文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営の基本方針
当社グループは、グループ理念に掲げる使命・役割のもと、「食と健康」の企業グループとしてお客さまの生活充実に貢献することで持続的な成長・発展をすべく全力を尽くし、あらゆるステークホルダーとの信頼に基づき企業価値の向上を図ってまいります。
[グループ理念]
私たちの使命は、「おいしさ・楽しさ」の世界を拡げ、
「健康・安心」への期待に応えてゆくこと。
私たちの願いは、「お客さまの気持ち」に寄り添い、
日々の「生活充実」に貢献すること。
私たち明治グループは、「食と健康」のプロフェッショナルとして、
常に一歩先を行く価値を創り続けます。
[経営姿勢] グループ理念を実現させていくにあたり、経営の基本姿勢を表明したものです。
1.「お客さま起点」の発想と行動に徹する。
2.「高品質で、安全・安心な商品」を提供する。
3.「新たな価値創造」に挑戦し続ける。
4.「組織・個人の活力と能力」を高め、伸ばす。
5.「透明・健全で、社会から信頼される企業」になる。
(2) 中長期的な経営戦略と経営環境及び優先的に対処すべき課題
当社グループは、移り変わる環境下にあってもグループ理念を体現し、成長し続ける企業グループであるために、2026年度(2027年3月期)までの長期ビジョンを策定し、その実現を目指しています。
実現に向けては3年ごとの中期経営計画を策定してより具体的な実行計画に落とし込み、取り組んでいます。
また、2021年6月1日にはグループスローガンを「健康にアイデアを」に刷新しました。当社グループは100年以上にわたり「おいしさ・楽しさ・健康・安心」の世界を拡げることに努めてまいりました。これからはグループ内外の食と医薬の知見を融合させ、新しい価値を創造します。特に「健康」というフィールドで「meijiらしい健康価値」を提供し、これまで以上に大きな役割を果たしていくことを目指します。「meijiらしい健康価値」とは、CURE(なおす)、CARE(まもる)、SHARE(わかちあう)のサイクルでひとりの健康をみんなの笑顔につなげていき、健康であることの幸せを周囲に拡げ、社会、地球が健康である「より良い未来」に貢献していくことです。
① 長期ビジョン「明治グループ2026ビジョン」(2018年5月発表)
目指す企業グループ像
明治グループ100年で培った強みに、新たな技術や知見を取り入れて、「食と健康」で一歩先を行く価値を創造し、日本、世界で成長し続ける。
目標水準
・営業利益成長率 1桁台半ば以上(年平均)
・海外売上高比率 20%を目指す
・ROE 10%以上を維持
重点方針
1.コア事業での圧倒的優位性の獲得
2.海外市場での成長基盤の確立
3.健康価値領域での新たな挑戦
4.社会課題への貢献
同ビジョンの実現に向けては、上記の重点方針に沿って策定した「事業ビジョン」「サステナビリティビジョン」「経営基盤ビジョン」をもとに、活動を推進しています。
事業ビジョン
(食品セグメント)
国内ではコア事業であるヨーグルト、チョコレート、栄養食品に注力すると同時に、さらなる事業ポートフォリオの強化を目指します。海外では、各地域で明治らしい、差別化された商品を展開し、独自のポジションを確立します。そしてブランド認知を獲得し、成長を加速させます。
(医薬品セグメント)
感染症治療薬やジェネリック医薬品、バイオ医薬品などを国内のみならず、海外展開も含めてトータルで拡大します。特に感染症領域ではアジアのリーディングカンパニーとなるべく、生産能力、研究開発、普及活動をそれぞれ強化します。
(グループ全体)
食品、医薬品の各事業で培ったノウハウ・強みを生かすとともに、オープンイノベーションにより社外の知見を積極的に取り入れることで、健康・予防領域における独自価値の創出を目指します。
サステナビリティビジョン
人びとが健康で安心して暮らせる持続可能な社会の実現を目指して、事業を通じた社会課題の解決に貢献すべく、「こころとからだの健康に貢献」「環境との調和」「豊かな社会づくり」を主要活動テーマに掲げ、推進します。
経営基盤ビジョン
機能的・戦略的なマネジメント体制の確立や、一人一人の力が発揮できる環境・仕組み・風土づくり、さらにはmeijiブランドの進化に向けた取り組みを推進します。
② 経営環境及び優先的に対処すべき課題
