(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」といいます。)の状況は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、前連結会計年度に引き続き、新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けました。食品業界におきましては、健康志向や巣ごもり需要の高まりが継続し、テイクアウト、通信販売、宅配など多様化するニーズに対する柔軟な対応が求められているほか、原材料価格の高騰やエネルギー費用の上昇など、収益が圧迫される厳しい経営環境となりました。
このような環境の中、当グループにおきましては、経営品質の優れた“ニュー・フジッコ”の創造に継続して取り組み、「赤字商品等のSKU(商品アイテム数)削減」・「取引先(販売先・購買先)の再編」・「現金をなくし決済方法のデジタル化」・「紙とハンコをなくす」・「残業をしない会社に向けた取り組み」などを大胆に進めてまいりました。
研究開発部門におきましては、黒大豆ポリフェノールで2021年11月に「血管のしなやかさの維持」、同年12月には「疲労感を軽減」に関する機能性表示が受理されました。また、「おまめさん丹波黒黒豆」が2022年International Taste Institute(国際味覚審査機構)にて、「優秀味覚賞」三ツ星を獲得いたしました。
当連結会計年度の期首より「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しており、販売促進費等の顧客に支払われる対価について、従来、「販売費及び一般管理費」として処理していた方法を「売上高」から減額する方法に変更しております。この適用により、当連結会計年度の売上高は66億15百万円減少しており、550億74百万円となりました。
利益面では、これまでの積極的な設備投資による減価償却費の増加や原材料、エネルギー価格の想定を上回る上昇に加え、前述のとおり売上高の減少及び“ニュー・フジッコ”の経営改革を断行中のため、営業利益は31億52百万円(前期比27.0%減)、経常利益は35億6百万円(前期比25.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は21億15百万円(前期比37.9%減)となりました。
(製品分類別の売上高の状況)
惣菜製品では、株式会社フーズパレットが売上回復し、「おばんざい小鉢」シリーズは順調に推移しましたが、収益性改善に取り組む日配惣菜が不採算取引の解消等を政策的に進め前年実績を下回ったことから、惣菜製品全体の売上高は185億51百万円となりました。
昆布製品では、佃煮は堅調に推移したものの、塩こんぶ、とろろ昆布、だし昆布等のドライ品群が前年実績を下回ったことから、昆布製品全体の売上高は145億円となりました。
豆製品では、「丹波黒黒豆」をはじめ「おまめさん」シリーズが好調に推移しましたが、煮豆の品目集約の影響や、新商品「彩り豆」が期待どおりの売上高を確保できなかったこと、収益性改善を進める水煮・蒸し豆が前年実績を下回ったことから、豆製品全体の売上高は105億15百万円となりました。
ヨーグルト製品では、「カスピ海ヨーグルト」は順調に推移し、「まるごと大豆のヨーグルト」も成長したものの、通販チャネルのサプリメント「善玉菌のチカラ」が前年実績を下回ったことから、ヨーグルト製品全体の売上高は69億8百万円となりました。
デザート製品では、「フルーツセラピー」シリーズの期間限定商品の投入等により品群全体の活性化に取り組んだことから、デザート製品全体の売上高は24億46百万円となりました。
(財政状態の分析)
“ニュー・フジッコ”の経営改革の一環として、不要不動産の売却など総資産の圧縮を進めました。また、株主還元政策として、配当方針に基づき増配を実施いたしました。保有自己株式494万株を消却(67億35百万円)するとともに、新たに自己株式の取得(15億75百万円)を継続して実施しております。
その結果、当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ50億73百万円減少し、801億36百万円となりました。
流動資産は、前連結会計年度末に比べ10億円減少し、318億77百万円となりました。これは主に、自己株式の取得など現金及び預金の減少によるものです。
固定資産は、前連結会計年度末に比べ40億72百万円減少し、482億59百万円となりました。これは主に、土地・不要資産の積極的な売却・除却を進めたことや、減価償却に伴う有形固定資産の減少によるものです。
流動負債は、前連結会計年度末に比べ42億98百万円減少し、85億77百万円となりました。これは主に、未払金の減少によるものです。
固定負債は、前連結会計年度末に比べ4億96百万円増加し、19億24百万円となりました。
純資産は、前連結会計年度末に比べ12億70百万円減少し、696億34百万円となりました。これは主に、自己株式の取得によるものです。なお、資本剰余金の減少は自己株式の消却によるものです。
これらの結果、自己資本比率は、前連結会計年度末の83.2%から86.9%となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、自己株式の取得等により前連結会計年度末に比べ10億96百万円減少し、127億78百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、法人税等の支払等があったものの、減価償却費を36億98百万円、税金等調整前当期純利益を31億26百万円計上したこと等から、51億1百万円の収入(前連結会計年度は61億5百万円の収入)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券や不要固定資産の売却による収入があったものの、有形固定資産の取得による支出等により、33億30百万円の支出(前連結会計年度は56億4百万円の支出)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得による支出や配当金の支払等により、28億67百万円の支出(前連結会計年度は12億33百万円の支出)となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
