業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)等を当連結会計年度の期首から適用しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 注記事項 (会計方針の変更等)」をご参照ください。この結果、当連結会計年度における売上高は、前連結会計年度と比較して減少しており、以下の経営成績に関する説明の売上高については、前年同期比(%)を記載せずに説明しております。

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 ① 経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響を受け経済活動が停滞いたしました。また、地政学的リスクの上昇懸念や、エネルギー価格の高騰により一段と厳しさを増しております

食品業界におきましては、原材料費や動力費など各種コストは円安とも重なってさらに高騰しており、ますます厳しい経営環境となっております。一方、消費者の安全・安心への関心は高く、さらなる高い品質・衛生管理体制の整備が求められております

このような状況のなか、当社グループでは、大豆価格が過去最高値に迫るほど高騰したため、これを主原料とする凍豆腐の価格改定を2021年9月1日より実施いたしました。また、HACCPを包括した食品安全の国際規格FSSC22000のバージョンの更新を引き続き実施しており、品質の維持・向上はもとより合理化、省エネルギーのための設備投資を継続的かつ積極的に行っております。経営面では、SDGsに沿った取り組み推進のため、プラスチック削減、紙容器の森林認証素材使用の推進、健康経営優良法人の継続認定により従業員の福利厚生充実などの取り組みを強化しております。さらに、新型コロナウイルス感染症への対応については、状況に応じた感染予防対策を講じており、市場への円滑な商品提供に万全を期しております

当社グループの当連結会計年度の業績につきましては、売上高は好調だった前年度には及ばず、80億3千3百万円(前年同期82億2千4百万円)となりました。なお、収益認識会計基準等の適用により、当連結会計年度の売上高は従来の会計処理に比べ2千1百万円減少しております。利益面では、引き続き製造コストの低減や経費の削減などを図ってまいりましたが、特に年後半以降顕著となった動力費などのコストアップの影響が大きく営業利益は2億5百万円(前年同期比22.5%減)、経常利益は2億6千8百万円(同30.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は1億9千6百万円(同16.9%減)となりました

部門別概況は、次のとおりであります。

 

[凍豆腐]

凍豆腐では、急激な原材料・燃料費・運送費等の値上がりによる大幅なコスト上昇を企業努力だけでは吸収することができず、やむを得ず2021年9月1日より5~8%の出荷価格改定を実施いたしました。販売促進の活動面では、市場拡大・活性化を図るべく啓蒙活動をあらゆる機会をとらえ行ってまいりました。特に凍豆腐の新たな健康機能として免疫賦活効果や腸内環境への好影響に関する論文などを信州大学と共同で発表いたしました。また、11月には、一般社団法人国際スーパーフード・アンチエイジング機構より、当社「新あさひ豆腐10個入」がスーパーフード認証を受け、健康長寿を支えるスーパー食材としての効能を広報してまいりました。しかし、巣ごもり需要が極めて大きかった前期には及ばず、売上高は35億9千9百万円(前年同期39億4千6百万円)となりましたなお、収益認識会計基準等の適用により、当連結会計年度の売上高は従来の会計処理に比べ8百万円減少しております。

 

[加工食品(即席みそ汁等)]

加工食品では、単品収益管理の徹底により不採算アイテムの改廃を進め収益力の改善を図る一方、好調に推移しているカップ入りタイプのオートミールのアイテムアップなど新商品の発売を強化してまいりました。さらに、認知度をアップさせる施策としてインスタグラムを利用した消費者キャンペーンなどを実施してまいりました。その結果、売上高は24億5千万円(前年同期22億7千7百万円)と順調に拡大することができましたなお、収益認識会計基準等の適用により、当連結会計年度の売上高は従来の会計処理に比べ1千3百万円減少しております

 

 

[その他食料品]

その他食料品では、売上高は19億8千4百万円(前年同期19億9千9百万円)となりました。主力の医療用食材につきましても、製造コストの上昇を受け2021年10月1日より価格改定を実施いたしました。新型コロナウイルス感染予防対策の中、病院や介護施設などへの訪問が制限されておりましたが、アイテムアップや営業活動の工夫・強化により売上を拡大することができました。一方、その他OEM製品等は需要減少を主要因に低調に推移いたしました。

 

