業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

  2022年3月期の期首より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等(以下、収益認識基準)を適用しており、遡及適用後の数値で前期比較を行っております。以下における「収益」は収益認識基準適用後の数値であります。また「売上高」は従前の会計基準に基づくものであり、財務諸表利用者にとって有用であると考えていることから、収益認識基準に準拠した開示ではないものの、定性的情報において自主的に開示しております。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 経営成績

 当連結会計年度の日本経済は、持ち直しの傾向にあるものの、変異株の感染拡大に伴う行動制限長期化の影響や、サプライチェーン停滞に伴う生産や輸出の回復鈍化もあり、力強さを欠く動きとなりました。一方、国内広告市場(注1)は、前年の大幅な落ち込みからの反動増もあり、期初から強い伸びが継続し、通期で前年同期比二桁増となるなど、着実な回復がみられております。

 

① 売上高及び収益 

 当連結会計年度の売上高は1兆5,189億21百万円(前期比17.0%の増収)、収益は8,950億80百万円(同25.3%の増収)となりました。

 当連結会計年度の売上高を種目別に見ますと、雑誌とラジオを除く全ての種目で前年を上回りました。中でも、マーケティング/プロモーションでは大型案件の貢献もあり大きく前年を上回り、インターネットメディアも高い伸びとなりました。

 また、得意先業種別では、サプライチェーン停滞の影響が大きい「自動車・輸送機器・関連品」などで前年同期を下回りましたが、「官公庁・団体」、「情報・通信」及び「交通・レジャー」で前年を大きく上回ったほか、そのほかの業種も多くが前年を上回りました。(注2)

 

② 売上総利益及び営業利益

 売上総利益は、3,870億93百万円(前期比23.6%増加)と前期より738億75百万円の増加となりました。なお、このうち国内事業については3,110億58百万円と23.2%の増益、海外事業については北米や中華圏における回復基調に加えて連結範囲の拡大もあり、790億34百万円と24.3%の増益となりました。販売費及び一般管理費において、連結範囲の拡大による費用の増加があったものの、営業利益は716億42百万円(同59.1%増加)となりました。

 

③ 営業外損益及び経常利益  

 営業外収益は、持分法による投資利益が26億7百万円計上されたこと等により、前年同期比20億50百万円増加76億83百万円となりました。

 営業外費用は、条件付取得対価に係る公正価値変動額が13億46百万円、支払報酬が9億2百万円計上されたこと等により、前年同期比25億12百万円増加35億85百万円となりました。

 以上の結果、経常利益は前年同期比52.7%増加757億40百万円となりました。

 

④ 特別損益及び税金等調整前当期純利益

 当社が㈱リクルートホールディングスの株式を売却したこと等により投資有価証券売却益を236億27百万円計上した結果、特別利益は258億12百万円となりました。また特別退職金を43億26百万円計上した結果、特別損失は68億44百万円となりました。以上を加味した税金等調整前当期純利益は947億8百万円(前期比76.5%増加)となりました。

 

 

⑤ 法人税等、非支配株主に帰属する当期純利益及び親会社株主に帰属する当期純利益

 法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額の合計は、前年同期比112億97百万円増加358億46百万円、非支配株主に帰属する当期純利益は、前年同期比10億42百万円増加36億83百万円となりました。

 以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は551億79百万円(前期比108.4%増加)となり、前期より286億99百万円の増益となりました。

 

(注)1 「特定サービス産業動態統計調査」(経済産業省)によります。

    2 当社の社内管理上の区分と集計によります。

 

(2) 財政状態

 当連結会計年度末の資産は、前連結会計年度末に比べ1,119億12百万円増加し、1兆530億16百万円となりました。主な増減は、受取手形及び売掛金の増加776億81百万円、棚卸資産の増加267億50百万円、投資有価証券の減少344億96百万円であります。

 負債は、前連結会計年度末に比べ866億37百万円増加し、6,656億1百万円となりました。主な増減は、賞与引当金の増加243億78百万円、未払法人税等の増加190億21百万円であります。

 純資産は、前連結会計年度末に比べ252億75百万円増加し、3,874億14百万円となりました。主な増減は、その他有価証券評価差額金の減少223億39百万円、利益剰余金の増加428億73百万円であります。

 

(3) キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べて46億54百万円増加し、1,806億97百万円となりました。

 