当社グループを取り巻く市場環境は、競争の激化、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けた市場構造や消費マインドの変化など、不透明な状況が続いています。また、原材料価格やエネルギーコストの高騰が企業収益を圧迫し、消費者物価にも大きな影響を与えています。加えて、気候変動や環境問題への対応、人権や多様性の尊重、持続可能な調達活動など、企業が果たすべき役割や責任も増大しています。企業価値評価の考え方も大きく変わっており、企業の持続可能性、リスクへの強靭性、社会への貢献度が重視されています。
このような環境下において、当社グループはグローバルで健康・栄養の社会課題の解決に貢献できる企業として持続的な成長を目指すべく、以下の課題に適切に取り組んでまいります。
・事業活動とサステナビリティ活動が相互に矛盾せず、同時に実現できるビジネスモデルの確立を目指します。社会課題解決への取組みは事業成長やイノベーションのためのシーズであり、新たな価値創造に果敢に挑戦します。
・経営効率や資本コストを意識した経営管理体制に転換し、最適な事業ポートフォリオを構築し、資本生産性のさらなる向上を目指します。
・赤ちゃんからお年寄りまであらゆる世代の「こころとからだの健康」に貢献するユニークな企業グループとしての強みに磨きをかけ、グループシナジーの創出を実現します。
③ 2023中期経営計画(2022年3月期~2024年3月期)
当社グループは創業から続く「健康価値の提供」を再認識し、世界の人びとや社会と健康をシェアするサステナブルな企業グループとして成長することを目指します。
「2023中期経営計画」では従来の売上高や営業利益などの成長性・収益性の目標指標に加えて、新たに明治ROESG®※を掲げます。明治ROESG®はROEとESG指標に、明治らしいサステナビリティ目標(明治らしさ目標)を加えた独自の指標です。これを役員報酬と連動させることにより、その実効性を担保します。また、ROICも資本生産性や効率性の目標指標として新たに設定します。事業別にROICを活用して効率性や収益性を管理することで資本コストを意識した事業運営を徹底し、事業ポートフォリオ戦略の権限や責任体制を明確化します。設備投資や研究開発投資の評価としても活用し、グループ全体の経営管理体制を強化します。
※ROESGは一橋大学教授・伊藤邦雄氏が開発した経営指標で、同氏の商標です。
<明治ROESG®>
|
目標指標
|
指標 |
2023年度 目標 (2024年3月期) |
統合目標 |
明治ROESG® |
13ポイント |
成長性・収益性 |
連結売上高 |
1兆800億円 |
・食品セグメント |
8,745億円 |
|
・医薬品セグメント |
2,090億円 |
|
連結営業利益(率) |
1,200億円 (11.1%) |
|
・食品セグメント |
1,020億円 |
|
・医薬品セグメント |
185億円 |
|
海外売上高 |
1,345億円 |
|
効率性・安全性 |
ROIC |
10%以上 |
・食品セグメント |
12%以上 |
|
・医薬品セグメント |
6%以上 |
|
株主還元 |
ROE |
11%以上 |
※上記の目標値は「収益認識に関する会計基準」等を適用した後の金額となっております。
2022年3月期における2023中期経営計画の進捗状況は、3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績の状況に記載のとおりであります。
具体的な戦略のポイントは以下のとおりです。
事業戦略
(食品セグメント)
・コア事業の成長力の回復
ヨーグルトやプロバイオティクスは、既存商品の機能やエビデンスを強化するとともに、新たな健康価値を持った新製品の開発にも取り組みます。
ニュートリションでは、引き続きスポーツプロテイン「ザバス」の売上拡大に取り組むとともに、乳幼児ミルクや流動食は提供価値の拡充によるシェア拡大を目指します。
チョコレートは、カカオの価値を生かした新たな商品開発にチャレンジします。サステナブルカカオ調達を推進し、商品の付加価値化をさらに進めます。また、生産体制の最適化に取り組みます。
・海外展開の強化
特に注力する中国エリアでは、牛乳・ヨーグルト、菓子、アイスクリームの各事業において生産能力を大幅に拡大し、売上成長を加速します。また、プロバイオティクスや「ザバス」の売上拡大にも取り組み、次の成長の柱として育成します。
