課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

当社グループは、「スポーツをもっと身近に」をパーパス(存在意義)としており、誰もがスポーツを楽しみ、健康で充実した日常を送れる世界を目指して、常にお客様の立場に立ち、お客様の求める商品・サービスを提供し続けてまいります。また、信頼性の高い企業運営によって社会に貢献し、長期的に株主価値を創造し、従業員の生活も豊かになる経営を実践できるよう努めてまいります。

経営方針としては、「スポーツ業界のイノベーターになる」ことを掲げており、常に革新的な取り組みに挑戦し続けることで、長期的な目標として「顧客満足度及び従業員満足度№1」・「売上高営業利益率10%以上」・「国内スポーツ用品市場における市場シェア№1」・「国内スポーツ用品企業として株式時価総額№1」の実現を目指しております。

 

(2)経営戦略等

少子高齢化などにより厳しさを増すスポーツ用品国内市場において、環境変化に柔軟に対応して当社グループが成長していくためには、デジタル領域への対応を主軸に事業構造を継続的に革新し、お客様のニーズを先取りして新しい価値を創造し、顧客満足度を高めていくことが必要であると考えています。主要課題への対応方針としては、以下の3点の実現を目指しております。

① 顧客ロイヤルティの向上による着実な客数増・客単価増の実現

a.スポーツ・レジャー用品のEC市場における優位性の確立に向け、ECサイトの使い勝手と購買体験を継続的に向上させ、リアル店舗の価値も最大限に引き出せるようなOMO施策を推進することで、お客様にとって本当に快適な、使いやすく魅力のあるサービスを実現する。

b.リアル店舗においては、継続的な出店により未出店エリアを着実にカバーしていくとともに、スタッフの専門性強化、既存店の売場改装、デジタル技術の導入・活用などにより、常に快適で新しい購買体験を提供する店舗を実現していく。

c.保有する約900万人の会員データの迅速かつ有効な分析により、商品構成の最適化や、新たなサービス提供へと繋げるデータドリブンな組織体制を構築する。さらには画一的な情報発信ではない、個々のお客様に共感していただけるコミュニケーションの実現を目指す。

d.お客様の意見を反映した高品質で手頃な価格の、独自性の高いプライベートブランド商品の提供を拡大するとともに、ナショナルブランドメーカーとの協業を強化し、より魅力的な商品ラインナップを実現することで、顧客満足度向上を図る。

② 事業全般にわたる総合的ブランドマネジメントの実現

a.企業・ストア・商品のブランドコンセプトを統合的に管理することにより、グループ全体のコアコンピタンスとして「ブランド力」の強化を図る。

b.ティゴラ・イグニオを軸とする自社ブランド商品の魅力を高め、市場における認知度を向上させることにより、競合との差別化を図る。

③ 絶え間ない経営システムの革新

a.株主価値最大化を指向した業績評価・管理体制を確立する。

b.事業全体にわたって戦略的に、デジタル技術の導入や、既存システムの刷新をしていくことで、業務運営の抜本的な見直しを行い、生産性の高い高効率な業務プロセスを確立する。

c.あらゆる背景を持った人材が活躍できる組織体制・風土を整備し、変革をリードする優秀な人材の成長を支援し、登用していくことで、従業員のモチベーションを高め、より大きな付加価値を実現する。

d.自然環境における課題などに対し、当社グループの事業運営による貢献を拡大し、スポーツ業界のサステイナビリティをリードする取組みを推進していく。

e.内部統制システムを整備し、株主をはじめとする全てのステークホルダーから信頼される企業運営体制を確立する。

 

(3)経営環境

① 企業構造

 当社グループ(当社および当社の関係会社)は、当社(株式会社アルペン)および子会社6社により構成されており、スポーツ用品、レジャー用品の販売および製造を主たる事業としております。当社グループの事業全体の売上高および営業利益に対し、同事業の売上高および営業利益は、いずれも9割超を占めております。

事業構成および内容につきましては、「第一部 企業情報 第1 企業の概況 3 事業の内容」に示しており

ますので、ご覧ください。

② 主要商品・サービスの内容

 当社グループが販売する主要商品・サービスは、スポーツ用品、レジャー用品の小売であります。その内容に

つきましては、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 3経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③ 生産、受注及び販売の実績 b.販売実績」に、商品部門別売上高の状況を示しておりますので、ご覧ください。