  (営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益(947億8百万円)の計上等に対して、賞与引当金の増加額(243億1百万円)、売上債権の増加(△641億21百万円)、法人税等の支払額(△250億8百万円)等があり、208億52百万円の増加(前連結会計年度は362億12百万円の増加)となりました。

 

  (投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出(△50億37百万円)、無形固定資産の取得による支出(△54億11百万円)、投資有価証券の取得による支出(△71億41百万円)、投資有価証券の売却による収入(350億47百万円)、子会社株式及び出資金の取得による支出(△56億76百万円)、関係会社株式取得資金の拠出を含むその他の支払(△180億23百万円)等により、112億92百万円の減少(前連結会計年度は98億31百万円の減少)となりました。

 

  (財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入れによる収入(135億36百万円)、長期借入金の返済による支出(△108億52百万円)、配当金の支払額(△112億4百万円)等により、86億98百万円の減少(前連結会計年度は127億67百万円の減少)となりました。

 

(4) 生産、受注及び販売の状況

 当社グループは、広範囲かつ多種多様にわたる広告業務サービスの提供を主たる事業としており、その内容、構造、形式が必ずしも一様ではないため、生産実績及び受注実績について、その金額あるいは数量を記載しておりません。

 また、販売実績については、(1) 経営成績に含めて記載しております。

 

 

(5) 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、2019年5月に2024年3月期を最終年度とする中期経営計画を発表し、各種取り組みを進めてきましたが、コロナ禍の影響によりビジネス環境が激変したことを受け、一旦目標をとり下げ、2022年2月に、2022年3月期から3ヵ年の見直し中期経営計画を発表しました。

見直し中期経営計画においては、以下の通り、中期経営目標及び同目標を達成するにあたり注視すべき重点指標を掲げております。

 当連結会計年度においては、中期経営目標である投資事業の影響を除外した調整後連結売上総利益及び調整後連結のれん償却前営業利益は、広告需要の回復の取り込みに加えて、コロナ環境下特有の業務の獲得や活動費の未発生など、一時的な押上げ要因もあり、前期比二桁以上の強い伸びとなりました。投資事業の損益を含めた連結のれん償却前営業利益も同様に、前期から大きく伸長し、840億円の過去最高益となっております。

 また、重点指標として掲げている、調整後連結のれん償却前オペレーティング・マージンは、変革を進めるための戦略投資を進める一方で、コスト構造改革の効果の発現や、行動制限に伴う活動費の未発生など一時的な押し上げ要因もあり、20%を上回る水準での着地となりました。のれん償却前ROEについても、19.7%と高い水準となっております。

 また、中期経営計画で掲げた変革の推進という観点では、地方や中小、ベンチャー企業向けのデジタルサービスの提供に強みを持つソウルドアウト㈱の連結子会社化や、アプリマーケティングに強みを持つ㈱アドウェイズの持分法適用会社化、グループのテクノロジー開発と基盤整備のコアとなる㈱博報堂テクノロジーズの設立など、各種変革を推進する動きが具体化してきており、計画初年度は、想定を上回る順調な滑り出しであったと認識しております。

 ウクライナ問題など先行きの不透明感が強い状況ではありますが、引き続き、掲げた中期戦略の推進に一層注力し、中期経営目標の達成を目指してまいります。

 

(6) キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社グループは、経営環境のいかなる変化のもとでも事業活動を安定的に継続させる為に必要な手元流動性を確保した上で、事業活動から生み出されるネットキャッシュを、中期経営計画に基づき成長分野に重点的に投下することを基本方針としております。また、安定かつ継続的に株主に配当を実施することを株主還元の基本方針とし、資金需要の状況、業績の動向及び内部留保の充実等を総合的に勘案の上、配当額を決定しております。
 将来の成長の為に必要な投資資金や株主還元の為の資金は、前述の通り自己資金から賄うことを基本方針としておりますが、M&Aや設備投資は個別案件毎の規模やタイミングにも依存するため、状況次第では手元資金のみで賄えない場合も想定されます。このような場合には、当社グループの財務状況や金融・資本市場の動向を鑑み、コストや機動性等を精査した上で、金融機関からの借入等の適切な手段で資金調達を実行する所存であります。

 なお、現在の当社グループの財政状態等から勘案すると、十分な資金調達能力を有していると判断しております。

 

(7) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

なお、新型コロナウイルスの拡大による影響は、今後の感染症の広がり方や収束時期等を予測することが困難であるため、当連結会計年度期末時点で入手可能な情報に基づき見積りを行っております。

 

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