(医薬品セグメント)
毎年実施される国内の薬価改定や受診行動の変化による影響に左右されない、強固な事業ポートフォリオを構築します。
・ワクチン事業の強化
製販一体となったサプライチェーンマネジメントをさらに強化します。また、研究開発における社内外の連携を強化するとともに、新たな創薬技術の構築にも取り組みます。
・受託製造/受託製造開発(CMO/CDMO)事業の強化
海外市場に向けては、既存顧客との取引拡大や新規取引の獲得に取り組み、生産能力も増強します。また、研究開発力を強化して競争優位性を確保するとともに、医薬品アクセス向上に対応します。
日本市場に向けては、日本水準の高い品質と低コストでの製造が可能なインド子会社の大規模生産能力を活用し、取引拡大を目指します。
(グループ全体)
・免疫領域での貢献
抗老化素材の事業化や免疫増強物質の創出など、健康寿命延伸に向けた新たな価値提供に取り組みます。
・オープンイノベーションの推進
外部との連携を強化し新規事業の創出を目指します。「明治アクセラレータープログラム」をはじめとする複数の創発プログラムを新設・実行するとともに、新しい技術を持つスタートアップ企業やベンチャー企業を探索します。
財務戦略
・ROICの活用により経営管理体制を強化し、資本生産性の向上に取り組みます。
・資本配分については、営業キャッシュ・フローの範囲内で成長投資を実施するとともに、継続的な増配を目指します。また最適資本構成の観点から自己株式の取得も検討します。政策保有株式は30%削減(簿価ベース)します。
|
サステナビリティ戦略
各活動テーマの中で以下の取り組みを重点的に進めます。
(こころとからだの健康)
・事業を通じた健康な食生活への貢献
健康志向商品や付加価値型栄養商品を創出し、健康な食生活や食文化の普及・啓発に取り組みます。
・新興・再興感染症への対応
新型コロナウイルスワクチンの開発・供給に取り組むとともに、デング熱などのワクチン開発を進めます。
(環境との調和)
・気候変動への対応
再生可能エネルギーの活用を強化します。また、SBT※1認定の取得やインターナルカーボンプライシング※2の導入、特定フロン全廃に向けた取り組みを進めます。
※1: Science Based Targetsの略。科学と整合した目標設定
※2: 企業内での炭素の価格付け
・プラスチック資源循環の推進
引き続き、容器包装の軽量化や紙製への変更などの「リデュース」の取り組みを進めるとともに、バイオマスプラスチックや再生プラスチックの使用を拡大します。
・水資源の確保
水使用量を削減するとともに水源保全活動を進め、水リスクに対応します。
(豊かな社会づくり)
・多様性の尊重
ダイバーシティ&インクルージョンの取り組みを進めます。
・人権の尊重
人権デュー・ディリジェンスを実施し、適切に情報を開示します。
・働きやすい職場づくり
会社と健康保険組合で構成する「グループ人財委員会(健康経営分科会)」にて、健康経営の重点目標を設定し、積極的に推進します。
(持続可能な調達活動)
人権・環境に配慮して原材料を調達します。責任あるサプライチェーンを構築するとともに、サステナブルカカオ豆、認証パーム油、環境配慮紙の計画的な調達を進めます。
また、ESG投資枠を設定し、CO2排出量の削減や脱フロン対策、プラスチック使用量の削減、水資源の確保、医薬品の安定供給に関連した取り組みを円滑に遂行します。
項目 |
主な投資内容 |
CO2排出量の削減 |
・省エネ機器の導入 ・太陽光発電設備の導入 など |
脱フロン対策 |
・ノンフロン冷蔵・冷凍設備の導入 |
プラスチック使用量の削減 |
・容器包装軽量化のための設備投資 ・環境に配慮型した容器包装の設備導入 |
水資源の確保 |
・水の効率的な使用に資する設備の導入 ・水質改善設備の導入 |
その他 |
・医薬品安定供給に資する設備導入 など |
④ 明治グループにおけるTCFDへの取り組み
明治グループの事業は、豊かな自然の恵みの上に成り立っており、地球環境と共に生き「自然と共生」していくことが責務であると考えております。しかし近年、地球環境の持続可能性が危ぶまれており、気候変動が中長期的に事業活動に与える影響も大きく、重要な経営課題であると認識しております。また、「パリ協定」や「持続可能な開発目標(SDGs)」でも、気候変動への対応強化が求められており、明治グループはこうした国際的な枠組みに貢献すべく、脱炭素社会の実現に向けて気候変動への対応を推進しております。
