課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

グループは、「出前館事業」をメインビジネスとしております。
 「出前館事業」におきましては、加盟店には新たな販売手法の提供、ユーザーに対してはアプリやウェブで注文した商品が時間通りに届く利便性の高いサービスの提供、配達員に対しては効率良く収入を得られるフレキシブルな働き方を提供することを目指しており、当社のミッションである「テクノロジーで時間価値を高める」ことを目標として、テクノロジーの力を駆使し人々の生活や時間をより価値あるものにして行くため、更なるサービス体験の向上に努めることを経営の基本方針としております。また、ラストワンマイルデリバリーという地域密着型のサービスに深く関連する事業を展開することで、地域の活性化に貢献するとともに、地域や社会が抱える諸課題に対してのソリューションを提供できるサービスを構築して行きます。さらに、業界のリーディングカンパニーとして、デリバリー市場の更なる拡大・発展を目指すとともに、ユーザーから選ばれるサービスになることで企業価値の向上を図り、株主価値の向上に繋げてまいります。

 

(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標

当社グループでは、事業の拡大に伴う売上、コスト及びキャッシュの増減を注視し、売上高、売上総利益率、営業利益及び売上高営業利益率に加え、減価償却費を考慮しない営業利益ベースの数値(EBITDA)を経営指標として重視しております。

また、「出前館事業」においては、急成長を遂げたフードデリバリー市場にあって継続的な市場拡大と事業成長を実現し、高い市場シェアを獲得・維持していく事が重要な経営目標であると考えております。その経営指標の目標達成を図る上での重要指標として、当社のようなプラットフォームビジネスにおいては、流通取引総額の増加によって市場及び事業の成長を測ることができることからGMV(流通取引総額)、そのGMVの増減を構成するユーザーからのオーダー数、オーダー数の増加に影響を与える利用者としてアクティブユーザー数を注視しております。それぞれの定義は以下になります。

・GMV(流通取引総額):商品代金+配送料

・オーダー数:特定期間内(例えば1年、四半期、1ヶ月など達成状況を分析したい期間)における総注文回数

・アクティブユーザー数:1年以内に1回以上注文したユーザー数

 

(3) 中長期的な会社の経営戦略

少子高齢化や女性の社会進出、ライフスタイルの多様化等を背景に、食事や食品のデリバリー需要は確実に増加しており、フードデリバリー市場は成長を続けております。今後もフードデリバリーはシニア層や共働き世帯に限らず幅広い世代において日常利用が加速し、生活に不可欠なサービスとして定着するものと考えられることから、ユーザーにとって魅力的な加盟店の拡充や配達における質の高いユーザー体験の実現を通して、新規ユーザーの更なる取込みとユーザー当たりの利用頻度向上を図り、流通取引総額(GMV)の拡大を目指します。また、コンビニエンスストアやドラッグストアなど飲食店以外の業種業態との取り組み拡大により、食事や食品のデリバリーに留まることなく、飲料、薬、日用品などの商品を取り扱うクイックコマースの領域にも進出することで、ユーザーにとってより利便性の高いサービスの提供をしてまいります。また、一層多様化する個人のライフスタイルに対してデリバリー配達員というフレキシブルな働き方の選択肢を提供することで、新しい働き方を求める方々のニーズに応えていくとともに、プロダクトの改善を通した配達効率の向上を図ることで、1件当たりの配達コストの適正化を進め、ユニットエコノミクスの改善に注力していきます。

このような戦略のもと、当社グループでは、2022年8月期の連結売上高に占める「出前館事業」の割合は99%、「通信販売事業」の割合は1%となっております。

 

 

(4) 経営環境

国内のフードデリバリー市場は新型コロナウイルス感染症に起因する最初の緊急事態宣言が2020年4月に発令されて以降、当年における世帯当たりのフードデリバリーへの支出額が前年比で倍増するなど(出典:「家計消費調査」、総務省)、需要が急激に拡大した結果、海外の競合他社が相次いで参入し、ここ数年で業界として大きく成長しました。各社がマーケットシェア獲得のための積極的な投資を実行する中、2020年は50%増、2021年には26%増と市場全体の取扱高が前年対比で伸長を続けており(出典:エヌピーディージャパン(株)CREST)、当社もまた、2021年9月に公募及びZホールディングス株式会社並びにNAVER Corporationに対する第三者割当増資によって約830億円の資金調達を完了し、GMV及びシェア拡大のための積極的かつ規律ある投資を実行してきました。その結果、当期に入ると競合他社において合併や事業撤退などの合従連衡が相次ぎ、想定よりも早く市場の合理化を進めることができました。DAU(デイリーアクティブユーザー)におけるマーケットシェアは期末時点で約半数を獲得しております(出典:data.ai)。外部環境につきましては、2022年に入りコロナ禍における感染拡大抑制のための行動制限や飲食店への規制が緩和され、経済再開への気運が高まった結果、外食需要がコロナ禍前の水準近くまで回復し、フードデリバリー需要はその煽りを受けることとなりましたが、そのような状況下、GMVは昨年対比で堅調に推移しており、ユーザーの定着も見られるなど、フードデリバリーが人々の生活に浸透し始めていることが感じられます。

