(1)経営成績等の状況の概要
当期(2021年1月~12月)における日本国内の経済環境は、年間を通して新型コロナウイルス感染症の影響を受け、業種によっては個人消費の減退やインバウンド需要消失の長期化など依然として厳しい状況下にありました。一方では、新型コロナウイルス感染症対策と経済活動の両立への取り組みが進む中、ワクチン接種率の向上とともに感染者数が減少し、9月には緊急事態宣言が解除されたことで、新型コロナウイルス感染拡大前を上回るまでに業績の改善が進む企業も出現しております。しかしながら海外においては、変異株ウイルスによる感染が再拡大する国が増加していることから、国内においても感染症が再び拡大する不安は払拭できず、緊急事態宣言の再発出や半導体不足の影響、資源価格や物流コストなどの急激な上昇、円安の進行、人件費の高騰などが合わせて懸念され、依然として先行きは不透明な状態が続いております。
外食業界におきましては、新型コロナウイルス感染症の影響により、店内飲食が減少する一方で、人との接触機会の少ないテイクアウトやデリバリーサービスが増加するなど、消費者のライフスタイル・消費行動が激変しました。一方、インバウンド効果はなくなり、まだまだ回復の目途が立たない状況が続いております。またLINEやTwitter、 Instagramなどを中心としたSNSを使ったコミュニケーションや、急速に浸透しているキャッシュレスのプロモーションが更に進化し、業態を越えた顧客の獲得競争が一層激化しています。
このような環境の下、当社ではサーティワンアイスクリームの永遠の経営モットーである“We make people happy.”「アイスクリームを通じて、お客様に幸せをお届けします。」をスローガンに、全てのお客様に高品質で美味しいアイスクリームと“FUN(楽しいこと、嬉しいこと、感動すること)”に満ちたひとときを提供し、日本で最も愛され親しまれるチェーンとなることを目指すとともに、企業の継続的成長の維持と、企業価値の増大に努めてまいりました。
新型コロナウイルス感染拡大によるライフスタイルの激変を、逆にビジネス変革の機会と捉え、先ずお客様や従業員の安全を第一に考えた衛生管理の徹底として工場・店舗における感染防止に取り組むとともに、当社の長期計画を推進しています。マーケティング戦略ではバリュー・プロモーションによる集客キャンペーンから持帰り商品中心の訴求への方向転換、デリバリーの拡充、デジタル・サイネージなど店舗のデジタル化、サプライチェーン・マネジメントの最適化、新たな立地における販売拠点作り、また海外事業への挑戦など、環境の変化に順応したビジネスモデルの再構築を推進してまいりました。また新たなイメージ戦略として4月1日よりコーポレート・ロゴをリニューアルし、これに伴いパッケージも一新し、テイクアウト商品としてバラエティボックスを新発売しました。
当期の営業施策としては、毎月「フレーバー・オブ・ザ・マンス」として専門店ならではの魅力的なアイスクリームを新発売し選ぶ楽しさを提供するとともに、お正月には「ポケモン バラエティパック」や「ハッピードール うし」、苺の季節に合わせた「フレッシュストロベリーサンデー」などを発売しました。冬場の来店頻度を高めるためオリジナルポーチをプレゼントする再来店プロモーションや、ひなまつりには「ミッキー&ミニー ひなだんかざり」を発売し、モバイルオーダーによる予約受付も実施しました。4月にはWEB上で「フレーバー総選挙」を実施し、50万票を超える票が集まり、5月9日「アイスクリームの日」に人気ベスト100位を結果発表し、メディアでも話題になりました。ゴールデンウィークには昨年よりイメージキャラクターとして起用しているHey!Say!JUMPの山田涼介さんをバラエティボックス6個入り箱にデザインしたスペシャルバラエティボックスを発売しました。6月には台湾のお土産として有名なパイナップルケーキをイメージした新フレーバーなど3種類の台湾テイストフレーバーを訴求するとともに、よりたくさんのフレーバーが楽しめるようトリプルポップのスクープ3個を最大10個まで増やせるポップスクープ・キャンペーンを実施しました。7月には柿の種で有名な亀田製菓株式会社とのコラボレーションを実施し、テレビの報道情報番組やSNSでも大変話題になりました。8月には「31ポケ夏!キャンペーン」、9月は「31 ENJOY PEANUTS」、更に11月は‘ポムポムプリン’12月は‘シナモロール’と大人気のサンリオキャラクターとタイアップしたキャンペーンを実施し、イートインとテイクアウト需要の両方にお応えした親子で楽しめる新商品をたくさんラインナップし、売上の向上を図りました。また「ハロウィン」や「クリスマス」商戦でも魅力的なオケージョン商品を販売し、店頭をオケージョン一色に飾り賑わせました。
アイスクリームケーキではアメリカン・ヒーローをテーマにデザインした“マーベル アベンジャーズ パレット6”や“サンリオキャラクターズ スノーパレット”など9種類を新発売し、商品ラインナップを強化しました。
コミュニケーションにおいては、スポットや番組提供のテレビCMを実施した他、500万人の会員を有する当社独自の会員制アプリ「31cLub」やSNSでの告知を強化して来店促進と売上の向上を図りました。
また、市場環境の変化に対応する店舗戦略として、新規商業施設への出店を継続するとともに、立地の多様性にも着目し、大学の学生食堂や社員食堂、野球場や行楽地、水族館やサービスエリアなど、消費者とのタッチポイントを増やすよう積極的に取り組み、当期末販売拠点数は1,229ヶ所と前期末に比べ19ヶ所増加となりました。
また、デジタル化推進の一環として、店頭でキャンペーンやお勧め商品を動画で発信する「デジタル・サイネージ」の設置を、新店既設店合わせて344店において実施いたしました。
緊急事態宣言やまん延防止等重点措置など、人流を抑えようという国を挙げての施策が続きましたが、前期に比べ休業店舗が大幅に減少し、集客キャンペーンから持ち帰り訴求へ販売戦略を転換したことも功を奏し、当期の売上高は193億87百万円(前期比110.2%)となりました。
