当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループの主力事業である油脂事業は、主原料である大豆、菜種ともに海外の相場変動及び為替相場の影響を受けます。当連結会計年度における大豆相場は、米国産大豆の需給逼迫予想やバイオ燃料向け大豆油需要増加期待、植物油脂全般の価格高騰を受けて、5月に期近限月で2012年来の高値である1ブッシェル当たり16米ドル台まで上昇しました。その後は、バイオ燃料混合義務割合の引き下げ観測、米国産地の天候改善による生産量見通しの上方修正、南米の豊作観測などから10月には1ブッシェル当たり11米ドル台まで下落しました。12月以降は、南米産地の乾燥天候による減産懸念や植物油全般に亘る価格の高騰から上昇傾向が継続し、さらに2月にロシアがウクライナへの侵攻を開始すると、一時17米ドル台まで上昇しました。総じて前年同期と比較して高値での推移となりました。菜種相場は、カナダ産地の天候懸念や需給逼迫予想、植物油脂全般の価格高騰を受けて、5月に1トン当たり1,000加ドル台まで上昇しました。その後は、カナダ産地の高温乾燥天候による生産量の減少見通しから1トン当たり900加ドル台での値動きとなり、カナダの大減産による需給逼迫が確実となった10月以降には再び騰勢を強め、概ね1,000加ドル台での値動きが続きました。2月のロシアによるウクライナ侵攻を受けて植物油全般の価格がさらに急騰すると、3月には史上最高値を更新して1,100加ドル台後半まで上昇する値動きとなりました。総じて前年同期と比較して高値での推移となりました。ドル円相場は、4月の1米ドル108円付近から、米国経済の回復期待による株高や米金利の上昇、インフレ高進見通しや米国金融政策の正常化へ向けた動きなどを受けて円安ドル高傾向が継続しました。3月には日米金利差の拡大が意識される中で、エネルギー価格の高騰による貿易収支の悪化も懸念され、急速に円安ドル高が進行し、一時1米ドル125円台を付けるなど、前年同期と比較して円安ドル高での推移となりました。
当連結会計年度は、原料価格高騰を受けた価格改定とミール価格の上昇により、 売上高は2,015億51百万円(前年同期比22.3%増)となりました。
当連結会計年度は、製造費用のコストダウンを継続的に進めたものの、原料価格高騰の影響により、 売上原価は1,753億60百万円(前年同期比34.0%増)となりました。販売費及び一般管理費は、各種経費の抑制に取り組んだことにより、262億12百万円(前年同期比4.0%減)となりました。
価格改定、継続的なコストダウンおよび経費の抑制を進め収益基盤の強化に努めましたが、急激な原料価格高騰の影響を吸収できず、 営業損失は21百万円(前年同期は営業利益66億87百万円)となりました。
受取配当金や持分法による投資利益の計上により、 経常利益は5億96百万円(前年同期比91.9%減)となりました。
株式会社J-ケミカル株式譲渡完了に伴い関係会社株式売却益を計上した一方で、油脂加工品事業の事業資産等について減損損失を計上いたしました。以上により、当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は19億53百万円(前年同期比62.8%減)となりました。
(油脂事業)
油脂部門につきましては、家庭用は、コロナ禍で一時的に市場が大きく拡大した翌年にあたるため、当期は第1四半期を中心に市場が縮小しました。加えて、度重なる値上げによる節約志向から需要が減少したことから、家庭用油脂の販売数量は前年同期を下回りました。汎用油においては、主原料である大豆や菜種などの急激な原料コスト上昇に伴い、5度に及ぶ価格改定を実施いたしました。その結果、販売数量は減少したものの、売上高は伸長しました。高付加価値品においては、オリーブオイルはテレビCMによる購買を喚起した月には前年同期を上回りましたが、市場全体の縮小や競合環境により、年間の売上高は前年同期を下回りました。一方で、健康志向の高まりを背景に市場が拡大している「こめ油」の売上高は前年同期を大きく上回りました。また、環境負荷の低減やお客様の使いやすさを意識したスマートグリーンパック®(紙パック)を上市し、汎用油から高付加価値品まで幅広いシリーズを展開しました。業務用は、外食向けを中心に厳しい市場状況が継続しましたが、前年の市場が大きく減退した翌年であるため、販売数量は前年同期をわずかに上回りました。家庭用と同様に5度の価格改定を実施した結果、売上高は前年同期を大きく上回りましたが、急激なコスト上昇に追いつかず、営業利益は前年同期を大きく下回りました。また、価格改定に併せて、お得意先のコスト負担軽減に貢献するべく、長く使える油「長徳®」シリーズの提案を強化し、販売数量は前年同期を大きく上回りました。
油糧部門につきましては、大豆ミールの販売数量は、搾油量が前年同期を上回ったことから、前年同期を上回りました。販売価格はシカゴ相場の大幅上昇により前年同期を大きく上回りました。菜種ミールの販売数量は、搾油量が前年同期をやや上回り、また原料品質由来によりミール歩留が上昇し生産量が増加したことから、前年同期を上回りました。販売価格は大豆ミール価格に連動して上昇したことにより前年同期を大きく上回りました。これにより、当部門の売上高は前年同期を大きく上回りました。
(スペシャリティフード事業)
