研究開発活動

5【研究開発活動】

当社グループは、世界のお客様の楽しく健やかな食生活に貢献するために、「人の健康」「地球の健康」「未来の食生活の創造」を研究領域とし、研究開発に取り組んでいます。

 

今年度は、市場担当制への転換に対し、研究開発の組織体制の変更として、食創造研究所の「調理・調味料開発部」を「市販用開発部」と「業務用開発部」に分け、より市場を意識した開発に専念できる体制としました。また、昨年度スタートした「フレッシュストックTM」事業が本格始動し、量販店の生鮮売場向け商品として「わたしのお料理」シリーズ、惣菜向け商品として「わたしのお惣菜」シリーズを展開しました。

社会性の取り組みとしては、プラスチック削減に向けた取り組みを推進し、キユーピー テイスティドレッシングシリーズで、再生プラスチックを配合したボトルを採用し、商品化しました。また、お客様の多様な価値観に向き合い、新たな食シーンの提案として、植物性原料によるスクランブルエッグ状商品「HOBOTAMA」を業務用で発売しました。発表当初より、プラントベースフードに興味のあるお客様だけでなく、アレルギーに悩むお客様からも多くの反響をいただきました。これからもお客様に寄り添い、新たな食生活をお届けしていきます。

100年以上食に向き合ってきたキユーピーとして、未来の豊かな食生活の創造に向けた取り組みにも挑戦しています。農林水産省の戦略プロジェクトにも採択された一般社団法人「SPACE FOODSPHERE」による宇宙開発領域の研究開発においては、「QOLマネジメントシステムの開発」に参画します。これまで培ってきた食の技術を月面という極限環境下での快適な食に活かすとともに、今後地球上でも起こりうる社会課題の解決にも繋げていきます。

また、血液中のマイクロRNAの測定による将来の発がんリスク判定と、発がんリスク低減をめざしたマイクロRNA改善につながる食生活提案の事業化をめざしています。現在、横浜国立大学と東京医科大学との共同で、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が運営する「人と共に進化する次世代人工知能に関する技術開発事業」のプロジェクトとして研究を進めています。

2030ビジョンに掲げた「サラダとタマゴのリーディングカンパニー」をめざし、鶏卵の機能性を解明し養鶏産業発展にも貢献できるようなテーマにも取り組んでいます。具体的には、鶏卵摂取による認知機能改善効果を明らかにする研究を、生物系特定産業技術研究支援センターが運営する「イノベーション創出強化研究推進事業」のプロジェクトとして、東京大学等5者で共同研究を進めています。

生産技術部門では、これまで築き上げた豊富なコア技術の活用展開を行い、研究部門の開発商品を品質第一で効率よく生産するための設備開発を行っています。新しい技術としてAIを活用した取り組みやシミュレーション技術を利用した開発リードタイムの短縮、そして人手のかかる工程の自働化に向けて、外部と協働しながら広くグループの生産効率向上や品質保証体制を高める生産環境の実現を推進しています。

なお、当連結会計年度における当社グループの研究開発費は、4,033百万円です。

また、報告セグメントにおける研究開発活動の概要とその成果は次のとおりです。

 

(1)市販用、業務用、海外、フルーツ ソリューション、ファインケミカル

 

<市販用>

 市販用では新商品の開発に加えて、既存品の改良を通じた更なるおいしさや機能性の追求と汎用化に向けた提案を実施しています。また、日々の食生活を通じたより積極的な健康へのアプローチとして、BMIが高めの方に対し内臓脂肪を減らす機能があることが報告されているローズヒップ由来ティリロサイドを含む、機能性表示食品のマヨネーズタイプ「キユーピー フィッテ」を発売すると同時に、「キユーピー アマニ油マヨネーズ」などの改良を行いました。ドレッシングにおいても「キユーピー ごまドレッシング」などの機能性表示食品を新たに発売しました。また、ドレッシングを使用することで野菜の苦みや青臭さが軽減することを研究成果として発表し、子どもの野菜嫌い克服につながるような取り組みを行っています。ソースカテゴリーではパスタを中心にアレンジレシピに広がりを与える「キユーピー レシピひろがるパスタソース」や、「キユーピー 3分クッキング 蒸し煮用ソース」を発売し、蒸し煮という野菜の新たな調理方法を提案しています。

 「フレッシュストックTM」事業においては、「わたしのお料理」シリーズで精肉売場向けの「お肉のからめやき」や「豚鍋のつゆ」、鮮魚売場向けの「鮭の蒸し焼きソース」など新たなコンセプトを持った新商品を展開しました。また、「わたしのお惣菜」シリーズでは、主菜になるおかずシリーズや惣菜売場の揚げ物に合うソースシリーズに加えて、従来のフレッシュサラダの消費期限よりも長い20日の鮮度保持を実現した「冷圧フレッシュ製法」によるサラダシリーズを展開し、好評をいただいています。デリア食品株式会社では、機能性表示食品「カラダ想いメニュー」シリーズの販売エリアを北海道、関西、九州エリアへ拡大しました。今後も同シリーズは新たなメニューや機能を充実させて、健康意識の向上や野菜摂取量の増加につながる商品を開発し、お客様の健康寿命の延伸に貢献していきます。株式会社サラダクラブでは、パッケージサラダの更なる鮮度保持に取り組み、「千切りキャベツ」に次ぐ主力商品である「ミックスサラダ」の消費期限を1日延長し5日間としました。今後もパッケージサラダがお客様の食生活に欠かせない商品として、いつでも便利にお使いいただけるシーンを追求していきます。同じく、「フレッシュストックTM」事業においては、市販用卵加工品も拡充しました。増加している単身・共働き世帯、高齢者世帯などのお客様が冷蔵庫に簡単に常備でき、手軽にご使用いただけるカップ入り商品として「キユーピーのたまご ゆでたまご」のテスト販売を開始しました。また、キユーピーのたまごブランドの「つぶしてつくろう」シリーズから「つぶしてつくろう たまごのタルタル」を発売しました。

