業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルスのオミクロン株の感染拡大に伴う個人消費の抑制に加え、原材料価格及び物流費の高騰、半導体部品を含む電子部品等の調達困難、さらにロシアのウクライナ侵攻、米国中央銀行の利上げの影響等による急速な円安に伴う物価上昇等により、先行き不透明な状況で推移しました。

このような経済環境のもと、当社グループにおいては環境変化に機動的に即応し、効率性や採算性を考慮した社内体制の強化・整備を図り、利益重視の経営を推進いたしました。

この結果、当連結会計年度の売上高は470億5千9百万円(前期比1.8%増)となり、営業利益は98億5千万円(前期比4.3%増)、経常利益は108億4千8百万円(前期比9.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は77億3千8百万円(前期比32.0%増)となりました。

a. セグメントごとの経営成績

(セキュリティ機器)

セキュリティ機器につきましては、マンション向けの自社更新及び新規獲得が引き続き堅調に推移し、売上高は133億7千9百万円(前期比5.1%増)、セグメント利益は55億4百万円(前期比4.1%増)となりました。

(カード機器及びその他事務用機器)

カード機器及びその他事務用機器につきましては、カード機器の主要販売先である病院向け等の営業活動が正常化する中で、売上高は39億7千万円(前期比7.7%増)、セグメント利益は8億9千9百万円(前期比82.8%増)となりました。なお、2022年6月には、イタリアMatica Fintec社との資本提携の一環として、当社の連結子会社であるNBS Technologies Inc.傘下で米国孫会社のCard Technology Corporation及び英国孫会社のNBSTechnologies Limitedの株式をMatica Fintec社に売却しました。

(情報機器)

情報機器につきましては、半導体部品を含む電子部品等の調達困難、物流費の高騰及び小型カッティングマシンの主要販売先である米国の景気減速懸念等の影響により、売上高は178億1千5百万円(前期比7.6%減)、セグメント利益は26億2千8百万円(前期比18.8%減)となりました。

(設計事業)

設計事業につきましては、新型コロナウイルス感染症の影響による工事完成遅れ等が徐々に解消されてきたこと等により、売上高は47億8千4百万円(前期比11.3%増)、セグメント利益は3億1千9百万円(前期比113.7%増)となりました。

(その他)

その他につきましては、売上高は71億1千1百万円(前年同期比14.2%増)、セグメント利益は5億9千3百万円(前年同期比301.7%増)となりました。

b. 当連結会計年度の財政状態

当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べて87億8千2百万円増加し、754億1千8百万円となりました。主な要因は、流動資産における現金及び預金44億2千4百万円増加、商品及び製品10億1千3百万円増加、未収入金21億4千4百万円増加等であり、その増減の理由としては、当連結会計年度の純利益及び保有株式売却を含むM&A活動の増加等が挙げられます。

負債につきましては、前連結会計年度末に比べて12億1千1百万円増加し、140億8千1百万円となりました。主な要因は、流動負債における未払法人税等11億8千万円の増加、有償支給取引に係る負債1億6千6百万円の計上等であり、その増減の理由としては、当連結会計年度の課税利益の増加及び新収益認識基準による買取義務のある有償支給部品の負債計上等があげられます。

純資産につきましては、前連結会計年度末に比べて75億7千1百万円増加し、613億3千7百万円となりました。主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益77億3千8百万円の計上、配当金22億7千3百万円の計上、為替換算調整勘定17億6千1百万円の計上等であります。この結果、自己資本比率は81.2%となり、前連結会計年度末の80.6%から上昇しました。

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、364億3千5百万円となり、前連結会計年度末に比べて44億2千3百万円増加しました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は80億9千5百万円(前連結会計年度は93億7千2百万円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益109億8千7百万円、減価償却費8億7千6百万円等の収入に対し、法人税等の支払額22億4千8百万円、投資有価証券売却益14億2千7百万円等があったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は22億7百万円(前連結会計年度は6億5千6百万円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出7億3千8百万円、投資有価証券の取得による支出8億6千8百万円等があったことによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は28億4千8百万円(前連結会計年度は24億6千5百万円の支出)となりました。これは主に、配当金の支払額22億7千5百万円の支出等があったことによるものであります。

(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移

 

2018年

6月期

2019年

6月期

2020年

6月期

2021年

6月期

2022年

6月期

自己資本比率(%)

73.2

78.4

81.1

80.6

81.2

時価ベースの自己資本比率(%)

