会について取締役の過半数を独立性の高い社外取締役で構成しております。さらに、監査役会設置会社として、監査役の機能を有効に活用しながら経営に対する監査・監視機能の強化を図っております。

 

 

 

(2) 主要な事業等のリスク

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。なお、◎印を付したリスクについては、特に重要なリスクとして認識しております。

 また、以下に記載したリスクは当グループの全てのリスクを網羅したものではなく、これ以外のリスクも存在し、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、文中の記載内容および将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当グループが判断したものであります。

 

リスク

対応策

基幹プロセスリスク

原材料及び商品の安全(◎)

 

・原材料や製造工程のトラブルによる生産活動の停止

・上記に起因した製品の回収や販売の中止など

・品質保証委員会を中心とした品質保証体制の強化

・グループ品質保証担当者会議の開催

・食品安全管理体制構築のための「FSSC22000」(食品安全マネジメントシステムの国際規格)の取得

資金調達

 

・金融市場の不安定化、金利上昇による資金調達コストの増加

・国内金融機関において100億円のコミットメントラインの設定

・一部の海外子会社が利用できる総額25億円のグローバルコミットラインの設定

有形固定資産、無形固定資産

 

・事業環境の変化及び業績低迷による減損損失の発生の可能性

・社内基準に基づく経済合理性の検討

・投資時における厳格なリスク管理

・投資実行後の投資効果について継続的モニタリング

退職給付債務等

 

・計算基礎率の変動による貸借対照表計上額の変動

・退職給付制度の変更による追加負担の発生

・経済、金融動向のモニタリング

・外部研修への参加
・当社監査部による監査体制強化

新会計基準の適用、会計基準の変更および税制改正等

 

・新会計基準の適用、会計基準の変更および税制改正等による、既存会計処理からの変更

・外部研修への参加
・当社監査部による監査体制強化

買収(M&A)等の投資

 

・買収後における偶発債務や未認識債務の発生

・のれん発生による償却費用負担増加

・買収後の業績低迷による減損損失の発生の可能性

・詳細なデューデリジェンスの実施

・当社からの基幹人材の派遣

・当社による、管理・統括・運営面でのサポート

・当社監査部による監査体制強化

 

 

 

 

リスク

対応策

災害事故リスク

情報セキュリティ

 

・災害等によるシステムの作動不能や内部データの消失

・想定外のサイバー攻撃や不正アクセス、コンピュータウイルスの感染等による、社内情報の漏洩、改ざん等

・情報の適切な保存・管理に向けた「文書保存規程」「個人情報保護管理規則」「亀田製菓グループ情報管理規程」「亀田製菓グループ情報システム規程」など各種規程を整備

・情報管理に関する啓発活動の実施

地震・津波・異常気象、大規模な事故(◎)

 

・経営インフラが新潟県下越地方に集中することによる以下事象の発生

-生産拠点、販売拠点の喪失

-生産設備、物流設備、従業員等の安全等の被害

-サプライチェーンの寸断

・当グループが火災等の大規模事故を起こした場合には、上記の影響に加え信用が低下

・「危機管理マニュアル」の導入

・リスク別対応フロー、BCP(事業継続計画)の策定および随時見直し

・従業員安否確認システムの導入および定期的な訓練の実施

・優先度に応じた生産拠点の主要施設の耐震補強の実施

・火災・自然災害等を想定した防災訓練の実施

これらの対策を超えた被害が発生するリスクについても継続して研究を行い、可能な限り被害を最小化し、当グループの業績および財政状態への影響を低減することに努めております。

環境(◎)

 

・移行リスク
・物理リスク

「(3)気候変動への対応とTCFD提言に沿った情報開示」をご参照ください。

外的リスク

原材料の調達(◎)

 

・主な原料は農産物であり、気候、作柄、相場などによって、調達量や調達価格に影響

・原材料全般における、需給動向や原油価格、海上コンテナの変動などが調達価格に影響

・原材料の品種や産地などの分散調達による安定した数量の確保と特定の調達先への集中回避

・品種や産地が特定される原材料等については、複数年契約の締結

・副原料の外部調達および内製化

流通の変化と競合等(◎)

 

・業界や特定企業の経営状態や販売政策などの変化による販売機会の減少、販売価格の低下

・競合企業による新商品の投入や販売促進活動による商品の陳腐化、販売機会の減少

・提案型営業によるお客様目線での売り場づくりとサポート

・新商品開発体制の強化

・フィールドスタッフを配置することで小売店へのきめ細かなフォロー

海外事業の状況(◎)

 

・国又は地域において、経済状況、政治、社会情勢等の著しい変化、食品の安全性、気候変動、自然災害の発生による需要の減少、操業の中断、供給不足など

・為替レート変動に伴う業績変動

・当社からの基幹人材の派遣

・当社海外事業本部による、海外グループ会社の管理・統括・運営面でのサポート

・当社監査部による海外グループ会社の監査体制強化

 