イ 生産実績
当連結会計年度における生産実績は次のとおりであります。
分類 |
金額(百万円) |
前期比(%) |
惣菜製品 |
18,582 |
- |
昆布製品 |
14,478 |
- |
豆製品 |
10,612 |
- |
ヨーグルト製品 |
6,848 |
- |
デザート製品 |
2,460 |
- |
その他製品 |
2,000 |
- |
合計 |
54,984 |
- |
(注)1 上記金額は、販売価格により表示しております。
2 「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、当連結会計年度に係る金額は、当該会計基準等を適用した後の金額となっております。このため当該基準を適用する前の前連結会計年度との前期比は記載しておりません。
ロ 受注実績
当グループは、市場動向の予測に基づく見込生産を行っており、受注生産は行っておりません。
ハ 販売実績
当連結会計年度における販売実績は次のとおりであります。
分類 |
金額(百万円) |
前期比(%) |
惣菜製品 |
18,551 |
- |
昆布製品 |
14,500 |
- |
豆製品 |
10,515 |
- |
ヨーグルト製品 |
6,908 |
- |
デザート製品 |
2,446 |
- |
その他製品 |
2,152 |
- |
合計 |
55,074 |
- |
(注)1 「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、当連結会計年度に係る金額は、当該会計基準等を適用した後の金額となっております。このため当該基準を適用する前の前連結会計年度との前期比は記載しておりません。
2 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
||
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
㈱日本アクセス |
11,046 |
17.2 |
8,738 |
15.9 |
「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、当連結会計年度に係る金額は、当該会計基準等を適用した後の金額となっております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度におきましては、2019年4月よりスタートしました中期3か年計画(2019年度~2021年度)の最終年度として、「“ニュー・フジッコ”を創造し ブランド価値を高めよう」をテーマに取り組みました。
当グループの2021年度末(2022年3月31日)の財政状態につきまして、以下のとおり分析しております。
総資産は、前連結会計年度末に比べ50億73百万円減少し、801億36百万円となりました。これは主に、新たに投資しました東京FFセンターや関東工場の豆製品新棟を含め、有形固定資産の減価償却が進んだことによるものと分析しております。
負債合計は、前連結会計年度末に比べ38億2百万円減少し、105億2百万円となりました。これは主に、関東工場の豆製品新棟や東京FFセンターに係る未払金の支払いが進んだことによるものであります。
純資産は、前連結会計年度末に比べ12億70百万円減少し、696億34百万円となりました。これは主に、配当方針に基づく増配による株主還元の充実及び資本効率(ROE)の向上を目的とした自己株式の取得によるものであります。
当グループの経営成績につきまして、2021年度の達成・進捗状況は以下のとおり分析しております。
指標 |
2021年度(期初計画) |
2021年度(実績) |
2021年度(計画差) |
売上高 |
56,000百万円 |
55,074百万円 |
△925百万円 (98.3%) |
営業利益 |
4,500百万円 |
3,152百万円 |
△1,347百万円 (70.1%) |
経常利益 |
4,800百万円 |
3,506百万円 |
△1,293百万円 (73.1%) |
親会社株主に帰属する 当期純利益 |
3,300百万円 |
2,115百万円 |
△1,184百万円 (64.1%) |
売上高は計画に対して9億25百万円の減少(計画比1.7%減)となりました。昆布製品やデザート製品は計画通り推移しましたが、惣菜製品が計画を下回ったことが全体に影響したと分析しております。
利益面については、コロナ禍の対応としてリモートワークの推進と業務の見直しによる働き方改革を進め、経費削減に努めましたが、売上高の減少及び原材料・エネルギー価格の高騰をカバーすることができず、営業利益は計画に対して13億47百万円の減少(計画比29.9%減)、経常利益は計画に対して12億93百万円の減少(計画比26.9%減)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、減損損失の計上があり、計画に対して11億84百万円の減少(計画比35.9%減)となりました。
