研究開発活動

5【研究開発活動】

 当グループの研究開発は、さまざまな分野で培ってきたコア技術と強みとする素材とをかけ合わせ、さらにはオープンイノベーションも推進しながら、基盤研究から応用研究、商品技術開発までを協働して行い、世界に広がる『酒』『食』『飲』で個性かがやくブランドカンパニーを目指します。また、サステナビリティ重点課題の解決に向けて設定した中長期目標の達成に取り組んでいます。

 当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は24億円です。

 

 セグメントの状況は次のとおりです。

 

[酒類事業]

1.研究開発について

 サッポロビール社は「価値創造フロンティア研究所」「原料開発研究所」「技術開発部」「商品・技術イノベーション部」及び「R&D企画推進部」の体制で研究開発を進めております。これら5部門で総勢約90名(うち約20名が女性)が研究開発に取り組んでおります(研究補助者は含みません)。

 2021年3月18日の日本農芸化学会2021年度大会にて、サッポロビール社は(公社)日本農芸化学会から「ビール製造工程の微生物管理向上への一貫した取り組み」で「2021年度農芸化学技術賞(※1)」を受賞しました。この受賞は非熱処理の生ビールを安全・安心な状態でお客様のお手元までお届けするための、長年にわたるビール工場の微生物管理の精度を向上させてきた取り組み、具体的には「微生物のビール増殖性判定の簡便化」「ビール工場における微生物検出の迅速化」「管理対象微生物の拡充」に関する継続的、総合的な当社の実績が評価されたことによります。同学会におけるビール醸造技術テーマでの同賞受賞は、2000年、2015年、2018年に続き4回目となります(※2)。

 2021年8月には「原料開発研究所」が育成した2品種のホップ、「フラノマジカル(商標名)」「フラノクイーン(商標名)」が国内で品種登録されました。米国を中心にクラフトビールが発展を遂げる中、米国醸造家の間で人気を博したサッポロビール社開発品種「ソラチエース」やホップ香り成分の研究成果では、引き続き世界をリードし国際的にも高評価を得ております。

 また、同研究所が開発したLOXレス大麦品種(※3)「CDC PlatinumStar」「きたのほし(商標名)」はカナダ及び北海道で協働契約栽培により生産されており、「旨さ長持ち麦芽」として「サッポロ生ビール黒ラベル」等のサッポロビール社商品で採用しております。同じく多収量のLOXレス大麦品種「CDC Goldstar」も北米での本格的な普及を進めてまいります。

 サステナビリティ視点の研究では、気候変動への対応策として、「気候変動に適応するための大麦・ホップ品種を開発し、2035年までに国内で実用化する」ことで、持続可能な原料調達に貢献することを目指してまいります。

 これらの研究成果を商品開発技術に応用し、これからもビールテイスト飲料のさらなる魅力を引き出すことで、多様なビールの楽しみ方を提案してまいります。また、品質保証研究では、これまで以上にお客様の安全・安心志向や健康意識に応えるため、原料・製品の安全性分析及びそれを支える分析新技術の研究に継続して取り組んでまいります。

 「R&D企画推進部」では、経営・商品開発・研究開発が三位一体の関係を形成できるような仕組みづくり及びグループ内各社の研究開発を横断的に結合する活動を行っております。

 

※1 1968年から設置された歴史ある賞。農芸化学分野において注目すべき技術的業績をあげた会員に授与される

   極めて権威ある賞。(公社)日本農芸化学会ホームページ:https://www.jsbba.or.jp/

※2 過去3回の当社受賞テーマは以下のとおり。

   2000年 抗酸化製造法の展開-ビール品質劣化の理論的解明からその応用まで

   2015年 ビール泡品質向上への一貫した取り組み

   2018年 ホップ品質の多角的な解析とその応用

※3 ビールの風味を劣化させる成分(LOX-1<ロックスワン>:脂質酸化酵素)を持たない大麦

 

2.商品開発について

 酒類の商品開発については、2020年に策定されたサッポロビール社の経営ビジョンのもと「お酒と人との未来を創る」商品をお届けすべく活動を行ってまいりました。

 2021年、ビールテイストでは「サッポロ生ビール黒ラベル」の缶商品が7年連続売上アップを、またヱビスブランドの缶商品が前年超えを実現する等、既存ビールブランドで着実な成長を果たしました。

 「サッポロ生ビール黒ラベル」は“麦のうまみと爽快な後味の完璧なバランス”を目指し、「フレッシュキープ製法」「旨さ長持ち麦芽」「泡品質を向上させる継続的な取り組み」はそのままに、「生のうまさ」へのこだわりをより一層進化させ、2022年2月製造分より順次リニューアル発売をしております。

 ヱビスブランドでは、2021年からの新コンセプト「Color Your Time」のもと、通年発売アイテムである「ヱビスビール」「ヱビス プレミアムブラック」「ヱビス プレミアムエール」をリニューアル発売、また多彩な個性を持つ限定商品も積極的に展開し、「ひとりひとりの彩りあるビール時間を創るブランド」としてヱビスならではの多様なビールの味わいをご提案してきました。

 「サッポロ生ビール黒ラベル」の麦芽と「ヱビスビール」のホップを一部使用し、サッポロビール社の技術と信念をつぎ込んだ新ジャンル「サッポロ GOLD STAR」が、新ジャンルの市場が縮小傾向にある中、2年連続前年超えを果たしました。さらにお客様の新しいアルコールの選択肢として、アルコール度数0.7%の微アルコールビールテイスト飲料「サッポロ The DRAFTY」を発売し、新しい市場創造にも挑戦しました。