190.6

137.8

120.7

155.6

97.3

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

834.2

1,388.6

1,108.9

1,938.2

1,997.13

自己資本比率:自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い

(注)1.いずれも連結ベースの財務指標により計算しております。

2.株式時価総額は、期末株価終値×期末株式数(自己株式控除後)により算出しております。

3.キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。

4.有利子負債は連結貸借対照表上に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって会計上の見積りが必要なものについては期末時点において把握できる最善の方法により会計上の見積りを行っております。他の会計上の見積りについては、「第5経理の状況 1.連結財務諸表等 注記事項 4会計方針に関する事項」に記載のとおりであります。

a. のれんの減損

のれんの減損テストにおける将来キャッシュ・フローは、経営者が承認した今後5年度分の事業計画を経営環境などの外部要因に関する情報や過去の実績推移などに基づいて修正し、資産グループの現在の使用状況等を考慮し見積っております。回収可能価額は、当該将来キャッシュ・フローの見積り額を現在価値に割り引いた使用価値で算定しており、割引率は、税引前の加重平均資本コストを基に算定しております。

b. 有価証券の減損

有価証券の減損については、市場価格のあるものについては期末日の時価が取得原価の50%以上下落しているとき、市場価格の無いものについては1株当たり純資産額に所有株式数を乗じた金額を実質価額として評価し、当該実質価額が決算期末日の取得原価の50%以上下落しているときには、決算期末日までに入手し得る発行会社の財務諸表並びに将来の経営状況を考慮し回復不可能と判断した場合、当該実質価格まで減損処理を行っております。

c. 繰延税金資産(税効果会計)

繰延税金資産は将来減算一時差異、税務上の繰越欠損金及び繰越税額控除のうち、将来課税所得に対して利用できる可能性が高く税金負担額を軽減することができると認められる範囲内で計上しております。また、繰延税金資産は毎期見直しており、将来減算一時差異、税務上の繰越欠損金及び繰越税額控除の全部又は一部が将来の税金負担額を軽減する効果を有さなくなったと判断した場合、計上していた繰延税金資産のうち回収可能性がない金額を取り崩しております。

(新型コロナウイルス感染症の影響)

新型コロナウイルス感染症拡大による、セキュリティ機器のマンション向け販売におけるマンション管理組合の理事会・総会の延期に伴う、販売・納品の遅れや、カード機器の主要販売先の病院向け等における営業活動の大幅な制限、商談・納品の延期や設備投資の抑制等は徐々に正常化に向かっております。

当該感染症の今後の広がり方や収束時期等を予測することは困難な状況にありますが、今後も営業活動の正常化が継続される仮定を置き、会計上の見積もりを行っております。

このように、現在の状況及び入手可能な情報に基づき、合理的と考えられる見積り及び判断を行っておりますが、新型コロナウイルス感染症の広がりや収束時期等の見積りには不確実性を伴うため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a. 生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年7月1日

至 2022年6月30日)

金額(百万円)

前年同期比(%)

カード機器及びその他事務用機器

情報機器

3,484

119.9

設計事業

4,806

111.2

報告セグメント計

8,290

111.0

その他

1,766

89.2

合計

10,056

106.4

(注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。

2.金額には、標準品の外部生産高を含めております。

b. 商品仕入実績

当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年7月1日

至 2022年6月30日)

金額(百万円)

前年同期比(%)

セキュリティ機器

2,406

106.8

カード機器及びその他事務用機器

2,550

113.2

情報機器

2,870

25.9

報告セグメント計

7,827

50.2

その他

1,527

141.6

合計

9,354

56.1

(注)1.金額は仕入価格によっております。

c. 受注実績

当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

設計事業

5,088

117.1

4,241

112.2

(注)1.金額は契約価格によっております。

 

d. 販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年7月1日

至 2022年6月30日)

金額(百万円)

前年同期比(%)

セキュリティ機器

13,379

105.1

カード機器及びその他事務用機器

3,970

107.7

情報機器

17,815

92.4

設計事業

4,784

111.3

報告セグメント計

39,948

99.9

その他

7,111

114.2

合計

47,059

101.8

(注)1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2020年7月1日

至 2021年6月30日)

当連結会計年度

(自 2021年7月1日

至 2022年6月30日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

三菱HCキャピタル株式会社

5,965

12.9

6,053

12.9

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

① 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、見積りが必要となる事項においては合理的な基準に基づき会計上の見積りを行っておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

この連結財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載されているとおりであります。

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a. 経営成績

当社グループには主要事業会社としまして、ドッドウェル ビー・エム・エス、グラフテック、あい設計がありますが、当期は、これら主要事業会社の合計で、前期比6億円の営業利益増益を見込んでおりました。

その見込みに対して、下記の主要事業会社業績の結果、合計では、前期比4億円の営業利益増益となりました。

各事業会社別の営業利益では、ドッドウエル ビー・エム・エスではセキュリティ機器の主力のマンション向け販売及びカード機器の主要販売先である病院向け等の営業活動が正常化する中で、約5億円の営業利益増益となり、過去最高の営業利益を達成しました。