 

 

リスク

対応策

人材確保・育成(◎)

 

・雇用情勢の変化や国内の少子高齢化による労働人口の減少

・事業活動に必要となる優秀な人材の十分な確保難や育成計画の遅れ

・外部人材や外国人の活用、性別・年齢にとらわれない組織体制の構築

・女性リーダー育成に向けた社内研修

・社外研修(異業種交流)の受講促進

・退職した従業員に復職する機会を優先的に設ける「ハッピーリターン制度(退職者復職登録制度)」の導入

・男性の育児支援「ハイハイン休暇」の導入

・ものづくりを牽引するリーダー養成を目的とした「技術学校」の開校

天候の変化や消費動向

 

・天候の変化や個人消費動向の変化による販売機会、販売数量や販売価格などへの影響

「(3)気候変動への対応とTCFD提言に沿った情報開示」をご参照ください。

コンプライアンスリスク

法的規制等

 

・海外進出先の現地法令を含む法的規制の強化、新たな規制の施行などにより事業活動が制限

・当社監査部による監査体制強化

・外部研修への参加

 

 

(新型コロナウイルス感染症)

 上表に記載したリスクの他、新型コロナウイルス感染症の今後の広がり方や収束時期については、世界的なワクチン接種の普及により徐々に収束するものと見込んでおりますが、一定程度は世界的な感染状況は続き、世界経済および国内経済に影響を及ぼすものと予想されます。

 当グループの事業活動において、主に国内商業施設の臨時休業、営業時間短縮等に伴う外出自粛により、土産物等の販売の落ち込みに影響があるものの、販路開拓も推し進めたこと等から、新型コロナウイルス感染症発生前の水準までには回復に至らないまでも、当該商品は着実に受注回復で推移しております。また、生活様式の変化に伴う家庭内消費は、ECサイトにおける販売が増加傾向にあり、今後も一定程度の水準で販売できるものと見込んでおることから、新型コロナウイルス感染症が当グループの販売及び生産に与える影響は限定的であるとの仮定のもとに、固定資産の減損や繰延税金資産の回収可能性の評価等の会計上の見積りを行っております。

 なお、連結財務諸表作成時点において入手可能な情報に基づいた最善の見積りを行っているものの、想定しえない事象が発生した場合には、当グループの翌連結会計年度以降の固定資産の減損及び繰延税金資産の回収可能性等の評価に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 気候変動への対応とTCFD提言に沿った情報開示

① TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同

 当社は、2018年度に開始した中期経営計画において、サステナビリティ対応の強化を掲げ、持続的な成長と企業価値の向上に取り組んでいます。

 農産物を主原料とする当社にとって、サプライチェーンに重大な影響を与える可能性のある気候変動への適切な対応は、優先度の高い重要課題であると考え、2021年11月にTCFD※1(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明するとともに、賛同企業や金融機関が議論する場であるTCFDコンソーシアム※2に加入しています。

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※1TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース):Task Force on Climate-related Financial Disclosuresの略。G20の要請を受け、金融安定理事会(FSB)が2015年に設立。

※2TCFDコンソーシアム:TCFDに関する企業の効果的な情報開示や適切な取り組みについて議論を行う目的で2019年に設立。

 

② TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言にもとづく開示

〈ガバナンス〉

 気候変動課題を含む、サステナビリティに対する取り組みについては、2021年度に策定したサステナビリティ基本方針のもと、代表取締役会長CEOを責任者とするサステナビリティ推進タスクフォースにおいて、サステナビリティに関する方針や各種課題の解決に向けた詳細な目標の設定、それらを実践するための体制および具体的な実行方法の立案、各種施策の運用状況のモニタリングなどを行っています。

 なお、サステナビリティ推進タスクフォースの活動内容については、定期的に取締役会に付議・報告することで、その重要課題への対応状況を取締役会が監督しています。

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〈戦略〉

a.シナリオ分析

 気候変動によるリスクおよび機会の特定にあたり、当グループにおける製品およびサービスの調達・生産・供給までのバリューチェーン全体を対象として、国際機関等が公表するシナリオをもとに4℃シナリオと2℃シナリオの2つの将来世界観を整理し、2030年時点における当グループへの影響を考察するとともに、それぞれの世界観におけるリスクと機会を特定しています。

 

4℃シナリオ、2℃シナリオにもとづく将来世界観

4℃シナリオ

2℃シナリオ

気候変動対策への取り組みは現行の政策や規制以上の進展がなく、化石燃料由来のエネルギーが継続的に使用されることによって温室効果ガス排出量が増大し、産業革命期頃と比較して、2100年頃までに地球平均気温が4℃以上上昇する将来予測。台風や豪雨をはじめとする異常気象の激甚化や、慢性的な気温上昇に伴う作物生育への悪影響といった、気候変動による直接的な被害が増加するのに対し、法規制や税制という形での市場への締め付けは強化されないため、移行リスクとしての影響度は小さい。

