(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」とい
う。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
■事業を取り巻く環境
当連結会計年度の世界経済は、新型コロナウイルス変異株による感染拡大が収まらない中で、供給網の遮断による物価の上昇などインフレが進み、一旦上向いた景気が急減速しています。
自動車業界においても、新型コロナウイルス感染症の影響などによる半導体などの部品不足に起因する生産台数の減少や、原材料および物流費の高騰が大きな影響を与えており、ますます厳しい状況になることが予想されます。
また、グローバルで気候変動への対応、人権の尊重や多様性確保など、社会問題解決に向けた対応を求める動きが加速しています。
■当期の事業概況
①2025年中期経営計画の初年度
当該年度において、当社は、厳しい外部環境の中、2020年11月に策定した2025年中期経営計画の初年度として実行計画に取り組んでまいりました。
新型コロナウイルス変異株蔓延に起因する半導体などの部品不足による台数変動が激しい中、新製品でのロスのない立ち上げや確実な収益確保策の実行、業務改善の推進による固定費の効率化により、需要変動への対応力を強化し、稼ぐ力を向上することができました。
②2025年の目指す姿に向けて
「内装システムサプライヤーとして“ホーム”※1となる」ために、自動車用シート事業のグローバルでの更なる競争力強化を目指し、株式会社アイシンのトヨタ自動車株式会社以外のお客さま向け自動車用シート骨格機構部品の商権を取得することに合意しました。
③2030年のありたい姿に向けて
「インテリアスペースクリエイターとして新価値を創造」するため、2030年以降のライドシェア※2に向けた新しいビジネスモデル空間提案であるMX221をトヨタグループ6社※3で連携しCES展にて発表しました。また、車両からの景色に合わせたAR※4映像や360度音響など「移動中の新しい体験サービス」の提供に向けた実証実験に参画しました。
なお、持続可能な社会の実現を目指したカーボンニュートラルに向けた取り組みとして、2030年までにCO2排出量を50%削減(2013年度比)する目標を新たに策定しました。
※1 ホーム:「現地現物」で、自分たちで付加価値をつけることができ、競合と比較しても競争力で勝っている事業や地域のこと
※2 ライドシェア:交通渋滞の緩和や環境負荷の低減などを目的とした乗用車の相乗り需要をマッチングさせるソーシャルサービスの総称
※3 トヨタグループ6社:株式会社ジェイテクト、株式会社アイシン、株式会社デンソー、豊田合成株式会社、株式会社東海理化と当社
※4 AR:Augmented Realityの略。仮想空間の情報やコンテンツを現実世界に重ね合わせて表示することなどにより、現実を拡張する技術。日本語では「拡張現実」と呼ばれる
この結果、当連結会計年度の業績につきましては、前連結会計年度に比べ、連結売上収益は、グローバルに
おけるコロナ禍からの需要回復などにより、前連結会計年度に比べ1,493億円(11.7%)増加の1兆4,214億円と
なりました。利益につきましては、原材料の高騰などがあったものの、新製品効果などにより、連結営業利益は、
前連結会計年度に比べ31億円(5.6%)増加の602億円、税引前利益は、前連結会計年度に比べ71億円(12.5%)増加の645億円となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度に比べ80億円(25.9%)増加の392億円となりました。
当連結会計年度末の財政状態につきましては、資産は現金及び現金同等物や営業債権の増加などにより、前連結
会計年度末に比べ1,189億円増加の9,647億円となりました。
一方、負債は、前連結会計年度末に比べ647億円増加し、5,409億円となりました。主な要因は、営業債務の増加
によるものです。
資本は、前連結会計年度末に比べ541億円増加し、4,238億円となりました。主な要因は、親会社の所有者に帰属
する当期利益の計上によるものです。
セグメントごとの業績は、次のとおりであります。
<日本>
当地域におきましては、部品供給問題などによる減産はあったものの、モデルチェンジに伴う新製品効果などによ
り、売上収益は、前連結会計年度に比べ10億円(0.1%)増加の7,006億円となりました。営業利益につきましては、
減産の影響や諸経費の増加により、前連結会計年度に比べ44億円(△31.7%)減少の96億円となりました。
<北中南米>
当地域におきましては、需要回復による生産台数の増加などにより、売上収益は、前連結会計年度に比べ717億円
(29.2%)増加の3,177億円となりました。営業利益につきましては、モデルチェンジに伴う増産の影響などによ
り、前連結会計年度に比べ15億円(105.0%)増加の29億円となりました。
<中国>
当地域におきましては、減産影響はあったものの、為替の影響により、売上収益は、前連結会計年度に比べ317億