油脂加工品部門につきましては、家庭用は、主力商品の「ラーマバターの風味」増量セールを実施するとともに、ラーマ全品を対象としたラーマ55周年記念消費者キャンペーンを実施し拡販に努めましたが、前年の新型コロナウイルス感染症の影響による内食需要の反動減もあり、販売数量は前年同期を下回り、売上高は前年同期と同程度という結果となりました。新規事業として2021年9月より植物性代替食品である「Violifeブランド(プラントベースチーズ、プラントベースバター)」を関東地方1都6県で先行発売、2022年3月からは全国展開いたしました。お客様はじめメディア等から高い評価をいただいております。業務用は「グランマスター®」シリーズを中心に高付加価値品の拡販に努めると共に主な原料であるパーム油、大豆、菜種の調達価格の上昇に応じた価格改定に注力しました。新型コロナウイルス感染症によるインバウンド需要の消失、度重なる緊急事態宣言ならびにまん延防止等重点措置による外出自粛の影響を受け販売数量は前年同期を下回り、売上高は前年同期をわずかに上回る結果となりました。粉末油脂製品は堅調な需要に支えられ販売数量および売上高は前年同期を上回りました。
テクスチャーデザイン部門につきましては、コーンスターチの食品用途および工業用途ともに拡販継続に努めたため、販売数量、売上高ともに前年同期を上回りました。春先から続く相場上昇、為替、他影響を受け値上げを実施いたしました。食品用加工澱粉の内、重点拡販商品である「ネオトラスト®」を含む高付加価値品は、品質、食感改良材として中食・外食向けに新規採用が増えたことから、販売数量、売上高ともに大きく上回りました。第2四半期に上市いたしました、業務用スターチ製品の新ブランド「TXdeSIGN® (テクスデザイン) 」シリーズ、ならびにプラントベースミート用の大豆たん白「プランテクスト®」につきまして、引き続き拡販にむけ提案を強化いたしました。大豆たん白をベースとしたシート状大豆食品「まめのりさん®」の販売は、主要販売先である北米において新型コロナウイルスのワクチン接種が進む中、外食需要が回復してきたこともあり、売上高はロックダウンによる出荷影響を受けた前年同期に対し大きく上回りました。
ファイン部門につきましては、高付加価値品であり特に注力しているビタミンK2の販売が国内外において好調で、売上高は前年同期を大きく上回りました。海外向けに「menatto®」のブランドを掲げて認知拡大に努めています。
(その他)
その他の事業につきましては、売上高20億58百万円(前年同期比67.4%減)、セグメント利益2億73百万円(前年同期比60.4%減)、セグメント資産9億44百万円(前期末比45億40百万円減)となりました。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと次のとおりになります。
(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しております。
2 金額は製造原価によっております。
当社グループは受注生産を行っておりません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりになります。
(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合
当社グループは、第六期中期経営計画策定時に前提としていた事業環境から大きく変化したことを受け、同計画を見直すこととしております。詳細については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)第六期中期経営計画の見直し」をご参照ください。
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は 941億96百万円 で、 前連結会計年度末に比べ115億10百万円増加 しました。主な増加は、棚卸資産149億58百万円、主な減少は、現金及び預金42億69百万円であります。
固定資産は 674億66百万円 で、 前連結会計年度末に比べ63億12百万円減少 しました。主な増加は、無形固定資産11億11百万円であります。主な減少は、有形固定資産が38億69百万円、投資有価証券が36億85百万円であります。
これにより、総資産は 1,617億円 ( 前期末比51億90百万円増 )となりました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は 407億48百万円 で、 前連結会計年度末に比べ61億43百万円増加 しました。 主な増加は、短期借入金123億円であります。主な減少は、支払手形及び買掛金が15億67百万円、未払法人税等が17億62百万円、流動負債その他が18億33百万円であります。
固定負債は 264億27百万円 で、 前連結会計年度末に比べ10億円減少 しました。 主な増加は、長期借入金1億60百万円であります。主な減少は、繰延税金負債が3億48百万円、退職給付に係る負債が2億11百万円、固定負債その他4億58百万円であります。
これにより、負債は 671億76百万円 ( 前期末比51億42百万円増 )となりました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は945億23百万円で、前連結会計年度末に比べ47百万円増加しております。主な増加は、利益剰余金が2億15百万円、自己株式が2億75百万円、繰延ヘッジ損益が1億76百万円であります。主な減少は、その他有価証券評価差額金8億70百万円であります。
