当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルスの感染再拡大による経済活動の停滞とその後のサプライチェーンの混乱、期末にかけてのロシア・ウクライナ情勢によるエネルギーや原材料価格の高騰等、不透明感が急速に強まりました。日本経済においても、新型コロナウイルスの変異株拡大によって社会経済活動が制限される等、極めて厳しい環境に直面しました。現下の地政学的リスクがもたらす経済への影響は、予断を許さない状況です。その中で、当社グループが事業を行うスナック菓子・シリアル食品市場においては、外出自粛や非常事態への備えから、保存性の高い食品や内食需要の増加傾向がみられました。
このような経営環境のもと、当社グループは、「長期ビジョン(2030ビジョン)」と「中期経営計画(2020年3月期~2024年3月期)」に基づき、変革と挑戦による持続的な成長を実現すべく事業活動に取り組みました。
国内事業においては、新たな価値の創出と高収益の実現を重点テーマに取り組みを進めました。原材料価格の高騰や高温・干ばつの影響による北海道産原料ばれいしょの収量減を背景に、ポテトチップス等のスナック菓子の価格・規格改定を実施したほか、豆系スナック「miino」やスタンドパウチタイプの「じゃがりこ」等、コロナ禍で多様化するニーズを捉えた製品を展開しました。シリアル食品においては、間食需要への対応や健康・機能性を訴求した製品、お客様が手に取りやすい中容量タイプのラインアップの拡充に努めました。新規事業においては、当社グループが強みを有する原料ばれいしょとの親和性を活かし、さつまいもの卸売事業及び焼き芋等の直営販売事業を行う株式会社ポテトかいつかによる甘しょ事業の拡大等、新たな素材による事業展開を進めました。
海外事業では重点4地域(北米、中華圏、英国、インドネシア)において、国内事業で培ってきた自然素材の加工技術や製品開発力の強みを活かし、市場の特性に応じて事業活動を推進しました。北米では、2021年4月に、それまで分散していたR&D、営業、マーケティング機能を統合し、包括的な戦略立案を可能とするホールディングス体制へと移行しました。中華圏では、小売店舗向けの販路拡大を目指し、品揃えとプロモーションを強化してカルビーブランドの浸透を図りました。英国では、Seabrookブランドの下、主力のポテトチップスに加え、コーン系・豆系スナック菓子の拡充を図り、インドネシアでは、国内の加工技術を応用した4層構造のスナック菓子やポテトチップスの新フレーバーを展開し、新規顧客層の開拓に努めました。また、原材料価格高騰への対応として、北米や英国では、一部のスナック菓子の価格・規格改定を実施しました。
サステナブル経営の観点からは、再生可能エネルギーの有効活用や温室効果ガス総排出量の削減に向けて活動を進めたほか、国内工場では2021年7月よりRSPO認証パーム油(マスバランス方式)の購入を開始しました。持続的成長に向けての重要課題である気候変動については、TCFDフレームワークに基づいてリスクと機会を精査した上で、統合報告書にてその内容を開示しております。
当社グループは、当連結会計年度の期首から、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号)等を適用し、従来は販売費及び一般管理費に計上していた販売費の一部(リベート等)を売上高から控除する方法に変更致しました。売上高(事業別、製品別、地域別)および売上高営業利益率につきましては、当該会計基準適用の影響を除外した、リベート等控除前の金額で前年同期比較・分析しております。当該変更の詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(会計方針の変更)」をご参照ください。
当連結会計年度の売上高は、245,419百万円となりました。海外事業の伸長により、収益認識基準適用の影響を除外した実質ベースでは前連結会計年度比4.2%増となりました。国内事業は、豆系スナック「miino」等の新価値製品が伸長しましたが、原料ばれいしょ収量減の影響でポテトチップスが減収となったことにより、ほぼ前期並みとなりました。海外事業は、すべての国において売上が伸長し、増収となりました。
営業利益は、製品の価格・規格改定やコスト・リダクション等の対策を講じたものの、食油等原材料価格の高騰影響を吸収できず、25,135百万円(前連結会計年度比7.1%減)となりました。売上高営業利益率は10.2%となり、収益認識基準適用の影響を除外した実質ベースでは前連結会計年度に比べ1.1ポイント低下しました。親会社株主に帰属する当期純利益は、為替差益や債務免除益(米国の給与保護プログラム融資の返済免除による利益)を計上したことにより、18,053百万円(前連結会計年度比2.1%増)となりました。
事業別売上高は以下のとおりです。
(食品製造販売事業)
食品製造販売事業は、海外事業が伸長し、前連結会計年度比で増収となりました。
(国内食品製造販売事業)
・国内スナック菓子
国内スナック菓子は、前連結会計年度比で増収となりました。