 

<業務用>

 業務用では、独自性を起点においしさと機能性を提案する開発を実施しています。マヨネーズ・ドレッシングでは、手づくりのポテトサラダの味を工業的に実現できる「キユーピークリーミィマヨネーズ」とベーカリー業界向けの「キユーピー粗挽きブラックペパーマヨ」、シェフが手づくりしたようなおいしさと状態を実現した「キユーピーこく味黒胡麻ドレッシング」などを発売しました。また、「キユーピー具沢山フィリング黒胡麻」、「スノーマン具沢山ソースサルサピカンテ(高粘度タイプ)」などを発売し、惣菜やベーカリー向けにおいしさや彩りを加える具沢山シリーズを拡充しました。業務用においても健康志向の高まり、人手不足や簡便性の観点からニーズの高いロングライフサラダにおいては、「キユーピーのサラダ ごろっとポテトのサラダ(国産野菜使用)」、「キユーピーのサラダ 15種素材のヘルシーサラダ」など合計8品を発売しました。

 冒頭に記載した国内初の卵代替のプラントベースフード「HOBOTAMA」は、豆乳加工品をベースに、卵加工品で培った独自技術を活かして、スクランブルエッグのような見た目と食感を再現しました。シェフが丁寧に手づくりしたような半熟感を再現しており、飲食店などで提供するメニューの付加価値を高めることができます。プレーンな味わいで、パンや野菜などと相性が良く、サンドイッチや朝食メニューなどに幅広く使用できます。

 キユーピー醸造株式会社では、米飯・惣菜の食感を保持するための酵素製剤、ライスイージー2(米飯用)、デリカイージー(惣菜用)を発売しました。

 

<海外>

 海外では世界の食と健康に貢献するグループとして、現地のニーズに沿った商品づくりと健康への情報発信、サラダを中心とした野菜摂取の向上のためのマヨネーズ、ドレッシングといった調味料を中心に開発を進めました。中国では、業務用としてベーカリー、サンドイッチ、寿司などの業態、メニュー向けのマヨネーズを開発し、使用用途の拡大を図るアイテムの投入を進めました。パッケージの変更など、お客様に分かりやすく手に取りやすいデザインなどに変更し浸透を進めています。ドレッシングでは、当地の麺料理である拌麺と言われるメニュー向けの調味料を開発し、野菜以外のメニューへの拡大を図りました。マレーシアでは、「キユーピーチリマヨ」を家庭用で発売し、マレーシアで親しまれている調味料とのコラボレーションにより浸透を進めています。また、業務用では「メンタイマヨ」を発売し、ハラル認証を取得しつつ日本の風味を展開し新たな食シーンを提案するなど、ローカルの食文化と新しい食の提案をバランスよく進め、市場の活性化に寄与することが出来ました。ベトナムでは「キユーピー焙煎ごまドレッシングチリ&チーズ風味」を発売しました。野菜だけでなく肉料理にも合う味付けに仕立て、ドレッシング用途の拡大を図りました。「キユーピーマヨネーズスイートテイスト」では、保存料不使用としお客様の新たなニーズを発掘する開発を進めています。インドネシアでは業務用市場向けに、「キユーピーメンタイマヨ」を発売しました。現地の流行となっている創作メニュー「ナシメンタイ」の定着を進めました。各国のトレンドを捉えつつ、新しいマヨネーズ、ソースの開発と定着を図る活動を進めています。

 

<フルーツ ソリューション>

 ジャム・スプレッド類では「アヲハタカロリーハーフ」3品をリニューアルし、よりパンに合う仕立てとするとともに、「アヲハタまるごと果実 オレンジ」についてオレンジの食感と香りをアップさせ品位を一新しました。新製品としてアヲハタ55シリーズより「4種のベリー」などを季節限定発売し、イチゴ、ブルーベリー、ママレードのポーションタイプ8個入りボックスタイプを発売しました。また、「アヲハタ ワイルドブルーベリー&メープルシロップ」を発売しています。ヴェルデブランドではトーストスプレッドシリーズの「ガーリックトーストスプレッド」等計3品について油脂の変更を行い、素材の風味をより感じられるよう改良を行うとともに、「ガーリックシュリンプ」を発売しました。また、「アヲハタ ひとくち柑橘」を発売し、さっと、どこでも一口で食べられるフルーツ加工品として新たな食シーンを提供しています。

 

<ファインケミカル>

 ファインケミカルでは、ヒアルロン酸、タマゴ成分、独自の機能性素材の可能性を最大限に引き出す研究と商品開発を進めています。

 ヒアルロン酸の医薬分野では、新たな分子量帯で中国の医薬原料登録が終了し、販売体制を整えました。食品分野では、ヒアルロン酸の摂取により乾燥肌のみでなく、シワの改善効果があることをヒト試験で明らかにし、抗シワ素材としての提案を開始しました。独自タマゴ成分である加熱変性リゾチームでは従来のノロウイルスの不活化効果に加え、新型コロナウイルスに対する不活化効果を帯広畜産大学、国際医療福祉大学との共同研究で明らかにしました。

 独自素材を活用した通販専用商品として、ヒアルロン酸を配合した手・首周りをケアするスキンケア商品として「ハンデコルテ」を、酢酸菌酵素を活用した飲酒ケアサプリメントの「よいとき」を、従来の摂取目安は2粒でしたが1粒で体感できるようリニューアルし「よいときOne」として発売しました。

 

(2)共通

   該当事項はありません。

 

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