 ② 財政状態の状況

当連結会計年度の資産合計は、前連結会計年度に比べ3億3千8百万円減少し95億7千9百万円(前連結会計年度比3.4%減)となりました。これは、受取手形及び売掛金の増加3千7百万円や棚卸資産の増加1億2千1百万円、投資有価証券の時価評価などでの増加1千7百万円があったものの、現金及び預金の減少2億8千1百万円や有形固定資産の減少2億1千9百万円があったことが主な要因です。
  当連結会計年度の負債合計は、前連結会計年度に比べ5億7千5百万円減少し20億2千7百万円(同22.1%減)となりました。これは、支払手形及び買掛金の増加7千5百万円などがあったものの、返済に伴う長期借入金の減少3億8千6百万円や短期借入金の減少1億2千1百万円、未払金の減少7千4百万円などが主な要因です。
  当連結会計年度の純資産合計は、前連結会計年度に比べ2億3千6百万円増加し75億5千1百万円(同3.2%増)となりました。これは利益剰余金の増加1億2千9百万円や為替換算調整勘定の増加6千1百万円などがあったことによるものです。

以上により自己資本比率は前連結会計年度に比べ5.0ポイント増加し78.3%となりました。

 

 ③ キャッシュ・フローの状況

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動による現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の増加は、6億7千5百万円であります。増減の主な内訳は、減少要因として棚卸資産の増加で1億1千4百万円、売上債権の増加で3千4百万円、法人税等の支払額で4千6百万円であり、増加要因として税金等調整前当期純利益の計上2億6千2百万円、減価償却費5億3千9百万円、仕入債務の増加額7千5百万円であります。

また、前連結会計年度に比べ資金の流入額が1億5千3百万円減少しています。減少の要因としましては、仕入債務の増減差額で1億1千2百万円の増加や退職給付制度移行未払金の増減差額で6千万円の増加があったものの、売上債権の増減差額で1億5千2百万円の減少や棚卸資産の増減差額で9千4百万円の減少、投資有価証券評価損の増減差額で6千9百万円の減少などがあったことなどによるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動による資金の減少は、1億8千8百万円であります。減少の主な要因は、定期預金の預入による支出と収入の差額による増加2億円があったものの、有形固定資産の取得による支出3億7千5百万円などによるものです。
  また、前連結会計年度に比べ資金の流出額が5億2百万円減少しております。流出額減少の要因としましては、有形固定資産の取得による支出の減少1億5百万円や無形固定資産の取得による支出の減少8千7百万円、定期預金の預入による支出の減少、同払戻による収入の増加を合わせ3億1百万円の支出減少があったことなどによるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動による資金の減少は、6億円であります。減少の主な要因は、長期借入金の返済による支出4億8千3百万円や配当金の支払額6千3百万円があったことによるものです。
  また、前連結会計年度に比べ資金の流出額が3億2千万円増加しております。資金流出増加の主な要因は、長期借入による収入の減少3億1千万円などによるものです。

以上により当連結会計年度末における資金は、前連結会計年度末に比べ8千万円減少し8億4千5百万円となりました。

 

 

 ④ 生産、受注及び販売の状況

当社グループは、食料品の製造販売を行っており、管理しているセグメントにつきましても「食料品事業」の単一セグメントとしております。食料品事業セグメントの内訳としては下記のとおりとなります。

a.生産実績

 

品目

金額(千円)

対前期増減率(%)

凍豆腐

3,600,642

△8.5

加工食品
(即席みそ汁等)

2,466,922

6.5

合計

6,067,565

△2.9

 

(注) 金額は期中平均販売価格で表示しております。

 

b.受注状況

当社グループは見込生産をしておりますので、受注状況について記載すべき事項はありません。

 

c.販売実績

 

品目

金額(千円)

対前期増減率(%)

凍豆腐

3,599,204

△8.8

加工食品
(即席みそ汁等)

2,450,219

7.6

その他食料品

1,984,213

△0.8

合計

8,033,637

△2.3

 

