文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において入手可能な情報に基づき、当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。
当社グループは、私たちの目指すべき未来、私たちの使命、私たちの価値/存在意義をあらわした、新たな企業理念体系を制定いたしました。同時に、コミュニケーションブランド「JOYL」を導入し、新企業理念体系を元にした企業活動およびすべてのステークホルダーの皆様とのコミュニケーションで「JOYL」を活用し、「JOYL」を受け皿として、生まれた価値を蓄積、資産化していきます。
新たなコミュニケーションブランドのもと、「Joy for Life® -食で未来によろこびを-」のビジョン実現に向け、ステークホルダーの皆さまや社会、環境の「Joy」をおいしさデザイン®で創出し、社会課題の解決に貢献してまいります。
新企業理念体系とコミュニケーションブランド
(2) 経営環境と優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
<成長戦略>
製品力強化とコミュニケーション強化の施策を通じ、高付加価値品の拡販を図りました。油脂事業において、家庭用油脂では、環境負荷の低減やお客様の使いやすさを意識した「スマートグリーンパック®」(紙パック製品)を上市するとともに、業務用油脂では、得意先のコスト負担軽減に貢献するべく、長く使える油「長徳®」シリーズの提案を強化しました。
また、スペシャリティフード事業においては、「Violifeブランド」商品を上市し、プラントベースチーズ市場への新規参入を図りました。業務用スターチ製品では、新ブランド「TXdeSIGN® (テクスデザイン) 」シリーズを立ち上げ、拡販に取り組むとともに、DX推進によりマーケティングプラットフォーム「TXdeSIGN Lab.(テクスデザイン ラボ)」を構築し、既存顧客ならびに新規顧客とのコミュニケーションの強化を図りました。
足元の原料価格への対応を喫緊の課題としつつ、引き続き高付加価値品の開発および拡販に努め、成長領域への拡充を図ってまいります。
<構造改革>
持続的成長を確実なものとするため、ケミカル事業を譲渡、バリューチェーン&業務プロセス改革の一環としての油脂生産体制の再構築、資産効率改善として遊休資産や投資有価証券等の処分、さらに販売品目の統廃合などに取り組みました。日清オイリオグループ株式会社との業務提携を通じて、搾油事業の国際競争力の強化、産業の発展および食品の安定供給を通じた社会貢献ならびに中長期的な企業価値向上を図ってまいります。
<経営基盤強化>
当社の取締役会は様々な経験を有する取締役を配し、独立社外取締役が全体の1/3を占めていますが、取締役会の監督機能を強化するばかりではなく、執行機能とのコミュニケーションを活発化しています。また、2021年度はサステナビリティに資する施策として、生産拠点を中心とするCO2削減の取組み、ダイバーシティ&インクルージョンの推進を図るとともに、基幹システム再構築を通じた業務プロセス改善、事業リスクに応じたグループガバナンスの整備など各種施策に取り組みました。
当社グループはこれまで培った資産と独自の強みを活かし、SDGs(国連加盟193か国が2016年から2030年の15年間で達成するために掲げた持続可能な開発目標)で挙げられている様々な課題に対して、事業を通じて解決に貢献し、さらには新たな価値を提供することで当社グループも成長を目指すCSV(共通価値の創造)経営を推進します。同時にESG(環境、社会、企業統治)に配慮した経営を同時に進めてまいります。
当社グループは、2021年5月20日に、2025年3月期を最終年度とする第六期中期経営計画「Transforming for Growth」を発表し、各戦略目標達成に向けて取り組んでまいりましたが、策定当初と比べて事業環境が大きく変化しました。
バイオディーゼル向けなど世界的な食用油需要の増大や主な生産国の天候不順、新型コロナウイルス禍に端を発する人手不足による減産といった複数の要因を受けた需給のひっ迫に加え、世界情勢が大きく変化したことで穀物や油脂原料の供給見通しが悪化したことから大豆、菜種、パーム油をはじめとする原料相場は総じて高騰しております。
加えて、原油相場高騰によるエネルギーコストや物流費の上昇、為替相場の円安進行も重なり、食用油脂全般に及ぶ調達コストは当面は先行き不透明な状況が続くと見込まれています。
以上の環境変化を踏まえ、当社は第六期中期経営計画策定時に前提としていた事業環境から大きく変化したことを受け、同計画を見直すこととした上で、足元の原料価格高騰への対応と収益構造改革の早期実現を喫緊の課題として、スピード感を持って取り組んでいく所存です。
当社グループは、企業理念体系「Joy for Life® -食で未来によろこびを-」を目指すべき未来として掲げ、植物の恵みを活用した新たな価値の提供により社会課題の解決を目指し、サステナブルな社会の実現に貢献する取り組みを進めています。2021年4月に策定した本企業理念体系において、「おいしさ」「健康」という食品会社としての根源的な役割と責任に加え、自然の恵みを活かした製品をお客様へ届ける当社にとってサステナビリティの追求は重要な要素であるため、「低負荷」というキーワードにその想いを込めました。また、本企業理念体系の策定にあわせ、2030年までの目指すべき姿を定め、「環境負荷の抑制」「食資源の維持」「食を通じた人の健康への貢献」「事業継続基盤」の4つのマテリアリティを起点とし、気候変動、サステナブル調達、ダイバーシティ推進、サステナブル商品開発をテーマに目標を設定し、取り組んでいます。お客様や当社グループを取り巻く環境は近年大きく変化しており、「食」を支える企業として外部環境を適切に捉え、これらの課題や環境変化にスピード感をもって対処し、安全・安心な製品を安定的に供給する責任を果たしてまいります。
