当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症(以下、感染症)拡大に伴う緊急事態宣言の発出や、まん延防止等重点措置の断続的な適用により経済活動は停滞しました。ワクチン接種が進み今後の景気回復が期待されますが、変異株の出現による国内外の感染動向、海外で頻発したコンテナや労働者不足によるサプライチェーンの混乱、さらには、原油価格の高騰などを背景とした世界的なインフレ進行などにより、日本を含む世界経済の先行きは依然不透明な状況が続いております。
国内の食品業界においては、緊急事態宣言等の解除により外食・レジャー産業において営業活動が活発化するなど低迷していた業務用需要に明るい兆しも見え始めました。しかしながら、当社グループの主力事業分野である乳業界においては、業務用乳製品の需要減を起因とする脱脂粉乳在庫の高止まりが、国内市場回復の懸念材料となっております。
このような状況のもと、当社グループは、お客様への安心・安全な商品の安定供給に努めつつ、中期経営計画「NEXT-LJ2023」で定めた「既存ビジネスの進化と新規顧客の開拓」「成長著しいアジアでの事業拡大」「次世代ビジネスの構築」に取り組んでまいりました。既存事業においては、国産乳原料の余剰在庫対策事業に対応して国産乳原料の販売に積極的に取り組み、新たな販売ルートの開拓などの成果を得ました。また、アジア事業においては、成長戦略の柱であるチーズ製造販売が、マレーシアやタイなどの感染症拡大防止のロックダウン措置により、一時厳しい事業環境となりましたが、内食需要を着実に取り込むなどの営業努力を続け、前年度を上回る売上・販売数量となりました。次世代ビジネスとしては、前年度に開始した機能性食品原料事業においてスポーツニュートリション向けのホエイプロテイン原料販売が好調となり、新規事業が軌道に乗り始めました。
以上の結果、当連結会計年度末の財政状態および経営成績は以下のとおりとなりました。
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末と比べ95億29百万円増加し、528億99百万円となりました。負債合計は、前連結会計年度末に比べ75億43百万円増加し、333億20百万円となりました。純資産合計は、前連結会計年度末に比べ19億86百万円増加し、195億78百万円となりました。
当連結会計年度の経営成績は売上高1,108億83百万円(前期比0.0%増)、営業利益27億87百万円(同5.8%減)、経常利益26億81百万円(同3.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益19億59百万円(同5.0%減)となりました。
各事業別の状況は、次のとおりであります。
乳原料・チーズの販売数量は、184,358トン(前期比3.8%減)となり、売上高は764億81百万円(前期比2.4%減)となりました。
食肉加工品の販売数量は25,699トン(前期比17.2%増)となり、売上高は142億78百万円(前期比20.0%増)となりました。
アジア事業の乳原料販売部門においては、販売数量は47,817トン(前期比20.5%減)となり、売上高は157億54百万円(前期比7.5%減)となりました。
アジア事業のチーズ製造販売部門においては、販売数量は4,635トン(前期比10.4%増)、売上高は33億24百万円(前期比14.8%増)となりました。
以上の結果、アジア事業・その他の売上高は201億23百万円(前期比2.4%減)となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は前連結会計年度末に比べ5億6百万円増加し、50億14百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
営業活動により減少した資金は、40億37百万円となりました。これは税金等調整前当期純利益を26億81百万円計上したこと及び仕入債務が22億66百万円増加した一方で、売上債権が51億60百万円増加、たな卸資産が33億91百万円増加したことによるものです。
投資活動により減少した資金は、2億91百万円となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出1億61百万円によるものです。
財務活動により増加した資金は、46億58百万円となりました。長期借入金の返済36億60百万円、社債の償還による支出2億70百万円があった一方で、短期借入金の増加51億59百万円、長期借入金による収入30億円及びコマーシャルペーパーの増加10億円があったことによるものです。