当連結会計年度の現金及び現金同等物は、前年同期と比べ42億73百万円減少し、35億5百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、前年同期に比べ210億77百万円減少し、△168億7百万円となりました。この主な要因は、原料コストの上昇に伴い棚卸資産が増加したことによります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前年同期に比べ43億56百万円増加し、19億17百万円となりました。この主な要因は、投資有価証券の売却による収入が増加したことや連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却による収入を計上したことによります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前年同期に比べ130億52百万円増加し、105億76百万円となりました。この主な要因は、短期借入金が増加したことによります。
(注)自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業活動によるキャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業活動によるキャッシュ・フロー/利払い
※株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式総数(自己株式控除後)により算出しております。
※有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対象としています。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
※2021年度のキャッシュ・フロー対有利子負債比率および インタレスト ・カバレッジ・ レシオ は、営業キャッシュ・フローが マイナス のため記載しておりません。
主要な資金需要は、製造及び販売活動に必要な運転資金、有利子負債の返済、配当金の支払い、法人税等の支払い、事業基盤整備のための設備投資、新規事業への投資であり、これらの資金需要に対しましては、営業活動によるキャッシュ・フロー及び内部留保資金、社債発行、金融機関からの借入により資金調達しております。
当社グループは、現金及び現金同等物において、グループ各社の余剰資金を一元管理することによって資金の効率化と金融費用の極小化を図っております。また、当座貸越契約、コミットメントライン契約、売掛債権の流動化による機動的な資金調達手段を備えており、十分な資金の流動性を確保しております。
当社グループは、資本効率性と格付を考慮した財務健全性の最適バランスを取りながら、営業活動によるキャッシュ・フロー創出力を強化し、持続的な企業価値の向上を追求していく方針です。これにより、事業活動の維持に必要な手許資金の水準を確保するとともに、安定した株主還元と、企業体質の強化や積極的な事業展開のためへの成長投資など、長期的視野に立った安定的かつ適正な利益配分を行うこととしております。加重平均資本コスト(WACC)等を用いて資産効率向上を進めてROA等の改善を図ることとし、新型コロナウイルス禍の影響に加え、原料相場高騰や為替相場の円安進行等による経営環境の変化を踏まえ、財務政策における目標値を見直すこととしております。
なお、キャッシュ・フローの推移実績は以下のとおりです。
(注)フリー・キャッシュ・フロー:営業活動によるキャッシュ・フロー+投資活動によるキャッシュ・フロー
※借入金残高は、社債を含みます。
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、会計上の見積りを用いることが必要となりますが、これらの見積りについて過去の実績や現状等を総合的に勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。詳細は「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載していますが、次の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。
当社グループは確定給付制度を採用しております。退職給付債務及び勤務費用は、数理計算上の仮定を用いて退職給付見込額を見積り、割引くことにより算定しております。数理計算上の仮定には、割引率、昇給率、期待運用収益率等の様々な計算基礎があり、当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、退職給付に係る負債及び退職給付費用の金額に重要な影響を与える可能性があります。
なお、投資有価証券の評価および繰延税金資産の回収可能性については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に、新型コロナウイルス感染拡大の影響については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載のとおりであります。
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