円(17.6%)増加の2,121億円となりました。営業利益につきましては、減産の影響や諸経費の増加などにより、
26億円(△14.5%)減少の157億円となりました。
<アジア・オセアニア>
当地域におきましては、需要回復による生産台数の増加などにより、売上収益は、前連結会計年度に比べ459億円
(31.8%)増加の1,904億円となりました。営業利益につきましては、増産の影響などにより、前連結会計年度に比
べ95億円(55.9%)増加の267億円となりました。
<欧州・アフリカ>
当地域におきましては、需要回復による生産台数の増加などにより、売上収益は、前連結会計年度に比べ136億円
(16.5%)増加の962億円となりました。営業利益につきましては、増産の影響があったものの、諸経費の増加によ
り、7億円(△12.0%)減少の53億円となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物の期末残高は、2,379億円と前連結会計年度末に
比べ427億円(21.9%)の増加となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
<営業活動によるキャッシュ・フロー>
営業活動の結果増加した現金及び現金同等物は1,229億円となりました。これは主に、税引前利益645億円、減価償
却費及び償却費425億円などにより資金が増加したことによるものです。
<投資活動によるキャッシュ・フロー>
投資活動の結果減少した現金及び現金同等物は408億円となりました。これは主に、有形固定資産の取得による
支出342億円などにより資金が減少したことによるものです。
<財務活動によるキャッシュ・フロー>
財務活動の結果減少した現金及び現金同等物は486億円となりました。これは主に、リース負債の返済による支出
241億円、配当金の支払125億円などにより資金が減少したことによるものです。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比(%) |
日本(百万円) |
664,699 |
△0.1 |
北中南米(百万円) |
294,496 |
29.8 |
中国(百万円) |
184,659 |
21.4 |
アジア・オセアニア(百万円) |
170,566 |
31.6 |
欧州・アフリカ(百万円) |
80,348 |
17.6 |
合計 |
1,394,770 |
12.3 |
(注) 1 金額は、販売価格によっております。
2 当連結会計年度より、当社グループにおける業績管理区分の見直しにより、従来「アジア・オセアニア」に含まれていた中国地域を「中国」として別掲しております。
3 アジア・オセアニアセグメントにおいて、需要回復による生産台数の増加などにより、生産実績が増加しております。
b.受注実績
当社グループは、主にトヨタ自動車株式会社をはじめとする各納入先より、四半期毎及び翌月の生産計画の提示を受け、生産能力を勘案して生産計画を立て生産しております。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比(%) |
日本(百万円) |
633,726 |
△2.0 |
北中南米(百万円) |
314,026 |
29.3 |
中国(百万円) |
202,016 |
19.3 |
アジア・オセアニア(百万円) |
176,803 |
34.0 |
欧州・アフリカ(百万円) |
94,878 |
16.7 |
合計 |
1,421,451 |
11.7 |
(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 当連結会計年度より、当社グループにおける業績管理区分の見直しにより、従来「アジア・オセアニア」に
含まれていた中国地域を「中国」として別掲しております。
3 アジア・オセアニアセグメントにおいて、需要回復による生産台数の増加などにより、販売実績が増加して
おります。
4 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 |
前連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
||
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
トヨタ自動車㈱ |
382,352 |
30.1 |
359,861 |
25.3 |
トヨタ モーター ノース アメリカ㈱ |
119,907 |
9.4 |
163,283 |
11.5 |
トヨタ車体㈱ |
151,033 |
11.9 |
147,326 |
10.4 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等(1)
連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針及び4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載しておりま