企業理念体系の詳細は当社ウェブサイトに掲載しています。
・企業理念体系 https://www.j-oil.com/corporate/philosophy.html
《サステナビリティ推進体制》
また、全社横断的な取り組みだけでなく、各事業においても、サステナビリティに配慮した活動を推進しています。設備投資やサステナブルな商品開発の上市にあたっては、各事業部門から取締役会へ報告を行い、全ての事業活動において気候変動対策の推進を含むサステナビリティを追求する体制を整備しています。
① TCFDへの対応
当社は、2020年11月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)による提言に賛同を表明するとともに、TCFDコンソーシアムに参画しています。社内横断的なプロジェクトチームを設置し、TCFD提言が推奨する開示項目に沿った情報開示を進めています。
TCFD提言への対応の詳細は当社ウェブサイトに掲載しています。
https://www.j-oil.com/sustainability/environment/climate_change/tcfd.html
② ガバナンス、サステナビリティ推進体制
サステナビリティ委員会は脱炭素への対応を含む環境負荷の低減やサステナビリティの課題に取り組んでいます。サステナビリティ委員会において、取締役をプロジェクトオーナーとした社内横断的なTCFDプロジェクトを発足し、TCFD提言に基づく情報開示を推進しています。上述のサステナビリティ推進体制のもと、調達から生産、物流、販売まで全社横断的な環境負荷の低減への具体的な取り組みは、サステナビリティ委員会の下部組織である「サステナブル調達・環境部会」を中心に取り組んでいます。
③ 特定した気候変動によるリスクと機会
<前提条件>
気候変動は事業の継続性を鑑みても非常に重要な経営リスクとしてとらえており、2℃未満および4℃シナリオ※についてリスクと機会の分析を行いました。また、気候変動のみならず、温暖化が進むことにより、台風被害の甚大化などもリスク要因としてとらえています。
※2℃未満および4℃シナリオとは、地球温暖化の対応策に関する科学的な根拠を与え、国際交渉に影響力があるIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第6次評価報告で、産業革命前から21世紀末までに、どれくらい平均気温が上昇するかについて予測提示されているものです。最も気温上昇の低いシナリオ(SSP1-1.9シナリオ)で、おおよそ1.4℃前後の上昇、最も気温上昇が高くなるシナリオ(SSP5-8.5シナリオ)で4.4℃前後の上昇が予測されています。
<気候変動によるリスク>
*PBF: プラントベースフード(植物由来食品)
<気候変動による機会>
<リスクの管理>
当社グループでは、代表取締役社長執行役員を委員長とする経営リスク委員会を設置し、年2回、取締役会、経営会議への報告を行っています。経営リスク委員会では、気候変動を含む全社の重要リスクについて短・中期視点で管理し、防止と回避に努めています。事業が気候変動によって受けるリスクと機会については、サステナビリティ推進体制のもと、サステナビリティ委員会とTCFDプロジェクトチームで、中・長期の視点で管理しています。2021年度は、現存する文献など公開情報を情報源としてシナリオ分析を行い、特定したリスクと機会の財務影響度評価を実施し、その対応策を検討しました。議論された内容は四半期に1回、取締役会、経営会議へ報告を行い、適宜必要な指示あるいは助言を受け、モニタリングを実施しています。
今後も継続的に分析範囲の拡大と深堀りを行い、リスクの最小化と機会の最大化を図り、レジリエンスの強化に取り組みます。
また、当社は2021年にマテリアリティの見直しを行い、「気候変動の緩和と適応」を優先課題の一つとして特定しました。マテリアリティ特定のプロセス・相対的重要性の判断については、以下をご参照ください。
https://www.j-oil.com/sustainability/materiality/process.html
<指標と目標>
2030年度までにCO2排出量を2013年度対比で50%削減(Scope1、2)、2050年度までに排出ゼロにするカーボンニュートラルを掲げています。また、購入する原材料や商品の製造に関するCO2排出量など、サプライヤ―と連携し、サプライチェーン全体(Scope3)での削減も目指します。Scope3については、排出量の多いカテゴリ1やカテゴリ4について算定精度の向上を図り、削減方法を検討してまいります。
ICP(インターナルカーボンプライシング)制度の導入については、情報収集を行い、ICP制度を活用した環境投資の推進に向けて検討を行っています。
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