2019年には、金融安定理事会により設置された「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)」に賛同し、これに賛同する企業や金融機関などが連携する場として、経済産業省、環境省、金融庁によって設立された「TCFDコンソーシアム」に加入するとともに、TCFDの枠組みに沿った分析と開示を開始しております。
TCFDへの取り組み概要は、以下のとおりです。
■ガバナンス体制
明治グループ全体の重要なサステナビリティ活動は、経営会議にて審議し、取締役会が監督し、経営に反映しています。またグループ全体のサステナビリティ活動を更に強化するために、その推進責任者としてチーフ・サステナビリティ・オフィサー(CSO)を設置しております。
当社代表取締役社長が委員長を務めるグループサステナビリティ委員会を年2回、当社と各事業会社のサステナビリティ関係部署からなるグループサステナビリティ事務局会議を毎月開催し、社会課題解決に向けた取り組みやサステナビリティ活動全般の進捗状況などを議論しております。気候変動によるリスク・機会の分析と対応策については、グループTCFD会議(2021年度7回実施)において検討し、その結果を経営会議で審議し、取締役会へ報告し、取締役会が監督しております。なお、グループTCFD会議には、当社のリスクマネジメント部も参画し、気候変動の影響をグループ全体の重大なリスクとして捉え、対応できる体制を構築しております。
|
■戦略
明治グループは、気候変動によるリスクと機会を、重要な経営課題の一つであると認識しており、短期的には、2023中期経営計画、中期的には「明治グループサステナビリティ2026ビジョン」、長期的には、明治グループ長期環境ビジョン「Meiji Green Engagement for 2050」を基に「CO2排出量の削減」、「水資源の確保」などのマテリアリティとKPIを設定し、将来にわたって自然と共生していくための取り組みを推進しております。
<2021年度の取り組みのポイント>
・明治グループにおけるサプライチェーン全体での分析と財務インパクトの算出
・IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)のRCP(Representative Concentration Pathways)2.6・RCP4.5・RCP6.0・RCP8.5やIEA(Intergovernmental Panel on Climate Change)のNZE・SDS・APS・STEPSなどのシナリオを基に3つのシナリオ(1.5℃・2℃・4℃シナリオ)を設定し、現状、2030年(中期)、2050年(長期)を基準年として中長期の気候変動によるリスク・機会の分析と対応策の検討
・主要原材料における気候変動の影響分析の強化(原材料の範囲拡大、水リスクによる影響分析の追加)
・気候変動における機会の深堀り
・「Meiji Green Engagement for 2050」の達成に向けて、インターナルカーボンプライシングの導入や移行計画(トランジションプラン)の策定など対応策の強化
なお、3つのシナリオ(1.5℃・2℃・4℃シナリオ)での分析結果の内、1.5℃シナリオと4℃シナリオにおける影響の大きい主要インパクトの分析結果は以下のとおりです。
<分析対象範囲>
事業セグメント |
食品 |
医薬品 |
担当会社 |
㈱明治 |
Meiji Seika ファルマ㈱ KMバイオロジクス㈱ |
財務インパクト算出範囲 |
明治グループ全体 |
|
対象原材料 |
主要原材料[乳、カカオ豆、パーム油、砂糖、木材(紙)、鶏卵] |
|
分析基準年 |
現状、2030年(中期)、2050年(長期) |
<1.5℃シナリオ(移行リスク)における明治グループへの影響>
気候変動に関わる変化 |
主要インパクトと具体的な影響 |
明治グループへの影響 |
||
関係するサプライチェーン |
影響額(億円) |
|||
2030年 |
2050年 |
|||
政府の環境規制の強化 |
カーボンプライシング負担額の増加 |
製造 |
37 |
80 |
調達 物流 |
201 |
277 |
||
再生可能エネルギー普及に向けた電力設備投資の拡大 |