当グループの経営成績に重要な影響を与える要因として、新型コロナウイルスの感染症の再拡大、人口減少による市場縮小や労働力不足等があります。同感染症については、現時点で終息の見込みが立っておらず、引続き感染症対策に努め、従業員の安全を配慮した企業活動を継続してまいります。人口減少につきましては、新たな食シーンの提案やSNS等を活用した全包囲網のアプローチ等でシェアの拡大に取り組むとともに、「新たな成長の芽」となる新規事業の推進や、海外も含めた新市場開拓に挑戦してまいります。労働力不足につきましては、デジタルネットワークを取り入れた業務の効率化を一層進めるとともにAI・ロボットを活用した生産技術の開発で、抜本的な生産性向上に取り組んでまいります。また、昆布と豆のブランド再構築に注力して安定した収益源を確保し、おかず、ヨーグルトの成長事業の拡大を加速してまいります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローとして51億1百万円の収入(前連結会計年度は61億5百万円の収入)があり、本業で稼いできた現金及び預金を手元資金として関東工場の豆製品と昆布製品の機械装置、鳴尾工場の昆布製品の機械装置等に係る投資等を行いました。結果、投資活動によるキャッシュ・フローとして33億30百万円の支出(前連結会計年度は56億4百万円の支出)がありました。また、自己株式の取得や配当金の支払等により、財務活動によるキャッシュ・フローとして、28億67百万円の支出(前連結会計年度は12億33百万円の支出)がありました。
当グループの資本の財源及び資金の流動性に係る情報は次のとおりであります。
当グループは、従来から製品売上等の営業活動により多くのキャッシュ・フローを得ており、自己資金と高い水準の自己資本比率をもって直近の設備投資等には自己資金を充当してまいりました。
2022年4月より、新・中期3か年計画がスタートし、持続可能な成長に向けた“ニュー・フジッコ”の経営改革を推進してまいります。今後の投資計画については、「ブランド価値の強靭化」「工場運営の改革」・「DXの推進」等を進める方針でありますが、これらの投資資金については直接金融又は間接金融の多様な手段の中から、当社にとって有利な手段を選択し、資金調達を検討してまいります。
「営業活動によるキャッシュ・フロー」の最大化とともに、財務活動により調達した資金については、事業運営上必要な流動性を確保することに努め、機動的かつ効率的に使用することで金融負債の極小化を図ってまいります。また、不要な有利子負債は避け、投資計画の妥当性を勘案し、資金の使用時期と金額については慎重に判断してまいります。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって必要となる会計上の見積りは、合理的な基準に基づき行っております。当グループでは、特に以下の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定が重要であると考えております。
a.未払販売奨励金に係る見積り
販売奨励金については、支払い率が期中を通じて概ね一定のもの、一定期間の販売実績に応じて支払い率が変動するもの等、いくつかの形態が存在し、販売から一定期間後に支払い額が確定する点に特徴があります。特に取引の都度支払額を交渉する形態については発生の都度、取引条件が異なるため、発生時期や条件が多種多様です。このため、3月分の販売奨励金については、2月までの実際請求額に基づく販売奨励金比率を基礎として3月に発生した増減理由等を加味して見積計上しており、実際の確定額は見積りと異なる可能性があります。
b.事業用資産の減損に係る見積り
当グループは、事業用資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり、各工場を基礎としてグルーピングを行い、収益性が著しく低下した資産グループについては回収可能価額を見積り、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減損し、減損損失として計上しております。
回収可能価額は、使用価値又は正味売却価額により測定し、いずれか大きい方の金額としております。使用価値は営業活動から生じる将来キャッシュ・フローをもとに見積っております。土地の正味売却価額は、路線価又は固定資産税評価額に一定の調整を行い見積っております。ただし、投資期間を通じた長期的な見積りとなるため、社会環境や事業環境等の変化により回収可能性を著しく低下させる変化が見込まれた場合には、減損損失の計上が必要となる場合があります。
c.その他有価証券の減損に係る見積り
当グループは、取引関係の維持・強化のために取引先の株式を保有しております。これらの株式には、価格変動性の高い上場株式と、市場価格のない非上場株式が含まれております。上場株式は、期末日における時価が帳簿価格の50%以上下落した場合、または、2年間連続して30%以上下落した場合には減損処理を行っております。非上場株式については、非上場会社の決算書を基に株式の評価額を見積り、今後の回復可能性を判断して減損処理を行っております。
d.繰延税金資産に係る見積り
繰延税金資産の帳簿価額は毎期見直し、将来において繰延税金資産の全部又は一部が回収できるだけの十分な課税所得を獲得できない可能性が高い部分については、帳簿価額を減額しております。
将来の課税所得は、事業計画やその時点で入手可能な経済的要因等をもとに仮定しております。ただし、一時差異が解消されるまでの長期的な見積りとなるため、事業環境等に変化が見られた場合には、見積りが実際の結果と異なる可能性があります。
e.退職給付債務に係る見積り
退職給付債務は、数理計算上の仮定に基づいて算出しております。この仮定には、割引率、予想昇給率、退職率等が含まれております。当グループは、使用した数理計算上の仮定は妥当なものと判断しておりますが、将来の不確実性を伴う仮定となるため、景気変動による予想昇給率の変化等、仮定自体の変更により退職給付債務の計上額に影響を与える可能性があります。
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