当社グループではアジア事業においてチーズの製造販売を行っておりますが、金額の重要性が乏しいため、記載を省略しております。
当社グループでは、乳原料・チーズ、食肉加工品等の輸入を主とする卸売および海外子会社によるチーズの製造・販売を行う食品事業を営んでおりますが、事業セグメントに分類した場合の経済的類似性および各セグメントにおける量的基準等を考慮し、事業セグメントとして区分は行っておりませんので、ここでは当社グループの管理会計上の区分にて記載しております。
(注) 1.アジア事業・その他は、機能性食品原料販売、アジア事業とアジア事業以外の海外子会社(LACTO USA INC.及びLACTO OCEANIA PTY. LTD.、LACTO EUROPE B.V.)の合計であります。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループの財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債および収益・費用の報告金額ならびに開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りを行うにあたり、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる結果をもたらす場合があります。なお、連結財務諸表の作成に当たっては、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。
なお、会計上の見積りに対する感染症の影響に関して、収束時期などを想定することは困難であるものの、外出自粛等による経済停滞の影響が2022年11月期の一定期間にわたり継続すると仮定して当連結会計年度(2021年11月期)の会計上の見積りを行っております。
1) 財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末と比べ95億29百万円増加し、528億99百万円となりました。
当連結会計年度末における流動資産合計は、前連結会計年度末と比べ93億94百万円増加し、500億18百万円となりました。この主な要因は、「受取手形及び売掛金」が54億27百万円増加したこと、受注増などに伴い「商品及び製品」が33億26百万円増加したことによるものです。
当連結会計年度末における固定資産合計は、前連結会計年度末と比べ1億35百万円増加し、28億81百万円となりました。主な要因は、投資その他の資産が92百万円増加したこと、有形固定資産が18百万円増加したことによるものです。
当連結会計年度末における流動負債の残高は、前連結会計年度末と比べ75億85百万円増加し、275億24百万円となりました。主な要因は、1年内返済予定の長期借入金、1年内償還予定の社債がそれぞれ減少した一方で、短期借入金が51億68百万円、買掛金が24億62百万円、コマーシャル・ペーパーが10億円それぞれ増加したことによるものです。
当連結会計年度末における固定負債の残高は、前連結会計年度末と比べ42百万円減少し、57億96百万円となりました。長期借入金が50百万円減少したことによるものです。
当連結会計年度末における純資産の残高は、前連結会計年度末と比べ19億86百万円増加し、195億78百万円となりました。この主な要因は、「利益剰余金」が16億62百万円増加したことによるものです。
これらの結果、自己資本比率は36.9%となり、1株当たり純資産額は、1,978円42銭となりました。
2) 経営成績
各事業別の売上高の対前期比は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態および経営成績の状況 b. 経営成績」に記載のとおりであります。
なお、当社の売上高は、商品相場や為替相場により変動することがありますので、乳原料・チーズ部門および食肉加工品部門における業績管理の指標として、販売数量も重視しております。当該数量の過去5年間の推移は以下のとおりとなっております。
単位:トン
売上総利益は、66億40百万円(前年同期比0.2%増)となりました。
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、38億53百万円(前年同期比5.1%増)と増加しました。
この主な要因は、人員増による人件費の増加、物流コスト増加による発送配達費の増加などによるものです。
上記の結果、営業利益は、27億87百万円(前年同期比5.8%減)となりました。
経常利益は、営業利益の減少はあったものの、為替差益の増加等により、26億81百万円(前年同期比3.6%減)となりました。