電力購入金額の増加 |
製造 |
20 |
28 |
<4℃シナリオ(物理的リスク)における明治グループへの影響>
気候変動に関わる変化 |
主要インパクトと具体的な影響 |
明治グループへの影響 |
||
関係するサプライチェーン |
影響額 |
|||
2030年 |
2050年 |
|||
台風・豪雨などの激甚化や発生頻度増加 |
洪水被害による機会損失 |
製造 物流 |
1拠点あたり約3億円 |
|
気温上昇や水リスクなどによる原材料の生育環境変化 |
原材料調達コストの増加 |
調達 |
- |
- |
□主要インパクトと具体的影響
<1.5度シナリオ>
・カーボンプライシング導入による影響額(自社)
2030年は、省エネ活動、創エネ活動、再エネ由来電力の購入などで14億円の削減を図り、37億円のコスト増加を想定しています。2050年は、新たな技術や次世代エネルギーの積極的導入など移行計画(トランジションプラン)に沿った対応策の強化により19億円を削減するものの、現在の技術では2050年にCO2排出量ゼロが見込めないため、排出量実質ゼロに向けて40億円の排出権購入が必要となり、80億円のコスト増加を想定しています。
単位:億円
取り組み内容 |
2030年 |
2050年 |
① 対応策未実施のカーボンプライシング負担額 |
51 |
59 |
② 対応策によるカーボンプライシング削減額 |
▲14 |
▲19 |
③ CO2排出量ゼロに向けた排出権購入金額 |
- |
40 |
合 計 |
37 |
80 |
・電力購入金額による影響額(自社)
2030年は、省エネ活動、創エネ活動などで17億円の削減を図りますが、再エネ由来電力のプレミアム価格によるコスト増加があり、20億円のコスト増加を想定しています。2050年は、同様に28億円のコスト増加を想定しています。
単位:億円
取り組み内容 |
2030年 |
2050年 |
① 電力単価上昇に伴う増加額 |
30 |
88 |
② 省エネ活動、創エネ活動等による削減額 |
▲17 |
▲71 |
③ 再エネ由来電力購入に伴う増加額 |
7 |
11 |
合 計 |
20 |
28 |
なお、現在実施している省エネ活動、創エネ活動、再エネ由来電力の購入などに加え、新たな技術や次世代エネルギーの積極的な導入などを織り込んだ移行計画(トランジションプラン)を策定しました。また、2021年度よりインターナルカーボンプライシング制度(1t-CO2当たり5,000円)を導入することで、カーボンプライシング本格導入後の円滑な対応に向けた準備も進めております。
移行計画(トランジションプラン)の概要は以下のとおりです。
|
※Scope1 事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
Scope2 他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
・カーボンプライシング導入による影響額(主要原材料)
主要原材料を調達する各国のカーボンプライスを基にした2030年の影響額は、以下の対応策の実施により201億円の増加を想定しています。2050年は同様に277億円の増加を想定しています。
対応策の概要は以下のとおりです。
・低炭素酪農/カーボンクレジットなどの研究促進
・明治グループ独自の酪農家支援活動であるMDA(Meiji Dairy Advisory)などを通じた酪農家の集乳量
(生産性)向上の促進
・低炭素酪農に対応した乳原料の調達推進
・サプライヤーとの連携強化によるGHG排出量削減の推進
・環境負荷低減に寄与する原材料(バイオマスプラスチック、再生プラスチック、認証原材料など)の使用推進
・容器包装の材料使用量の削減
<4度シナリオ>
・洪水被害による操業停止などの機会損失
洪水による被害額は、過去の事例を基に1災害あたり3億円規模を想定しております。この金額は、明治グループにおける過去の洪水を伴う大雨によって発生した被害(物流網遮断などによる廃棄ロスなど)実績より算出しております。また、洪水により機会損失が想定される拠点は、世界資源研究所(WRI:World Resources Institute)が公開している世界の水リスク評価ツールである「Aqueduct」の結果や代替生産拠点の有無を考慮し、12拠点と想定しております。
