(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済におきましては、欧米中心に新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が進み、行動制限、海外渡航制限の緩和措置などにより、生産活動の正常化、個人消費の回復がみられました。
また、国によるばらつきを伴いつつも各国政府による大規模な経済対策もあり、コロナ危機による落ち込みからは回復が見られましたが、世界的な半導体不足、資源高騰などのマイナス要素の深刻化や新たな変異株の発生による感染者数の急増など不透明な状況が続いている中、ロシアがウクライナに侵攻し、世界情勢はさらに不安定になりました。中国の「ゼロコロナ政策」は、上海がロックダウンになり、金融機関も動かなくなったため、中国国内の経済ばかりでなく、世界経済にもマイナスの影響を与えることになりました。
わが国内の経済におきましても、ワクチン接種率の高まりなどにより、徐々に経済活動の正常化が進み、緩やかな経済回復がみられたものの、新たな変異株の発生による感染者が再拡大し、不安定な状況にあります。
そのような中、アート関連事業は、リスクの増大が懸念されている現金から実物資産へシフトする動きが加速しており、日本国内の美術品市場の取扱高は前年と比べ増加しています。当社が主力とする近代美術で取り扱っていた作品群は、近年、日本の近代美術の中価格帯の作品の相場全体にも下げ止まりの兆候が見え始め、徐々に市場全体が復調する兆しの中で、高価格帯の作品の相場は明らかに上昇を見せ、一部の作品は予想を大幅に上回る価格で落札されるものも出てきています。また、本格参入したコンテンポラリーアート(現代美術)も活況を呈しており、更なる拡大を見込んでいます。このように市場全体として、復調の兆しが見え始めている中で、当社では、現在、得意とする高額な美術作品とコンテンポラリーアート作品の確保を強く推進しています。
プライベートセール・その他事業は、美術品等の相対取引、NFTアートや資産防衛ダイヤモンドを中心に順調に売上を伸ばしています。また、2022年3月23日にEdoverse株式会社を設立し、仮想空間GameFiの構築を目指す「Edoverse(江戸バース)」の開発・運用・管理にかかるコンサルテーション業務を推進いたします。「Edoverse(江戸バース)」は、德川宗家第19代德川家広氏が江戸の町を監修し、様々なゲームを通じて現代に江戸の町を再構築するゲームの中でNFTの取引を通じて持続可能な「Edoverse(江戸バース)」経済圏の拡大を目指します。Edoverse株式会社は、「Edoverse(江戸バース)」開発・運営を主導するコンサルテーション業務、「Edoverse(江戸バース)」内でのNFTアートの開発販売、「Edoverse(江戸バース)」拡大のためのマーケティングにより収益を追求します。
その他事業は、自社所有の売電事業は継続して稼働しており、マレーシアでのPKS事業は事業を再開しています。
a.財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、前年比919,077千円増の4,158,261千円となりました。
当連結会計年度末の負債合計は、前年比前年比323,197千円減の1,134,714千円となりました。
当連結会計年度末の純資産合計は、前年比1,242,274千円増の3,023,546千円となりました。
b.経営成績
各事業の業績は次のとおりです。なお、当連結会計年度より当社グループの成長の方向性をより明確にするために、セグメントを変更しておりま す。
1.アート関連事業
アート関連事業は、取扱高7,938,673千円(前年比92.3%増)、売上高2,479,524千円(前年比32.6%増)、セグメント利益582,103千円(前年比111.0%増)となりました。
種別の業績は次のとおりです。
|
第33期 |
|||||||
|
2022年5月期 |
|||||||
|
取扱高 |
前年比増減 |
売上高 |
前年比増減 |
オークション |
オークション |
オークション |
落札率 |
(千円) |
(%) |
(千円) |
(%) |
開催数 |
出品数 |
落札数 |
(%) |
|
近代美術オークション |
979,800 |
8.6 |
170,668 |
0.1 |
5 |
463 |
348 |
75.2 |
近代陶芸オークション |
581,440 |
50.7 |
98,973 |
41.4 |
4 |
922 |
824 |
89.4 |
近代美術PartⅡオークション |
108,485 |
△53.5 |
21,996 |
△62.0 |
5 |
703 |
602 |
85.6 |
コンテンポラリーオークション |
224,425 |
242.3 |
39,147 |
198.3 |
5 |
390 |
336 |
86.2 |
その他オークション (注)2 |
3,586,685 |
220.0 |
696,576 |
146.8 |
11 |
2,332 |
1,969 |