(注) 1 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

三菱商事㈱

4,393,774

53.4

4,355,212

54.2

三井物産㈱

1,106,597

13.5

973,563

12.1

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

①重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されておりますが、この連結財務諸表の作成にあたっては、当社グループの判断により、一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されております。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらとは異なる可能性があります。引当金項目につきましては、「第5 経理の状況 連結財務諸表 注記事項 4 会計方針に関する事項 (3)重要な引当金の計上基準」に、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち重要なものにつきましては、「第5 経理の状況 連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しております。なお、当連結会計年度での新型コロナウイルス感染症の拡大の影響については軽微であると判断しております。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの経営成績等は、前連結会計年度と比較し減収減益となりました。食料品セグメントのうち、主力事業である凍豆腐の売上高は35億9千9百万円(前年同期39億4千6百万円)となりました。凍豆腐の市場は長期的には微減傾向にありますが、当社グループでは凍豆腐が持つ健康機能性に着目し、その研究成果を論文として継続的に発表し市場の活性化に努めております。当連結会計年度には、免疫賦活効果や腸内環境への好影響に関する論文を発表しました。これまでもコレステロールの調整作用、中性脂肪の上昇抑制、糖尿病予防・改善効果、血糖値スパイク抑制効果など凍豆腐に多く含まれるレジスタントたんぱく質に関しての論文を発表し、市場の維持拡大に努めております。当連結会計年度の売上高は、巣ごもり需要が極めて大きかった前連結会計年度の反動を受けたほか、価格改定に伴う販売数量減などにより減収となりました。しかし、凍豆腐は昨今注目を集めている「大豆ミート」の祖先とも言え、その商品価値の新たな訴求も今後積極的に行ってまいります。加工食品(即席みそ汁等)の売上高は24億5千万円(前年同期22億7千7百万円)となりました。競合他社との価格競争が激しく単純な量的拡大での業績向上は困難となってきております。そのため、当社の強みである具材料のバリエーションの強化やより一層環境面に配慮したカップ入りタイプでの強化を引き続き行い、売上の維持・拡大を図ってまいります。また、新たなジャンルとして今話題の「オートミール」を調理の手間を省いて手軽に食事に取り入れることができるように、当社のカップ入りみそ汁のノウハウを生かしたカップ入りタイプとして新発売しました。その他食料品のうち医療用食材は、長期化する新型コロナウイルス感染症拡大防止対策により病院や介護施設等への訪問自粛など営業活動への影響や原材料価格の高騰に対応するための価格改定を実施したにもかかわらず、完全調理済み食品としての利便性が評価され、需要は安定的に推移しており引続き市場の成長が期待されております。

利益面におきましては、固定費等諸経費の削減努力を続ける一方、当然ながら採算確保できない無理をした売り上げ拡大には一定の歯止めをかけ、安定的な適正利益の計上を目指した経営を継続してまいります。

コスト面におきましては、凍豆腐、医療用食材にて急激な原材料・燃料費・運送費等の値上がりによる大幅なコスト上昇を企業努力だけでは吸収することができず、やむを得ず2021年秋より出荷価格改定を実施いたしました。また、品質に関して万全を期すため、引き続き積極的に品質投資を行っております。消費者の皆様に安心して召し上がっていただけるよう、また、その品質をアピールできるよう外部審査機関の認証「FSSC22000」のバージョンアップを継続して行い周知してまいりました。また当社グループ凍豆腐製品の主原料である大豆につきましては、SDGsにも則したグローバルGAP(※)認証済みに全面的に切り替え持続可能な生産活動に寄与し、より一層の品質向上に努めてまいりました。品質コストは食品メーカーとして安定的、継続的に企業価値の向上を目指すためには必要不可欠なものであります。短期的な利益の創出には相反するものですが、長期的な視野に立ち今後も積極的に推進してまいります。コスト削減策としては生産体制の継続的な見直し、製造方法の研究・技術開発による原材料使用量の削減などを行っております。

国内の食品市場は人口減少に伴い縮小していくものと思われますが、その中でも当社グループの製品を選択していただけるよう差別化、付加価値の増大を推進してまいります。

なお、新型コロナウイルス感染症の拡大に対しての当社グループとしての対応は、従業員をはじめ関係者の安全確保を最優先としたうえで、食料品の安定生産、供給に万全を期すよう、関係省庁などの通達、情報を念頭に引き続き経営を進めてまいりました。

 

当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、(1) 経営成績等の状況の概要②財政状態及び③キャッシュ・フローの状況に記載しております。
  資産、負債・資本につきましては、安定した経営基盤を継続するため、また、利益向上のため将来性のある事業への投資を積極的に行っております。凍豆腐事業は健康機能性の周知により海外を含む潜在的な市場拡大の余地があると考えております。その他食料品として区分しております医療用食材については継続的・安定的に成長しており、当社グループにおいて第3の柱として欠かせない事業となってきております。
  キャッシュ・フローにつきましては、営業活動によるキャッシュ・フローの向上を第一に考え、利益の向上、在庫圧縮などに取り組んでおります。資金調達に関しましては、事業活動による資金の調達を前提として、将来的な投資に関するものは金融機関からの借入により調達を行っております。なお、借入につきましては、約定により返済しております。

(※)グローバルGAPとは、世界120か国以上で食品の安全、労働環境、環境保全などに配慮した生産活動を行っている優良事業者を認証する農業生産工程管理の国際規格です。

 

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