洪水リスクへの対応策として、リスクの高い拠点については、現地と連携してリスク評価結果とのGAP分析により実態を把握し、BCPの観点も考慮して、適切な対応策を実施して参ります。既にMeiji Seikaファルマ(株)小田原工場では、仮設止水板の導入や変電所防水堤の新設、空調室外機の予備基盤導入など対応策を実施しております。
・主要原材料調達への影響
原材料の生産地においても、気候変動による気温上昇や水リスクによって農作物の収量減少に伴う原材料単価の変化が起こることが想定されます。主要原材料の生産地における収量変化や水リスク(水の需給バランスの悪化を意味する水ストレス、渇水リスク、洪水リスク)の分析を実施し、その結果の概要は以下のとおりです。
~想定される収量変化~
・カカオ豆や砂糖の調達国では、将来的に収量が減少すると予測。
・一方で、明治グループのカカオ豆の主要調達地域では、2030年での影響が比較的小さく、2050年においても
同様。
・乳への影響は、2030年、2050年においても数%の減少に留まり、飼料の配合変更などによる生産性向上での
対応が可能であり、リスクはそれほど大きくないと想定しております。
~想定される水リスク~
・水ストレスと渇水リスクは、一部の地域を除いてほとんどの地域でリスクが低いと想定しております。
・洪水リスクは、将来的にほとんどの地域でリスクが高くなると想定されるため、夫々の生産地の洪水リス
クを確認した上で、改善策の検討が必要であると考えております。
このような影響によって主要原材料の調達コストは増加することを想定しており、以下の取り組みによりコストの抑制を図ってまいります。
① 商品面での対応
◇健康価値・栄養価値の強化、サステナビリティによる社会価値創出などによる商品の高付加価値化の推進
◇商品戦略見直しによるポートフォリオの最適化
◇価格改定による単価アップ
② 原材料面での対応
◇配合変更や代替原料の使用
◇調達国/地域/サプライヤーの最適化
③ 生産・物流面での対応
◇効率的生産による生産性向上、購買物流の効率化
④ サプライヤーとの連携
◇エンゲージメント強化による調達コストダウンとリスク低減
□機会への対応
気候変動における機会は、気候変動の直接的影響が社会や生活に変化をもたらし、その結果新たなニーズや機会につながると考えております。明治グループでは、現在の事業基盤を活かし、新たな資源を取り入れることで以下のような機会獲得の可能性を想定しており、今後、明治グループ全体で夫々の実現可能性を探り、実現に向けて具体的な取り組みを推進してまいります。
気候変動の直接的影響 |
気候変動の社会や生活への影響 |
・平均気温の上昇 ・災害の激甚化 ・降水パターンの変化 ・生物多様性毀損 ・農産物の収量減少 ・海面の上昇 ・永久凍土の溶解 など |
・気温上昇での生活様式変化(外出・移動自粛、巣ごもり、止渇・熱中症など) ・食品・エネルギー価格の上昇、生産者の支出の変化 ・GHG排出規制の強化や水リスク(渇水、水質悪化)顕在化 ・環境負荷を低減させる生活の推進(ロスや廃棄削減、省エネ、エシカル消費など) ・医療ひっ迫の恒久化や感染症予防意識の高まり ・災害対策の意識の高まり ・開発途上国の栄養不足深刻化 |
機会獲得のポイント |
高まることが想定されるニーズ |
明治グループにおける機会 |
生活様式の変化による巣ごもりなどへの対応 |
・気温上昇による止渇、熱中症対策 ・家庭内で生活を完結できる商品や仕組み ・栄養バランスの改善による健康維持 |
・暑さ対策商品の拡大 ・宅配ビジネスの拡大 ・カスタマイズ型栄養支援ビジネ ス |
環境意識の高まりへの対応 |
・環境負荷の小さい商品 (植物由来、細胞培養、循環型農業など) ・廃棄ロスやエネルギー使用を低減した商 品や生活様式 ・原材料の持続可能な調達 |
・環境負荷低減型商品の拡大 ・環境配慮・支援型ビジネス ・持続可能な原料活用商品の拡大 |
新興・再興感染症への対応 |
・感染症予防のための行動の習慣化 (うがい、手洗いの励行、マスク着用、免 疫力強化など) ・感染症に対するセルフメディケーション ・開発途上国における感染症対策 |
・グローバルでの感染症薬、免疫 力強化商品の拡大 ・自然免疫・獲得免疫・治療薬な ど感染症トータルケアビジネス ・開発途上国、原料生産国への感 染症対策商品の提供や支援 |
■リスク管理