 また、お客様との共創によるビールづくりを展開する「HOPPIN' GARAGE」が新たなステージに入りました。フラッグシップビール「ホッピンおじさんのビール」の通年発売や、定期的に新作ビールが届く会員制サービスがスタートしました。この新しいビールの楽しみ方をより多くのお客様にお届けするため、魅力的な人々の人生ストーリーと当社の醸造技術を掛け合わせてビールを生み出す製法を「ストーリーブリューイング」と名付け、新たな展開を開始しました。

 RTD(※1)では「サッポロ 濃いめのレモンサワー」「サッポロ 男梅サワー」がお客様の支持を拡大させ、RTDカテゴリー合計では当社史上最高の 1,186万ケース(※2)を達成しました。「濃いめのレモンサワー」についてはRTS(※3)商品として500ml瓶に加えて1.8Lの大容量商品を発売し、ご家庭でもお店でもお楽しみいただけるようになりました。

 酒類事業の研究開発費の金額は13億円です。

 

※1 RTD:Ready to Drink の略。栓を開けてそのまま飲める低アルコール飲料

※2 250ml×24本換算

※3 RTS:Ready to Serve の略。氷やソーダ等で割るだけで楽しめるお酒

 

[食品飲料事業]

1.研究開発について

 「おいしさを探す」一環として、ポッカサッポロフード&ビバレッジ社が、レモンの摂取による健康状態への効果を調査する研究を、国産レモンの産地である広島県の大崎上島町にて、ここ数年にわたって地元自治体や大学と協働して進めており、日本食品科学工学会第68回大会にて、成長期の児童におけるレモンとカルシウムの継続摂取が骨密度の増加に及ぼす影響について発表をいたしました。さらに同地では、国産レモンの省力化栽培・供給拡大を念頭に、ICT(情報通信技術)を活用して天候に応じて自動で最適な肥料や水やりを行うレモン栽培、休耕田のレモン栽培への活用等の研究開発を継続しております。

 また、アルビレックス新潟のU-18の選手を対象として、レモンと牛乳の摂取が骨の健康維持に及ぼす影響についての食育活動の試験を開始しました。さらに、豆乳ヨーグルトの価値向上として豆乳ヨーグルト(SOYBIO)に含まれる菌体外多糖(とろみ成分)は、乳のヨーグルトに比べ高い免疫活性があることを日本農芸化学会2021年度大会にて発表し、豆乳の日である10月12日に発表、プレスリリースを行い豆乳ヨーグルトの価値向上に貢献しました。

 

2.商品開発について

 食品飲料における商品開発については、ポッカサッポロフード&ビバレッジ社の経営ビジョン「新しい「おいしい」を次々と生み出し続ける」のもと開発活動を行ってまいりました。

 インスタントスープでは、主力ブランド「じっくりコトコト」シリーズにおいて、素材本来のおいしさを引き立てるため新たに「野菜ブイヨン」を独自開発し、特製クリームでクリーミーなポタージュに仕上げた“やさいがおいしいシリーズ”を上市しました。また、カップ入りタイプでは、減圧して低温でフライする「バキュームフライ」の技術により、風味を残し、そのままでもおいしく食べられる、北海道産じゃがいもの“フライドポテト具材”と“北海道産コーン具材”を使用した「北海道ららポテト」シリーズを展開しました。また、新たに採用したレンジ対応カップ容器と当社が培ってきた配合技術により、豆腐と水を入れてレンジで3分加熱するだけで、最適なとろみがつき、調理したての惣菜1品ができあがる「カップdeクッキング」シリーズを上市しました。

 レモンでは、レモン1個分の果汁(※1)、クエン酸2,200mg、1日分のビタミンC(※2)、カルシウム350mgが入った、レモンのさわやかな酸味を味わいながら、カルシウムを日々の生活でおいしく補給することができる特定保健用食品「キレートレモン プラスカルシウムサプライ350mlPET」を上市しました。また、香り高いイタリア産のレモン果汁と、レモンペースト(果皮・果肉)(※3)が入り、1本で水や炭酸で割るだけで、自宅で手軽に自分好みにアレンジしたレモネードを約10杯分(※4)作ることができる希釈飲料「LEMONMADEレモネードベース350mlPET」を上市しました。

 植物性食品では、「Plant Milkの魅力」を「発酵」で高め、自分らしくイキイキとした毎日を送りたいと思っている女性とその家族の健康と美容に貢献する新ブランド「GreenBio」を立ち上げ、健康意識が高いお客様のご期待に応える無糖タイプのヨーグルト「GreenBioアーモンドミルクヨーグルトプレーン無糖350gカップ」を上市しました。

 飲料では、生産者と一緒に作った「TOCHIとCRAFT」シリーズからいろいろな飲み物と割ることができ、本格的なメニューアレンジができる希釈飲料「クラフトベース加賀棒ほうじ茶500mlPET」「クラフトベース熊本玉露入りお茶500mlPET」を上市しました。

 神州一味噌社は生みその主力商品の一つである、「だし入りみ子ちゃん白850g」について、2021年春より環境にも配慮し、製品を構成する資材であるトップシールのプラスチック原料を、紙を主原料としたトップシールへ変更することにより、プラスチック原料を重量比47%(1.13t/年)削減いたしました。

 食品飲料事業の研究開発費の金額は11億円です。

 

※1 レモン1個分は、レモン果汁約30mlとして1本当たり1個分以上の果汁が含まれています

※2 「栄養素等表示基準値」を目安に、1日分以上のビタミンCが含まれています

※3 レモンペースト(果皮・果肉)はイタリア産ではありません

※4 コップ1杯150ml換算です

※5 スパイスは香辛料抽出物を使用しております

 

 

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