売上原価は、生産体制の見直し及びコストコントロールを図ったことにより、売上総利益は109億47百万円(前期比115.2%)となりました。
販売費及び一般管理費は、マーケティングに効果的・積極的に資金を投じ、次年度以降の店舗集客に資する販促活動もスタートするなどして、全体としては97億63百万円と前期より積極的に費用を投下し、営業利益は11億84百万円(前期比156.4%)となりました。
また、経常利益13億53百万円(前期比176.1%)、当期純利益7億78百万円(前期比176.0%)となり、前期比で大幅な増益を達成することができました。
ワクチン接種が進み経済活動の正常化の兆しが見られ始めるものの、感染症との戦いが終わったとは受け止められません。しかしながら、2021年度を通して当社は営業活動への影響を軽微に留められました。
なお、当社はアイスクリーム製品の製造及び販売等を行う単一セグメントのため、セグメント情報の記載を省略しております。
当期末における総資産は前事業年度末に比べ15億45百万円増加の189億52百万円となりました。これは、主に有形固定資産(7億47百万円)・ソフトウエア(1億56百万円)・製品(1億90百万円)及び前渡金(1億53百万円)が減少する一方で現金及び預金(28億11百万円)の増加があったことによるものです。
負債は前事業年度末に比べ11億7百万円増加の87億62百万円となりました。これは、主に未払金(8億18百万円)及び未払法人税等(1億82百万円)の増加があったことによるものです。
純資産は前事業年度末に比べ4億37百万円増加の101億90百万円となりました。これは剰余金の配当が3億37百万円ありましたが、当期純利益が7億78百万円あったため繰越利益剰余金が増加したことによるものです。
この結果、1株当たり純資産は1,057円51銭(前期末比45円42銭増)となりました。
当期末における現金及び現金同等物は、前事業年度末に比べて28億11百万円増加し、54億40百万円となりました。
営業活動から得られた資金は40億40百万円(前期は30億54百万円の獲得)となりました。これは主に税引前当期純利益が12億8百万円、減価償却費が13億28百万円及び未払金の増加が8億72百万円あったことによるものです。
投資活動に使用した資金は6億61百万円(前期は12億57百万円の使用)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出が3億44百万円、長期前払費用の取得による支出が3億22百万円あったことによるものです。
財務活動に使用した資金は5億67百万円(前期は4億71百万円の使用)となりました。これは主に配当金の支払が3億37百万円及び長期借入金の返済による支出が2億30百万円あったことによるものです。
当社は、アイスクリームの製造・販売等を行う単一セグメントのため、生産、受注及び販売の状況についてはセグメント別に代えて品目別に示しております。
(注) 1 金額はフランチャイジーに対する卸売価格を使用しております。
2 上記の金額には消費税等は含まれておりません。
当社は、見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
(注) 上記の金額には消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容等
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する認識及び分析・検討内容
「(1)経営成績等の状況の概要」に記載しています。
② 資本の財源及び資金の流動性
当社では、営業活動による資金需要の変化に迅速に対応して、十分な流動性の確保に努めております。
資本の財源及び資金の流動性については「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 金融商品関係」に記載しています。
重要な設備投資の計画は「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1) 重要な設備の新設等」に記載の通りであります。現時点においては、キャッシュ・フローに大きな影響を及ぼす大型の投資は予定しておりません。
株主還元についても経営における重要課題の一つと考えております。当社の配当政策については「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載しています。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、これらの見積りは当事業年度末現在において判断したもので、実際の結果は、見積り特有の不確実性が存在するためこれら見積りと異なる場合があります。
財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しています。
なお、新型コロナウイルス感染症再拡大により、一部都県において「まん延防止等重点措置」が2022年1月から再び発出されて予断を許さず、時短営業等の対応は引き続き不可避なことと考えております。それでも、感染症の影響で一時休業を余儀なくされる店舗は発生することがなく、2022年度を通して営業継続することが出来、事業活動への影響は当期と同水準に収まるものと仮定しております。
当社の財務諸表で採用する重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しています。
「自己資本利益率(ROE)」については多くの上場企業と同様に、当社においても安定的にROE8%を超える水準を目標に掲げて経営改善に努め、一定の成果を上げてまいりました。
直近では、新たな生産物流体制の構築及び経営改善努力が年々結果として現れ、上昇トレンドを形作っております。2021年度はROE 7.8%と目標まであとわずかのところへ迫りました。目標とする経営指標を達成すべく、引き続き構造改革を進めてまいります。
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