明治グループは、企業活動に重大な影響を及ぼすリスクに的確に対処するべく、グループ全体でリスクマネジメントを推進し、その中で「気候変動」も主要な経営リスクとして位置づけております。
気候変動に関するリスクについては、ガバナンス体制に基づきリスクマネジメント部が参画したグループTCFD会議での検討を踏まえ、その結果を経営会議にて審議し、取締役会に報告し、取締役会が監督しております。
なお、リスクマネジメント部が参画することで、グループ全体のリスク管理と統合できる体制となっております。
一方で、気候変動によるリスクや機会は時代とともに変化するものと認識し、グループTCFD会議がTCFD提言に沿ったシナリオ分析を用いて定量的な分析と評価を行い、優先度の高い主要インパクトを特定し、リスク管理フローに基づき対応策を検討します。その結果を経営会議にて審議し、取締役会に報告し、取締役会が監督し、適切に経営に反映させてまいります。
■指標と目標(進捗状況含む)
明治グループでは、「明治グループサステナビリティ2026ビジョン」や明治グループ長期環境ビジョン「Meiji Green Engagement for 2050」を策定し、マテリアリティとKPIを設定しています。気候変動に関わるリスク・機会への対応は、環境負荷低減活動の他、原材料調達など多岐にわたるため、以下KPIを設定し、進捗管理をしております。各KPIの進捗状況を定期的にチェックし、達成に向けて計画的に取り組むとともに、その結果は、明治ROESG®指標の一部として評価され役員報酬に反映されます。
<気候変動によるリスクと機会に関係するKPI>
主要 インパクト |
項目 |
KPI |
||
サステナビリティ2026ビジョン |
長期環境ビジョン |
2021年度進捗 ※1 |
||
カーボンプライシングの導入 |
CO2排出量 |
2030年度までに自社拠点での CO2総排出量(Scope1、2)を50%以上削減、Scope3を30%以上削減(2019年度比) |
2050年までにサプライチェーン全体でCO2などの温室効果ガス排出量を実質ゼロに |
Scope1、2:13.7%削減 Scope3: 0.9%削減 ※2 |
再生可能エネルギー使用量 |
2030年度までに自社拠点における総使用電力量に占める再生可能エネルギー比率を50%以上へ拡大 |
2050年までに自社拠点における総使用電力量に占める再生可能エネルギー比率100%を達成 |
5.3% |
|
プラスチック 使用量 |
2030年度までに国内の容器包装などのプラスチック使用量を25%以上削減(2017年度比) |
再生資材などを活用し容器包装に使用する新たな自然資本を最小化 |
11.7%削減 ※3 |
|
水調達リスク |
水使用量 |
2030年度までに自社拠点での水使用量の売上高原単位を20%以上削減(2017年度比) |
2050年までに自社拠点での水使用量の売上高原単位を2017年度比で半減 |
8.4%削減 ※4 |
主要原材料の持続可能な調達 |
カカオ豆 |
2026年度までにサステナブルカカオ豆の調達比率を100%へ |
- |
42% |
パーム油 |
2023年度までにRSPO認証パーム油への100%代替 |
- |
84% |
|
木材(紙) |
2023年度までに環境配慮紙への100%代替 |
- |
98% |
|
生乳 |
酪農家の経営に関する支援活動Meiji Dairy Advisory(MDA)を年間400回以上実施、及び2023年度までに累計2,150回以上実施 |
- |
475回/年 累計1,423回 |
※1 進捗については、基準年度からの削減率(%)を記載しています。なお、算出値については第三者保証取得
前の数値であるため、変更の可能性があります。
※2 Scope3はScope1、Scope2以外の間接排出で、バリューチェーンからのCO2排出量です。
※3 プラスチック使用量削減値については、2020年度実績を記載しています。
※4 水使用量の進捗については、「収益認識に関する会計基準」等を適用する前の売上高に基づき算出していま
す。
⑤ 明治グループにおける人財戦略
人財は、明治グループの価値創造を支える、きわめて重要な資本であり、従業員の多様性を尊重し、一人一人の能力を最大限に発揮させることが、明治グループの持続的な成長につながるという考えの下、人的資本から最大のリターンを得るために、経営戦略に則し、戦略的な投資を行っていきます。