84.4 |
アイアートオークション |
1,092,705 |
- |
200,370 |
- |
4 |
965 |
794 |
82.2 |
オークション事業合計 |
6,573,540 |
148.7 |
1,227,733 |
111.4 |
34 |
5,775 |
4,873 |
84.4 |
プライベートセール |
1,356,098 |
△8.6 |
1,234,749 |
△2.8 |
|
|
|
|
その他 |
9,035 |
357.2 |
17,041 |
△4.1 |
|
|
|
|
プライベートセール・ |
1,365,133 |
△8.1 |
1,251,791 |
△2.9 |
|
|
|
|
アート関連関連事業合計 |
7,938,673 |
92.3 |
2,479,524 |
32.6 |
|
|
|
|
(注)1.取扱高の前年比増減率と売上高の前年比増減率の乖離の大きな要因のひとつに、商品売上高の増減があ
ります。商品売上高は、オークション落札価額に対する手数料収入、カタログ収入、年会費等と同様に
売上高を構成する要素であり、在庫商品を販売した場合、その販売価格(オークションでの落札の場合
には落札価額)を商品売上高として、売上高に計上することとしております。
2.その他オークションは、出品の状況により随時開催しております。
ⅰ)オークション事業
当連結会計年度は、オークションの開催回数は34回(前年度開催回数40回)でした。主な内訳は、近代美術オークション、近代美術PartⅡオークション及び戦後美術&コンテンポラリーアートオークションを各5回、近代陶芸オークション及びアイアートオークションを各4回、ワイン・リカーオークションを3回、西洋美術オークション、Bags/Jewellery&Watchesオークションを各2回、MANGAオークション、CARD/FIGURE/SNEAKERSオークション、ISE COLLECTIONオークション及びEVENING SALEオークション(羽田オークション)、を各1回で取扱高は昨年と比し92.3%増と、大幅な増加となりました。
近代美術オークションは、出品点数28.7%減、落札点数29.4%減でしたが、エスティメイト下限合計額に対する落札価額合計額の比率は、平均で134.7%と高水準で推移いたしました。
近代陶芸オークションは、出品点数12.6%増、落札点数9.6%増、エスティメイト下限合計額に対する落札価額合計額の比率は、平均で145.7%と極めて高水準で推移いたしました。
近代美術PartⅡオークションは、出品点数47.6%減、落札点数47.9%減でしたが、エスティメイト下限合計額に対する落札価額合計額の比率は、平均で138.6%と高水準で推移いたしました。
戦後美術&コンテンポラリーアートオークションは、出品点数1.0%減、落札点数2.4%増でしたが、エスティメイト下限合計額に対する落札価額合計額の比率は、平均で108.0%と高水準で推移いたしました。
その他オークションでは、出品点数10.4%減、落札点数12.4%減となりましたが、3月に羽田空港で行われた、当社で初めて保税エリアを利用したオークション・EVENING SALE(羽田オークション)では、Andy WARHOLの作品が23億円で落札され、国内最高額の落札価額となるなど、当オークションの取扱高は3,077,580千円となりました。
また、ワイン・リカーオークションは出品点数3.3%減、落札点数5.8%減でしたが、エスティメイト下限合計額に対する落札価額合計額の比率は、平均で118.2%と高水準で推移いたした。
前期から取り入れましたライブビッドオークションは参加者が順調に増加し、顧客拡大につながっています。
ⅱ)プライベートセール・その他事業
プライベートセール部門では、美術品のプライベートセールやNFTアートの販売が順調に売上を伸ばしました。また、2月には「Shinwa Degital Art Week 2022」、NFTアート展覧会「Jayder The NFT Ⅱ」を開催し、成功裏に終了しました。
その他、資産防衛ダイヤモンド販売事業は、前年比27.3%増と新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響が出始めた頃から資産防衛としてのダイヤモンドの需要が高まり、順調に売上を伸ばしました。
プライベートセール・その他事業は前年比で取扱高8.1%減、売上高2.9%減となっています。
2.その他事業
アート関連事業に経営資源を集中するため、戦略的にエネルギー事業の縮小を図っているプロセスの中で、子会社保有の太陽光発電施設による売電事業は、前期に太陽光発電施設の一部を売却した影響により前年比63.9%減の26,370千円の売上となりました。その他、マレーシアにおけるPKS事業では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって事業展開が難しい状況が続いておりましたが、工場は再稼働し、出荷しました。