す。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、連結売上収益が、前連結会計年度に比べ1,493億円(11.7%)増加の1兆4,214億円となりました。連結営業利益は、前連結会計年度に比べ31億円(5.6%)増加の602億円と
なりました。連結税引前利益は、前連結会計年度に比べ71億円(12.5%)増加の645億円となりました。親会社
の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度に比べ80億円(25.9%)増加の392億円となりました。
なお、当社グループは、経営成績に重要な影響を与える要因として、取引先である自動車メーカーの自動車生産
台数、販売台数及び販売車種等の変動の影響を受けております。
a.売上収益
売上収益は、グローバルにおけるコロナ禍からの需要回復などにより、前連結会計年度に比べ1,493億円
(11.7%)増加の1兆4,214億円となりました。
b.営業利益
営業利益は、原材料の高騰などがあったものの、新製品効果などにより、前連結会計年度に比べ31億円
(5.6%)増加の602億円となりました。
c.税引前利益
税引前利益は、営業利益の増加などにより、前連結会計年度に比べ71億円(12.5%)増加の645億円となりまし た。
d.法人所得税費用
法人所得税費用は、前連結会計年度に比べ11億円(△6.0%)減少の185億円となりました。また、税引前利益
に対する比率は、前連結会計年度の34.4%から28.8%となりました。
e.親会社の所有者に帰属する当期利益
親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度に比べ80億円(25.9%)増加の392億円となり、基本的
1株当たり当期利益は210円15銭となりました。
③キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.キャッシュ・フロー
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッ
シュ・フローの状況」に記載のとおりです。
b.経営及び財務に関する考え方
当社グループは、経済的価値向上の成果をステークホルダーに還元するとともに、将来の成長に向け再投資す
ることで、中長期的に企業価値の向上をはかることを「経営の目指す姿」とし、経営基盤と競争力を強化しつつ、お客さまや社会に対する提供価値の多面化や事業領域の拡大を進めております。
c.資金調達の方針及び方法
当社グループは、事業活動の継続、適切な流動性の維持及び財務構造の安定化、成長への投資を目的として、
資金調達を実施しております。資金調達の方法については、直接金融、間接金融双方の市場環境を踏まえ、資金
調達方法の多様化や経済合理性の観点から総合的に判断し、決定しております。
設備投資や研究開発費などの長期資金需要については、金融機関からの長期借入金及び社債の発行により行っ
ております。その際、リファイナンスの低減や返済負担の軽減を図るために、年度別の返済・償還額の平準化を
しております。運転資金需要については短期借入金により行っております。
また、多様化する資金調達環境下において、安定的に資金調達可能な環境を確保すべく、当社グループは国
内の格付機関から格付を取得しております。本報告書提出日現在において、株式会社日本格付研究所より格付
AA(安定的)を付与されております。こうした外部機関からの当社グループへの財務状況に対する評価は一定
のキャッシュポジションを維持していることなどによるものであります。さらに、継続的に取引している金融機
関から事業活動の継続に必要な運転資金や成長に必要な投資資金に関する資金調達を適宜実施しております。
また、緊急的な資金需要に対して、コミットメントラインを設定し、資金を確保できる体制を整えておりま
す。
④経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成の状況を判断するための客観的な指標等
2020年11月に発表した中期経営計画において、2025年の経営目標として既存コア製品の拡販・新規OEM獲得により、売上収益1兆6,000億円+α、固定費の更なる効率化と原価低減により、将来の成長予算を確保しつつ営業利益1,000億円+α、営業利益率6~7%を目標に掲げました。
2021年度の財務実績は、売上収益は、前期比1,493億円増加の1兆4,214億円、営業利益は、前期比31億円増益の602億円となり、税引前利益は、前期比71億円増益の645億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は、前期比80億円増益の392億円となりました。
コロナ禍による減産など厳しい外部環境の中、中期経営計画の初年度として実行計画に取り組んだ結果、稼ぐ力が向上し、前年比で増収増益となり、今後の目標に向け自信がついてきました。
お知らせ