国内スナック菓子の製品別売上高は以下のとおりです。
・ポテト系スナックは、原料ばれいしょ収量減の影響で、前連結会計年度に比べ減収となりました。
-ポテトチップスは、原料ばれいしょ収量減により販促活動の抑制や製品政策の見直しを行ったことにより、前連結会計年度に比べ減収となりました。
-じゃがりこにおいても、販促活動の抑制や製品政策の見直しを余儀なくされましたが、「じゃがりこサラダbits大モリ」等のスタンドパウチタイプが伸長し、前連結会計年度に比べ増収となりました。
-Jagabee/じゃがポックルは、インバウンドや国内旅行者数は引き続き低調に推移しているものの、催事や物産展への積極展開により、前連結会計年度に比べ増収となりました。
・コーン系・豆系スナックは、豆系スナック「miino」がTVコマーシャル等プロモーション効果により好調で、前連結会計年度に比べ増収となりました。
・その他スナックは、「ポテトデラックス」の販売エリア拡大により、前連結会計年度に比べ増収となりました。
・国内シリアル食品
国内シリアル食品は、中国向け輸出売上を海外子会社に移管したこと等により、前連結会計年度に比べ減収となりました。国内消費向けは、上期は前年の巣ごもり需要の反動により減収となりましたが、中容量タイプの品揃え強化により、下期は回復しております。
・国内その他
国内その他は、甘しょ事業が卸販売、直営店舗販売ともに好調で、前連結会計年度に比べ増収となりました。
(海外食品製造販売事業)
海外食品製造販売事業は、前連結会計年度比で増収となりました。
海外食品製造販売事業の地域別売上高は以下のとおりです。
*1 中華圏:中国、香港
*2 その他地域:韓国、タイ、シンガポール、豪州
・北米は、豆系スナック菓子「Harvest Snaps」が、ダラーストア業態向けの小袋の配荷拡大等により好調に推移し、前連結会計年度に比べ増収となりました。
・中華圏は、スナック菓子、シリアル食品ともに伸長し、前連結会計年度に比べ増収となりました。スナック菓子においては、「Honey Butter Chip」や「Jagabee」、「じゃがりこ」がEコマース、小売店舗向けともに好調に推移しました。シリアル食品「フルグラ」は、小売店舗向けの売上が拡大しました。
・英国は、Seabrookブランドのポテトチップスとコーン系スナック「Loaded Fries」が好調で、前連結会計年度に比べ増収となりました。
・インドネシアは、新製品「Guribee」の貢献に加え、既存のポテトチップスや小麦系スナック「Krisbee」が伸長し、前連結会計年度に比べ増収となりました。
・その他地域は、豪州、タイ及び韓国で売上が伸長したことにより、前連結会計年度に比べ増収となりました。
当社グループの経営方針・経営戦略等の進捗状況の評価を行うために有用な指標の状況は下記のとおりであります。
(注)2022年3月期から「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号)等を適用しております
が、2024年3月期目標においては当該基準適用の影響を除外した金額を記載しております。
(2) 財政状態の分析
当連結会計年度末における資産は、有形固定資産の取得、長期借入金の返済や自己株式の取得に充てるため、有価証券を償還したことにより、前連結会計年度末に比べ2,379百万円減少し、236,598百万円となりました。有形固定資産の増加の主なものは、生産量拡大のための自動倉庫の設置や堅あげポテト製造ラインの増設等国内既存事業の拡充を目的としたものです。
負債は、前連結会計年度末に比べ3,097百万円減少し、53,140百万円となりました。主な要因はポテトかいつかの借入金を親子ローンに切り替えたことにより長期借入金が減少したことによるものです。
純資産は、前連結会計年度末に比べ718百万円増加し、183,458百万円となりました。主な要因は、株主への一層の利益還元と資本効率の向上を図ることを目的として自己株式を取得した一方、親会社株主に帰属する当期純利益の計上によって利益剰余金が増加したことによるものです。
この結果、自己資本比率は74.1%となり、前連結会計年度末に比べ0.7ポイント上昇しました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度に比べ2,388百万円増加し、49,670百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、22,327百万円の純収入となり、前連結会計年度と比べ8,122百万円収入が減少しました。この主な要因は、円安の進行により為替差益が増加したこと、および2022年3月の売上高が前連結会計年度と比較して好調であったことにより、売上債権の増減額が減少したことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、3,643百万円の純収入となり、前連結会計年度と比べ35,713百万円収入が増加しました。この主な要因は、自己株式の取得や長期借入金の返済に充当するために有価証券の取得による支出が減少したこと、および前年同期にポテトかいつかの株式取得による連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出が発生していたことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、25,168百万円の純支出となり、前連結会計年度と比べ17,533百万円支出が増加しました。この主な要因は、自己株式の取得による支出が増加したこと、およびポテトかいつかの長期借入金を親子ローンに切り替えたことによるものです。
