(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、「私たちは、生命科学の追究を基盤として、世界の人々の健康で楽しい生活づくりに貢献します」という企業理念に基づき、人々が健康とゆとりと生きがいを実感できる生活づくりに貢献し、地域社会とともに発展する企業を目指しています。
また、株主の皆さまやお客さまをはじめ、ひろく社会から信頼され、魅力のある企業となるよう、本業を基本とした着実な事業展開に徹するとともに、透明性の高いガラス張りの経営をおし進めていきます。
(2) 経営環境
当社グループをとりまく環境は、国内の人口減少等による市場の伸び悩み、お客さまのニーズの多様化や品質、環境問題に対する意識の高まりなど、刻々と変化を続けています。また、今後の経済は、新型コロナウイルス感染症の影響や世界情勢の変化によるさまざまな不安材料が存在し、先行きが不透明な状況で推移すると思われます。
このような環境のもと、当社グループは引き続き、創業当初から提唱する「予防医学」「健腸長寿」の考え方に基づき、お客さまの健康づくりに役立ち、社会の健康課題の解決に寄与する商品やサービスを提供します。そして、長期ビジョン「Yakult Group Global Vision 2030」に立脚し、飲料・食品、医薬品および化粧品を中核とした事業ならびに積極的な国際展開を行っていくことに加え、多様化するお客さまの健康志向に応えるヘルスケア関連領域での事業拡大を推進します。事業推進にあたっては、グループの強みである「研究開発・技術力」と「当社グループ独自の宅配システム」を活かし、お客さまへのさらなる価値提供により健康社会の実現に貢献することで、社会とともに持続的な成長を目指します。
(3) 長期的な経営戦略
《「Yakult Group Global Vision 2030」の策定と推進》
当社は、ヤクルトグループとしての成長を維持し変化に対応していくための道標として、2021年度から2030年度までの長期ビジョン「Yakult Group Global Vision 2030」を策定しました。
主な内容は以下のとおりです。
長期ビジョン(2021年度~2030年度)
《目指す姿》
「世界の人々の健康に貢献し続けるヘルスケアカンパニーへの進化」
《定性目標》
・世界の一人でも多くの人々に健康をお届けする
・一人ひとりに合わせた「新しい価値」をお客さまへ提供する
・人と地球の共生社会を実現する
《定量目標》(2030年度目標)
グローバル乳本数 5,250万本/日(日本1,050万本/日、海外4,200万本/日)
連結売上高 5,500億円
連結営業利益 800億円(営業利益率14.5%)
《実現のための戦略》
2030年度に向け、飲料および食品製造販売事業部門(海外)を引き続き成長させるとともに、飲料および食品製造販売事業部門(日本)の収益性をさらに向上させることにより、グローバル乳本数、連結売上高、連結営業利益それぞれを伸ばしていきます。
このうち、海外においては、「深耕と拡大」を引き続き推進するとともに、新たな成長モデルの構築を図ります。日本においては、多様化するお客さまのニーズに応える、新たな商品やサービス開発に積極的に挑戦し、需要獲得を目指します。
これらに加えてヘルスケア関連領域の事業拡大推進等により、持続的な成長の実現を目指します。
(4) 中期経営計画
2021年度から2024年度までの4年間を対象期間とする中期経営計画の内容は以下のとおりです。
(2024年度目標)
グローバル乳本数 4,540万本/日(日本1,040万本/日、海外3,500万本/日)
連結売上高 4,580億円
連結営業利益 610億円(営業利益率13.3%)
(5) 健康経営の推進
当社は、企業理念を実現するためには、従業員の健康保持・増進が不可欠であるとの考えに立ち、2017年に「健康宣言」を策定し、従業員の生産性向上と組織の活性化を目的に健康経営に取り組んでいます。また、代表取締役社長を最高健康責任者、人事部内に設置した専門組織を実務推進担当部署として、ヘルスリテラシー向上施策や各種健康診断等を実施し、「健康経営優良法人(大規模法人部門)~ホワイト500~」に5年連続で認定されています。
今後も戦略的に健康経営を推進し、従業員が健康でいきいきと働き続けられる環境づくりを進めることで生産性向上をもたらし、業績と企業価値の向上につなげていきます。
(6) 優先的に対処すべき課題