③ 顧客基盤

 当社グループの主要事業が主に対象とする顧客は、不特定多数の一般消費者であり、特定の顧客に集中はして

おりません。また、販売方法は店舗における顧客との対面によるものが大半を占めますが、近年、急速に変化している生活様式や消費行動にいち早く対応するため、ECサイトの拡充にも注力しております。

④ 事業を行う市場の状況

 国内市場の情勢は、長期的には少子高齢化や人口減少による影響が懸念されるほか、新型コロナウイルス感染症の影響がいつまで続くか不明瞭であること、足元では物品やサービス価格の上昇が相次いでいることなどから、先行きの見通しが難しい厳しい状況となっています。

 しかしながら、ゴルフやアウトドアのように需要が拡大したカテゴリーがあることのほか、今後の社会活動正常化による回復の動きや、健康意識の高まりによって、スポーツ・レジャー市場においては一定程度の需要を見込むことができる状況となっております。

 競合環境におきましては、市場内で競合する事業者が多数存在しているほか、近年では、衣料品におけるスポーツと周辺領域との垣根がなくなりつつあったり、ホームセンターや家電量販店がアウトドア商品の取扱いを拡大するなど、異業種の事業者が当社グループと競合する商品の販売に参入する傾向が多く見受けられます。また、EC市場が急速に成長しており、メーカー直販のECサイトが拡大するなど、競合状況は厳しさを増しております。また、コロナ禍により変化した生活様式や、急速に進むデジタル化にいち早く対応していくことが重要となってきております。

⑤ 販売網

 当社グループは1972年7月の当社設立以来、一貫してスポーツ用品の専門小売業として店舗を展開してまいり

ました。店舗形態は、当初は、スキー用品の販売を主体とした「アルペン」だけでしたが、次にゴルフ用品の販

売を目的とした「ゴルフ5」を開設し、その後、野球用品等の各種一般スポーツ用品を備えた大型店舗として

「スポーツデポ」を展開いたしました。さらに2018年からは、アウトドア用品を専門に取り扱う「アルペンアウ

トドアーズ」「アルペンマウンテンズ」の展開を進めております。2022年6月末現在、「アルペン」56店舗、

「ゴルフ5」196店舗、「スポーツデポ」148店舗、「その他」3店舗を展開しております。

 地区別店舗形態別店舗数等の詳細につきましては、「第一部 企業情報 第1 企業の概況 3 事業の内

容」に示しておりますので、ご覧ください。

 また、現在ではEC売上が全体の10%を超えてきており、重要な販売チャネルとなっております。自社ECサイト

の運営を行うほか、楽天市場・paypayモール・Amazon・ZOZOTOWN・ロコンドといった外部モールへ出店しており

ます。

⑥ 競合他社との競争優位性

 近年、競合他社との競争が激化しておりますが、当社グループといたしましては、独自性を発揮し、競争優位性を確保するため、以下の3点に特に注力しております。

・「スポーツ・レジャー用品のEC市場における優位性の確立」

ECサイトの機能性や、サービスの基礎となる物流機能を継続的に向上させ、全国に展開する約400のリアル

店舗との連携も強化することで、お客様が使いやすく魅力のあるサービスとして確立する。

・「店舗におけるサービス・売場の魅力向上」

店舗スタッフへの教育を強化し、提供するサービスの質を高めるとともに、データ分析による商品構成の最

適化を行い、高い専門性を持った本当のスポーツ店としての存在を確立する。

またデジタル技術の積極的な導入による快適な購買体験と、本物のスポーツシーンを感じられるワクワク感

のある売場を創造していく。

・「プライベートブランド商品を中心とした高品質で手頃な商品の提供」

お客様の声を反映した独自性の高い商品の開発により、ティゴラ・イグニオ等の自社ブランドの魅力を高め

る一方で、ナショナルブランドメーカーとも積極的に連携し、当社グループならではのプライベートブラン

ド商品とナショナルブランド商品のベストミックスを実現する。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 長期的には少子高齢化や人口減少による影響が懸念され、短期的には新型コロナウイルス感染症の動向や、急速に進む物価上昇などによって、先行きの見通しが難しい状況となっています。しかしながらゴルフやアウトドアのように需要が拡大したカテゴリーがあることのほか、社会活動正常化による回復の動きや、健康意識の高まりによって、スポーツ・レジャー市場においては一定程度の需要を見込むことができます。このような状況の下、当社グループは、以下の内容について、優先的に対処すべき課題として取り組みを進めてまいります。