 

(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 「出前を日常食に」するため、ユーザー目線でビジネスモデルの変革

(イ) シェアリングデリバリー®の更なる拡大

 ユーザー、飲食店、そして配送拠点の3者にとって「WIN-WIN-WIN」のモデルであるシェアリングデリバリー®の稼働から5年が経過しました。

 配達エリアの拡大つまり対象店舗数の拡大は、外食市場に対して新たな市場を創造し、「出前館事業」のビジネススケールを広げる礎となるため、スピーディーな展開を継続して行います。

 

(ロ) 配送員の獲得

 注文時間に合わせ柔軟に機能する合理的な配送員体制の確立を行います。

 

(ハ) 配送効率の向上

 配送効率を引き上げることで配送コストの低減を行います。

 

(ニ) 提供価格に連動した手数料体系の変更

 オンライン化の推進、店舗オペレーションの改善、アクティブユーザーによるオーダー数増加等、出前館事業が飲食店に提供する価値に連動した手数料体系へ変更を進めます。

 

② アクティブユーザー数の拡大

 アクティブユーザー数自体は、現状、人口の10%にも至っておらず、アメリカや中国、韓国といったデリバリー先進国においては30%前後というグローバルな水準から見ると、まだまだ獲得母数が少ない状況です。シェアリングデリバリー®の拡大との両輪で、アクティブユーザー数を増やすこと、オーダー数の継続的な成長に繋げるための積極的な投資を行います。

会計年度

2020年8月期

2021年8月期

2022年8月期

アクティブユーザー数

392万人

734万人

873万人

 

 

③ 人材の確保・育成

 当社グループ事業の拡大においては、優秀な人材の継続的確保は不可欠であります。適切な人材配置を行い、評価制度や給与体系をさらに整備・充実させることにより、社員が最大限のパフォーマンスを発揮し継続的にモチベーションを高められる環境づくりを行います。

 

 

④ 情報システム基盤、個人情報管理の強化

 当社グループにおいては、多数の店舗情報・個人情報を保有しており、情報管理責任の明確化、情報システム上の対策、従業員教育の一層の徹底を含む情報管理体制の継続的な強化を図ることが重要であると認識しております。システムインフラの強化をはじめ、情報管理に関する各種ルールの遵守、従業員教育の実施など、情報管理体制の強化に取り組みます。

 

⑤ 内部統制の強化

 当社は2021年11月30日付で公表した「誤謬に係る社内調査委員会の設置に関するお知らせ」にてお知らせいたしました通り2021年8月期決算に係る監査手続の過程において、監査法人からの指摘により未収入金及び未払金の残高について誤謬が判明したため、社内調査委員会を設置し、調査を進めた結果、過年度より未収入金及び未払金の残高が過大に計上されていたこと及び売上原価(代理店報酬原価等)が過少に計上されていたことの報告を受けました。

 上記事実の直接的な原因は、当社業容の急拡大や取引の複雑化に対するリスク評価が十分でなく、事業活動に対応した管理の仕組みや体制の構築ができておらず、また、適切に会計処理するためのマニュアル等の作成が行われていない結果、未収入金及び未払金の残高管理が不十分になり誤謬が発生いたしました。

 当社は、財務報告に係る内部統制の重要性を認識しており、開示すべき重要な不備を是正するために、社内調査委員会からの指摘・提言も踏まえ、取締役会において以下の再発防止策を決定し、2022年1月より実施しております。

(イ) 財務経理グループを含めた部門横断的なリスク評価会の定期的な開催

 財務経理グループ、内部監査室、経営管理部などが週1回定期的に集まり、リスクや課題について共有・解決に向けた会議を開催しております。

(ロ) 決算体制の強化のための財務経理グループの人員増強

 決算体制、チェック体制の強化として2022年1月に経理経験者を3名、2022年4月に2名を採用し、体制強化を図っております。

(ハ) 加盟店・決済代行会社との取引に係る会計処理業務マニュアルの整備

 各加盟店・決済代行会社との支払日・入金日などの契約内容を確認し、整理・分類した上で業務マニュアルを作成しております。

(ニ) 未収入金および未払金の相手先別管理の強化・徹底

 未収入金および未払金を相手先、発生内容、発生時期別に管理し、会計数値との確認を徹底しております。

(ホ) 代理店報酬原価の比率分析の強化

 クレジットカード、QRコード決済など決済手段別の決済料率、利用割合、利用金額を分析し、予定請求額と実際請求額との差異を把握し、正しい金額のチェックをしております。

(ヘ) 加盟店プロセスにおける決算整理仕訳に対するチェックの強化

 複雑な加盟店プロセスにおける決算整理仕訳について経理部員の増員及び業務マニュアルによりチェック体制の強化を図っております。

 上記施策を速やかに実施するため外部専門家とも契約を結び、再発防止の着実な実行に向けて、適正な内部統制の整備及び運用を図ってまいります。

 

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