当社グループは前述の経営環境のもと、長期ビジョン「Yakult Group Global Vision 2030」の実現に向け、飲料・食品、医薬品および化粧品を中核とした事業ならびに積極的な国際展開を行っていきます。また、「ヤクルトグループ 環境ビジョン」の実現に向けて、環境に関するマテリアリティを「気候変動」「プラスチック容器包装」「水」の3分野に特定し、人と地球の共生社会を実現するバリューチェーン環境負荷ゼロ経営を目指します。
各事業部門が優先的に対処すべき課題は次のとおりであります。
<飲料および食品製造販売事業部門(日本)>
お客さまの価値観の多様化や健康志向の高まりに対応するため、販売体制の強化を図り、継続して「腸」の健康の大切さを訴求するとともに、当社独自の乳酸菌の有用性をお客さまに体感していただくことで、当社商品の優位性を高めていきます。
宅配チャネルにおいては、人材獲得競争が激化する中、ヤクルトレディが働きやすい環境を実現するため、多様な採用条件の設定や業務効率化に向けたインフラ整備等を推進することで、ヤクルトレディの採用数の拡大と定着を図ります。また、ウェブサイトにおける情報提供を充実させることで、お客さまへのアプローチを強化し、売り上げの増大に努めます。
店頭チャネルにおいては、プロバイオティクス市場における優位性をさらに高めるため、お客さまの価値観・行動の変化に対応した取り組みを強化し、当社独自の乳酸菌の認知度の向上に向けた「価値普及」活動を推進します。
<飲料および食品製造販売事業部門(海外)>
プロバイオティクスに対する注目が高まる中、事業の拡大および収益性の向上という課題に対し、販売エリアでのさらなる市場深耕、既進出国・地域における未配エリアへの市場拡大および新規進出国の検討を進めていきます。あわせて、納入店舗数の拡大、新規チャネルでの取引強化および宅配体制の充実と人材の確保・育成に取り組みます。
販売本数が多い主なエリアである中国においては、市場の拡大および深耕を目指し、未販売地域への展開および販売拠点の増加に取り組むほか、販売組織の強化を進めていきます。また、お客さまの購買行動の変化に対応するため、学校、病院等の新規チャネルを開拓するとともに、同国内の成長市場であるEC分野における取り組みを積極的に推進します。インドネシアにおいては、実績のさらなる伸長を目指し、事業成長の原動力である宅配組織の継続的な強化に努めていくとともに、納入店舗数の拡大に取り組んでいくことで、売り上げの増大を目指していきます。
なお、新型コロナウイルス感染症に対しては、国・地域ごとにそれぞれ対策を講じ、行政機関の指示に従い、引き続き営業・生産活動を行っていきます。
<医薬品製造販売事業部門>
増大する医療費の抑制、後発医薬品の使用促進や毎年実施される薬価改定等、医療制度改革を中心として、国内市場環境が大きく変化し続けています。その中で、当社の強みである最新の情報提供力やこれまで築き上げてきた医療関係者との信頼関係を活かして売り上げ確保に努めるとともに、徹底した経費の見直しに加え、組織統合による緊密な連携をとおして業務効率化を進め、営業利益の確保に努めます。また、当社の強みを活かした他社とのプロモーション提携について積極的に取り組んでいくとともに、後発医薬品の新規導入を引き続き推進して販売品目の拡充を図っていきます。さらに、中期経営計画(2021-2024)で掲げた「医療ニーズに応える優れた製品の継続的な開発・上市」「経営資源の最適化による収益性の向上」「『人々の健康・長寿』につながる新規事業の企画・検討」といった3つの事業戦略を積極的に推進していきます。
<その他事業部門>
化粧品につきましては、同業他社との競争激化をはじめ、他業界からの新規参入など競争環境がますます厳しくなっていく中、国内においては、自社商品とサービスの価値を高め、売り上げを増大させることで事業基盤の強化を図ります。また、海外においては、中国のEC市場での認知度向上を図り、同国内での売り上げの増大を目指します。
一方、プロ野球興行につきましては、新型コロナウイルス感染症の感染防止策を講じたうえで、引き続き、安心して観戦していただける環境づくりを進めるとともに、ファンの皆さまの期待に応えられるようチーム力の強化に取り組みます。
当社グループは、引き続きコンプライアンス経営を推進するとともに、企業の社会的責任や株主の皆さまへの説明責任を果たしつつ、経営の効率化と業績の向上に鋭意努力してまいります。
また、企業理念である「私たちは、生命科学の追究を基盤として、世界の人々の健康で楽しい生活づくりに貢献します」の実現に向けて、コーポレートスローガン「人も地球も健康に」のもと、地球環境全体の健康を視野に入れ、すべての事業活動を通じて、良き企業市民として歩んでまいります。
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