(資本の財源及び資金の流動性に係る情報)
・資金需要の動向
当社グループの資金需要は、営業活動に係る資金支出では製品製造のための原材料費、労務費、経費および販売活動のための販売費、人件費、物流費等の支払いがあります。投資活動に係る資金支出では主に設備投資や成長投資にかかる資金需要、財務活動に係る資金支出は主に親会社の配当金にかかる資金需要があります。
上記の資金需要に対しては、中期経営計画に基づき、2020年3月期から2024年3月期までの5か年で獲得する見込みの営業活動によるキャッシュ・フローおよび手元資金等を充当する計画です。具体的には、既存事業の持続的成長・生産性向上、海外生産体制強化に向けた設備投資や、長期的視野に基づいた新規事業、DX推進、M&Aなどの成長基盤獲得のための成長投資、連結ベースの総還元性向50%以上、DOE4%目途を基本方針とした株主還元にそれぞれ配分することを計画しております。
当連結会計年度末時点での資金支出の状況は以下のとおりです。
・資金調達の方法
当社グループの資金調達の方法としては、原則、営業活動により得られたキャッシュ・フローで賄っており、一時的な資金不足については金融機関からの短期借入を基本としております。当社及び国内連結子会社においてはキャッシュ・マネジメント・システム(CMS)を導入し、グループ内資金を一元管理することにより、余剰資金を集中管理し資金の流動性確保、資金効率の向上を図っております。また、更なる資金の流動性を補完することを目的に複数の金融機関との間に当座貸越契約を締結しており、事業運営上の必要な資金の流動性は十分に確保していると認識しております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成においては、経営者による会計上の見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて過去の実績や現状等を総合的に勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
また、この連結財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しておりますが、次の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。
① 固定資産の減損
当社グループは、営業活動から生ずる損益の継続的な赤字や市場価格の著しい下落等から減損の兆候が識別された場合、将来の事業計画等を考慮して、減損損失の認識の判定を行い、必要に応じて回収可能価額まで減損処理を行うこととしております。将来の市況悪化等により事業計画が修正される場合、減損処理を行う可能性があります。
なお、当社グループの無形固定資産のうち主なものは株式会社ポテトかいつかを取得したことにより発生したのれんであり、同社の事業は当連結会計年度において営業損益(のれん償却額を含む。以下同じ。)が黒字であり、かつ、主に販売量及び仕入量の継続的な増加により翌連結会計年度以降の営業損益の見込みも黒字であること、また、経営環境の著しい悪化もないことから、減損の兆候は認められないと判断しております。
② 棚卸資産の評価
当社グループは、棚卸資産の評価方法として原価法(貸借対照表価額は収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定)を採用しており、期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額としております。需要の変化によって過剰または滞留となった棚卸資産については、適正な価値で評価されるように評価減を行う可能性があります。
(5) 生産、受注及び販売の実績
当連結会計年度における生産実績を示すと、次のとおりであります。
(注)1 金額は、販売価格によっております。
当社グループは、需要予測に基づく見込生産を行っているため、該当事項はありません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号)等を当連結会計年度の期首から適用したことにより、販売高が減少しております。
3 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
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