同様に、あい設計においても、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響による工事完成遅れ等が徐々に解消されてきたことから、約2億円の営業利益増益となりました。

一方、グラフテック関連では、海外子会社Silhouette America Inc.の主力商品であるコンシューマ向け小型カッティングマシンの販売において、半導体部品を含む電子部品等の調達困難、物流費の高騰及び主要販売先である米国の景気減速懸念等の影響による利益減が響き、約4億円の営業利益減益となりました。

b. 資本の財源及び資金の流動性

当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、運転資金は基本的に内部資金により充当しております。当社グループは装置産業ではないため、多額の設備投資は必要ではなく、長期借入金による設備投資資金の調達は現在のところ必要でない状況となっております。

当社グループは基本的には、無借金経営を行いつつ内部留保を厚くすることが安定した経営に貢献するものと考えておりますが、成長に向けてのM&Aの強化の検討等においては、大型のM&A案件などにより多額の資金が必要となった場合は、長期借り入れも視野に入れてまいります。

c. 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標

経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、当社グループは、商社部門とメーカー部門が共存しており、売上高は両部門のバランスにより変動することから、経営計画においては、営業利益に絶対値目標を定め、経営を推進しております。また、当社は引き続き成長に向けてM&Aを強化する方針です。このため、短期的には営業利益が変動する可能性がありますが、長期的にはEPSを重要な経営指標と設定し、その確保のために粗利重視の経営を進めその最大化に努めてまいります。

d. セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する分析・検討内容

(セキュリティ機器)

当社のセキュリティ機器事業は、マンション向けと一般法人企業向けの2つの分野で事業を展開しております。マンション向けの場合、その多くが分譲マンションで占められており、基本的には既設設備の更新需要を中心に直販による営業活動を行っております。契約の大半がリース契約であることから、更新物件を確実にフォローすることによって、長期的に安定した需要を確保し、毎期着実に業績を拡大して行くことを目指しております。また、近年は賃貸物件への導入も増加しております。

当連結会計年度は、これまでに自社がこうして納入したマンション向け設備のリース満了による更新を着実に取り込むことにより業績は順調に推移しました。また、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響により延期となっていたマンション管理組合の理事会・総会が徐々に開催されるようになり、営業活動が回復傾向となった結果、期初予想並みの利益水準を達成しました。

来期につきましても、自社の更新需要及び導入済み賃貸物件の更新を中心として、引き続き業績の拡大が図れる見込みです。

一方、一般法人向けに関しても、新型コロナウイルス感染症の影響はあるものの、堅調な業績で推移しております。今後も有力代理店と連携しながら、お客様の要望する商品の品揃えを充実させ、これらの商品をタイムリーに提供することによって、業績の維持拡大に取り組んでまいります。

(カード機器及びその他事務用機器)

カード機器事業及びその他事務用機器につきましては、営業活動が正常化する中で、期初予想を上回る営業利益となりました。

来期につきましては、2022年6月にイタリアMatica Fintec社との資本提携の一環として、NBS Technologies Inc.傘下で米国孫会社のCard Technology Corporation及び英国孫会社のNBS Technologies LimitedをMatica Fintec社に売却したことにより、約7億円の売上減少が見込まれておりますが、カード機器における金融機関向け発行機の販売及びサーマルカメラ等の新製品の販売拡大及びその他事務用機器におけるオペレーターの研修を継続的に行う顧客向け会員サービス等の販売促進の拡大、BIMの流れの中でのゼネコン向けの販売拡大等により、営業利益増益を含む堅調な業績の維持拡大を目指す方針です。

(情報機器)

情報機器部門につきましては、収益の大部分を占めるコンシューマ向け小型カッティングマシン事業において、半導体部品を含む電子部品等の調達困難、サプライチェーンの逼迫による物流費の高騰及び米国の景気減速懸念等の影響により、期初予想を大きく下回る営業利益となりました。一方で、業務用カッティングマシンはコロナ影響からの戻りの取込が好調に推移し、期初予想を上回る営業利益となりました。コンシューマ向け・業務用合計では、期初予想を下回る営業利益となりました。

来期以降につきましては、商品開発力を引き続き強化する一方で、日本及び欧州に新たな販売拠点を設立することで、欧州及びアジアにおける販売力の強化を図ることにより更なる業績拡大を図ります。

(設計事業)

設計事業につきましては、新型コロナウイルス感染症拡大の影響による工事完成遅れ等が徐々に解消されてきたことから、期初予想並みの営業利益(前期比増益)となりました。

来期につきましては、構造設計分野全般の強みを生かし、耐震関連業務に代わる分野として民間のホテルや物流施設、環境施設の受注増を図るとともに、自社の特徴を活かした取り組みを行うことにより、堅調な業績推移を目指す方針です。

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