以上により、当連結会計年度のその他事業のセグメント売上高は149,941千円(前年は943,865千円)、セグメント損失は、17,161千円(前年は53,623千円のセグメント利益)となりました。
以上により、当連結会計年度の業績は、売上高2,629,466千円(前年比6.5%減、対前年減少額183,679千円)、営業利益409,518千円(前年は211,998千円の営業利益)、経常利益422,297千円(前年は198,421千円の経常利益)、親会社株主に帰属する当期純利益144,436千円(前年は23,367千円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動及び投資活動によるキャッシュ・フローの増加、財務活動によるキャッシュ・フローの減少の結果500,642千円の資金獲得となり、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は1,185,586千円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローは次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動の結果獲得した資金は、554,699千円(前年は758,679千円の獲得)となりました。これは主に、売上債権の減少による資金増加400,366千円、オークション未収入金の減少による資金増加504,548千円、棚卸資産の増加による資金減少131,314千円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動の結果獲得した資金は、42,996千円(前年は16,913千円の使用)となりました。これは主に投資有価証券売却による資金増加117,769千円、定期預金解約による資金増加132,004千円、定期預金預入による資金減少100,000千円、投資有価証券の取得による資金減少100,000千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動の結果使用した資金は、103,209千円(前年度は578,352千円の使用)となりました。これは主に新株予約権の発行による資金増加19,684千円に対し、長期借入金の純減少額による資金減少123,615千円によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループは、主に美術品等のオークション事業運営とエネルギー関連事業を行っており、生産実績の記載はしておりません。
b.受注実績
当社グループは、受注生産を行っておりませんので、受注実績の記載はしておりません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年6月1日 至 2022年5月31日) |
前年同期比(%) |
アート関連事業(千円) |
2,479,524 |
132.6 |
その他事業(千円) |
149,941 |
15.9 |
合計(千円) |
2,629,466 |
93.5 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 |
前連結会計年度 (自 2020年6月1日 至 2021年5月31日) |
当連結会計年度 (自 2021年6月1日 至 2022年5月31日) |
||
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
株式会社新生鍍金工業 |
780,640 |
27.8 |
- |
- |
株式会社クレール |
345,454 |
12.3 |
- |
- |
イセ株式会社 |
- |
- |
267,046 |
10.2 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等
1.財政状態の分析
当連結会計年度の資産につきましては、総資産は、前年比919,077千円増の4,158,261千円となりました。内訳は流動資産が145,274千円増の2,877,748千円、固定資産は773,803千円増の1,280,512千円となりました。流動資産の主な内訳と増減は、現金及び預金1,312,473千円(前年比834,897千円の増加)、商品1,172,144千円(140,222千円の増加)、売掛金93,036千円(400,366千円の減少)、オークション未収入金44,119千円(前年比477,650千円の減少)、前渡金9,988千円(前年比54,735千円の減少)であります。固定資産の主な内訳と増減は、のれん724,163千円(前年比724,163千円の増加)、投資有価証券115,735千円(前年比64,315千円の増加)、繰延税金資産162,015
千円(前年比12,126千円の減少)であります。
負債は1,134,714千円(前年比323,197千円の減少)となりました。内訳は流動負債が761,907千円(前年比344,425千円の減少)、固定負債が372,807千円(前年比21,227千円の増加)となりました。流動負債の主な内訳と増減は、短期借入金100,000千円(前年比13,300千円の増加)、オークション未払金84,744千円(前年比461,217千円の減少)であります。固定負債の主な内訳と増減は、訴訟損失引当金49,925千円(前年比49,925千円の増加)であります。