① デジタル化の進展

 急速に成長し続けるEC市場への対応や、2019年4月に導入した新会員プログラムの顧客データの活用も含め

て、リアル店舗・EC双方で、お客様の利便性向上を図り、満足いただけるサービスの提供が実現できるように

するとともに、戦略立案や商品の仕入れ・企画にも顧客データから得られた情報を生かしていけるように注力し

て取り組んでまいります。また、全ての社員がデータへの感度を高め、感覚論・経験論ではないデータに基づい

た判断が行えるようになるデータ経営の推進を図ってまいります。

② 「ブランド力」の強化

 企業・ストア・商品のブランドコンセプトを統合的に管理することにより、グループ全体のコアコンピタン

スとして「ブランド力」の強化を図ってまいります。また、独自性のある優れたプライベートブランド商品を

生み出し続けることで、会社としての知名度と価値を更に高めていくことを目指すとともに、中長期的に会社

の成長を支える存在となるよう強化してまいります。

③ 取引先との協業の深化

 業界№1の小売企業として、商品面だけでなく、マーケティング、店舗へのサポート、物流等のビジネスインフラの整備など、多方面での協業を深化させていけるよう注力してまいります。

④ リアル店舗の強化

 店舗スタッフの専門性・販売力の更なる向上を図ることで、接客サービスの向上に努めるとともに、魅力的な

売場作りの徹底と、お客様に居心地の良さや安心感を感じてもらえるようホスピタリティの強化を図ることで、

お客様により一層満足いただける店舗を構築してまいります。また、デジタル技術の導入や積極的な活用によ

り、お客様の買い物の利便性を向上させ、新たな体験を提供してまいります。

⑤ 物流改革

 強固で効率的な物流体制を作り、多様化するお客様のニーズに継続して応えていくため、これまでの物流体制を一新した新物流戦略を進めてまいります。

 新物流戦略では、それぞれの販売チャンネルに対して様々なカテゴリの商品を迅速かつ効率的に供給するた

め、物流システムを再構築するとともに、アパレル、シューズ、大物(キャンプ用品やゴルフキャディバッグなど)、小物(フィットネス用品やサポーターなど)などカテゴリ別に物流網を整流化し、以下の3項目を実現してまいります。

a. 店舗までの供給リードタイムの大幅短縮化の実現
b. 売場/ブランド別梱包納品による店舗品出しまでの作業簡素化
c. 出荷物量コントロールによる庫内作業人数および配送の最適化

d.成長を続けるECのサービスレベルの向上

 物流改革により、ECと全国約400店舗で魅力ある店舗づくりおよび顧客体験をさらに強化してまいります。

⑥ コスト削減

 足元で急速に進む物価上昇など、変化の激しい経営環境にいち早く対応するために、新しいデジタル技術の

導入や既存システムの刷新などにより、業務プロセスを抜本的に見直して生産性を向上させ、業績改善に向けた

経営基盤の強化に努めてまいります。

 

⑦ サステイナビリティへの対応

 気候変動や環境汚染、少子化などの多くの問題により、スポーツを楽しむ環境が徐々に失われつつありま

す。スポーツをするために必要な「自然環境を守る」こと、「スポーツを楽しむ愛好家を育む」ことは当社の責任であり使命と考え、2020年に「サステイナビリティ推進プロジェクト」を立ち上げ、サステイナビリティへの対応に取り組んでおります。現在は2027年までに達成すべき5つの目標を設定し、全社をあげて積極的に活動を進めております。

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〈気候変動への取り組みとTCFD提言への対応〉

気候変動問題は年々深刻さを増し、地球規模で人々の生活に大きな影響を及ぼしています。日本におきましても、ここ数年、夏の酷暑や極端な暖冬の発生、大型台風や記録的な大雨などによって、市民生活が影響を受け、経済活動にも大きな影響が発生しております。

当社グループは、気候変動問題が企業の持続的な発展に欠かせない安定した社会を損なうものと認識し、パリ協定の温室効果ガス削減目標の達成に貢献したいと考えております。現在、CO2排出量削減を取り組むべきテーマの1つに掲げ、持続可能な社会の実現に向けた施策を検討、実行しております。このような当社グループの気候変動対応の適切さを検証するためのベンチマークとして、TCFD提言に基づく情報開示を活用いたします。