世界規模でのカーボンニュートラルの達成に向けて低炭素化が推進され、世界の平均気温が2℃程度の上昇に抑えられる将来予測。脱炭素化に向けた厳しい法規制や税制が施行され、温室効果ガスの排出量が抑制されることにより、気温上昇が抑制され異常気象等物理的リスクの規模や頻度は4℃シナリオに比べ縮小するものの、脱炭素化に向けた社会構造の変化に伴い、移行リスクは高まる。

(参考シナリオ)

IPCC(気候変動に関する政府間パネル):RCP8.5

IEA(国際エネルギー機関):STEPS

(参考シナリオ)

IPCC(気候変動に関する政府間パネル):RCP2.6

IEA(国際エネルギー機関):SDS/NZE2050

 

 重要課題となり得るリスク項目の中で定量的な分析が可能な項目については、2030年時点における財務インパクトを推定し、4℃シナリオにおける「生産工場に対する物理的被害の拡大」および「プラスチック製包装資材の価格上昇」、2℃シナリオにおける「カーボンプライシングの導入によるコスト増加」が特に大きな影響を及ぼす可能性があることを確認しています。

 なお、当グループの主原料である「米の収穫量および価格」の分析にあたり、外部機関が開示する将来予測パラメータでは、空気中の二酸化炭素濃度の上昇が米の生育に寄与するほか、気温上昇による生産地拡大などにより収穫量の増加および販売価格が低下すると予測されており、各将来予測シナリオにおける米価格予想、平均収量の推移、消費生産バランス等の要素から試算した結果、仕入れコスト減少の可能性を確認しています。

 一方で、水田の水温上昇などに伴い品質低下が見込まれていることから、こうした米を原料にしながらもおいしい米菓を引き続きお客様にお届けできるよう、製品開発や社会貢献の可能性を模索するのが当グループの役割であり、既存の取り組みを継続・加速するとともに、新たな対応策の検討も推進していきます。

 

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 また、リスクのみならず、当グループで展開するプラントベースドフード(植物性代替肉)やECOパッケージ化の推進は、気候変動が進む世界観においてもエシカル消費をはじめとするお客様の新たなニーズに応える製品群として事業機会の可能性を確認しています。リスクへの対応策をはじめとする具体的な既存の取り組みについては、統合報告書や当社ホームページで開示しているほか、今回のシナリオ分析を踏まえ、さらなる具体的な対応策を各事業で検討・立案し、不確実な将来世界に対するあらゆる可能性について備えていきます。

 

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b.具体的な取り組み

・プラスチック使用量の削減

 当グループが持続的に事業活動を行う上で、プラスチック使用量の削減は優先的に取り組むべき重要課題として認識しています。具体的には、包装技術の向上に取り組むことで、製品の破損を防止するために使用していたプラスチックトレーを廃止するとともに、製品パッケージをスリムにすることで、従来に比べ約3割プラスチック使用量を抑制するECOパッケージ化を推進しています。

 加えて、ECOパッケージ化の推進により、配送時の積載効率の改善にもつながっています。

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 ECOパッケージ化前    ECOパッケージ化後

 

・お客様の嗜好変化への対応

 食生活が生み出す環境負荷に対するお客様の意識は確実に変化しています。更には、自然災害の増加や新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、お客様の防災意識・健康意識の高まりに対して、当グループが扱う長期保存食やプラントベースドフード、アレルゲン28品目不使用の米粉パン、植物性乳酸菌などは、そうしたお客様のニーズに対応する製品であり、社会課題の解決に寄与するものと考えています。

 2030年度には“あられ、おせんべいの製菓業”から“Better For Youの食品業”への進化を目指し、食品事業を国内米菓事業、海外事業と並ぶ3本目の柱とするべく、長期視点でシーズの獲得や育成を進め、早期の事業拡大に取り組んでいます。

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〈リスク管理〉

 気候変動に関連するリスクの管理については、全社的なリスク管理体制に統合され、当社のリスク管理委員会が中心となって行っています。同委員会は、原則として四半期に1回以上開催し、審議内容や検討状況を取締役会へ報告することで、リスク管理全般の統制管理を行っています。

 

〈指標と目標〉

 当社は、気候変動課題が経営に及ぼす影響を評価・管理するため、温室効果ガス(CO2)総排出量を指標とし、当社における2030年度の温室効果ガスの総排出量を40%削減(2017年度比)する目標を設定しています。

 また、当グループで進めるプラスチック使用量の削減はScope3における温室効果ガス排出量の削減のみならず、消費財を扱うメーカーとして優先的に取り組むべき重要課題として認識しており、製品のプラスチックトレーの廃止、およびパッケージをスリムにするECOパッケージ化を図ることでプラスチック使用量の削減を進めています。2030年度までには当社の全製品をECOパッケージ化するとともに、プラスチック使用量を30%削減(2017年度比)することを目標に掲げています。

 

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