純資産は3,023,546千円(前年比1,242,274千円の増加)となりました。これは、資本金1,594,264千円(前年比461,122千円の増加)、資本剰余金1,315,470千円(前年比513,635千円の増加)となったことによるものです。この結果、1株当たり純資産額は311.23円、自己資本比率は72.2%となっております。
2.経営成績
当連結会計年度の経営成績は、「(1)経営成績等の状況の概要①財政状態及び経営成績の状況b.経営成績」に記載のとおりであります。
b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
アート関連事業においては、古美術やワイン等の一部のオークションの堅調な推移が期待できる一方、ここ数年、近代美術の中低価格帯の相場の低迷から復調の兆しがあり、市況は徐々に好転する方向にあると考えます。
当社グループは、「日本近代美術再生プロジェクト」と題した、日本の20世紀の近代美術の再評価と価値付けに取り組んでまいりましたが、近代美術だけでなく、近代美術以外の新たな柱となり得るコンテンポラリーアート(戦後美術を含む現代美術)へのシフトに注力してまいります。また、「資産形成アート投資サロン」を推進し、アートコレクターを呼び込み、オークションへの取扱点数と取扱価格を増加させると同時に、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に影響されにくい新たな事業の開発に積極的に取り組んでまいります。具体的には、ITを利用して顧客の美術作品の保管する倉庫事業を立ち上げると同時に、アートファンドを立ち上げることにより、アートの価値を高め、事業の拡大を図ってまいります。また、オークション事業から派生した資産防衛ダイヤモンド事業は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大にかかる各国の金融緩和政策から生じるインフレ懸念から、資産防衛としてのダイヤモンドへの需要が高まってきており売上の増大を目指します。
その他事業においては、同事業そのものの縮小を図り、アート関連事業に経営のリソースを集中させていくため、太陽光発電施設事業を縮小していきます。一方、マレーシアにおけるPKS事業では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって事業展開が難しい状況が続いておりましたが、工場は再稼働し、出荷しました。
c.資本の財源及び資金の流動性
資金需要
当社グループの事業活動における資金需要の主なものは、オークション事業の商品仕入及び前渡金、エネルギー関連事業のPKS(ヤシ殼)輸出事業仕入資金、各事業の販売費及び一般管理費があります。
財務政策
当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用及び金融機関からの借入を主に資金の調達を行っております。
オークション関連事業の資金については、取引行1行と計100,000千円の当座貸越契約を締結しており、安定的な調達を図っております。
また、持株会社体制への移行を行い、運転資金及び設備資金管理を一元管理し、資金調達コストの低減化、全社グループでの効率的な資金活用を図っております。
d.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
ROE(自己資本当期純利益率)を重要な指標として位置づけ、当社グループの効率的な経営の実現を目標として、15%以上を連結での中長期的な指標として掲げております。当連結会計年度のROE(自己資本当期純利益率)は、6.0%でした。
②.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
③.重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
連結財務諸表の作成のために当社グループが採用している重要な会計処理基準は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。
連結財務諸表の作成に当たりまして、当社グループは、過去の実績値や現状等を踏まえ、合理的と判断される前提に基づき継続的に見積り、判断及び評価を行っておりますが、見積りや評価には、不確実性が伴うため、実際の結果と異なる場合があります。
当社が行った見積りのうち重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
なお、仮定の前提である新型コロナウイルス感染症による影響については、第5「経理の状況」 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載のとおりであります。
お知らせ