税金等調整前当期純利益は26億81百万円(前年同期比3.6%減)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は19億59百万円(前年同期比5.0%減)となりました。
これらの結果、1株当たり当期純利益金額は198円73銭となりました。また、自己資本利益率は、10.6%となりました。
3) キャッシュ・フローの状況
各キャッシュ・フローの分析とそれらの要因につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
当社の主要な取扱製品である乳原料およびチーズの販売価格は、国際乳製品価格の動向ならびに為替相場の影響を受けております。当社では、仕入契約ならびに販売契約を同時期に行うことで商品価格の変動リスクを回避し、さらに外貨建て仕入債務についても契約時点で為替予約を締結することで、為替変動リスクを回避しております。しかしながら、国際乳製品価格の低下、もしくは円高進行時においては仕入単価の低下を通じ販売単価も低下(売上減)し、反対に国際乳製品価格の上昇、もしくは円安進行時においては仕入単価の上昇を通じて販売単価も上昇(売上増)します。このように、当社では商品相場ならびに為替相場の動向により売上高が増減いたしますが、上記のとおり、リスクヘッジを着実に実行し、さらには販売数量を伸ばすことで利益を確保し、着実な成長を図ってまいります。
当社グループが今後も持続的に成長していくためには、従前の日本国内の食品メーカー向けの原料販売に加え、今後需要増が見込まれる高齢者向けに健康を訴求した食品原料の開発や日本に紹介されていない新機能海外原料の紹介、さらには経済発展が進むアジア諸国(中国、タイ、ベトナム、インドネシア、フィリピン、マレーシア等)に対する乳原料やプロセスチーズの販売に積極的に取り組んでまいります。こうした取り組みで持続的な成長をより堅固なものとすべく、適切なパートナー選び、グローバルな視点で活躍できる人材の育成と獲得、教育研修制度の拡充などを通じて“組織力”の強化・整備を進め当社グループのすべての取引先からの信頼を向上させていく所存です。
資金需要:
当社グループの主要事業である、乳原料・チーズ部門、食肉加工品部門およびアジア事業・その他における卸売部門においては、商社としての事業形態をとっており、仕入⇒在庫⇒販売⇒資金回収という事業フローのため、業容の拡大イコール運転資金の増加につながります。こうした運転資金が主たる資金需要となっております。
想定している中長期的な資金用途は下記の通りです。
<成長戦略の柱となるアジア事業での資金需要>
・有望な販売市場における拠点の設置
<アジア事業・チーズ製造販売部門拡大のための資金需要>
・設備の増強(製造ラインの自動化・拡充、新工場設置など)
<新規事業立ち上げのための資金需要>
現時点で決定している事項はありませんが、既存ビジネスとのシナジーが期待できる「食品」に関連した新規事業や、長期的な観点からサステナブルな社会の実現に資するビジネスの構築に向けて必要な投資を行う所存です。
財務政策:
事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するために、収益体質の改革による利益の確保や運転資金の効率化等自己資金の創出に努めるとともに、現状では、金融機関からの借入およびコマーシャル・ペーパーの発行を中心に資金を調達しております。資金調達にあたっては、その必要性や実施時期を十分に検討の上、金利や期間といった調達条件やコスト等を勘案しながら、最終的には財務体質の健全性確保の観点から、その時点で最も適切と考えられる方法を採用しております。また、当社は、主要取引金融機関と総額210億円のコミットメントライン付シンジケートローン契約を締結しており、機動的な資金調達の対応が可能となっております。
当社では、商品相場や為替相場の変動による影響を直接受けない販売数量を客観的な指標として重視しております。また、株主の皆様からお預かりしている資金の効果的な運用を示すROE等の経営指標を着実に向上させていく所存です。
当社グループでは、乳原料・チーズ、食肉加工品等の輸入を主とする卸売および海外子会社によるチーズの製造・販売を行う食品事業を営んでおりますが、事業セグメントに分類した場合の経済的類似性および各セグメントにおける量的基準等を考慮し、事業セグメントとして区分は行っておりませんので、ここでは当社グループの管理会計上の区分にて記載しております。
世界の乳製品市場においては、感染症の流行が落ち着いた地域で、外食などの営業再開とともに需要が戻り始める一方、主要産地における生乳生産量の伸び悩みや各国の物流混乱などの影響から需給バランスが崩れ、国際相場は上昇基調で推移しました。
