研究開発活動

5【研究開発活動】

(1)「豆」に関する研究

 長年共同で取り組んでいる神戸大学との黒大豆ポリフェノール「クロノケアSP」の機能性研究では、既にヒト試験で効果が確認されていた血管の柔軟性維持に関する機能について、2021年11月に機能性表示食品の届出が受理されました。さらに生体内抗酸化と自律神経の調節をメカニズムとした疲労感を軽減する新たな機能についてもヒト試験で効果が確認され(Akagi R., et al. 薬理と治療 49(6),953-964,2021)、2021年12月に機能性表示食品の届出が受理されました。「血管の柔軟性維持」と「疲労感の軽減」の2つのヘルスクレームが受理されている成分は他になく、まずはこれらの成果をもとに黒大豆ポリフェノールを関与成分とする健康食品原料「クロノケアSP」の素材販売と、これを配合したサプリメント「黒豆粒のチカラ」の通信販売に注力してまいります。

 大豆を主原料とし、お米のように食べられる「ダイズライス(ブランド名:Beanus)」に関しては、女性を対象に摂取試験を行い、筋力トレーニングの併用により効果的に筋力を向上させることが明らかになりました。本研究成果は近畿大学との共同研究によるものであり、2021年9月の第76回日本体力医学会で発表いたしました。主食に「ダイズライス」を使用することで、無理なくたんぱく質摂取量を増やすことが可能となります。

 また、大豆は古くから豆腐、味噌など多様な加工方法によって食されており、近年では蒸し大豆や水煮大豆のような素材に近い大豆食品も普及しております。これらの大豆食品のおいしさは、原料大豆の特性が大きく影響すると考えられます。国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)との共同研究では、定量的記述分析法(QDA:Quantitative descriptive analysis)を用いた官能評価により、大豆のもつ基本的な官能特性(外観、香り、食感、味、風味)を明らかにしました。さらにそれらの特性と嗜好性との関係を調査し、蒸し大豆の嗜好性に寄与する要因を把握することができました。これらの研究成果は2021年8月の日本食品科学工学会 第68回大会で発表いたしました。今後はこうした成果をもとに、よりおいしい製品づくりを目指してまいります。

 

(2)「乳酸菌」に関する研究

 独特の粘りのある「カスピ海ヨーグルト」は高齢者にとって飲み込みやすいことから、オーラルフレイルに係る効果の研究を進めており、服薬補助食品としての利用可能性を明らかにしました。研究成果は岩手医科大学、帝京平成大学との共同研究によるものであり、日本食品科学工学会第68回大会で発表し、食品物性の専門誌であるJournal of Texture Studies誌に論文(https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1111/jtxs.12665)が掲載されました。今後は介護臨床現場での活用を提案し、高齢社会における「カスピ海ヨーグルト」の価値をお客様へ提供したいと考えております。

 また、「カスピ海ヨーグルト」の免疫機能に及ぼす影響を調べるために、乳酸菌クレモリス菌FC株の菌末を4週間摂取し、便通改善及び免疫力スコアに及ぼす影響を調べました。この免疫力スコアは、ストレスや病気、老化の影響を受けやすい免疫機能に絞り、複数の検査項目を総合的に評価できる免疫力指標で、得点が高いほど総合的に良好であることを意味します。結果、一部の免疫細胞の数が少ない対象者のみを集めた層別解析により、クレモリス菌FC株の継続摂取が免疫力スコアを高めることが明らかになりました。加えて、排便状況が改善するだけでなく、便中の乳酸菌数やビフィズス菌数が増加することも明らかになりました。本研究成果は、2022年3月の日本農芸化学会大会で発表いたしました。将来的には機能性表示食品の届出を目指しており、継続して免疫に関する機能性研究に取り組んでまいります。

 その他、オーラルケア に役立つL8020乳酸菌を配合したお口の善玉菌「デンタフローラ」では、継続的な摂取により、歯ぐきの状態が改善すること、口臭や口のねばつきが改善することを明らかにしました。研究成果は広島大学との共同研究によるものであり、第16回歯科衛生学会で発表し、日本歯科衛生学会雑誌(Vol 16 (2), 2022)に論文が掲載されました。引き続き研究エビデンスを積み重ね、お客様へ有益となる情報を提供してまいります。

 

(3)「昆布」に関する研究

 温室効果ガスが地球温暖化に影響すると言われていますが、昆布をはじめとする海藻は温室効果ガスの削減にも貢献していることが分かっております。“海の森”を維持拡大していくことの必要性を認識しており、現在、北海道大学との共同研究で高水温などストレス環境に耐性を持つコンブ株の育成に取り組んでいます。コンブ株の育成には、5年以上の期間を要しますが、当社はこうした長期的な観点での技術開発にも注力しており、SDGsに適った資源確保に向けた昆布の育種研究を進めております。

 また、昆布由来の機能性多糖を中心に機能性研究を大妻女子大学と進めております。研究結果として内臓脂肪や血中中性脂肪の低減、食後血糖値上昇抑制等の生活習慣病の改善が認められ、昆布多糖による腸内細菌叢改善効果がそのメカニズムと考えられました。本研究の成果は2022年3月日本農芸化学会大会で発表いたしました。

 

 当社は「おいしさ価値」と「健康価値」の科学的な解明を通じて、その成果をお客様に満足していただける製品開発に役立ててまいります。

 なお、当連結会計年度の研究開発費は962百万円であります。

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