これまでの「内部公平性」を重視した社内競争環境での均質・同質化を脱却し、「多様性」を強く意識した人財の活躍推進により、外部競争力の獲得・向上に努めていきます。
■グループ人財委員会の新設
グループ一体となって経営戦略に則した人財戦略を推進すべく、2022年4月に経営会議の諮問機関として「グループ人財委員会」を新設し、人財に関するテーマを重要な経営課題として議論していく体制を整えました。2022年度は「D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)」「健康経営」「人財開発」をテーマに掲げ、KPIの設定を含めてグループ横断での取組みを推進していきます。
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■D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)
グループ一体となったD&I推進の大方針として、2021年12月に「明治グループダイバーシティ&インクルージョンポリシー」を制定しました。
私たち明治グループは、赤ちゃんからお年寄りまで、それぞれのライフステージで多様な価値観をもつお客さまの気持ちや日々の生活に寄り添う事で成長を重ねてきたこと、これからもそうしたアプローチをグループの強みとし、日本、世界のお客さまに「食と健康」で一歩先を行く価値をお届けするために、ダイバーシティ&インクルージョンを推進することを考えの基本とし、「多様な人財の活躍推進」「多様な価値観の活かし合い」により、イノベーションや新たな価値創造、明治グループの持続的な成長に繋げていくことを掲げています。
グループ人財委員会で、本ポリシーの具現化に向けた具体的な取組みについて議論し、KPI・施策ロードマップに落とし込んだうえで着実な推進を図っていきます。
<女性活躍推進>
D&I推進の最重要テーマとして「女性活躍推進」を掲げています。女性従業員が一層能力を発揮できる組織や職場の醸成が、あらゆる社員の働きやすい環境づくりに繋がるという想いの下、男女を問わず仕事と家庭の両立支援の充実や、女性を部下に持つ管理職への研修、女性従業員に対するキャリア研修やジョブローテーションを積極的に実施し、女性活躍の場の拡充を図り、女性リーダーを着実に増やす取組みを推進しています。
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■健康経営
『健康にアイデアを』を体現する企業グループとして、成長し続ける原動力は、従業員の“こころをからだの健康”であるとの考えのもと、従業員の健康の維持・増進に戦略的に投資をし、生産性の最大化・組織活性化を図っています。その実現に向け、健康経営投資から施策の効果までのつながりを明らかにした「健康経営戦略マップ」を策定・運用しています。
従業員の健康に対する取り組みが評価され、明治ホールディングス㈱、㈱明治、Meiji Seika ファルマ㈱は、「健康経営優良法人認定制度(経済産業省)」に基づく、健康経営優良法人に6年連続で認定されています。また、KMバイオロジクス㈱も2年連続で健康経営優良法人に認定されています。
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■人財開発
組織・個人の多様性を尊重し、従業員一人一人が活力と能力を最大限に発揮していくことが、明治グループの持続的成長に資すると考え、人財育成に力を入れて取り組んでいます
<グループ経営人財育成の取組み>
2026ビジョンの実現とその先の成長を見据えて、特にグループ横断的な経営人財の育成に注力しています。各事業における戦略遂行のための知識・スキル・能力だけでなく、グループ経営戦略の策定・推進に欠かせない視座・視野・視点を備える「変革・戦略人財」を中心とした人財を計画的に発掘・育成するべく、2021年度よりグループ経営人財育成プログラムを始動しました。執行役員および上級部長の選抜メンバーを対象に、8か月におよぶ育成プランを通して、ビジョン実現を強力にリードする明治グループ経営陣に求める人財像(リーダーシップバリュー)に沿ったコンピテンシー・能力の開発を行っています。
求める人財像(リーダーシップバリュー)
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