日本においては、緊急事態宣言期間が長引いたことや、例年需要が拡大する夏季の天候不順により、業務用を中心に乳製品需要の低迷が続きました。その一方で、国内の生乳生産が好調であったことから国産乳原料在庫は一年を通じて高水準で推移したため、独立行政法人農畜産業振興機構(ALIC)による輸入乳原料の入札は前年度に続き低水準に留まりました。
このような環境下、当社グループは政府及び業界団体による余剰在庫対策事業に積極的に参画することで、これまで少なかった国産品の取り扱いを増やし、国内新規販売先の開拓やアジア地域への輸出事業などにより販路を拡大しました。
また、国際相場の上昇による原料コスト高に苦慮するお客様に対し、当社が有する多彩なサプライヤーネットワークの中からニーズに合った商品を提案するほか、TPP、日欧EPAなどの低率関税枠を活用した商品の仕入れなどにより輸入品の販売を伸ばすことにも注力しました。
しかしながら、利益率の高い輸入原料の販売が一部国産原料の販売に置き換わったことや物流コストの上昇の影響もあり、当部門の利益率は前期比で低下しました。
以上の結果、乳原料・チーズ部門の販売数量は、184,358トン(前期比3.8%減)となり、売上高は764億81百万円(前期比2.4%減)となりました。
食肉加工品部門の販売は一年を通じて好調に推移しました。特に安定した内食需要を背景に、主要取扱商品であるチルドポークやハム・ソーセージなどの加工食品原料であるフローズンポーク等の販売は好調となり、売上・販売数量ともに前期を上回りました。その一方で、米国の主要サプライヤーの生産工場における労働力不足などにより、一部商品の供給の遅れがあったことや物流費など仕入コストの高騰により利益は伸び悩みました。
生ハム・サラミなど食肉加工品の販売は、前年度に引き続き外食産業向けの需要減の影響により伸び悩みましたが、新規商品として拡販に注力している牛肉や蜂蜜などは順調に販売を伸ばすことができました。
以上の結果、食肉加工品部門の販売数量は、25,699トン(前期比17.2%増)、売上高は、142億78百万円(前期比20.0%増)となりました。
アジア事業の乳原料販売部門(商社)においては、日本の国産脱脂粉乳の余剰在庫の影響により日本向け乳製品の原料販売が低迷し、売上・販売数量は前期比でマイナスとなりました。現地市場向けの乳原料販売も、度重なるロックダウンの影響により数量は減少しましたが、乳原料の国際相場の上昇と為替影響により売上高の減少は小幅にとどまりました。
以上の結果、アジア事業乳原料販売部門の販売数量は、47,817トン(前期比20.5%減)、売上高は、157億54百万円(前期比7.5%減)となりました。
アジア事業のチーズ製造販売部門(メーカー)においては、7月から8月にかけて、マレーシア、タイなどにおける感染症の急拡大に伴う厳格なロックダウンの影響を受け、外食産業向けの販売が苦戦したほか、食品メーカー向けの販売でも一部販売先の工場で稼働が縮小・停止を余儀なくされるなど厳しい事業環境となりました。しかしながら、堅調な巣ごもり需要を取り込むべく積極的な販売活動を展開し、食品メーカー向けを中心に新規商売を獲得するなど、通期での販売は前期を上回る実績となりました。また、下期には世界的なコンテナ不足による船積遅延の影響によりアジア各国でチーズの供給がタイトとなる中、当社はシンガポール工場の能力拡大により機会損失をなくし、販売を伸ばすことができました。
以上の結果、アジア事業チーズ製造販売部門の販売数量は、4,635トン(前期比10.4%増)、売上高は、33億24百万円(前期比14.8%増)となり、いずれも過去最高を更新しました。
その他の事業として営業活動が本格化している機能性食品原料販売においては、たんぱく質摂取意識の向上や、巣ごもりにともなうトレーニング需要の増加により、スポーツニュートリション分野を中心にホエイプロテイン原料の販売が伸長しました。感染症の流行を機に食品業界では「健康」が商品開発の主要なテーマとなっており、プロテインをはじめとした機能性食品原料のニーズは今後もますます高まることが期待されております。また、植物由来の原料についても市場は徐々に拡大しており、当社グループとしても新規商品開発に力を入れ、販売を推進しております。これまでの乳製品原料販売で培ってきた商品開発力・調達力・販売力を背景に原料の安定供給を行い、当社グループの成長を牽引する柱として当事業を拡大してまいります。
以上の結果、アジア事業・その他の売上高は、201億23百万円(前期比2.4%減)となりました。
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