今後も気候変動に真摯に向き合い、事業に影響する機会・リスクへの理解を深化させ、その取り組みの積極的な開示に努めてまいります。

〈ガバナンス〉

当社グループでは、気候変動への対応を重要な経営課題の一つとして位置付け、「スポーツをもっと身近に楽しむことのできる社会」の実現を目指しております。気候変動関連への対応について、代表取締役社長直轄の「サステイナビリティ推進プロジェクト」が、関連部門とともに課題の認識やコミットメントの進捗状況の取りまとめを行い、その内容について定期的に取締役会に報告を行っております。取締役会は、気候変動を含む環境・サステイナビリティに関連する重要事項や各コミットメントの進捗報告を受けることで、取組状況のモニタリングを行うとともに、その内容について、承認と必要な助言を行っております。

〈戦略〉

当社グループは、気候変動による世界的な平均気温の4℃上昇が社会に及ぼす影響は甚大であると認識し、気温上昇を1.5℃以下に抑制することをめざす動きに貢献していくことが重要であると考えております。2℃以下シナリオ(1.5℃目標)への対応を強化すべく、気候関連のリスクと機会がもたらす事業への影響の把握や、戦略の検討を進めております。

気候変動に伴うリスクには、温室効果ガス排出に関する規制強化や、気象災害の激甚化(台風・豪雨などによる水害発生等)による店舗・施設などへの被害が考えられます。一方、消費者の環境意識の向上に対応した商品・サービスの提供は、当社グループのビジネスの機会であると捉えております。

上記を踏まえ、当社の主要事業であるスポーツ用品小売事業の運営におけるリスクと機会の抽出を実施いたしました。各部門の業務において、気候変動の影響が及ぶ事象について想定し、これらのリスクや機会による影響の発現時期を、短期(3年未満)、中期(3~10年未満)、長期(10年以上)の観点で以下の表のとおり整理いたしました。

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〈リスク管理〉

当社グループでは、事業全般に関わる気候変動関連リスクと機会は、プロジェクトチームが中心となり全社より抽出した内容について、戦略企画室が経営への影響度、発生可能性などをふまえて重要性の識別を行い、当社グループとして管理すべき内容を取締役会に上程しております。

現状では主に短期・中期のリスク識別にとどまっており、また財務的影響などの定量的な分析は十分とは言えませんが、順次対応を拡大し、情報開示の充実を進めてまいります。

〈指標と目標〉

「サステイナビリティ推進プロジェクト」の2027年までに達成すべき5つの目標では、「CO2排出量削減活動

の推進」をテーマの1つとして掲げ、CO2排出量削減に向けた施策を検討・実行している他、資源循環の促

進、自然環境の保全活動などについて具体的な定量目標を定め、推進しております。

 CO2排出量削減の取り組みでは、具体的な数値目標として、当社グループの全事業所におけるエネルギー起

源CO2排出量を、2027年度までに2015年度対比で50%削減することを定めております。また、資源循環の促進で

は、アパレル、シューズ、バッグにおける環境対応商品の売上高比率を2027年までに30%以上に引き上げるこ

と、自然環境の保全活動では、2021年からの累計で2万人以上(社員含む)が環境保全に関する啓発活動に参

加する機会を提供することを目標に取り組んでおります。

 

⑧ 翌期に目標とする業績見込み

 翌連結会計年度に目標とする連結業績の見込値は次のとおりであります。

 なお、当該見込値は、新型コロナウイルス感染症についてこれまでのような大規模な行動制限が起きないと

仮定したうえで、過去の経営成績を参考に、通常予測可能な事項を盛り込んだ形で算定しております。

項目

当期実績値

翌期見込値

当期増減率(%)

売上高       (百万円)

232,332

248,000

6.7

営業利益      (百万円)

7,153

7,200

0.7

経常利益      (百万円)

8,988

8,650

△3.8

親会社株主に帰属する

当期純利益     (百万円)

5,310

5,020

△5.5

1株当たり当期純利益金額(円)

135.69

129.41

(注)翌期見込値は、(株)東京証券取引所の適時開示規則に基づき、2022年8月4日付で「2023年6月期の連結業績予想」として公表したものであります。

 

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